
「FUBAR」 は、軍隊用語。
Fu*ked Up Beyond All Repair
手の施しようの無いほど壊れたものを表す時に使う。
これを教えてくれたのは、Jack Gilmore。
退役軍人だ。
今では、何が FUBAR だったのか忘れた。
ともあれ、約20年まえのこと。
当時働いていた会社に、委託点検作業をしに来ていた整備士、ジャック。
その中に乗ってる工具箱の引き出し一つに入っている工具で買えそうな おんぼろバンでやって来る。
とにかく工具が満載。
タイヤって本当に丈夫なのね、って思うぐらい。
繊細な機器を使ってビーチクラフト製バロンのヒーター点検を行う、ジャック。
禁煙とされる格納庫内で堂々と火を点ける強者だ。
「禁煙だぞ」 と注意しようものなら、工具をかたずけて帰ってしまう、ヘンコな奴。
当時、この界隈では、ジャックしかその点検を合法的に出来る人間が居なかった。
帰られては困るので、御法度の喫煙もジャックだけは、多めに見るしかない。
当時ですでにFAA整備士免許保持15年のワタシ。
然し、実務経験 ”ゼロ”。( ´∀` )
そんな、ワタシを受け入れた会社もそうだが、強者ジャックは、どう言う訳か初対面の時からワタシには優しい人だった。
何かと話しかけて来ては、煙草をふかすのだ。
彼の雰囲気は、例えるならワタシの親父みたいな人だった。
そう言われてもこれを読む99.99%の人は、そのイメージすら湧かないだろうね。
短髪で、ワタシより小柄で、痩せ気味で、ほほ骨が少し目立つ感じだ。
って言われても分からんよね。
Baseball capをいつも被ってた。
ある日、いつもの様にワタシの方に来た、ジャック。
手には、小さな工具。
「これやるわ。重宝するでぇ。俺なんか3っつもってるわ。」
それは、90度の ratchet head 1/4 bit driver とでも言うのかな。
「ホ、ホンマに~? エ~! いやいや~。エエのん?? (人''▽`)ありがとう☆ ワタシも中々重宝するヤツ持ってるよ。」
そう言って見せたのは、ジャックがくれたものよりも小さい 1/4 drive gear-less ratchet。
「おお! これもエエなぁ。」
ジャックはニコニコして言う。
そんな、会話をしたと思う。
”Tools” の見せあいをして ”俺のが大きい” ”いや小さい” と 笑いあう。
男のバカ話は、海の向こうもコッチも同じだ。
それから数カ月後、ワタシが持ってる小さいラチェットと同じ物を買う事が出来た。
何故なら、この工具は、何処でも売ってるっちゅうものじゃなかったので。
マイアミに行った時にしか買えなかったんだ。
ともあれそれを、ジャックにあげたよ。
抜けた歯の隙間から煙草の煙を吐き出しながら、ニコニコして受け取ってくれたな。
お返しがやっと出来て良かったって思ったよ。
8年ぐらい前に、
「もう仕事出来やんから倉庫にある物を処分する。取りに来い。」
と言って来た。
倉庫は、工具、道具、部品で一杯。
それらを車に乗せられるだけ載せて、$50で貰って来た。
今でも使ってるよ、その工具達。
ジャックに最期に会ったのは、5年ぐらい前。
視力が弱まり自分では運転できない、ジャック。
戦友に運転してもらって、 空港を訪れた時だ。
車内のジャックは、より瘦せこけちゃってた。
ワタシの事は、覚えていてくれたらしい。
「商売繁盛、頑張れよ!」
そう言ってくれたな。
ジャックを載せたミニバンは、ゆっくり去って行ったよ。

この二つの工具。
他の工具では入り込めない箇所や、変な角度の時は大活躍する。
Final diffidenceみたいな存在だ。
これらを見るたびに20年前のあの時の会話を思い出す。
R.I.P.
My friend, Jack.
本当は、”FUBAR” で違う話をアップしようと書き始めたけど、ジャックの事が伝えたくて変更したよ。
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Posted at 2017/03/23 15:41:47 | |
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