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ソーラ・レイのブログ一覧

2020年11月28日 イイね!

Webアニメ『モンスターストライク』第三期

Wedアニメというジャンルをこの作品を視聴するまで知りませんでした。
ゲームアプリの販促品にしてはクオリティ高すぎでビックリしました。
そのうえ、いろんな意味で『攻めてる』作品だったので更にビックリ。
勢い余って第三期完結編の映画まで観に行ってしましました('◇')ゞ

過去に第一期・第二期の配信があり、この三期は2018年6月から配信されたようです。
三つのシリーズに関連性は無く、それそれ独立したシリーズのようですが、一期と二期は主人公たちがモンスター達を召喚して戦うポケモンスタイル。
三期はモンスター達それぞれの物語、というスタイルのようです。
現在もYouTubeで三期まとめて無料配信されてます。
コレもすごい事ですわ。
ゲームをダウンロードしてなくても無料でいつでも視聴できるのだから。

自分の琴線に触れた第三期は、簡単に言えばアベンジャーズスタイルのお話。
5人の主人公がそれぞれの世界で世界を救う活躍をして、最終的に集結しラスボスを倒す物語。
映画は、その話の大どんでん返し。

この三期の主軸ストーリーが『堕天使ルシファー』を巡る物語。
ルシファー編のストーリープロットが、また…
一部で『中二病のバイブル』とも呼ばれている(らしい)
古典文学の傑作『ミルトンの失楽園』をモチーフにしています。
堕天使ルシファーを英雄と捉え、服従より自由を選んで堕天してゆく。
作中でも同様のセリフをルシファーが語っていました。
またBGMも、クラシックからケルト・近代音楽・他のアニメ風の、耳に覚えのあるエモーショナルなフレーズのオンパレード。(コレはパクリとも云うかナ)
ワグナー『ワルキューレの騎行』
ヴェルディ『レクイエムから “怒りの日“』
ドビュッシー
UCガンダムっぽいの
ワルキューレと怒りの日はオリジナル流しても良いんじゃないかなぁ~
とにかく盛り上げてくれます。
このルシファー編でいちばん琴線に触れたと云うか、『攻めてる』感かんじたのがキャラクターコスチューム。
ゲーム内設定なんだろうけどキャラクターがレベルが上がるとビジュアルが変化します。



これが堕天後のルシファー。
アクションゲームが元になっているので派手なバトルシーンが主体の物語なので、
キャラクターも凛々しい戦闘服やら制服風の姿の中で、堕天使ルシファーだけが
妙にふわふわガーリーっぽい姿です。
この姿みて『わぁ~攻めてるぅー』って驚きました。
このコスチュームの元ネタはこれでしょ↓







西方教会の保守派の人が知れば激怒しますよ。
聖母に黒い三対六翼を付けちゃダメでしょ。
Wedアニメってジャンルだから挑戦できるのかな?
因みに、この姿のルシファーはWedアニメ内だけです。
劇場版では更にレベルアップして別なコスチュームとなってます。

あ、そうそう。
このアニメは、古今東西の実在・神話・伝説・空想の人物のほとんど全てを萌えキャラ化してます。
まさにほとんど全ての登場人物が『おとなのプリキュア化』
有名な英雄王さえプリキュア化しているのには戸惑いました。


第三期二人目の英雄は
円卓の王アーサー。



有名なアーサー王さえ萌えキャラ化してしまってて戸惑うばかり。
アーサー編はこじんまりと纏まった話でしたが、敵キャラの個性が振り切れていて中毒性のあるBGMが耳に残ります。
映像技術的に海のシーンに3DCDの底力を感じました。


三人目の英雄は『叡智の魔術王ソロモン』



伝説のイスラエル王ソロモンをモチーフにした萌えキャラ。
正邪二面性を持っていたと伝説が語るように、力を開放するとオッドアイに。
このソロモン編が大変良くできていました。
ハリーポッター並みのダークファンタジーとして、これだけで1本映画出来るレベルで話が纏まってました。
第三期を通してのメインテーマ『友情』を前面に掲げたストーリー展開。
クライマックスのバトルシーンは感動を覚えます。




