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灸太郎くんのブログ一覧

2025年06月30日 イイね!

DUCATI SSの整備【64】フットペグ/ペダルの3次元的変更(1)問題提起

DUCATI SSの整備【64】フットペグ/ペダルの3次元的変更(1)問題提起
すでに現車は変更済みで、このところの記事にも写っている部分もありますが、
あらためてフットペグ(ステップ)/ペダル周辺の変更を記事にします。

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【91年~900/400SSの問題点】
現車、91~97年モデルの900/400SSのライディングポジションは、
それ以前のドゥカティ製スポーツバイクに比べれば、遥かに快適性を重視していて、
ハンドルは高く、燃料タンクは短く、厚くなったシートと低くなったフットペグは、
以前の人間性無視の(?)スパルタンさからは別次元といえます。

それでも筆者の体格では、嵩上げしてもシート~フットペグ間が近く、膝の曲がりがきついため、
ライディング用ウェアを着用していても30分以上走っているとひざ裏が圧迫されて血行が悪くなってきます。

それに加えて以前から不満なのが、跨った際のくるぶし内幅が広く、
体を動かす際の足の入力が車体の動きに影響を与え、安定性を悪くしているのではないかという疑念でした。
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上の写真でわかるように、筆者が特に問題視しているのは、
台座となるブラケットが、フレームパイプの外側に張り出して上から吊り下げられているためにくるぶしどころかふくらはぎまでが外に追いやられてしまうことです

くるぶしよりもふくらはぎの方が当然太いので、くるぶしを内側にピッタリ寄せようとするなら、
その上の部分は太さの違い分を吸収できるスペースが必要ですが、その部分にブラケットが出張っているのは具合がよくありません。
レーシングブーツを履くならなおさらです。
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【後継モデルとの比較】
その点、98年モデル以降の燃料噴射化されたSSie(下の写真参照)となってからは、
フレームパイプ外側にブラケットを装着することは変わりませんが、
タンク後端が大いに狭められたのに合わせ、ブラケットが前方から取り付けられて、
ふくらはぎやくるぶしをフットペグブラケットが邪魔をすることがないよう配慮されています。

座面を広くされたシートも貢献していますが、実際に乗り比べてみるとフィット感の違いは歴然です(但しフットペグは後ろすぎる気がしますが)。
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SSieはシートとハンドルグリップの高さバランスが変わり、上体の前傾度が強化されたこともあってか、それ以前のモデルに比べて人気薄だったのですが、試乗してみると、
下半身全体でバイクをしっかりホールドでき、路面のギャップなどで揺すられても体を支えるためにハンドルバーに寄り掛かる必要はないので、
実際の上半身の肉体的負担は(体格にもよりますが)それほど大きくないと思いました。

加えてフットペグからの入力が安定性を削ぐことが減り、垂れ角が大きくなったハンドルバーは両手からの余計な入力をしづらく、ハンドルをこじらずに乗るというバイク操縦の基本に、より忠実になっていると思います。

逆に言えば、97年モデルまでのSSは、スーパースポーツを名乗るにはライディングポジションが不適切で、
特に垂れ角の少ないハンドルバーと、今回指摘している運転者の足元内幅の広さは、運転者の不用意な入力から操縦性を悪化させる要因になっていると感じます

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【余談】
我が国のバイク業界では相も変わらずフットペグの前後・上下位置だけが語られていて、
左右への張り出しについては殆ど言及されることがありませんが、いかがなものでしょうか。

商品としてのいわゆる「バックステップキット」においては、近年はポジション調整機能としてブラケットを分割して複数のねじ穴から選んで組み合わせるようになっているものが増えていますが、
その場合、土台となる第一次ブラケットの外側に、ペグの付く第二次ブラケットを取り付ける構造で、オリジナルの状態よりも幅が広がるものが多いようです。

オリジナルのペグ内幅に関しては、当時のドゥカティはまだましな方でしょう。
日本車の場合、ちょうど運転者のくるぶし内側に位置するスイングアームとフットペグブラケット裏側が、握りこぶしが入るほどすき間があることが、いまだに珍しくありません。

