9 月以降 Lotus Cars のウェブサイトにて幾つか近況を伝える記事を見かけました 。
日本の自動車情報サイトでも 7月初め Evora 400 の量産開始を伝える記事が掲載され 、 それらが9 月初めにラインオフ したと伝える 記事がその後 Lotus Cars サイトにも掲載されています 。
フランクフルト モーターショー には出展しなかった Lotus Cars ですが 先日ご紹介したような形で フランクフルト空港には
Evora 400 が暫く展示されるようですけれども ・・・
9月中旬に英国ロンドン トラファルガー広場にて行われた文化交流イベント
" Malaysian Night " にて ( 観衆 53.000 人 )
Evora 400 が展示され
フランクフルトショー と一部被る日程となるフランス リヨン で開催されたモーターショー においても
Evora 400 、 Elise Cup 220 、 Exige S 等が展示され随時各国でのプロモーション が行われているようです 。
日本でも LCI により名古屋モーターショー 前に
" エヴォーラ 400 ジャパン プレミア " が予定されているようなので 、 予定通りで有れば 名古屋モーターショー への出展も大丈夫そうですね 。
9 月半ばには マハティール プロトン会長がヘセル を訪れ 工場を視察し Evora 400 をヘセルのテストコース にてドライブ 。 ゲールズ CEO からは今後の Lotus Cars の方向性 ・ 2015 年度の黒字化 に対する説明が有ったとされています 。
個人的に興味深かったのがこちらの若い新入社員教育に関する ( と 思われる ? ) 記事 。
17名が新しく採用され 以前から行われていることなのか不明ですが彼らの教育は
Poultec Training Limited という各種業界の社員教育や研修を専門に請け負う会社に外部委託されているようですね 。
こうした新入社員教育 に外部からの協力を得るということは従来からの車作りや品質に対する意識 等という
改革すべき " ロータス スタンダード " からの脱却に対し 将来的な プラス要素 になっていくのではないか ・・・ という期待を感じさせてくれます 。 これらのプログラム は OJT として塗装 ・ 車両組み立て 等製造全ての部門に関しても行われるらしく 。
ただ やや気になったのがこうした写真 。
おそらく 最終工程近いところの磨き作業と思われますが 、 彼ら新入社員 も行っているようですね ・・・
勿論仕上げ等に関しては最終的に責任者による確認も有るかと思いますが エントリーモデルのエリーゼ クラスならまだしも (
エリーゼオーナーさんから見ると ! かもしれませんが これ以下のモデル設定が無いので ? ) トップモデル で有るEvora 400 の製造に対しても 、 まだ入って間もない彼らが担当している作業も有るのかもしれない点には個人的に驚きを感じるところでした 。 デリバリー用車両では無く作業練習用の物なのかもしれませんがそれならば完成車では無く塗装されたボディカウルのみでも十分足りる筈ですし 、 写真の説明では 生産モデル のようでした 。
ロータス車の場合 本来の仕様通りに車が出来ていなかったり 現在の日本人的品質感覚からすると 「 バイト が作っても もう少しましでは ? 」 とも思えてしまうような仕上げの雑な部分も目についたりするのですけれども 、 Lotus Cars の場合長年赤字が続くことで労働環境があまり良いとも思えず もしかしたらベテランの熟練者ばかりが行っているのでは無く 、 従来からもこうした新入社員や 入れ替わりが激しく不慣れな新人が作業を担当している作業工程も有ったのではないか ?
とも思えてしまいます 。
こうした部分に 「 自分達は昔からこうしてきた 」 「 これくらいで十分だ 」 という従来からの社員の考え方 ・ やり方 も加わり
" ロータス スタンダード " として根づいてしまい 、 Lotus Cars 側もこれまでに自分達では品質の向上改善を図っているつもりで有っても外部から見た印象としては不十分な点がまだまだ多く " ロータス クオリティ と呼ばれてしまう原因 " の一つになってしまっているのかもしれません 。
ゲールズ氏が発表した リストラ案は 300人規模では行われていない ?
