この顧客は幾度も電話を掛けてくる。
「4月1日は、バトンルージュへ飛ぶからな。」
「3月31日午後には、試験飛行するからな。」
「大丈夫か❓作業は進んでるかぁ❓」
機体がボロいので、整備にには、神経を使う。
長年の顧客、とても贔屓にしてくれている。毎年 クリスマスには、カードと
蟹屋の食券もくれる。とても良い人なんだけど、悪い意味ではないが、口数が多い。ジョークが飛びまくる。
作業は、約束の時間には、すでに終了していた。
顧客は、試験飛行を行った。
オラが空港の周りをクルクルと、上がったり下がったり。
6気筒エンジンの快い響き。
調子、良いじゃん。
そう思った。
着陸して顧客も、ご機嫌だ。
翌日の4月1日朝。予定より少し遅れて顧客が来た。
「ありがとう! これから行くわぁ。」と支払いの一部をおいて行った。
「無事に、チャンと帰って来てね。」と思いながら、「Have safe flights。」って見送った。
バトンルージュまで、5時間ぐらいの飛行。一人で飛ぶにはチョッと長いかな。でも毎度のことなので慣れているだろう。オートパイロットもついてるし、奥さんも一緒に行くし。。。
「でもなぁ、今日は、4月バカやでなぁ。気を抜いたらアカンよぉ。」少しだけ気がかりになった。
お昼の時間、進行状況をチェックした。
「あれれ!!」「一っ飛びのはずやのに!!」「故障したん❓」「マジ!!」「墜落」「え~っ!」「嘘やろ!!」
0.2秒以内で無数の思考が飛びまくる。
腹が痛くなってきた。
緑色の飛行経路が途中から点線になっている。グラフを見ても高度が下がっている。せめてもの救いが、段階的に下がっているので、墜落じゃぁ無いと推測できる。でもなぁ、故障だったら、文句の電話が入るやろ❓ 未だ電話した来て無いし。
「えっ❓」「電話出来やん状態なの❓」「マジ!」「嘘やん、嘘やん。絶対嘘やわ。」
腹が痛いのを通りこした。チビリそう。
しばらく、頭が白くなった。
そして約一時間後、、、、
再び飛び出したのが確認出来た。
そして、バトンルージュに到着した様だ。
「良かったぁ。」と😿が出そうになった。
翌日の2日。顧客から電話が来た。
「飛行機、めっちゃ遅かったんやけど、、、、、。」と文句調で話始める。
「えっ。」ビビる。「引き込み脚、引っ込まんかったん❓」「引き込むん 忘れたん❓」 「でも、エンジン調子悪くて遅かったら飛行不能になるしなぁ、、、、。空気中に浮かんでられへんやん。」 無言で、遅くなる原因を考える。
すると、顧客が笑いながら、「向かい風むっちゃ強かったんやわぁ。」って云う。
「あのさ。 四月バカは、昨日やったんやでぇ。 Give me a break。」って ホッとしながら、応えた。
対地速度が悪かったので、途中で着陸して風がやむのを待ったって。それで、今回は、直で飛ばなかったって。
全く人騒がせなヤツやでぇ。
航空機整備士。
本当に好きでなければやってられない職種だわ。
チビリそうになった腹を押さえて、、、
「チャンと帰って来てね。」
そう思ったのさ。
🅼
Posted at 2021/04/03 08:34:16 | |
トラックバック(0) |
空 | 日記