恐らくは転倒時に、ブラケットが瞬間的にしなってスイングアームと接触することを避けるためと思いますが、スポーツバイクという商品特性上の優先順位として疑問に思います。

近年はずいぶんマシになったとは思うのですが、
バイクメーカーに限らず日本のバイク業界全体として、
バイクの構造を側面図からばかり判断していて、実際にまたがった状態=見取り図からの考察が薄いように思います。
側面から見ると一見スマートなスタイリングでも、いざ運転者目線でみると異様なまでに燃料タンク幅が広かった、というのは国産車ではよくある話です。

少し前までの自動車のスタイリングを見てもそうですが、立体としての見せ方が下手で、平面的な表現になっているように感じられるのは浮世絵や漫画と通ずるようだ、というのは言い過ぎでしょうか。
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【右側(ブレーキ側)の問題点】
つい話がそれてしまいました。右(ブレーキ)側に関しては、マスターシリンダーの取り付けブラケットが大きく張り出して、
左側より実質1センチ以上もくるぶしが外に出ることになり、かかと側に出っ張った形状がさらにフィット感を著しく下げ両足全体で車体を挟み込むフィット感を大きく損なっています。

SSieとは逆で、上半身の前傾は緩いものの、下半身全体で支えられないので、
路面のギャップなどで揺すられた時には人車バラバラになりそうな不安感があります。

幅の広いタンクにとにかく二―グリップを利かせるしかなく、下半身の柔軟さを失わせることにもなり、足元が左右に張り出している分、てこの腕が長いわけで、車体が影響を受けてしまうように思います。
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今回は問題提起に終始してしまいましたが、三次元的に解決すべく実践してみました。
次回以降に続きます。
Posted at 2025/07/01 14:53:19 | コメント(0) | トラックバック(0) | 整備日誌 | 日記
2025年06月26日 イイね!

DUCATI SSの整備【63】スイングアーム側リヤフェンダー加工

DUCATI SSの整備【63】スイングアーム側リヤフェンダー加工80年代後半、ラジアルタイヤが二輪にも導入され始めた頃から、
スイングアーム前方に配置されるリヤサスペンションを保護することと、泥はね低減、空気抵抗減少(整流)などの目的で、スイングアーム側にリヤタイヤをカバーするようなフェンダーを装備する車両が増えました。
この頃からリヤサスペンションのストロークが長くなってきて、車体側シート裏のフェンダー(マッドガード)とタイヤ頂点とのクリアランスが大きくなった影響も大きいように思います。

ドゥカティもご多分に漏れず、750F1の高性能版、ラグナセカあたりから装備するようになりました。
90年代のSSは樹脂一体成型の黒いリヤフェンダーが装着されています。
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サスペンションアーム側に取り付ける、いわゆるスーパーセブンのサイクルフェンダーみたいなもので、タイヤとのすき間が小さく出来、実用性は非常に高いのですが、
●厚手の樹脂(PP)ゆえ重い。ばね下重量増加。
●横面積が大きく、野暮ったい。特にマフラーを交換した場合見栄えが良くない。
●現車の場合、チェーンガードも兼ねるため左側に張り出した形状で、真後ろから見るとタイヤとのセンターが揃っていない。
といった不満もあります。

筆者の場合は、リヤブレーキエア抜きに際し邪魔になるのと、
整備の際にリヤフェンダーを取り外した際、露出したリヤホイールやスイングアームに「なんてカッコいい♡」と改めて気づいてしまったことが原因で、余程取り外したままにしようかとも思いました。
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【余談】
80年代後半、ラグナセカ以降のドゥカティの中で、スイングアーム側にリヤフェンダーを装着していなかった車両がありました。750PASOです。
思い起こすとマッシモ タンブリーニがデザインした車両には、スイングアーム側にフェンダーを装着した車両は思い当たりません。

SB4までのビモータ、ドゥカティ916、MVアグスタF4、カジバMITO、
空力を追求したGPマシン、ガリーナTGA1までもが、全てスイングアーム側にフェンダーは装着していないことに気づきました。
恐らくは彼なりの美意識に基づくものでしょうし、見た目のイメージほど実際の空力的効果もないのかもしれませんね。