四人目は『パンドラ』



正統派萌えキャラのこのコだけ、三期では特別編1話しか登場せず、これだけ観ても正体がいまいち判らす。
でも名前が設定の全てを物語ってますネ、箱まで持ってて。
ゲストキャラとして全シリーズの要所要所にチョイ役として登場しているようです。
デウス・エクス・マキナ的な能力を箱の中に持っているのか?
ゲームを知らないので判らず。とにかく四人目の英雄。




最後に五人目の英雄が『方舟の少年ノア』



このノア編を視聴した事で、劇場版を観に行く事を決めました。
これはスゴイ。いろんな意味で。
とにかくストーリープロットは50年代古典SFの王道です。
ロバート・A・ハインライン、アーサー・C・クラーク、アイザック・アシモフらのハードSFのようなストーリーが、とても新鮮に感じます。
その骨太なストーリーに現代SF物の味付けを施していました。
『80歳の童貞クン』が主人公なのも驚き。
  ↑コレ、ストーリーの中で公式に説明してます。
    ↑説明してること自体がある意味コワレテル。Wedアニメならではです。


ざっと自分なりに把握したつもりのキャラクター紹介をしてみましたが、
3DCDなので作画の乱れを心配することなく、Wed上にいつでも無料でアップしていて、配信時は不定期だったようですが、一話15分程度の作品というのが一番魅力的です。
セル画アニメでは故・高畑勲監督のような才能は別格として、絵の才能がある人材が求められその中から表現者が出てくるシステムでしたが、3DCDでは絵が上手でなくても才能がある人材が現れる可能性があります。

この3DCD作品に出合い、時代が変わったんだなぁ~
とつくづく想いました。
Posted at 2020/11/29 00:57:53 | コメント(0) | トラックバック(0) | これは! | 趣味
2020年11月08日 イイね!

ファーストクライマーは誰だ⁉『剱岳‐線の記‐』

ファーストクライマーは誰だ⁉『剱岳‐線の記‐』めちゃくちゃ面白い著書に出会いました。
髙橋大輔 著
『剱岳 線の記 平安時代の初登頂ミステリーに挑む』

書店の山岳地図コーナーで気になる山域の地図を立ち読み(立ち広げ?)していた時に、同じ棚に登山記やハウツー本と一緒に並んでいた本書。
帯紙のコピー文に惹かれて衝動買い。
読み始めたら面白くて止まらずにあっという間に読み終えました。

日本山岳史最大のミステリーに挑んだ本書は、著者が本文で
『山岳小説の傑作〈剱岳‐点の記‐〉が在ったからこそこのミステリーに挑戦できた。云わば本書は〈剱岳‐点の記‐〉のスピンオフ作品である』
と非公認のスピンオフ宣言をしています。

この本を楽しむには、まず〈剱岳‐点の記‐〉を知らなければなりません。
日本山岳小説の最高峰
新田次郎 作  剱岳‐点の記‐



日露戦争直後の1907年(明治40)年、最後に残った日本地図の空白地。前人未到で、また決して登ってはいけない禁足地として恐れられていた北アルプスの剱岳(標高2999m)の登頂に挑んだ測量官の物語。
日本陸軍参謀本部陸地測量部(現・国土地理院)の柴崎芳太郎率いる測量隊が、設立間もない日本山岳会との初登頂争いをしながら命がけの剱岳初登頂に臨む。
そして苦難の末 1907年(明治40年)7月13日未明
遂に柴崎隊は 剱岳の絶頂に立つ。
初登頂を成し遂げたのだ。
ところが、彼らはそこで信じがたいものを発見した。
山頂で彼らは、古代の仏具を発見したのだ。
置かれていたのは、錫杖頭と鉄剣だった。
柴崎隊よりはるか昔、千年も前に既に剱岳の山頂にたどり着いていた者がいた…

〈剱岳‐点の記‐〉の中での日本山岳会との初登頂争いは史実ではなく新田次郎の創作であるらしいですが、ホントの登頂争いは既に千年も前に決していた、と云う事実のオチが深い余韻を残す傑作山岳小説です。

