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GSX-R1100_kissのブログ一覧

2012年11月21日 イイね!

第4話 Night Run

第3話では、とんだハプニングに巻き込まれ、あえなく検挙されてしまいました。
検挙されたと言っても、警察では私が無関係というのは一目瞭然だったので、
暴走族とは一緒にされずに、別室に待機していました。
身元照会が終わった頃に、彼女が迎えに来てくれました。


第4話 Night Run

時刻は午前2時を少し回ったところ。
彼女は私の身元保証、所謂 「もらいさげ」 をして何故か上機嫌だった。

「お務め、ご苦労様です!」彼女は大笑いしている。
「もー。笑い事じゃないですよ。本当に」私も笑っていた。

私のバイクはまだ海浜公園の駐車場にあるということだったので、パトカーで公園まで送ってもらった。
駐車場は静まり返っていた。

「明日は・・・。もう今日ね。今日はどうする予定なの?」
「越前海岸を走って、舞鶴をから天橋立を経由して走れるところまで西に走ろうかと思ってるんだ」
「鳥取砂丘も寄れる?」
「ここから鳥取砂丘までだと400Km位あるなぁ。時間にして10時間はかかるよ」
「眠い?」
「いや。アドレナリンが大放出されたからね」私は笑いながら答えた。
「じゃあ、今から走りましょう。私も寝ないで付き合うから」
「そうだね。今から寝ても数時間しか寝れないしね。」

時刻は午前3時少し過ぎ。深夜の日本海を西に向かって走り始めた。
国道8号線という選択もあったが、できるだけ海沿いを走りたかったので、先ずは東尋坊に向けて
県道を走り始めた。
深夜ということもあり、ほとんど車もいない。いいペースで走れる。
一時間ほどで加賀に到着。そこでガソリン警告灯が点灯したのでリザーブへ切り替えた。

「ガソリンがないの?」
「うん。まぁ、点灯してから50km以上走るから大丈夫だよ」

とはいうものの、朝の4時に開いているガソリンスタンドは当時はセルフスタンドはなかったので
なかなか見つからない。
県道ではまず無理なので、国道8号線に出て、福井を目指した。
加賀から福井までは丁度50kmほど。
福井の8号線沿いなら、交通量も多いところなので24h開いているスタンドがあるだろうということを
あてにしていた。

福井市内に入り、スタンドを発見。警告灯がついてから既に50km以上走っている。コックをリザーブへの切り替えてからも距離はだいぶ走いた。
ZZRは24Lで大体6Lほどがリザーブとなっているので、燃費からは計算すれば80kmは走る。
しかし警告灯が点灯して、深夜の走行は精神的に悪い。
24Lタンクで23L入った。

ガソリンを満タンにして再び海に向かった。
国道416号から305号。越前海岸を走る。朝焼けに光る海を見ながら敦賀から27号線へ。
三方から小浜へ。すでに夜が明けている。
寝ないといったいた彼女はというと・・・。
ガソリンを入れてから熟睡。
舞鶴に入り朝食を採った。
175-178号とつなぎ、午前中に天橋立に到着。
先ず展望台に向かい「股のぞき」。
日本三景のひとつ。天橋立。私も訪れるのは初めてであった。

展望台か降りて、天橋立を散歩した。
松林の中を散歩したのだが、私は眠気と戦っていた。
彼女は寝ないと言っていながらほとんどの工程を夢の中で過ごし、意識がしっかりしたのは
朝食をとったあとの30分ほど前から。

「どうしてこんな地形になったの?」
「なんでだろうね」
「でも綺麗ね」

そんな話をしながら天橋立神社へ行きお参りをしてバイクに戻ってきた。

「あと150kmくらいで鳥取砂丘だね」
「鳥取砂丘につくのは何時くらい?」
「そうだねぇ、順調に流れてたら3時間くらいで着くと思う」
「海を見ながら走れる?」
「ああ。丹後半島をぐるっと回れるけど、そうすると砂丘に着く頃は夜になると思う。せっかくなら夕日を
砂丘で見たいよね」
「そうね。今日もいい天気だから綺麗な夕日が見られるわよね」
「いい夕日が見られるといいね」

