NSXを中傷する時の決まり文句の一つに「リアオーバーハングが長すぎる」があります.NSXのムック等を読んだ人にしかその理由を知るよしもありませんが,機能的な理由があります(他方,そのオーバーハングが短い車種について同様の思想があれば減らすことができたはずの持病(熱害)というのもあります).オーバーハングはある人にとっては単なる余剰荷重であり,ある人にとっては空力上の側面積です.ホイルベースや側面積を見てタイヤ位置や形で回らせたいのか安定させたいのか想像するのもなかなか面白いのです.付け足しの羽根が付いてるとまだ押さえ込みたかったのかなあとか想像して暇をつぶせます.「ゴルフバッグをつむためにケツが長い」という中傷もありますが,それが本当でボディが 15cm伸びたとしても,リアシートが必要で後席のためにでっかいドア開口も必要であるとか,ゴルフバッグのためにサス形式をストラットにしちゃった!なんてのと比べてどっちがスポーツカーとしてピュアだろうかって思わないんですかね.
言わずと知れた感じではありますが,何を基準に長いといっているのかを調査するために,ネットで側面図(写真)を拾って 1pixel=10mmでサイズを合わせて色々なクルマのオーバーハングを視覚的に測定してみることにしました.暇だったので!
("どこかで読んだ中傷"を真に受けて吹聴するヒトが多すぎるって言いたいだけなんですけど.それにしても受け売りの中傷記事多いよなあ.一度所有して乗ったってヒトでも同じコト書いてんだよなあw).
まずは側面の写真を収集です.探し方が悪いのか三面図はほとんど見付けられませんでした.orz
psdにない中では 935-78,RX-7(FD3S),TS020を候補に挙げましたが使えそうな絵が見付かりませんでした.ランボが選外なのは前面投影面積しか気にしてないと思っているからです(というか形から機能を考察して楽しめる市販車ってのは本当に少ないです).
で,photoshop上にスケールとするドットを置いてから,拡大縮小してホイルベースを公称値にあわせて測ってみると公称値より全長が短くなりすぎるクルマが多数でした.側面図を入手できた NSXと M3クーペはいきなり正確な数字になっているのでやり方に問題はないものと思います(M3クーペの誤差はライセンスプレートだと推測しています).なぜこんなに差がデカいのだろうと考えた所,誤差はカメラと被写体との距離のせいだろうと思いあたりました.カメラと被写体の距離を L=5000として見た目上の長さと実際の長さの関係を調べると x1.09641です(ホイルベースを 2500に仮定してオーバーハング部分のみで補正しようとするとx1.2195にまでなってしまいます.より正確であるかもしれないのですが強調するための作為的と云われそうなので採用しませんでした).オーバーハングの測定値に x1.09641を与えてみると 3車種が全長での誤差が 20mm以内になりましたが,6車種でまだ誤差が大きいです.残りの車種について L=4300で試算してみると 4車種が 20mm以内になりました.20mmは 2pixelですから,拡大縮小やボディ前縁後縁の丸みで簡単にでてしまう誤差ですので,妥協しました.残り 2車種はそれでも大きな誤差となったため,かなりの広角で撮られているかデフォルメされていると思われ,近似させる意義があるのか疑問なのであきらめました(今回の経験から,側面の写真をきっちり撮影したい場合は,4m以上の距離を確保するのが良いと思われます).
※ブループリントの画像から後輪軸を基準に合成した psdにさしかえました.
エクセルシートはやめました.
オーバーハングの長い・短いはリンクしたファイルを眺めてください.「そんな長くないよ」とは申しませんが NSXだけが特別ではないと思います.フォワードキャビン(キャノピー)ゆえの見た目から受ける印象ほどではないはずです.レーシングカーの空力が好きな自分的にリアは長くて側面積を稼いでいる形(しかしできれば薄く)が好きなので,それはまあいいんですが,フェラーリのフロントの異様な長さだけはスルーできません.気になります.前が軽いのに長いということは突風を受けた時に簡単に向きを変えてしかも戻しにくいってことです(横風の影響は受けやすいが能動的にヨーを起こしにくい).キャビン以降の側面積があるので(それも重心位置より前なので好ましいものではありません)大した問題ではないのかもしれませんが,あって得するものとは思えません.重量物が後ろにあり,後ろ側面積は小さくて,前の側面積がデカいので,スピンして慣性で移動している時には車体後方が進行方向になって刺さりやすい,つまりエンジンが先にあたるので安全…って思想でしょうか….単純に鼻先が薄い方がカッコいいので伸ばしてるだけかもしれませんが,「こういう形のクルマがほしいな」と楽描きをする人でもあんなにも長い鼻先を描きだすことはそうはないだろうと思います(普通にクーペのシルエットを描いてホイールの位置だけ後ろにずらすとピニンファリーナっぽくできるかも!?).コルベットみたいにロングノーズにしないと北米で売れないという意見があったのかもしれませんね.それに,競合車よりハナが長いというと メルセデスCLRみたいな例もあるし良い印象を持てないです.
※photoshop
と excelをお持ちでない方はリンク先のファイルを楽しむことができません.
サイドビュー撮影に関してカメラ位置は車体のほぼ中央の延長上にあると仮定しています.
psdは車軸中央からオーバーハング部分のみを補正した長さに拡大(伸張)しています.
ホイルベースの見た目上の長さに補正がなく,前縁・後縁の丸みが考慮されていないため
オーバーハングが強調されている絵になっている場合があります.
「補正」と表記していますが正確にしたわけではなく,
ちょっと近似させた改変であることをお断りしておきます.
この記事で書いてある内容が理解できない人は xlsの数字を鵜呑みにするのはやめた方がいいです.
余談)ハナが長いのってカモノハシ(duckbill)みたいだよなあ,そういうあだ名されてないのかな?とググってて発見したのですが,"duckbill spoiler"は日本でいうところの「湾岸スポイラー」「ダック(テール)スポイラー」でした.アヒルの尻尾だと思ってたのは間違いだったんですね!アーマーゲー!
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Posted at
2010/04/20 10:18:41