ルートが整備され足場も設置された現在でも険峻として知られる剱岳。
千年前の平安時代に、登山装備もほぼ無いに等しい条件で、誰がどの様に剱岳の絶頂に立ったのか?
『剱岳のファーストクライマーは誰なのか?』
柴崎隊が山頂で錫杖頭と鉄剣を発見した時から、日本山岳史最大のミステリーが始まりました。


本書は、このミステリーに正面から挑んだノンフィクションです。
この謎解きが明瞭でテンポ良くグイグイ引き込まれます。
著者の事を全く知りませんでしたが、有名な探検家です。
この時代に〈探検家〉なんで肩書、えらく胡散臭い匂いを感じますが、正真正銘の探検家でした。
『米国のナショナルジオグラフィック協会から支援を受け、ロビンソン漂流記のモデルとなったアレクサンダー・セルカークの住居跡を世界で初めて発見した』
その探検隊のリーダーを務めていたのが本書の著者。

ホンモノの探検家の探検手法が、とてもシンプル。
5W1Hを設定し、其処に仮説を当てはめストーリーを仮設定(点と点を結んで線化)
そして実証。
剱岳の地元・富山県内各所に残る各ジャンル毎の古い文献や、在野の郷土研究家への聴き取りを丹念に行い、仮説を立てては修正して核心へ迫っていきます。
5W1H
・いつ
・誰が
・どこから、どのように
・どこに(山頂の錫杖頭発見ポイントが現在不明となっている)
・何の目的で

そして浮かび上がってきた岩峅寺・芦峅寺を中心とした立山修験とは別系統の、
富山県上市町を中心とする剱岳修験。
剱岳を〈地獄〉と捉える立山修験とは真逆で、剱岳を〈豊穣の霊山〉と捉える上市町エリア。
そこが現在も登山口となっている《剱岳・早月尾根ルート》
しかし、この尾根はいま現在さえ『飲料水確保』が大変なルート。
そして古地図から浮かび上がる古の登攀ポイント『ハゲマンザイ』
ギャグのような登攀ポイントから更に古の氏族『万歳氏』が浮かび上がる。
平安後期に、後の武士の元となる、貴族・高僧たちの有事の担い手だった万歳氏。
山頂で錫杖頭が発見される事例は、剱岳以外の山でも有ったと云う。
仏具である錫杖頭を山頂に奉納する事は、即ち仏教(密教)での開山であることは間違いない。
しかし、山頂から〈鉄剣〉が発見されたのは剱岳のみと云う事実。
鉄剣は何を意味するのか?
日本で剣から発想する事は、平安後期に生まれた武士階級。


点と点が結ばれ線となり、そこからストーリーが浮かび上がってくるワクワク感が本書最大の醍醐味。
そして、実証。
古地図の登攀ポイント・ハゲマンザイから剱岳に登頂できるか?
登山のプロではない探検家が登攀に挑みます。


実在する本物の探検家という職種は、ほとんど民俗学者と同義なんですね。
丹念な調査と実証(フィールドワーク)
著者が最終的に提示した5W1Hの、〈いつ・だれが〉は今後の追研究などを待つ必要があるかもしれませんが、〈どこから・どのように〉は、著者が探し当て実証した古登山道で確定していいのでは?

本書は、説得力あって読み易い山岳ノンフィクションです。
興味があればぜひ
『剱岳‐点の記』から読み、点を線に繋いでください。
Posted at 2020/11/08 23:18:34 | コメント(0) | トラックバック(0) | これは! | 趣味
2020年03月14日 イイね!