1時過ぎに天橋立を出発。丹後半島はパスしたが、できるだけ海沿いを通り鳥取を目指した。
走り出してすぐに眠気が襲い、意識はあるものの、かなり危ない状態だった。

「眠いの?」
「うん?大丈夫よ」
「うそ。さっきからまっすぐ走ってないわよ」
「そんなことないよ」
「休んだほうがいい。休まなきゃダメ」
「大丈夫だよ」
「ダメ。ひと眠りしなきゃ」
「夕日に間に合わなくなっちゃうよ」
「明日も夕はあるわよ」

彼女は笑った。

海水浴場がいくつもある海岸線に出ていたので、寝るところはすぐ見つかった。
彼女は指差し、あそこで仮眠を取りましょ。
またホテルだ・・・。
午後三時。サービスタイムだそうで、23時までなら3000円。

ホテルに入ったらいつものように彼女が備え付けのお茶を入れてくれた。
飲み終わると、私はすぐに寝入ってしまった。

第5話へ続く

Posted at 2012/11/21 17:32:29 | コメント(2) | トラックバック(0) | 企画もの | その他
2012年11月16日 イイね!

第三話 深夜の金沢で!

第2話で宿泊した合掌造りのやど、我々の部屋は3階でした。
一番上の三角になってて合掌造りを実感できる部屋でした。
僕もこうした宿は初めて。もちろん彼女の。不思議な気持ちでした。


第三話 深夜の金沢で!

藁葺き屋根を眺めながら彼女は話を続けた。

「美瑛での出会いにはどんな意味があったのか考えてるの」
「人の出会いに意味なんてないよ。偶然の産物」

当時の私は物理学者を目指す大学院生。筋金入りの「理系」で論理的解釈こそ「正」
ロマンスの欠片もなし。彼女は私の言葉に笑っていた。

「私はね、必要な時に必要な人が現れると信じてるの。だから出会いは必然とおもう」
「なるほどね」

私は彼女の方を向いて横になった。

「それで、答えは出そうなの?」
「そうね、意味はわかったわ」

彼女はここで話を止めた。
30分も沈黙が続いたろうか。
既に私の意識は半分別世界に飛んでいたが、物音が。
彼女が何やらやっていたが、気にせず寝入ってしまった。

翌朝。私が目を覚ますと、彼女は私の布団で一緒に寝ていた。
(あれ?!なんで!・・・)
彼女はまだ寝ている。
(いつから?でもなんで?)
自問自答を繰り返していると 「おはよ」 彼女は笑いながら目を覚ました。

「今日はどうするの?」
「えっ。あっ、今日ね。」

私はドギマギしていた。
彼女は私の腕枕の中で目を覚まし、下を向くと彼女の目がすぐそこに。
東北を旅している時に所謂「ホテル」で一緒に寝ていたが、「抱いて」寝ていたわけではない。
ベッドの中でも「一定の距離」を保ち寝ていたのに・・・。

「それで?今日はどうするの?」
「か、金沢へ行こうかと」
「飛騨高山は?昨日通っただけだったでしょ。」
「そうだね。じゃあ高山を見てから金沢へ行こうか」
「うん。ありがと」

「朝食ですよ!」
囲炉裏の間から声がした。


白川郷から高山に戻り、高山を観光。
武家屋敷やら本陣を歩いてめぐり、昼食に飛騨牛を食べた。
何故か会話は少なかった。彼女は話していたが、私の返事が「そうね」とか「うん」だけ。

昼食を済ませてバイクに戻ると彼女は地図を広げた。
金沢までさほど距離がないとわかると、今度は石川県の観光スポットのページを見始めた。

「能登半島行きたい」
「輪島?」
「この、なぎさドライブウエイは?」
「いいよ。じゃあ、金沢に直接行かないで、富山に向かって七尾経由で能登半島を横断していこうか」

1時過ぎに高山を出発。
八月の日差しの中を富山方面へ向かった。
砺波、高岡を経て氷見を経由して七尾へ着いた時には既に4時。
七尾の道の駅で休憩をとり、国道159号線で能登半島を横断した。

なぎさドライブウエイについたのは太陽が日本海に沈もうとした時だった。
バイクを砂浜に入れ、オレンジ色に染まる波打ち際を走った。
浜辺にバイクを止めて、日が沈むのを眺めていた。
すっかり日も落ち、夜の漁へ出る漁船の漁火が見えるまで彼女は海を眺めていた。
私は彼女の横に黙って座っていた。

