2012年08月11日
私がカーグラ小僧だった、中学生の頃のお話。
私は貯めたお小遣いを持って、近所のホームセンターに自転車で向かった。お目当ての品はKTCのソケットレンチセットだった。
その時、自転車を走らせる私の後方から聞きなれないエンジン音が響いてきた。私はとっさに自転車を停めて振り返る。そこに一台の青いセダンが走ってきた。そして、その聞いたことの無い音を響かせて走ってくるセダンがなんであるか認識した瞬間、あまりの驚きと感動に、私は恥じることもなく大声で叫んだ。
「8・32だぁ!!」
私の脇を通りすぎるとき、ものの数秒だっだが、物凄く長時間のように感じた。私はその場で動けなくなっていた。そのランチアテーマ8・32を運転していたのは、ワイシャツにネクタイした初老の紳士だった。運よく前方の信号が赤になって、8・32は停車した。
私はありったけの力で自転車を漕いだ。あと数メートルのところまで来た時、信号が青に変わってしまった。その時、運転していた紳士は私のことに気がついたようだった。そんなにスピードも出ていなかったので、もしかすると大声も聞こえていたのかもしれない。
その瞬間、ウィーン!とトランクリッドからリアウイングがせりだし、ものすごい勢いで発進した。その紳士はここぞとばかりに私にフェラーリサウンド聞かせ、走り去って行った・・・
私は再び動けなくなった。買い物のことなど、ぶっ飛んでしまった。
ナンバーも一部覚えている。「宮城33た」であった。
私はホームセンターには寄らず、直ぐに帰宅した。自分の部屋に入り、ずっと高いままの心拍数になすすべもなく、放心状態だった。
手元にあったカーグラの新車価格表を見て、ため息がこぼれた。
私は父に、一部始終を話した。そして大人になったら、中古でもよいから絶対に買うと言った。父から返ってきた言葉は
「今のお前の勉強量と成績では無理だ。たとえ買えたとしても、維持なんか到底できないと思う」
と
冷たい言葉だったが、確かに父の言う通りだった。夢を挫かれたようで、とても悔しかった。
あれから20年、ご存知の通り、私は未だにランチアテーマ8・32を買えていない。たまに雑誌に掲載される中古車を見るたび、ため息がこぼれる。
臆病者の私には永遠に無理だろうな。
ランチアテーマ8・32、私の忘れられない車の1台である。

Posted at 2012/08/12 01:17:14 | |
トラックバック(0) |
車ネタいろいろ | モブログ