昨年11月末に公開された 映画
" Fury "
自分も観るのを楽しみにしていた作品でした 。
( 一応内容にも触れていますのでまだ未見で今後観る予定の有る場合は読むのを後日にしていただいたほうが良いかと思いますが )
公開前から撮影には本物のタイガーⅠ やシャーマン戦車が使われているとも話題になりこれらも使ってどう戦闘シーン等が描かれているのか気になる部分も多く 。
ただ 見応えが有る部分も多かった 作品では有ったものの観終わって劇場を出た後
" 感動出来たりした良い映画だったか " と問われると 、 後味が悪く感じた部分も有り 個人的にどう答えるかやや迷う作品でも有りました 。
少し意外で有ったのが
てっきり話題のタイガー戦車が ラスボス的に出てくるのか ・・・
と勝手に想像していたのですけれども そうでは無く 。
途中までですので 決着は映画本編にてご覧下さい 。
以前 BBCが制作した " シャーマン戦車 VS タイガー Ⅰ 戦車 " 的なタイトルの作品内で 米独 戦車兵の方々が当時の戦闘方法について 「 戦車自体の性能ではタイガー に敵わないので タイガー 1 台に対し 5 台で挑み 3 台が前で引きつけている間に 2 台が後方に回り込み 、 後部のエンジン を狙う 」 と語っていました 。
興味深かったのが 「 もし選ぶならどちらをとりますか 」 という質問に対し 米独 両氏 とも迷わず
「 タイガー だ ! 」
と答えていたところでしたね 。
数で勝ることで連合軍として勝てたとしても囮役で有れば撃破される確率は非常に高いわけで 、 やはり自分が乗る 1 台としては性能に優れているほうがありがたいということで ・・・
実際の撮影にはこうした 撮影の為の改造モデル も使用されたそうですが 。
後味が悪く感じたところも有ったのは メインキャラ で有る ブラッド ・ ピット 以下 " FURY " と名付けられた戦車に乗る古参兵達が 、 いづれも一癖も二癖 も有る荒くれ者達ばかりで 、 けして
" 自分達の信じる正義の為に " とか
" ドイツ からの解放目指し 平和を取り戻す ! " 等のお題目を掲げているのでもなく 、 どちらかと言えば私怨も交えて兵士として与えられた任務だから戦う という 印象からだと思います 。
古参兵 と対極的な形に描かれていたのが映画冒頭で 配属されてくる 新兵
ノーマン
戦いによってそれまでに多くの部下や仲間等を失い 或いは自分自身が煮え湯を呑まされてきたからでしょうが
「 敵は見つけたら必ず殺せ 、 でなければ先に殺されるのは仲間や自分だ ! 」
とばかりに 、 降伏し命乞い をする敵兵 に対し嫌がるノーマン に無理やり銃を持たせます 。
映画の内容はフィクション ですが 今朝まで一緒に食事をしていた戦友が夜にはもういないことも有りえる戦場という自分には想像もつかない非日常の中で
「 もしかしたらこういったことも有ったのかもしれない 」
と感じられるシーンを淡々と描き それをどう感じるかは映画を観た観客次第 という印象でした 。
このフューリー 観賞時 以前
" 地獄の黙示録 " を観た時に似た印象を受けたシーン が幾つか有りました ( 特に初公開時では無く後のシーン追加がされた特別完全版のほうです )
地獄の黙示録においても映画冒頭 軍上層部からの密命を受けた ウィラード 大尉が派遣されてきて
哨戒艇 で河をさかのぼりいつ来るともしれないゲリラ や現地民からの攻撃等により仲間を失っていったりも ・・・
哨戒艇の乗組員は古参兵から若年兵まで様々ですが気心は知れた仲 で ウィラード だけが外様な立場 。
地獄の黙示録 といえば激しい戦闘シーン が有りますが
突如眩い光の中に現れた米軍駐留ポイント で行われる 兵士達への慰問の為のプレイメイト 達による ショー
そして 地獄のような ジャングル を進む ウィラード の前に突然現れた フランス人入植者たちとの交流 や 台風に巻き込まれて不時着したヘリに乗っていた先のプレイメイト 達の後日談 ・・・
( この2 つのシーン は 特別版にしか収録されていません )
途中 連合軍が制圧したドイツ領内の町で出会った女性達との食事や交流
互いの言葉は通じないながら心を通わせられるところも ・・・
( これも吊り橋効果 なんでしょうか )
ただ そんな 非日常の中のささやかな日常も 戦争 という現実の前には一瞬で無くなってしまうことも有る無常感 。
こんな綺麗な方 だそうですが ・・・ ( 合掌 )
最後の戦闘後に米軍によって発見されたノーマン に 一人の米兵が
「 お前はヒーローだ ! 」
と声をかけるシーン が有りましたが その一言が非常に皮肉にも聞えたものでした 。
同時に最後の戦闘直後 戦車の下に隠れていた ノーマン と若いSS兵士が下を覗きこんで顔をあわせた際には 、 声をあげるのか見過ごすのか ・・・
とドキドキ し
そのまま報告せず立ち去っていった ところには ホッ とすることも 。
( 太平洋戦争時のジャングル でも 米軍と日本軍兵士 との間でこれに近いような出来事も有ったようですが )
映画作品としては 観る価値を十分に感じた 1 本で有りました 。