
キャブレターヒーター導入によって、霧化が促進されるのか、
パイロットスクリューを随分と絞る(締め込む)ことになったので、
その上の領域にも変化があるのではないかと考え、少しイタズラをしてみました。
■ジェットニードルのクリップ位置を一段上げてみました。バッテリー/電装品ケースを傾けて、キャブレター上ぶたを外し、ジェットニードルを取り出します。
(整備性向上のため元々一体構造のエアボックスとは切り離し済み)
従来は上から二段目にシムを入れてわずかに位置を上げた状態だったので、
今回は一番上としてみました(通常メーカー標準は中央値あたりに設定されている)。
スライドバルブが同じ開度ならば、空燃比はリーン方向になります。
【試運転の結果】
調子が悪いというほどではないが、吹け上がりに今ひとつ覇気がない、というか、
奥歯に物が挟まったような「お前、もっと言いたいことがあるんだろう?」という印象(笑)
排気音にもドゥカティらしい歯切れのよさや豪快さが感じられず、乗っていて面白みゼロ。
→ 即刻クリップ位置を二段目+シム1枚に戻す。
経路が非常に細く、流量も少ないパイロット系の場合と違って、
流量が多いメインノズル系の場合はキャブレター加熱の影響は少ないのかもしれない。
■スライドバルブ(バキュームピストン)の通気孔拡大
吸入負圧によって作動するスライドバルブの動きを速くしてツキを良くしたいので、
スライドバルブの通気孔をΦ2.5mm×2個から、Φ3.0mm×2個へと拡大してみました。
作業はボール盤を使用し、ダイヤフラムは取り外した状態で加工。
(3つある穴の中央のものは、ジェットニードルを通すためのもの)
どうやら通気孔拡大は負圧式キャブ改造の王道らしい。
【試運転】
始動時からツキが良くなったのがわかりました。
期待通り、走り出しから吹け上がりが軽いというか、スロットル操作に対するリニア感が違います。
開けやすく、速度の乗りもいい=速い!
その昔のMHRやF1の、デロルトPHMやPHFを思わせる印象で、自然な反応がとても心地よい。
特にスロットルOFFから開け直すあたりの反応がとても好ましい。
■点火プラグ電極ギャップ拡大
さらに欲が出て、今度は点火プラグ電極ギャップを1.0mmまで広げてみます。
それまでも0.9mmまで広げて好印象を得ています(標準は0.6mm程度)。
写真は点火プラグギャップゲージ。安物だが使えそう。
なぜかピカピカのめっき仕上げで、読みづらいことこの上ない(笑)
電極ギャップを広げると着火性は良くなるはずだが、放電のための要求電圧が高くなるため、始動性が悪化したり、低速右左折時など失火してストール(=立ちごけ)する恐れもあり懸念していたが、エンジンが温まっているせいか簡単に始動。
ブリッピングでの吹け上がり(=無負荷時)は軽快で、ツキも悪くない。
慎重に走り出したが、発進加速時のトルク感は想像以上で、弊害は感じられない。
■さらに1.1mmまで電極ギャップ拡大
特に問題ないと判断し、燃料補給し、いつものテストコース途中でプラグチェック。
走りの印象も焼けも良好なので、興味本位の冒険で今度は電極ギャップを1.1mmに再度拡大。
NGK出荷時に対して2倍近い(!)電極間距離。
普段の足のバモスホビオははじめから電極ギャップ1.1mmの点火プラグを使用しているが、
この場合プラグキャップと点火コイルが一体化した、電圧降下が少ないダイレクトイグニッション。
アース線を増強した程度のSS標準点火系で弊害なく着火できるとは考えにくいが、
再始動は容易。とりあえず近場の山間路へと足を延ばす。
しっかり油温が上がったころ、信号停止の際、たびたびストール発生。
これはいよいよ再拡大した電極ギャップが原因か?と思ったが、
とりあえず大雑把にパイロットスクリューを調整すると、予想に反してさらに絞り込んだところで安定。
電極ギャップを広げたことで、燃焼速度や火炎伝播が改善されたのか?
前回よりも長時間走らせているので、キャブレターの温度が上がって霧化が促進されるのだろうか?