『鬼滅の刃』

『鬼滅の刃』今更ですが、この作品の存在を知って視聴し、読んでみました。

メンタルやられ 涙腺崩壊。


チョット前にコンビニにタイアップポスターがベタベタと貼ってあったのがきっかけ。
「この猪頭のキャラはなんなんだろう」って思うくらいで特に気にもとめませんでした。

忘れもしない先週金曜日の夜。
自分が登録している動画配信サービス内でこの作品が無料視聴出来る事に気付き、軽い気持ちでアニメ第一話を視聴。
そのまま早朝まで全26話を一気に視聴。完全にメンタルをやられ、その週末は家の中に引き籠り。
途中で視聴を止められません、面白くて、どんどんストーリーに引き込まれて。
でも、いっきに観てはいけない作品ですわ、ココロを持って行かれます。

あの、19話は…
規格外の出来ばえ。 
TVシリーズ作品の枠をはるかに超えた完成度に涙腺崩壊です。
クライマックスでの挿入歌。
〈動〉のアクションシーンと〈静〉の挿入歌。
こんなにみごとに〈相克のモンタージュ〉が決まった作品は、私の知る限り近年にはないと思います。
それもそのはず、挿入歌をリーレコしてAメロ・Bメロ・サビ毎に秒数ひろって作画してます。
こんな事、TVシリーズのひとつの話数では普通しないでしょう。
完全に映画作品クオリティです。

それと、声優さんに対しての自分の考えが変わりました、この作品で。
アニメ声優さんって、作り声を張り上げるような声の演技が多い様に感じていました。
ところが!
これも19話ですが、声優さんの声の演技に鳥肌。
蜘蛛鬼〈姉〉の自分が棄てられる恐怖からの《うわずったかすれ声》
声だけの演技じゃなくココロのこもった演技だからのセリフに鳥肌。
それと、主人公の母親。
これはもう、涙腺崩壊せずにいられません。
特に『お兄ちゃんまで死んでしまうわよ…』は、台詞自体の素晴らしさと声優さんの演技で涙腺崩壊のダメ押しです。

19話が突出して規格外の完成度ですが、全話すべて高い水準のクオリティを保ってました。
CGとセル作画の融合も調和しているし、アクションシーンでの浮世絵のような飛沫のデフォルメも斬新でした。




昨年放映され大反響となった作品なので、自分がいま知ったのは『今さら』ですが、まだこの作品を観ていない人がいれば観ておいた方が良いと思います。
ぜひ物語の完結までアニメ化を続けて欲しい作品です。

と云う訳で、あまりにもメンタルをやられたので、原作も手を出してみました。

原作も規格外。
まず、この作品を『週刊ジャンプ』で掲載している事自体が、おかしい。
この絵柄は、まるで『ガロ』でしょう。
70年代後半頃のアングラ少女怪奇漫画のような絵柄ですわ。
なんとなく〈つげ義春〉先生っぽさを感じるし、〈高橋葉介〉先生っぽさもある。
デッサンが崩れていて『下手うま』ではなく『下手味わい』って感じ。
ストーリー展開も、ジャンプ特有の仕上げを施しているけど、その本質的なモノは〈男組〉やら〈ワイルド7〉のような70年代の『サンデー』や『キング』を彷彿させます。
とにかく『ジャンプ』らしくない。
キャラクター設定もいまの時代には珍しく多面的。
殆どの登場人物が多面的な側面を持ち、勧善懲悪の一筋縄とはいかない処が物語に余韻を作ってくれてます。

ただ、原作は大詰めを迎えながらも、ストーリー構成のまずさや説明不足が目立っていると感じます。
このあたりは、原作のエキスを十二分に汲み上げ最良の映像化をしているアニメ化スタッフに、今後も最良なアニメ化を期待しましょう。

原作漫画もアニメも、体験しておいた方がよい作品です。


Posted at 2020/03/14 14:57:56 | コメント(2) | トラックバック(0) | これは! | 日記
2019年08月12日 イイね!

極私的に絶賛『天気の子』

極私的に絶賛『天気の子』3回観てきて、観る毎に涙腺の緩みがひろがり、終劇後がたいへん(-_-;)
めちゃくちゃツボにハマった作品なので、ここらへんで一度気持ちを纏めてみます。
あくまで個人的主観の映画感想なのであしからず。