スイングアームからフェンダーを取り外した時のカッコよさに気付いたキュウタロクン、なかなかのセンスの持ち主かもしれないよ(笑)
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とはいえ、リヤフェンダーを取り外してしまうとリヤショックユニットや直立側シリンダー・排気管目がけて砂や小石、水が跳ね上げられることは必至です。
折衷案として、近年のスーパースポーツ群のような必要最小限の形状に切り詰めることを思い立ちました。
元に戻したくなることもあり得るので、スペアの部品を確保した上で、チャレンジ開始!
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まずは車両に装着状態でイメージを練り、マーカーペンで切断ラインを引いてみます。
そして取り外し、左右対称になるようバランスを見ながらラインを修正。
再度取り付けて、装着時の強度や、チェーンケースを兼ねる部分をどう処理するかなど、具体的なところまで考えて、数日寝かします。 
後になって「しまった、切り過ぎた!」という事態を避けたいので。

イメージが固まり、腹を括ったら、先日加工したエアボックス同様に、切粉は掃除機で吸わせながら、屋内でのこぎり(ハンドソー)で切断。

不要部分を完全に切り離しながら切り進むと、ぐにゃぐにゃ変形して押さえにくく切りづらいので、端を少しずつ残し、全体が辛うじてつながった状態で角度を変えながら、外周接線方向から切り込んでいきます。
のこぎりの刃の幅もあり、きれいな曲線切りは難しいので、切断ラインの外側で多角形的に大まかに切り出して、飛び出している角を落としていくように整形していきます。

小さい半径で切りたい部分は、ホールソーでくり抜いて、そこへのこぎりで繋いでいくように切ります。
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大まかに切抜きが出来たら、付着した切り粉を取り除いてから現車合わせ。一番楽しいときです。
チェーンと反対の側(=ブレーキ側)は、少々大胆に取り付けポイントを一箇所減らすように切り込んでみましたが、結構厚手で曲面形状なので、強度・剛性は問題なさそうです。

正面から見てタイヤの頂点となる部分までは隠れるように残しています。
タイヤ後方の乱流防止のため、ガーニーフラップのようなものを追加することも考えておきます。

チェーンガードとなる部分は、垂直面を残した状態にしてあります。後日アルミアングル材や他車用部品でガードを作製し取り付けるための台座として使えると思います。
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【加工後イメージ】
部品単体での写真撮影と、加工前後の重量比較を忘れてしまいました。
後日追記することにします。
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作業者本人は欲目のバイアスもあると思いますが、違和感ないように思います。
切断面の厚さが見えてしまうとつまらないので、後日切り口断面を斜めに削いで仕上げる予定です。

影になってタイヤと混然となってしまい、見づらいですが、それこそが狙い!
一見存在しないように見えれば大成功です。

いうまでもありませんが、車体側のフェンダー(テールランプ下、ナンバープレートが付くところ)の切断や取り外しなどは、お勧めできませんね。
長く所有していると目先を変えたくなる気持ちはわかりますが、愛好家としての美意識を持ちたいものです。
Posted at 2025/06/30 16:56:29 | コメント(0) | トラックバック(0) | 整備日誌 | 日記
2025年06月26日 イイね!

DUCATI SSの整備【63】リヤブレーキ組み付け・エア抜き

DUCATI SSの整備【63】リヤブレーキ組み付け・エア抜き分解清掃を行ったリヤブレーキ一式を組み付けました。

「あれ? 以前と仕様が変わっているな?」と気づかれた方もあるかもしれませんね。
しばらく記事を書いていなかった間に、車両の現状に至る時系列と順不同になっているので、
その辺りは追って記事にしたいと思います。
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【組み付けの留意点】
●バンジョーボルトのクラッシュワッシャーは必ず新品を使うこと。
●アルミ製フィッティングの場合は必ずアルミ製クラッシュワッシャーを使うこと。
●キャリパーとブレーキローターのセンターが合っているか、必要に応じてシムで調整。
●プッシュロッド先端を確認。変形や錆があれば修正・研磨してグリスアップ。
 (筆者は多めに塗るので、はみ出し分のシールへの影響を考慮してブレーキ用グリスを使用)
●ペダルの高さを合わせた状態で、プッシュロッドの遊びがほんのわずかだけあること。
●ペダルの動きが渋い場合はピボットの整備が必要。
●ブレーキランプが制動初期に点灯できること。
●最後に各ボルトが正しく締まっていることを確認する。

