© 産経新聞 提供 修理中の農民車。交換部品は年々入手が困難になってきているという=南あわじ市神代地頭方のJAあわじ島農機自動車センター
昭和30年代から作られ始めた淡路島(兵庫県)の“農民車”。用途にあったカスタマイズを可能にしたのは、モータリゼーションの普及により、さまざまな車の部品を比較的簡単に集めることができたことが背景にある。だが、車の進化が農民車の未来に影を落とし始めている。
純正ムリ、別メーカーの部品で…雨天OK単純な構造を追求も電子制御の波が
農民車の価格は新車の軽自動車と同等かそれ以上と決して安くはない。過酷な農作業を想定しているため耐久性もあり、修理しながら30年以上現役で使用されている車も多い。だが、古い車の部品の入手が年々難しくなってきているという。
農民車の修理を手掛けるJAあわじ島農機自動車センター(南あわじ市神代地頭方)の技術者は「同じように見える農民車でも細かい部品が違ったり、取り付け位置が異なったりする。『この部品はどこのメーカーのを使っているのだろう』といったことから修理をスタートすることもよくある」と話す。
オーダーメードが基本の農民車では、部品も車によってさまざまでエンジンと車体、ハンドルが別々のメーカーということもよくある。「車体も本来のサイズから農民車用に短く加工されていたりするため、純正部品では当てはまらずその農民車の形状に合う別のメーカーの部品が使われていたりする」と一般車にはない農民車修理の難しさを説明する。
仮に部品が特定できたとしても、30年以上前の部品なので手に入らないこともある。代替できる部品があればいいが、場合によっては廃車ということもあるという。
さらに問題なのが近年の車のエンジンやサスペンションの複雑化だ。実用性が重視される農民車は雨天でも耐えられる比較的単純な仕組みのエンジン
や配線が好まれるが、電子制御のエンジンなどは繊細な防水対策や複雑な配線などが必要なため、パーツとして利用するのが難しいという。「将来的に農民車に使える部品がだいぶ限られてくる時代がくるかもしれない」と担当者は危機感を口にする。
農民車を製作する鉄工所なども年々減少しており、現在では数社ほどになっている。大手農機メーカーが作るには需要が局地的で、細かなオーダーまでは対応しきれない。将来的には製作サイドの理由から農民車が危機を迎えることも想定される。
一方で若手の技術者が素材や塗装にこだわった農民車を作るなど、新たな動きも出てきている。
「うちの新しい農民車はカッコエエで〜」
と“マイ農民車”を自慢する農家も少なくない。パーツや製作者の減少という問題を抱えているが
、淡路の農家のニーズがある限り、農民車は働き続けるだろう。むしろ、新たな部品を使うことで今までの概念を覆す、さらに便利で格好いい農民車が登場するかもしれない。
産経新聞より転載
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庄助『今日の出来事』 | 日記
Posted at
2016/08/24 19:57:19