まず、ストーリープロット自体は使われ尽くして手垢にまみれた展開のお話です。
ま、ポンコツな物語と言い切ってもいいくらい。
ただ、この手のお話が量産されていたのは、今から30~40年前。
その当時の作品群を知らなければ、逆に新鮮さを感じるかもしれません。
直球ど真ん中の愚直な恋愛物語。
こっぱずかし過ぎて今更描かないような物語を、大真面目に描き切った事にまず脱帽です。
ただ、むかし量産されていたこの手の物語は、社会背景的に悲恋で終わるのが常でした。
70年代後半から80年代初めにかけての時代、まさに『しらけ世代』と呼ばれる事になる
時代の世相を反映した『頑張っても努力しても報われないで終わる物語』
この映画をその頃のプロットに当てはめれば、
『自暴自棄の3発目を発射して、終わり』となるでしょう。
しかしこの物語は、自暴自棄にならず、ひたすら一途に走り抜けました。
この一途さこそがこの映画の描こうとした主題。
映画タイトルも『天気の子』としていますが、こちらはミスリードを誘う仮タイトル。
この映画の本当のタイトルは英語訳の方
『WEATHERING WITH YOU』 君と乗り越える
まさに物語を体現しているのは英語訳タイトルの方です。



主人公の帆高(ホダカ)は家出して東京にやって来ます。
そこで出会うヒロインの陽菜(ヒナ)と
帆高の協力者となる須賀(スガ) 
彼は帆高と対比させる人物(大人代表)としての役割を担います。
ここで興味深いのは、この作品に登場した主要人物の中で、唯一帰る場所を持っているが帆高である点。
そして帆高は、家出しますが不良少年ではない設定。
物語では後年、改めて自分の意志で東京に戻りますが、その手段としての進学先も一流大学であることが描かれてます。
田舎の(映画では離島群の)優等生が、自分を取巻く社会の閉塞感から逃避し、東京にやってきた訳です。



その帆高が出会った少女・陽菜。
彼女は1年前に母親を亡くし、小学生の弟と二人暮らしを続けています。
帆高には18歳だと年齢を偽りますが実際は15歳。
児童相談所ケースワーカーのケース対象者となっています。
陽菜のキャラクターを映画で初見した時に、その容姿にとても違和感を覚えました。
首に巻いた宝飾品。
輝く小石がひとつ。それを首にピタッと帯紐で首に巻いています。
まるで首輪のように思いました。
この装飾品は、母親がブレスレットとして身に着けていたモノである事は映画冒頭から描かれています。
母親の形見を身に着けている。
ただそれだけの事ですが、首に窮屈そうに巻いた首輪のような姿に、自分は別な意味を感じました。



そしてもう一人、帆高に係る重要人物、須賀。
彼は、子供(ガキ)の帆高に対しての大人(常識人)として描かれますが、物語が進み彼も帆高と同じく家出して東京に来た人物である事が判ります。
帆高の将来像のひとつである訳です。
須賀は、家出して東京で暮らし始める中で嫁さんとなる女性と出会い大恋愛。
周囲(たぶんに嫁さん側親族)の大反対を押し切って結婚。
愛娘を授かり家族3人での生活を送り始めたが、数年前に嫁さんが事故死。
愛娘は義父母側に引き取られてしまった状況。
マンション半地下にある元スナック店舗内で暮らしながら、そこで小さな雑誌編集社を経営しています。
愛娘を自分の元に戻すべく、真っ当な社会人(?)として立ち振る舞う努力をしながら法的手続き(親権者変更申出?)を行い始めています。
この元スナック跡の雑誌編集社兼須賀の家は、入り口横に古びた三輪車が置いてあったりしています。物語の後半に、子供の成長を刻んだ「柱の傷」の描写があり、ココこそが須賀の守ろうとしていた家庭の跡であった事が判ります。
須賀は左手薬指に指輪をふたつしています。
愛する嫁さんとのペアリングだったのでしょう。
自身でふたつの指輪をはめる事で『いまでも一緒。だからこそ愛娘は自分の傍らに』と決意しているのだと受け取りました。