それ以外は特に何ということはありません。焦点はエア抜きです。
とりあえずペダルストロークに手応えが出てきたあたりで一旦試運転してみましたが、ほとんど効かないので、すぐに帰還。まだまだエア混入している様子。

そこで再度エア抜きを行うにあたり、一度やってみたいと思っていた方式を試します。
キャリパーのブリーダーボルトからの排出ホースをマスターシリンダーのリザボアまで引っ張ってみました

名付けて「循環式エア抜きシステム」(笑)
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【システムの目的】
フロントブレーキの場合は、マスターとスレイブ(キャリパー)に高低差があるので、
以前にも記したように、筆者の場合はマスターシリンダー側でエアを抜きながらキャリパーにフルードを送り込むようにして、ブリーダーボルトからのフルード排出量を少なくしていますが、
リヤブレーキの場合は高低差が少なくエアが抜けにくい(気泡が上方に移動しにくい)ので、フルードを大量に消費してしまいがちです。

そこでキャリパーから排出したフルードをリザボアに戻せば、フルード使用量は最小限に抑えることができるだろうという目算です。
言い換えれば、フルード消費量を気にせず、納得いくまでエア抜き作業ができる、ということです。

実施に当たり、留意したポイントは2点。
●戻したフルードの気泡をマスターシリンダーが吸い込んでしまうと意味がない。
→フルードを戻してもこぼれない範囲で、リザボアの液面を高めにしておく必要がある。
●作業中にホースの出口がずれるとフルードがこぼれて大変なことになる。
→ホース末端に近い部分で確実にタイラップ留め。取り外す際も注意が必要。
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【作業実践】
液圧回路のエア抜きは、フルードの扱いなどあまり楽しいものでないのですが、今回は思い付きを試してみるということで、うまくいくのかどうか、少し楽しみです。

準備を整え作業開始。すんなりとは気泡が排出されず、あちこちに滞留しているようです。
筆者の場合はプラスチックハンマーを使ってキャリパー・ホース・マスターシリンダーなどあちこち色んな方向からまんべんなく叩いて振動を与え、液圧回路内部の角などに留まっている気泡を動きやすくして排出するようにしています。

マスターシリンダーからリザボアに気泡が一向に上がってこないので不審に思い、
何気なく連結ホースを指でつまんでみたところ、大量の気泡が次々と上がって来ました
どうやらマスターシリンダー ~ リザボア間のホース差し込み部の段差に気泡が引っ掛かっていたようです。

キャリパー側からは炭酸水のようにチビチビと小さな気泡が少しずつ上がって来ます。
フルード排出量の割りに出てくる気泡は小さく少量ずつで、効率の悪さにイライラさせられる場面ですが、今回はフルード消費量を気にしなくていいので(笑)時間の問題と割り切って作業を続けました。

最終的に循環ホース内のフルードは無駄になるのですが、キャリパーを通過して出てくる総量に比べれば大したことはありません。
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あちこち叩きながらペダルをポンピングしても気泡が出てこない状態がしばらく続いたので、
ひとまず作業は終了。
試運転に出る前に踏み応えを確認すると、整備前に比べてプログレッシブに踏み応えが高まるのが感じられます。

制動力自体はそれほど大きくなく、リヤブレーキだけで停車するのは歩く速度くらいでないと無理そうですが、
整備前のON/OFFしかないような効き方ではなく、制動力の加減ができるようになっています。

ひとまず作業は成功としてよいと思いますが、もう少し絶対制動力が大きくてもよい気がします。
あらためて湿度の低い、風の少ない日に再度エア抜きを試したいと思います。
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新発見のような書き方をしてしまいましたが、冷静に考えるとさほど特別なことでもないので
もうすでに実践されている方はおられるでしょうね。

いずれにせよ、リヤブレーキに限らず、液圧回路のエア抜きは一回だけではなかなか抜ききれないので、機会あるごとに作業をするのがお勧めです。

マスターシリンダーの構造や設定などにもよりますが、
無効ストロークがほぼ皆無、ペダルやレバーの滑らかでガタが無い、適正レバー比の作動の心地よさを経験すると、
フワフワ、ガタガタ、ギシギシといった手応え(足応え)のブレーキは絶対に許せなくなりますよ(笑)



Posted at 2025/06/27 21:05:59 | コメント(1) | トラックバック(0) | 整備日誌 | 日記
2025年06月25日 イイね!