上記の記事には現在の Lotus Cars の社員数についても言及されていました 。
Lotus Cars は 2015 年末までに 225 人を募集していて これまでに 140 名以上を採用 、 新卒社員を含めて
2015 年末までに 1.222 人にすることを目標にしているとなっていました 。 これが Lotus Cars の生産台数等から考えた場合どれくらいの規模になるのかこの人数だけからでははっきりとしませんが 、 これまで見た記事や資料から考えるとおよそ以下のような流れになるのではないかと 思えます 。
・・・・・・・・・・・・・・・・・ 生産台数
1994~ 5 年頃
・・ 600 ~ 700 台 程度 S1 エリーゼ 発売時前後 、 これが近年では最小
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ レベルだと思われます ( Tipo誌 Elise&Lotus
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ Vol 3 S1 エリーゼ 開発スタッフ トニー ・ シュート 氏の
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ コメント から ) その後 S1 エリーゼ の大ヒットや初
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 期にアルミシャシー製造を担当していたハイドロ社
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ への当初のシャシー発注数が 750 台程だった
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ことから2 ~ 3 年で1500 台~ 2000台近くに
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ まではなっただろうと予想出来ます 。
2000 年
・・・・・・・ 2000~2500台程度 ? 数字としての生産台数は資料的に不明なが
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ら英国で1613 台、 日本で 277台の新車登録
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ が有ったことからの推計として 。
2003 年
・・・・・・・・・・・ 1731 台
・・・・・・ 2月よりLCI が日本国内正規販売を開始 。
2004 年
・・・・・・・・・・・ 3212 台
・・・・・・ 前年比 約 85% Up この年から米国への再輸
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 出を開始 ( 14 年振り ) により急激に台数増加
2005 年
・・・・・・・・・・・ 5053 台
・・・・・・ 前年比 約 57% Up この年の実績は Lotus Car
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ s として過去最大 ( Lotus Engineering アリスター ・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ フローランス氏の来日時コメント より )
2006 年
・・・・・・・・・・・ 3062 台
・・・・・・ この年で 2ZZ系エリーゼ ・ エキシージによる北米バ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ブルがほぼ終息 。
2007 年
・・・・・・・・・・・ 2630 台
2008 年
・・・・・・・・・・・ 2106 台
・・・・・・ 9 月リーマンショック
2009 年
・・・・・・・・・・・ 1618 台
・・・・・・ 10月 D ・ バハー CEO 就任
2010 年
・・・・・・・・・・・ 2613 台
2011 年
・・・・・・・・・・ 台数未発表の為不明ながら当時の状況的に2010年時よりは少ない可能性大
2012 年
・・・・・・・・・ 約 1000 台
・・・・・ 2013年 7月 エキシージS 国内発表時のマシュー ベッカー氏コメントより
2013 年
・・・・・・・・・ 約 1300 台
・・・・・ オートカージャパン誌の 「 ロータス大研究 」 には 2013
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 年世界販売台数として 1368 台 、以前拝見し
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ た MakotoExige さんのブログに有ります 英
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ The Telegraph の記事によると 同年の販売台
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 数は 1232 台 となっていますので 生産された