この映画には、愛する人を失ったふたりの人物が登場し、ふたりとも形見を身に着け、そして、ふたりとも『幸せだったその生活の場』を守って(死守)しています。

陽菜は、母親が築いてきた母子3人の暮らしを維持する為に義務教育を受けず年齢詐称してバイト暮らしを続けていました。年齢詐称がバイト先にばれクビになった後には、風俗系スカウトの話に乗り、契約しに事務所に行く事を決めました。
ここまでして守りたかったのは『母親との思い出』を維持したいがため。
陽菜はアパートに訪問した婦警に言い放ちました。
「誰にも迷惑かけてないのに、どうしてココで(弟とふたりで)暮らしてはいけないの!!」
やがて陽菜たち姉弟の元へ帆高が加わり、
「逃げよう!このまま三人で暮らそう!!」と云う展開になりクライマックスへ突入する訳です。
この逃避行の始まりは、まるで『火垂るの墓』での清太のそれと同じく、愚かだけど涙を誘います。


と、ここまで書いていて『これはアニメ映画の感想か?』と自問してしまいます。
実はこの作品は、ファンタジー要素部分とリアルを目指した物語展開部分のアンバランスさが特徴です。
どちらの立ち位置で観賞するかによって感想が大きく別れる映画です。
自分は直観的に『ファンタジー要素は有っても無くてもいい』と云う鑑賞をしています。
もう少し踏み込めば、ファンタジー要素をそのまま描いた通りに受け取るのではなく、なにかの比喩として観ている。という立場です。

母親との思い出の暮らしを守るために風俗系の仕事に足を踏み入れようとした陽菜は、帆高の勘違いの暴走によりアンダーグラウンドに踏み込む事を止めます。
その替わりのお金稼ぎとして、帆高のアイデアの『100%の晴れ女』を始める訳です。
晴れる事で人が笑顔になる事を知った陽菜は、初めて自分の存在意義を感じます。
しかし、天気を操る事には代償が伴う事が判り、陽菜は人柱として消滅してしまう運命だと判ります。
この、映画のキモである重要なファンタジー要素も、このまま受け取るのではなく比喩として観てみたい。
一度はお金の為に自身のカラダを売ろうとした陽菜。帆高に助けられ勧められ、別な仕事を始めました。しかし、この仕事も結局は自身の身を削る仕事だった。ただ、この仕事の方が多くの人たちの感謝と笑顔を得られ自分の存在意義を確かめられた。
だから、このまま自身のカラダが犠牲になっても、それは本望かも…

陽菜に仕事を勧めた結果がこんなカタチとなり、すべてを知った帆高がパトカーの中で慟哭するシーンは感極まります。
「なんだよ。俺が一番年上じゃないか」
あのセリフは刺さります。


主人公の帆高は、愚かです。そして優しく一途。まさに愚直の塊。
推定・池袋駅付近から代々木駅付近まで山手線の上を走るクライマックス導入部。
顎が上がり背中が反りながら必死に走る姿。
めちゃくちゃかっこ悪い走り。だからこそ本人の体力限界を超えている事が伝わります。
それでも陽菜の元へ行く。
その必死さが伝わります。

帆高の愚直さは、大人代表の須賀のココロも突き動かします。
須賀の設定自体が『可能性としての帆高の将来像のひとつ』ですから、逆に須賀から見れば帆高は『若かりし頃の自分』そのもの。
そのもう一人の若い自分が、過去に自分が選択しなかった道を必死に行こうとしている。
警察に言わせれば『自分の将来を犠牲にして』でも。

帆高の放つ絶叫
『どうして邪魔をするんだ!! もう一度あの人に会いたいんだ!!!』
あれこそ3発目の発砲ですわ。
30~40年前の『報われない悲恋ストーリー』だったら自暴自棄的に発砲していた3発目を、
新海誠監督は撃たせず、魂の叫びで表現してきました。
この3発目は多くの観客の心を撃ち抜いたと思います。
とりわけ劇中の須賀のココロを撃ち抜き、その直後の須賀の魂の叫び
『てめぇら 帆高に触るな!!』 にはココロが震えます。
須賀にとっては、俺に触るな!! でもあったのでしょう。
むかし、『愛する人の為』だと思い社会に迎合していった自分と、同じ目的でありながら自分の将来を犠牲にしてでも真逆な行動を起こしている帆高に自分を投影して。