DUCATI SSの整備【62】リヤブレーキシステムの分解整備

DUCATI SSの整備【62】リヤブレーキシステムの分解整備現車入手当初のリヤブレーキは殆ど用をなさない状態で、エア抜き作業を試みたところ、劣化が進んでいた純正ゴムホースの傷部分からフルードが噴き出すような惨状でした。

間に合わせで他の車両から作動するマスターシリンダー/キャリパー/配管/機械式ストップランプスイッチ仕様のペグ・ペダル・ブラケット一式を移植して、フルード交換のみでそのまま使用していました。

他の箇所が整備を経てレベルアップしていく中で後回しにされ、姿勢制御には使えるがON/OFFしかないような効き方で違和感が大きくなっていたので、やむを得ず、という感じでオーバーホールに着手することにしました。
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以前装着されていた、整備状態が良くないものと、別の放置されていたものの2セット同時に分解整備に着手します。
エア圧を掛けて、キャリパーピストンは抜き取りできました。
マスターシリンダーは部品の組み付け順を確認しながら分解します。長期放置されていたものはピストン抜き取りができませんでした。

●ピストン径11mmのマスターシリンダーリペアキット、32mm径のキャリパーリペアキットはドゥカティ、ブレンボ両日本法人とも取り扱いがなく、(安価設定なので)必要に応じて交換してください、ということになっています。

並行輸入品でシールキットが流通していますが、新品購入コストに比べるとかなり割高に思え、キャリパー本体がパッドと擦れ合う部分や、マスターシリンダー内壁のアタリなど、特に手入れをされていなかったものは本体の摩耗も起こっているので、洗浄・点検・再生に要する労力や時間を考えると新品Assyに交換がリーズナブルと思います。

今回の筆者の場合は、各部コンディション確認と、シールなどゴム製部品の劣化の状態を知りたかったので、可能ならシールは再利用するつもりで分解してみました。
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●キャリパー本体は左右分解せず、ピストンを抜き出してからシールを丁寧に取り出しました。

●キャリパー、マスターシリンダーとも、かなりの長期間フルード交換など手入れをされていなかったようで、キャリパー、マスターシリンダーとも内壁にフルードのスラッジと思われる付着物があり、動きの悪さの一因になっているようでした。
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素材や人体への影響の少ない洗剤「シンプルグリーン」原液に数時間漬けて、
歯ブラシやナイロン/豚毛ブラシを使ってブラッシングしながらすすぎ洗いを行い、大体きれいになりました。
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●マスターシリンダーのアルミ製ピストンお尻(内側に彫り込まれている)の部分は、ペダルに連結されたプッシュロッドに押される部分がひどく摩耗し、中央部ばかりが深く掘り込まれたようになっていました。これでは話になりません。
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プッシュロッドはペダル側で角度を変えながら押すので、押されるピストン側とともに接触部分は滑らかな動きと、角度によってもストローク量が一定なことを担保するために球面状にしてあるわけで、押せればいいというものではありません。
社外ステップキットやロッド長調整範囲の都合などで、適合しない尖った先端形状のプッシュロッドが使われていた経歴があるのかもしれません。

もっとも、カジバ傘下入り以前のドゥカティなど、新車でもどんな部品が組まれているか油断ならなかったことを思えば大したことではなく、
30年も経過した中古車など、改造好きが多いSSやモンスターの客層からしてどんな履歴があっても不思議はなく(といっても殆どは単にボルトオン部品交換レベルですが)、
まぁそんなものだと思えるほど、この車両には鍛えられてしまいました(笑)