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 台数としてはこれぐらいで見ておいて大丈夫で
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ しょう 。 2013年は 2012 年比約 30 %UPという
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ Lotus Cars 側発表からも概ね一致しますので
2014 年
・・・・・・・・ 約 2000 台
・・・・・・ Lotus Cars 側発表 期間は 2014 ・ 4 → 2015 ・3 として
2015 年 見込み 約 3000 ~ 3500 台 ゲールズ CEO コメントより 2015 ・ 4 → 2016 ・ 3
これに対して社員数の増減としては
以前 Lotus Cars は 300 人規模の解雇 を少なくとも一度行っていまして
2001 年 3 月 の
GMによる " オペルロードスター クレーム 事件 " の為ですが この時の 300 人は全社員の 約 15 % とされ 、 これから逆算すると2001 年当時 解雇前は 近年よりもずっと多い
約 2000 人 の従業員 がいたことになります 。
この 2001 年時の場合 バハー時代に設立となる Lotus Cars China は当然まだ無く 北米輸出も中断中なので Lotus Cars USA もまだ無い可能性有り 。
既に アルミシャシー 製造はハイドロ社の デンマーク工場から 英国 ・ ウースター に有る現在の生産拠点 Lotus Lightweight Structures 社の場所に変わっていますが Group Lotus がここを買収したのは 2008 年で有り まだ 当時はハイドロ社の英国工場でしたので ほとんどの 従業員は ヘセル である可能性が高そうです 。
この解雇後は 1700 名程になった筈ですけれどもそれ以降は暫く人数を減らす要素が無く 、 2004 年以降は急激に生産台数を増やしていることも有り 、
2004年時も 1700 名程度はいそう あるいはもしかしたら 再度 2000 名前後まで増えた場合が有ったかもしれません 。
又 この時アメリカでの受注大幅増に対応する為に北米向けライン を増設し 2 ライン 生産になっています。
Lotus Cars の生産能力は これまでの生産に関する資料等から 1 ライン 当たりエリーゼ系モデルで年間 最大約 2500 台 程度と想像され大幅に生産台数が減少したバハー体制下でもこれらの生産設備やスペースは全部がそのまま ・・・ というわけでは無いとも思いますが 、 おそらくは遊休の状態で有って ( 廃棄するのも費用がかかりますので ) それ程大規模な設備投資をしなくても
条件が揃えば現在でも工場は 5000 ~4000 台近い生産は十分可能な状態ではないか というのが自分の印象です 。
ただし新体制以降これまではそうなっていません 。
その理由については以下のような形で
従業員数が減ってしまっていて従来からのLotus Cars の生産効率では特に 2013年以降の受注増に対し マンパワー的にかつてのような急激な増産は出来ず 、 結果 発売当初の納期が 1 年前後だった エキシージ S 又それに影響を受ける形で エリーゼ 系モデルも 10 ヶ月程かかる時期も有った 等納期がなかなか短縮化出来なかったことの一因にも繋がったのではないか と思えてきます 。
2008 年以降はおそらく Lotus Cars においても リーマンショック の影響が有り 又 その後の バハープラン の失敗も 有って生産台数が更に激減 。 他にも パリショー 5 モデル を掲げるバハー氏と考えが合わないことによるものか R ・ ベッカー や T ・ シュート 達 を含むライトウェイト路線のキーマン達や従業員の離脱が相次ぎ これらにより 2013 年初期には
約 1100 名までになっていたようです ( 2013 年 7月エキシージ S ジャパンプレミアの為来日時の M ・ ベッカー氏のコメントから )
新体制移行後 2013 年8月始めには Lotus Cars 公式サイトに 約 100 名の従業員募集記事が載りこれはほぼそのまま採用が決まったようで 、 2014 年 2 月 のオートカージャパン誌 " ロータス大研究 " には
1200 名と記載されています 。
ただ気になったのがこの後 11 月末に出た これまでも何度か行われている英国政府からの補助金支給の記事でした 。
当時の記事はこうなっています ( 自動車情報サイト レスポンス より )
この補助金は、英国政府が国内の産業を活性化し、雇用を創出する目的で設立した基金、RGFによって拠出されるもの。ロータスカーズは1044万ポンド ( 約17億円 )の補助金を利用して、研究開発を促進し、
313名の新規雇用を生み出す計画。
すでにロータスカーズは、親会社のマレーシアの複合企業、DRB-ハイコムから1億ポンド(約165億円)の出資を受け、商品開発の強化に乗り出している。
2013年7月には、130名以上を新規に雇用
( んっ ! ・・・ HPの募集内容記載より多いのでは ? ? )