直後の陽菜の弟の絶叫
『みんなお前(帆高)のせいじゃねぇか。ねぇちゃんを還せぇ!』
これもまた、ココロに刺さります。

帆高の元へ還ってきた陽菜。
彼女の首に巻かれた母親の形見が切れていました。
陽菜の人生が、帆高によって動き始めた事を象徴するシーンでした。

めちゃめちゃベタな展開ですが、全く違和感なく入ってきます。
元々使い古されたストーリープロットだから展開に違和感を感じないのが所以だと思います。逆に、そのように計算されているのだと思いました。
クライマックスでの帆高と須賀の対峙までが、古きストーリープロット。
ここから以降が、いまの時代に新海誠監督が投げかけてきた物語だったのだと思います。
これをどう受けとったか?
観客ひとりひとりが自分で受け取り消化すべき事だと思います。


物語はクライマックスの後に3年経過します。
帆高の保護観察処分期間です。
彼は何も変わらず、静かに処分期間を親元で過ごしてきました。
そして処分期間が終わり、社会通念的に問題ない方法、進学する事で親元を離れ東京へ向かいます。

須賀は、半地下の元スナック跡の事務所からビルの一室の事務所へと移し、スタッフを抱えた雑誌編集社へと事業を拡大させています。
愛娘との関係は3年前と変わらず自分の元にはいないようですが、良好な関係を築いているようです。
須賀は、過去を大事にしながら一歩を踏み出しています。

この3年間で東京は変わりました。
クライマックス以降、東京の雨は降りやむことなく降り続け、かつての干拓エリアはことごとく海に沈みました。
帆高は3年前の出来事で、自分の選択の結果もたらされた事象だと責任を感じますが、同時に劇中では「元々天気なんて狂ってる」「江戸時代は海だった場所。元に戻っただけ」というセリフも出てきます。
この描写の受け取り方は、ファンタジー要素に軸足を置いて鑑賞した比重によって変わってくると思います。
自分は、劇中のセリフ『観測史上初なんて、たかが数十年の観測。天気は何千年も前から続いている事』の通りの受け取り方をしています。

そして帆高は、陽菜に3年ぶりに再会します。
彼女は18歳になりました。
年齢詐称していた18歳に、陽菜はなりました。
3年前、母親との思い出の呪縛を自ら課して義務教育を受けず学校に行かず、生活維持の為にバイトに必死だった彼女。
再会した陽菜は制服姿でした。
陽菜は祈ってます。水没した東京に。
彼女にはもう能力はないのに。
心を込めて祈ってました。

陽菜の首には母親の形見はありません。
その代わり、指には3年前に帆高がプレゼントした指輪が輝いています。



もう、こっぱずかしほどベタベタな恋愛物語です。
使い古されたポンコツなストーリープロットです。
でも、今だからこそ新しい。
ここまで描き切ったからココロを揺さぶります。
まさに『好きな人の為に世界を犠牲にしたって構わない』は正義だと思いますわ。
書き忘れましたが、ラブホテルのシーンはこの映画最大の感動シーンです。
あのシーンは、見事としか言いようがありません。

作品の完成度とか、テーマ性とかではなく、純粋に好き嫌いの好みだけで云えば、
この作品は今まで何百本と観てきた映画の中で3本の指に入るくらい好きな映画です。
映画は好みなので感想は千差万別ですが、良くできた映画であることは間違いありません。
監督の前作と、ストーリー展開の重複さを指摘する事がある事も知ってますが、これこそが映像作家らしい所業の現れだと思ってます。

映像作家なら前作を満足してないでしょう。
あえて上書きしたんですね。
絵画を上書きして消すように。

もう数回、劇場に観に行こうと思っています。
作品が気になったら、ぜひ観に行ってください。
間違いなく損はない良作です。
↓の楽曲が流れると、毎回堪えていた涙腺が崩壊してしまいます。
皆さんも、ご注意を(^-^;




Posted at 2019/08/12 23:17:25 | コメント(0) | トラックバック(0) | これは! | 音楽/映画/テレビ
2018年08月18日 イイね!