頭がピストン内部に入る、可能な限り大きい球状の単目のリュータービットを使用して、ロッドが特定の部分とばかり接しないよう(はまり込んだり傾いたりしないよう)、数時間をかけて掘り込んで再成形してみました。
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最後はピカールを塗布した綿棒をリューターに咥えて、軽く磨いて仕上げ。
この部分はブレーキタッチに大きく影響する部分なので、手を掛ける価値はあります。
組み付けた後は、グリスを切らさないように、たまにはチェックしましょう。
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この部分に限りませんが、モーターサイクルという乗り物自体、各部がむき出しに近い構造ということは、こまめに各部のチェックを行なう必要があるということで、
特にドゥカティの場合は、オーナーと車両の関係を自然に親密にしていく副次効果もあると思います。

●マスターシリンダーピストンを抜き出す際、末端外周に少し傷がついてしまったので、
傷のフチの盛り上がりはダイヤモンドやすりで削って均し、外周全体の細かい擦り傷はボール盤に取り付けたフェルトバフと青砥を使い、キャリパーピストンとともに軽く磨いておきました。
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↑写真に写っていませんが、白い樹脂製スリーブと本体の間にOリングが入ります。
多少のピストン外周の細かな傷は、爪で触って引っ掛かるような突起部分がなければ、
極端な変形がなければ特に問題ないと思います。
マスターシリンダーピストンのレバーに近い側(写真向かって右)は、白い樹脂製スリーブの中を滑って平行にストロークさせるためのガイドの役割でしかないので、削り過ぎや突起の残りに注意した上で手仕上げでの再生も問題ないと思います。

●プッシュロッドのブーツが破れていると、ピストン外周に埃や水が侵入し、傷や腐食の原因になり得るので必要に応じて補修が必要です。
今回の場合、樹脂製スリーブとアルミ製ピストンの摺動部には、砂ぼこりによると思われる非常に細かい傷が入っていました。
ガタツキや動きの滑らかさは問題がないので、ピストン外周は#1500くらいの精密研磨用ペーパーで軽く磨きました。傷による突起修正を除き、アルマイト層がなくなるほど磨いてはいけません。

※社外品ステップ・ペダルキットの中にはブーツを取り外して、プッシュロッド同軸のリターンスプリングをセットするようになっているものがありますが、リターンスプリングは引きばねやタイヤチューブのゴム紐で代用し、ラバーブーツは取り外さないようにします。

●キャリパーピストンは、シールと摺動する部分と、パッドに接する端部(内側をくり抜かれた側のパッド裏に接する輪になった面)の荒れや変形がなければ基本的に使用可能と思います。
こちらもフルードのスラッジがこびりついていたので、表面処理のアルマイト層を傷めないように目の細かいスチールウールで無理のない範囲で削ぎ落し、最後はフェルトバフで軽く磨いておきました。

●マスターシリンダーのシールとOリングは、特に損耗や硬化が見られないようだったので、中性洗剤と水で洗って再利用しました。

●キャリパーシールは手持ちの34mm径ピストン用の新品シールと手触りや弾力、柔らかさを比べてみました。
以前オーバーホールしたフロント用4ポットの使用済みシールと同様で、
新品のサラサラとした摩擦抵抗の少なそうな触感に比べると、キュッキュッと引き締まったような触感になっていて、
弾力は少し強くなり、少し張りがあるような手応えになっていました。
追従性や復元性が悪くなったり、変形・減寸・ひび割れでフルードが漏れるような劣化・変質があるとは考えづらく、
フロントほどの繊細な操作やフィードバックを要求しないリヤブレーキということもあり、こちらも経過を観察する前提でシールを再利用することにしました。

●各シールは洗浄・点検後、ブレンボ指定に準じて一昼夜フルードに浸した上で拭き取って組み付け。
ピストンにはブレーキ用グリスを薄く塗布して傾かないよう慎重に挿入。
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●エアブリーダーボルトねじ部にはエアを吸わせないため、シリコングリスを塗布して取り付け。
穴から上に出る首の部分には穴とのすき間を塞ぐように全周盛り付けて塗布。
この部分からエアを吸いがちで、そうなると気泡排出が止まず、実際にエア抜きできているのかわからなくなってしまいます。

次回は車両への組み付けと、エア抜き作業を掲載します。

Posted at 2025/06/27 06:21:25 | コメント(1) | トラックバック(0) | 整備日誌 | 日記
2025年06月25日 イイね!