「さ、いこう。金沢までどれくらい?」
「3、40Kmってところかな。時間にして1時間かからないよ」
「お腹すいた」
「そうだね。金沢でなにか食べようか」

金沢についたのは21時少し前。まだ宿泊が決まっていない。
彼女もそのことはわかっていたようだが、心配していないようだ。
市内でファミレスに入り夕食を採った。
食事が終わりコーヒーを飲んでいると彼女が口を開いた。

「海に行こうよ」
「これから?泊まりは?」
「どうにかなるでしょ。」

地図を見ると海浜公園があったので、そこに向かった。
駐車場にバイクを止め、海岸線に出て、二人で歩いた。

「昨夜のこと覚えてる?」
「いや、あんまり・・・」
「えっ?出会いの意味を話したでしょ」
「ああ、そっちね。覚えてるよ」
「必要の時に必要な人が現れる。今の私にはあなたが必要だったのよ。普段ならバイクの後ろなんて
絶対乗らないし、初めてあった人と一緒に旅行なって考えられない」
「まぁ、普通はそうだよね」
私は肩をすくめた。
「それで?僕はなぜ必要だったの?」
「うーん。今は言えない。でもいつか話すから」
「そう。っで、どう?楽しい?」
「うん。すごく楽しいのは確か」


彼女は満面の笑みを見せてくれた。
凪の海に月が写り、幻想的な景色の中で彼女は僕と腕を組んで笑いながら歩いている。
必要の時に必要な人が現れる・・・。私にとって彼女はなぜ現れたのか?
私にとってその答えはどうでも良いことだった。
元々、美瑛で彼女の話を聞いて、彼女に傷心旅行ではなく、一生思い出に残る楽しい旅をしてもらいたいと思ってタンデムをする決意を固めたのだ。
目的は果たしている。私はそれで満足だった。

23時を過ぎ、睡魔が押し寄せてきたので、そろそろ宿泊をと思い、駐車場へ向かい歩き始めた。
駐車場の方が何やら騒がしい。
夏の海につきもの・・・暴走族が・・・。
ありゃ、めんどくさいのがわんさかいるよ。どうしよかなぁ。
駐車場にはバイク、車を合わせ4、50台が集結し、バイクが爆音を立てていた。
私のバイクはその真っ只中。
しかも少しだけいじってある。オーリンズのサスにDEVILのマフラーが入っている。
サスは良いとしてもDEVIL菅は彼らを刺激するには十分すぎるほど。
彼女はというと特に怖がる様子もなく、つかつかとバイクに向かっていく。
「ちょっと様子見ない?」
「なんで?あの子達だって旅行者に何かしようとは思わないでしょ」
彼女は笑っていた。
落ち着いているというか、世間知らずというか・・・。
彼女は私が制止するので仕方なく止まっていた。
しばらくすると、公園の入口に別働隊が現れた。
しきりに挑発している。
どうも対立している他県のグループらしい。
数はどんどん増え、彼らも駐車場に入ってきた。
これには彼女も危機感を感じたらしく、「バイクだけ移動したら?」というので
駐車場の入り口付近でにらみ合っている彼等の隙をみて、バイクを海側の隅の方へ移動し、二人で様子を
見ていた。
対立グループが駐車場に入り、ただならぬ雰囲気が漂い、すぐに事は始まった。
「よかったねバイク移動して」
だが、乱闘の輪はエスカレートし広がっていく。
「こっち来ちゃったよ!」
「喧嘩、強い?」
「え?まぁ、それなりに昔はやんちゃしてたよ」
「じゃ大丈夫ね」

「なに見てんだよ!みせもんじゃねんだよこら!」

「ほらきた」彼女は笑っている。
「ちょっと、ほらって、逃げて逃げて」
「あれ、守ってくれないの?」

一人が木刀でパニアケースを叩いた。
「僕ら旅行者だから。相手はあっちだよ」
「なんだこら!そんなの関係ねぇんだよ!」
タンクに向けて木刀をふり下ろそうとしたのでとっさに手が出てしまった。
「やんのかこら!」
しょうがないなぁ・・・。

バイクを壊されないようにだけ気をつけて「防衛」をしていると、駐車場の外はパトカーで埋め尽くされていた。
駐車場の出入り口は封鎖され、盾を持った警察官が押し寄せてくる。