鑑賞しました『ひるね姫』

鑑賞しました『ひるね姫』今年はいままで映画鑑賞がハズレばかり・・・
できるだけ期待も先入観も持たないように映画を観に行くことを心掛けていますが、実際は気になるタイトルはココロの中で期待してしまいます。
その結果、今年は期待していたタイトルがすべて残念な結果(個人的に)です。
今年の夏の休暇期間は、昔の名作をDVDライブラリィから選んでは観ている日々。
「新しい刺激が欲しいなぁぁぁあぁぁぁ~」
と思い、公開時には気になっていたけど観逃した作品に手を出してみました。
『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』

これは!
かなりイイ!!
高レベルの秀作でした。

昨年3月に劇場公開されたこの作品を観逃がした事を後悔しました、が
この作品は何度も見返す毎に味が出る作品なので、今回の出会い方のほうが良かったかな。
と云う訳で、DVD購入しヘビーローテーションしています(*^^)v

何が良いかというと、とにかく主人公が立ってます。
まずキャラデザインが安易に萌えキャラしていない。



配給がワーナーブラザーズなので当初より海外マーケットを視野に入れていたと思われ、海外にも受け入れやすいキャラデザインとなっています。
そこが逆に日本では個性として光ります。
そのヒロインキャラに声をあてているのが高畑充希。
彼女は間違いなく、圧倒的な実力を持った女優さんですね、目立たないけど若手ナンバーワンでしょう。
本物に近いかは判りませんが、岡山弁の演技が素晴らしい。
まさに方言女子の破壊力抜群です。
ちょっと(かなりか?)天然のはいった、田舎の普通のおバカ女子高生のリアリティが抜群で、愛おしく感じます。



彼女は父親との父子家庭。
父親は商売っ気のない田舎の車整備工場を経営し、お金にならない車弄りばかりしている。

この住居付き整備工場の描写がとてもリアリティあります。
部屋の片隅に新聞紙広げてピストンが置いてあったり、シリンダーブロックが階段横に置いてあったりと。実際の整備工場がどうなのかは判りませんが、妙なリアリティを感じさせてくれます。


ベタ褒めまで至らないのは欠点も明確にあります。

ひとつは、2020東京オリンピック3日前のお話で、オリンピックがストーリー展開の要素になっています。 でも劇中のテレビニースで『オリンピック迄あと3日』と流れる等のみで直接的にオリンピック直前を描く描写がほぼ皆無でした。
これは、原因も判るし『仕方がない事』と理解できます。
オリンピック商標はガチガチに管理されてますから、正式スポンサー以外は手が出ません。
大会直前の雰囲気描写を描きたくても描けなかったのでしょう。

もうひとつは改善できる事項だっったので残念。
この物語の『核』は
レベル5の自動運転車。
1~4レベルの技術とレベル5の技術の違い等をもう少し説明する場面が欲しかったなぁ。


ま、気になる点もありますが、それよりも
少しの切なさが漂いながらもホッコリできる良作です。
おススメ出来る作品です。

が、ひとつだけ注意してください。
物語構成が『映画慣れ』していないと戸惑うと思います。
ネタバレしない程度に説明すれば、現実と空想がオーバーラップしていく構成です。
よく舞台劇などで使われる演出方法です。
現実世界も空想世界もアニメーションで描いているので、緩やかなオーバーラップにも混乱を感じ、展開についていけなくなる可能性があります。
そんな時は
『ゆっくり絡み合いながらひとつに成っていく物語なんだ』と思い出して下さい。
数回観直すのも良いと思います。


エンディングに流れる高畑充希が唄う『デイ・ドリーム・ビリーバー』忌野清志郎・日本語訳版が、
これまたココロに浸み込みます。
観返すほどに味が出てくるスルメ映画です。

あ、確実にタコ食べたくなります( ´艸`)














Posted at 2018/08/18 20:19:48 | コメント(0) | トラックバック(0) | これは! | 音楽/映画/テレビ

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「週末はクルマ2台のオイル交換&フィルター交換。2台とも元気になりました。」
何シテル?   11/01 14:21
基本的に『インドア』で出不精です。 でもじっとしていられない性質なのでアウトドアします。 長時間の寝貯めが出来るので、 活動期と充電期がはっきりしています...

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