今回の補助金は、この流れを加速させるもの。
英国政府のビジネスイノベーション・職業技能担当、ヴィンス・ケイブル大臣は、「ロータスは英国を象徴する自動車メーカー。
自動車産業は英国で最も成功してきた産業 のひとつ
( ・・・ しかし創業時の体制を維持する会社は一つも無く 皆 倒産か吸収あるいは外資傘下になっているんですが 、 唯一残ったモーガン社も創業一族だった社長 は近年会社を去る形になっています )
今回の補助金は英国の技術水準を高め、長期に渡る雇用を維持するために行う」 と述べている 。
となっています 。 これに従えば時期は明確にされていないものの その後 313 名を採用し 約 1500 名になる計画だったようでしたが 、 2012 → 2013 年の生産実績の伸びと更なる追加の採用により増加する人件費 面の割合から見て これ程の増員はまだ早過ぎるのでは ・・・ という印象でした 。
バハー時代の負の遺産の残りも当然有ると思いますがこういった増員もたたったのか
Group Lotus の赤字額は プロトン が 1995 年に買収後 2009 年までにつぎ込んだ 額の 約 340 億円 に対し 、 2012 年に 約 203 億円 ・ 2013 年に 約 282 億円 と たった 2 年でそれを大幅に超える金額になってしまっています 。
これらの状況から考えると 今までの Lotus Cars の生産方法と生産効率では 海外等ヘセル以外の任地の社員数も含んだ形かもしれませんが 工場自体に 5000 ~ 4000 台レベルの生産能力が仮に有ったとしても
社員数が 1100 ~ 1200 人 程度では年間 2000 台程度までしか作れず これだと 生産数が少な過ぎて 赤字になる 。
又 4000 台前後を作ろうとすると おそらく 1500 人程度以上必要になるが 、そうすると今度は人件費面の増加が負担となり この時の 1 台当たりの利益額では合わなくなって こちらの場合でも赤字になってしまう ・・・
仮に 1500 人以上でも年間 6000 ~ 7000 台程度が安定して生産販売出来れば黒字化出来そうだが 、 その規模は現在の生産体制 では不可能な為大規模な設備投資を行い更なる工場拡張が必要で費用的な面からも現実的とは言えない ( バハープラン では 8000 台程度まで工場規模を拡大する予定で解任前にも一部のエスプリ用に関する部分は始まっていました )
どの場合も赤字になってしまう ・・・ と言う自分でもこんなことが有るのか ? と思えるようなビジネスモデル ですが、 こう考えないとこれまでの Lotus Cars の赤字が解消出来ない状況を説明出来ないのでは と 思えてきます 。
2013 年 9 月末には プロトン の ジャミル 前会長が在任時に Group Lotus の再建状況として
・ 再建に対する 4 つの問題点の特定 ( 内容は当時のブログに掲載 )
・ それに対して 70 % まで対策は完了し 2 ~ 3 年後には黒字化出来る見通しで有り 、 その時の生産台数は 3500 台
と 発表していますが 3500 台を生産するには 1500 人程度が必要 しかし補助金も使って 1500 人を雇用した場合以前のように赤字になる状況は変わらないのではないか ・・・
さりとて これまでの生産方法で 2013 ・ 14 の 1100 ~ 1200 人規模のままでは 年間 多くても 2500 台程度が限度で、 前年実績が低い為伸び率こそ高いものの 生産台数の増加は利益を出せる程大きく無く3500 台にはまず届かない 。
今回 225 名増加で 1222 名になるとされている点や リストラについては最大300名強ともされていたことからすると実際のリストラ規模は約 200 名程だった可能性も有りそうです 。
3000 ~ 3500 台で今後の黒字化を目指すならば それに見合った部品調達等への必要な投資はプロトンから行われる筈でしょうから良いとして 、 後は 1200 名規模で 3000 ~ 3500 台が実際に可能になるようにまで工場の生産効率を上げられるのか もポイントになりそうですね 。 生産工程の見直しについてはバハー体制時に ポルシェ からヘッドハント された M ・ オック 氏が工場長として行い エヴォーラ の場合20 % UPした例が 紹介されてもいましたが エリーゼ ・ エキシージ S も含めまだまだ見直せる部分が有るのかもしれません 。
バハープランモデル 時程では有りませんが エキシージ S系 ・ エヴォーラ 400 と従来比車格的に価格がやや上にシフトしてきているので生産台数から見た全体の利益額は増加しているのでしょうけれども 、 約 1200 名で 3500 台 を販売したとして 一人当たりの台数は年間 約 3 台 。
ゲールズ CEO の予想通りに来年春 黒字化出来るのかは 6 月頃にははっきりすることでしょう 。 これまでも ロータス ・ プロトン歴代 トップ から Lotus Cars の黒字化についての見通しが何度か発表されてきましたが 、 その通りの結果にはなっていませんでした 。
今後より良い ロータス車を作ってもらう為にも 又 ロータスブランド存続の為にも 黒字化は絶対条件でしょうから 、 今回はそれが果たされることを是非期待したいものです 。