暴走族たちは逃げるので精一杯になり右往左往していた。
2、3人が警官に追われ私のバイクの方に走ってくる。
「お前もにげろ!」「え?僕は関係ないよ」「いいからにげろ!」
腕を掴まれたところに警官が来た。
「おとなしくしろ!」「えっ、僕は旅行者です」

あえなく検挙。

午前2時を回ったところで彼女が「もらいさげに」金沢西警察に来てくれた。
大笑いしている。
「けがはない?」
「ありません。笑い事じゃないよ」
「あら、でもバイクも私も守れたじゃない」
彼女は笑っていた。
僕も何故か笑いがこみ上げた。

第4話に続く
Posted at 2012/11/16 12:07:55 | コメント(4) | トラックバック(0) | 企画もの | その他
2012年11月12日 イイね!

第2話 2000mオーバー

第二部の第1話では、ZZRで東京を出発して、上高地大正池の辺まで走りました。
8月の最終週でしたが、朝晩はかなり冷え込みました。
私は関東に住んでいるので、上高地はちょっと足を伸ばすという程度で行ける距離ですが、
彼女は沖縄出身で福岡在住でしたので、上高地や大正池はテレビでしか見たことがなかったそうでう。
イメージとしては避暑地。皇室だったそうです(笑)
私たちが宿泊したホテルも、当時大学院生だった私にとっては「かなり贅沢」な施設でした。


第2部 第二話 2000mオーバー

昨夜は夕飯は間に合わなかったので、松本の街中で済ませ、上高地に向かった。
松本から上高地へは国道158号線を安房峠に向かい進み、トンネルの中で上高地方面に
分岐する。
梓川を遡り、道の終着点が河童橋に程近いところになる。
ホテルについたのは7時近く。まだ明るかったので、ホテルからかっぱ橋まで散歩をした。
テレビでよく見る風景に彼女は満足のようだった。

部屋に帰りTVをつけると、折しも旅番組で飛騨高山の紹介をしていた。
本陣や合掌造り。「行きたいんでしょ?」「え?近いの」
西の出身の人にとって、地理感がないので信州と飛騨高山が日本アルプスを挟んで反対側ということは
知らなかったようだ。
「山を越えていけば飛騨に出れるよ。明日、行ってみる?」
「合掌作り見れる?」「夏だからイメージとは違うよ」私は笑いながら言った。
「明日、僕は走ってみたい道があるんだ」「どこ?」
「乗鞍スカイライン。日本で一番高いところを通っている道」「へー。飛騨高山には行けるの?」
「ほんのちょっと遠回りだけどね」「そうですか。じゃあ許可します」彼女は微笑んだ。

翌日、朝食を済ませ、8時にホテルを出発。少しだけ松本方向に戻り、乗鞍スカイラインへ入った。
現在の乗鞍スカイラインは一般車両は通行禁止になっているが、当時は時間規制はあったが、通行は可能であった。

快晴の乗鞍高原を快適に走っていたが、バイクに異変を感じていた。
標高1000mを越えたあたりで、明らかにパワーダウンを感じ、2000m近くなって、完全に吹け上がりが悪く、アクセルを開けても、リッターバイクのトルク感が全く感じない。
彼女を不安にさせたくないので、バイクの不調は口にしなかったが、流石に半月近くリッターバイクの
後ろに乗っていた彼女が「バイク、なんか変だよね」っと気がついてしまった。
頂上付近の駐車場に入り休憩をとり、私はバイクの異変の原因に気がついた。
標高である。頂上付近では2500m近い。そう、酸素濃度が低いのだ。
キャブのバイクで高地に来たのが初めてだったのでわからなかった。
現在はインジェクションが一般的になり、O2センサーがついているので、コンピュータが自動補正し、
混合比が変化するが、キャブはそうはいかない。酸素が薄くなってもガソリン噴射量は一定なので、ガソリン過多状態になり、吹けなくなっていた。
彼女に説明をすると、「バイクって繊細なのね」っと笑って終わってしまった。
乗鞍岳の頂上までは往復で2時間ほど。散歩を楽しみ、昼前に出発した。
山を越えて158号線に再び入り、高山で少し遅めの昼食をとり、白川郷へ向かった。
昨日ホテルのコンシェルジュにお願いして今日は白川郷の合掌作りの宿を予約しておいた。
宿に4時過ぎに到着。チェックインを済ませ、合掌作り見学に出かけた。
夕方6時に宿に戻り、囲炉裏を囲んで、地産の夕食に舌鼓を打った。
夜、並べて敷かれた布団に入り、彼女が笑いながら「今日はバイクが動かなくなるかと思ってハラハラしました」と話し始めた。
「この辺は日本の真ん中くらいでしょ。私達、日本を半分一緒に走ったんですね」
「そうだね。北海道からだからね。僕もこんなに走るのは初めてだよ」
「何キロ走ったの?」「美瑛を出てから、仙台までが大体1000kmくらいかなぁ。東京からここまでが500kmそこそこだから、1500kmだね」「あと何Kmくらいで福岡?」「そうだな、800から900ってところかな」
旅の終わりが近づく中、彼女が何を言いたかったのか、その時はわからなかった。