もしくは加熱により燃料が気化して空燃比に影響があるのだろうか? いずれにせよ不思議だ。
ダメなら再度調整すればいいや、と、半信半疑で走り出すが、
意外にも調整前よりも発進時は軽快になっている印象。
急なスロットルOFFでアフターファイアの発生などもないので、そのまま国道バイパスへ入る。
流れに乗り、3・4速で負荷を掛けながら、6000rpmあたりまで引っ張ってみると至って快調。
吹け上がり方、トルクの出方がとても心地よい。
◆ ◆ ◆ ◆
例えると、以前親しんだ900MHRを思い起こすような音質・回転フィーリングで、
今回のSSの場合は回転が上がっても(4000rpm以上)振動が収束していかないのが大きな違い。
もっともMHRは前オーナー時代にフルオーバーホール、クランクやピストンの重量バランスを取ってあったので、こればかりはやむを得ないところだろう。
【再度パイロットスクリュー調整】
発進加速でチャレンジャー達の相手をするのも飽きてきたので(笑)
国道バイパスを離れ、ひとまず点火プラグを再チェックしてみると焼けは良好。
不思議なほど快調だが、適当に調整しただけのアイドリングの音が冴えない。
燃え方が不揃いなような排気音が気になる。
ひと気のない交差点の隅で、「本気」でパイロットスクリュー調整開始。
それぞれの気筒、少しずつ締めこんでいきアイドリングから開け始めでストールするポイントを探って、そこから1/4回転程度戻し、微調整で開け始めのツキがいい気筒間バランスを探る。
面白いことに段々と吸気音が大きくなり、排気音も悪くない。
ドゥカティ特有の弾けるような吹け上がりの力強さが増していて、ツキの自然さと共に、
ますます記憶の中のMHRを思い起こさせる音やトルク感に加え、
吹け上がりが非常に鋭い設定だった750F1にはなかった「1速ごとの速度の伸びの良さを楽しむ時間」に気付いて嬉しくなってしまう。
吸入空気量と燃料吐出量はいずれも大幅に増やしているので、燃焼エネルギーは大きくなっているはずで、
比例して吸気・排気(標準マフラーZDM-04)の音量も大きくなっていると考えられる。
【帰宅後、再度点火プラグをチェック】
ご覧のように焼けは二本とも良好。キャブレター設定に悩み、アイシングにも気付かず暗中模索状態だった一年前には想像だに出来なかった状態。
ちなみに番手はNGK7番。碍子部分も外側電極もきれいに焼けている。
自慢でなく、筆者はここ数年、SSやMを数台ずつ、および同形式のエンジンを複数入手しチェックしてみたが、こんな「フツーの国産車のような」焼け方は見たことがない。
ほとんどすべて、点火プラグは黒く湿ってくすぶり気味であった。
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加工したスライドバルブの通気孔はまだ拡大できそうな気がするが、
運転者の理解レベル都合もあり、とりあえず今回の成果に満足しているので、
続きは今後のお楽しみということにしておきたい。
それにしてもこのエンジン、入手時は各補器類等の不全で調子が出ていなかったこともあり、
「排気量由来のトルクを利して速度だけは乗るが、恐ろしくガサツで面白みのないエンジン」と、
MHR、750F1や友人のSS800ieと比べ情けない思いを抱いていたことがウソのような変貌ぶりで、
調整や工夫で一体どこまで改善できるのか、底なし天井知らずの伸び代の大きさには驚かされる。
現状、6000rpm以上で伸びが頭打ちのような印象があるが、スロットルの開け方の問題かもしれず、
そうでない場合、もしかするとスライドバルブ加工やメインジェット拡大、あるいはテーパー角違いのジェットニードルで改善できるのかもしれない。
筆者の場合、900ではほとんど使わない(まだ使えない)領域なので、それほど苦にはならないが、
せっかくのスムーズボア構造本来の「全開時の伸び」を発揮させてやりたい。
高価なレース用キャブレターを使わず(持っているが)、
日常的に使う領域を中心に、性能・フィーリングの向上の可能性を見極めてみたい。