DUCATI SSの整備【61】エアボックス加工

DUCATI SSの整備【61】エアボックス加工読者の皆様にはそろそろ飽きが来ていることと思いますが(笑)
まだまだキャブレターいじりを続けるつもりなので、少しでも作業の手間を減らすべく、
バッテリーケース/電装品マウントとユニットになっているエアボックスを分離し、
エアボックス単体で脱着できるようにしてみました。

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まずはバッテリーケース側に電装品マウントを残すように、一体型ケースを切断します。
エアボックス内部に切りくずが入らないよう、プチプチでカバーしています。
生態系に影響を及ぼすとして環境問題化している微細なプラスチックくずを余計にまき散らさないよう、
屋内で手作業の切断を行い、掃除機で切りくずを吸引回収しました。

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電装品マウントを立てるための壁面はエアボックス側に取られてしまったので、作製した金属製ブラケットをバッテリーケース側に取り付けます。
ちょうどいい大きさ・形の、素材となる2x4建築用薄板金具が素材ボックス(捨てきれない残骸の集積ともいう)の中にあったので、目指す形に追加工しました(穴あけ、切断、曲げ加工)。
大穴や切り欠きは、恐らく以前XZ400の整備時、フューズボックスマウント用のブラケットとして途中まで加工していた名残だと思います。組んでしまえば見えないところなので(笑)
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作製したブラケットで電装品マウントを取り付けたところ。荷重が特定の箇所に集中しないように取付穴を設定。

ただ、あまり深く考えずに加工していたので見落としていたこともありました。
バッテリーケース側のマウントはラバーブッシュによるフローティング構造となっていて、電装品を取り付けると傾いてしまい、バッテリーケース側だけでは自立できません。
そのままでは走行中にグラグラ揺れて、点火系トラブルが発生しそうです。

実際にエアボックスも組み付けてみると、電装品がグラグラと自由に傾くおかげで組み付けがやり易いことが判明♪ 災い転じて福となす、というところでしょうか。

走行時の揺れ対策として、エアボックス壁面と、今回作製した電装品マウント自立用ブラケットをベルクロ(マジックテープ)で接合することで、お互い持ちつ持たれつという形になり、
即興ですがメインテナンス性も振動対策も結果オーライとなりました。
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試運転を重ねてみると、エンジンからの熱でベルクロを貼り付ける両面テープが溶けてしまうので、数か所に穴を開け、リベットでベルクロを固定してやろうと思います。

こんな具合に電装品や配線を脱着せず、エアボックスだけを取り外しできるようになり、
キャブレターいじりの準備・復元の時間を大幅に短縮することができました。

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切断加工着手前、念のため予備のエアボックスを探していたら、穴あけ加工されたエアボックスのふたを発見(元々の吸入口は黒いゴム製ファンネルのみ)、
特に期待もせず、取り付けてエンジン始動してみたところ、無負荷・有負荷ともに吹け上がりが大改善!

K&N製エアフィルターによって吸入空気量は増えていたはずなのですが、
フィルターは通過するもののエアボックスの吸入口面積が足らなかったようで、回転上昇に伴いエンジンが本当に欲するだけの空気量を供給できていなかったようです。

ギヤチェンジのタイミングを取りやすくするための、無負荷微小開度のレスポンスにもこだわっているのですが、かなりの改善を見ることができ、一連のシステム全体でものを考える必要性を痛感しました。

チョットした工夫による達成感と共に、今後のキャブレター周辺作業が、今までよりも楽しくなりそうです。
Posted at 2025/06/26 10:23:32 | コメント(0) | トラックバック(0) | 整備日誌 | 日記

プロフィール

「DUCATI SSの整備【73】SS800との乗り比べ印象記 http://cvw.jp/b/1333960/48560984/
何シテル?   08/07 18:30
灸太郎くん(キュウタロクン)です。 職業・思想・信条・立場など違えど 共通の話題で交流できるのは良いですね。 記述は残ることを意識しています。 ...
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