第3話に続く
Posted at 2012/11/12 16:06:12 | コメント(2) | トラックバック(0) | 企画もの | 日記
2012年05月29日 イイね!

第6話 本州激走宮城編

第6話

第5話では誤算で秋田竿灯祭りを見ることが出来ました。
ここまで読んできた方は、私の気持ちが彼女に傾いて行っている事は容易に想像つくと思います。彼女の気持ちがどうだったのか、それは秋田で親切にしていただいたお爺さんの会話同様、今でも判らない事の一つです。
今、言える事は、掛け替えのない時間を、一瞬でしたが共にできたということだけです。

第6話 仙台そして東京へ
早朝6時、まだ早いが目が覚めてしまった。彼女と二人で旅を初めて、すでに5日が過ぎたが、普通の時間に寝たのは昨晩が初めてである。12時前には就寝していた。
体力的にも限界に近いものがあった。それは彼女も同じであった。
ゆっくり寝たので肩も腰もかなり楽になっていた。

私は彼女を起こさぬようにそっとガイドブックを取り、地図を確認していた。
国道13号を湯沢へ抜け108号に入り、鳴子で47号と合流して、そのまま一気に石巻まで抜け、松島を経由して仙台に入ろう。そう決め、沿線の情報をガイドブックで下調べしていた。しかし、何か腑に落ちない。距離にして250Km程なので、普通に走れば午後のあまり遅くない時間に松島に着ける。そう思いもう一度地図を見返した。やっと腑に落ちない点が判明した。今日は1日ハードなワインディングである。奥羽山地を横断して日本海から太平洋に出るルートだった。

一人のライディングであれば山道を軽快に流して走れるのだが、タンデムとなると、そうはいかなかった。しかし、彼女も「乗り方」が上達しているのも確かであった。
美瑛の丘めぐりでタンデムを始めてからすでに10日、タンデムシートに毎日8時間以上乗っているのである。「そりゃ、上手にもなるでしょ」と独り言をつぶやいていると、すでに目覚めていた彼女が、傍らで私を見ていた。「何が上手になるの?」「何でもないですよ」私は笑いながら答え、「まだ早いから寝てていいですよ」と付け加えた。

「目が覚めてしまって。何時に出ますか?」「そうですね、9時か10時くらいで良いと思っています」「そう。じゃあまだ余裕あるわね。あなたの話を聞かせて下さい」「僕のですか?」「ええ」「僕の何を話せばいいですか」「そうねぇ、なんで一人旅をしていたの?」
「男が一人旅に出るのに理由なんていらないですよ。ただ、走りたかっただけです」私は少しだけ恰好をつけていた。「うそ」「一人、好きなの?」「・・・どちらかと言えば嫌いです」「ほら、やっぱり」彼女は笑いながら、肘枕で横を向いていた私の額を指で押した。私はそのまま後ろへ倒れ、布団に仰向けになっていた。「・・・私と同じ?」「違います。」
「ごめんなさいね。あなたを私の感情の整理に巻き込んでしまって」「そんなこと言わないでください。誘ったのは僕です」「あら、あなたが黙っているから、乗せて行って欲しいと言ったのは私でしょ。男らしく「乗っていきませんか」と言って欲しかったのに」「それは・・・すみません」
「うそよ。大阪の○○さん達も、神戸の××さんも、あなたのことをカラかっていたのよ。今の私みたいに」
彼女は笑っていたが、私は複雑な心境であった。
朝食をどこかで取ろうと9時前に少し早いが出発した。

まだ9時前だというのに非常に暑かった。北海道と違い蒸し暑い。走っていても汗が滲み出てくる。安全上上着は脱げない。ベンチレートを開け、上着のファスナーも半分開けて走っていた。
しかし、山間に入ると天気が一変した。大きな積雷雲が見え、稲光がしている。

鳴子に入り休憩を取った。昼を回っていたので昼食をとり、再び走り出す。
走り出すと直ぐにバケツをひっくり返したような雷雨になってしまった。
合羽を着る暇もなく、二人ともずぶ濡れになってしまった。荷物は防水のためすべて袋詰めをしてあるので濡れはしないが、どこかで着替えないといけない。
屋根のある所を走りながら探し、やっと廃業したドライブインがあり、そこの軒下に避難した。バイクを降り、軒下に入ると彼女は上機嫌であった。「気持ちよかったね」
彼女は服が濡れて事より、暑さが和らいだ事を喜んでいたのだ。
しかし、20分ほどで清涼タイムも終わりをつげ、真夏の暑さに戻った。
我々は廃屋の陰で着替え、再び走り出した。
標高が下がるにつれ徐々に爽やかさが失われ、真夏の高温多湿の世界に戻って行った。

時刻は17時を回ろうとしていた。日本三景の一つ、松島に到着。バイクを止め観光遊覧船に乗った。湾の中を1時間ほど遊覧し、18時過ぎに港に戻ってきた。
すでに私の体力はかなり失われ、遊覧船の中では、彼女は追いかけてくるカモメに手移しで餌をやれることに大はしゃぎしていたが、私はベンチに横になり殆ど寝ていた。鳴子を出て、雨にあたったあたりから体調が悪い。頭痛がひどく、寒気もする。
港に戻り、バイクに向かう間に、彼女が私の異変に気が付いた。
彼女は自分の荷物から薬を取り出していた。
「アレルギーは?」「特にないです」
「これを飲んで」彼女はペットボトルの水と薬を差し出した。「顔が赤いし、おそらく40度近く発熱してる。あなた、あまり水を飲まなかったでしょ。脱水も見られるし」
そう言い残すと彼女は何処かへ消えた。
私は渡された薬と、ペットボトルの水を一気に飲み干した
バイクの前に座り込んでいると、しばらくして彼女が走ってきた。
コンビニの袋に水を沢山買い込んでいる。バイクから荷物を外し、私に立つように促し「行くわよ」と声をかけ、荷物と私を抱えるように、バイクを止めた公園の駐車場を出て、タクシーに乗ると、「○○中央病院へ」と告げた。

病院では、すでに電話連絡を受けていたようで、受け入れ態勢が整っており、入り口でストレッチャーに寝かされ、ERに担ぎ込まれた。
彼女は、電話帳で病院を調べ、様態を伝え、タクシーを呼んでいたのだ。そして水をコンビニで買い、私に頭からかけ、タクシーで病院に向かったのだ。

数時間後、私が目を覚ますと、病院で点滴を受けていた。傍らには彼女が座っていた。
「まったく世話が焼ける人」彼女は笑いながら小声でそう告げると、看護師を呼びに行った。
看護師が熱と脈を測り、「奥さんの対処が良かったのですよ」と言い病室を後にした。
私は病院に彼女はなんと説明したのかと思いながら、彼女を見ていた。

「転院の手続きをしてきます。明日、新幹線で東京に帰りましょう。バイクは病院の駐車場に移動して預かってくれるそうです」なんと段取りがすべて整えられていた、
病院にはバイク好きの大型免許を持った看護師がいて、彼女がその方にお願いして、すでに私のバイクは病院に移動してあった。彼女は薬剤師として勤務していたが、保健師の資格も保有しており、的確な判断により私は重症にならずに済んでいたのだ。

その日は病院で一夜を過ごし、翌日、仙台から新幹線で東京へと戻った。

第1部 北海道・東北編 完





第2部 「西へ」 に続く

第2部 予告(公開未定)
10日に及ぶ北海道・東北の旅が終わり、最後は私が熱射病になり新幹線で帰宅という幕の閉じ方になりました。
東京に着くと彼女は飛行機で帰宅すると申し出ましたが、どうしても最後まで送り届けたいという私の意思を汲み、最後までバイクの旅に付き合ってくれました。
西日本編では東京を出る前にルートを検討し、先に宿を抑えてから出発したので、宿泊に苦労することはありませんでした(苦労はしてなかったとも言いますが(笑))
しかし、金沢で乱闘に巻き込まれたり、出雲の旅館で盗難にあったり・・・。エピソード盛りだくさんの旅でした。
頃合いを見て、紹介していきたいと思います。
続きが気になるなんて方はコメントください(笑)
ご要望に応じてUPさせていただきます(笑)
また、このツーリングには後日談もあります。かなりプライベートなことなので、UPするかはわかりませんが、これも気になる人はご連絡くだされば、メッセージにてお送りします。(場合によってはUPしますよ)
Posted at 2012/05/29 18:21:07 | コメント(4) | トラックバック(0) | 企画もの | その他
2012年05月28日 イイね!

第5話 秋田編

第5話
今回は予定も立てられないまま「事件」により急に出発が決まり、慌ただしく出発し、「ホテル」に宿泊。とりあえず秋田に向かいますが、特に目標や目的があったわけでなく、秋田に向いました。
前置きなしで本題に。

第5話 秋田も!?

深夜3時過ぎに彼の自宅を飛び出し、「ホテル」についたのは4時。すぐに寝入ってしまったが、「緊張」ですぐに目が覚めてしまった。8時、彼女も起きていたようだった。背を向けていた彼女がこちらを向き
「十和田湖、行こう」「了解」
身支度を整え出発した。

しかし、私には気がかりなことがあった。まず、地図がない。北海道以外走ると思っていなかったので北海道のツーリングマップルしか持っていなかったのだ。
次に宿泊。青森県内での宿泊はねぶた祭り開催のため、殆どの宿泊施設は満室であると思われる。かといって、昨夜のような「ホテル」は私の精神的な負担が大きすぎる。
同室でもベッドは別でないと・・・。

一つ目の問題はすぐに解決した。
地図がないので、道路標識だけを頼りに十和田湖に向かって走っていたのだが、書店を発見。ちょうど開店の準備をしている最中で、東北のガイドブックを買い求めた。
そこでやっとルートを確認し、距離と時間の目安を立てて、知らない土地で走る不安の一つを解消できた。

二つ目の問題もある程度目安を立てた。十和田湖を経由して青森県を出て、秋田市へ向かえば、秋田市は県庁所在地であるし、ビジネスホテルくらい有るだろうと目論んでいた。
やっと本日の大腿の行動が決まると、気持ちに余裕が出た。

十和田湖につくと、乙女の像を目指し、そこで写真を撮った。二人で旅を初めて、初めて2ショット写真を撮影した。時間は昼前、近くの店に入り、昼食を済ませた。
食事がすみ、二人で順番にトイレに立った。そこで、彼女、私、店に大きな誤解が生まれた。彼女が席に帰ると、私がトイレに立ち、私が席に戻ると支度をして、店に「ご馳走様でした」と声をかけると「ありがとうございました。またお願いします」と返事があり、私たちは店を出た。
少し早目の昼食で、店を出るとき丁度昼時になり、店は注文をする客でかなり混雑していた。席を空けるためにも急いで食事を済ませ、彼女も私に目配せをしていた。
バイクに戻り秋田に向かうべく走り始めた。

能代について日本海に出たところで、長めの休憩を取った。すでに時刻は夕方の4時を過ぎていた。そこで、昼食時の清算をと思い、海を見ていた彼女に声をかけた。
彼女も財布を取りにバイクに戻り、そこで昼に発生した誤解が顔を覗かせた。

彼女は自分が席を外しているときに私が支払いを済ませたと思い、私は彼女が支払いを済ませたと思い、店は挨拶を返したのとは別の店員が勘定を受け取ったと思い込んでしまっていた。
そう。無銭飲食をしてしまったのである。

すでに店から200Km近く離れてしまっている。
二人で顔を見合わせ吹き出してしまった。購入したガイドブックを見ると、昼食をとった店が掲載されていた。電話番号が書かれていたので、彼女が公衆電話から電話を入れた。
彼女が笑いながら戻ると「次に訪れた時に御代をくださいと言ってました」と私に言った。

目的の秋田に残り50Kmほど。時間は17時を回ったところ。ガイドブックを見て、適当に宿泊施設に電話を入れてみた。
4件、5件・・・。どこも満室。ガイドブックにはビジネスホテルも記載されていたので電話を入れてみるが満室であった。
彼女がガイドブックを読み上げ、私がダイヤルしていたのだが、彼女が何やら記事を読みながら私に「今日、このガイドブックに掲載されている宿泊施設に泊まるのは無理ね」「なんで?」「今日はお祭りです」「祭り?ねぶたは秋田じゃやってないよ」「竿灯祭り」・・・。

宿泊を考慮して秋田に向かったのに、東北3大祭りの秋田竿灯祭りをまったく視野に入れていなかったのだ。しかも、ねぶたと同時期に開催されていることなど知りもしなかった。
「お祭り、見に来たのでしょ。早く行きましょう。始まってしまいます」と満面の笑みで言った。彼女は、私がミスしたことを知りながら、状況を楽しんでくれていた。

秋田市内に入ると、祭りのため交通規制がされていた。会場近辺に駐車場は用意されているが、どこも満車である。バイクを降り、押しながら彼女と話していると、「東京からかい?」と声をかけてきた年配の方がいた。が、実は何を話していたのか理解できなかった。秋田弁で話されていたのだが、まったく私は理解できていなかった。しかし、彼女は「はい。お祭りを見学したいのですが、バイクを止めるとこがなくて」「○★★♯☆、×☆♯×☆。」
「ホント。おじいちゃんありがとう」この会話は今でも判明していない。

老人に案内されバイクを止めると、何やら首から下げるパスを貸してくれた。
そのパスを持って会場へ。竿灯祭りの見学はきちんと区画分けされた席が用意され、地元の方用にパスが用意されており、こられなくなったお孫さん用のパスを貸してくれたのだ。最前列。桟敷で見学することが出来た。
稲穂をイメージした竿灯を、おでこや腰に乗せ練り歩く。夜空に竿灯の淡いオレンジ色の光が煌々と輝く。美しくも怏々しい祭りであった。

パスを返し、今夜の宿泊をどうするか、彼女と相談すると、「昨日のようなホテルなら泊まれるでしょう」と簡単に言う。
「お風呂も、ベッドも広いですし、二人で割れば安いし、よい事ばかりでしょ」
確かに彼女の言うことも一利ある。しかし・・・。

仕方なく、その手のホテルを探しながら国道13号線を南下していると、山間に少し入ったところに「空」と光る「ホテル」が見え、彼女は指差した。
そこは所謂コンドミニアムタイプで、駐車場付の個別になった部屋が何棟かあるタイプであった。駐車場にバイクを止め、部屋に入ると、和室にダブルサイズの布団が敷いてあった。
「・・・」

荷物をバイクから外し、部屋に入り、彼女は風呂に湯を張りに風呂場に行き、戻ると昨日のように備え付けのお茶を私に入れてくれた。
お茶を飲みながら話していると風呂が沸き、彼女が風呂に入りに行った。
彼女は「一緒に入る」と笑いながら言う。完全に私をからかっていた。私も「そうね」と言い服を脱ぐふりをすると「バカ!」と言い、笑いながら風呂場に行った。

彼女が風呂に入っている間に、部屋着に着替え、布団に横になってガイドブックの地図を眺めて、明日以降どうするかを考えていた。
彼女が風呂から上がると、「お先に頂きました。どうぞ」と声をかけてく、私が風呂に入った。彼女も私が入浴中にガイドブックを読んでいたらしい。

風呂から上がると、「今日は何日?もう長い事時間を気にしてなかったから何日かわからなくなりました」大笑いしながら日にちを確認すると、彼女はガイドブックの東北3大祭りが紹介されているページを指差した。
「明日は仙台へ行きましょう」「なんで?」「東北3大祭り、すべて回れます」

明日は仙台七夕を見物するために仙台に向かうことになった。
キングサイズのベッドでは一緒に寝ていても「距離」を保てたが、布団はそうはいかなかった。
もういい!どうにでもなれ!私は彼女に背を向けていたが、仰向けに向きを変えた。
彼女はこちらを向いてすでに寝入っていた。流石に疲れていたらしい。

本州激走宮城編に続く
Posted at 2012/05/28 01:57:30 | コメント(1) | トラックバック(0) | 企画もの | その他

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