本編はシリーズものの8つ目です。
前回は
こちらからどうぞ。
思えば珍しく大型トラックが脇道に入る為に難儀していて延々待たされたり、何となく気乗りがしなかった。
結論としては、そういう日に無理してはいけないという教訓を、出費と共に学び直すことになった。
台風が予想より北にそれた為、雨も風も「強いっちゃ強いけど・・台風?」というレベルだった。
なので私はカーステレオのテストを兼ねて、海を見に行った。
ステレオはちゃんと機能したし、不具合もなさそう。
銚子の犬吠埼灯台に打ち付ける波は結構な高さで、車もあっという間に潮しぶきをまんべんなく被る。
平日だから(と思いたい)いつも寄るような定食屋も閉まっていて、ほどなく帰る事にした。
帰宅前に洗車と買い物を済ませたかったので、行きは一般道のみで行ったが、帰りは東関道を使った。
パジェロミニ君はクロカン寄りのSUVであり、しかもこの子はNAということもあり、高速道路がすこぶる苦手である。
一応、距離があるなら100kmまでは出ない事もない。出せる。しかしそれは緊急事態だ。
普段は80km以上は出したくない。
状況が許すなら70kmで走りたいくらいである。
そうなるとどうしても先行車に大型トラックを選ぶ方が楽である。
まかり間違っても3車線の追い越し車線なんか入ってはいけない。
後ろからいつAMGのゲレンデヴァーゲンや目を血走らせたプロボックスが飛んでくるか解らないから。
そんな訳で自宅近くのガソリンスタンドで、いつものように洗車。
下回りジェット噴射のオプションも付けて、機嫌よく拭き上げコーナーへ。
ん?
なんだこれ?
な ん だ よ こ れ !
フロントグラスについていたそれ。
汚れだと思っていた。
実際、最初拭いた時は小さくなったのだ。
しかし、擦っても擦ってもこの大きさから小さくならない。
ボールペンのボール位のサイズ。
1mmから2mmという所だろう。
胃からすっぱいものがこみ上げる気持ちを抑えつつ、修理工場へ直行。
店を閉めようとしていた工場長を捕まえて見てもらうと
「傷。間違いなく抉れてる」
精神的に膝から崩れ落ちた私。
なぜならフロントガラスの交換はべらぼうに時間と金がかかる。
1度、フロントグラスをUVカットにしたくてフィルムとかあれこれ調べてた時、ガラス交換なら対応できると言われた。
で、見積もってもらったら14万ほど。
保険使うと保険の値上がり分の方が高いという絶妙な価格設定。畜生!
工場長いわく、
「これで交換はありえないし、修理はまだ無理だと思うよ」
どういうことかと聞いたら、傷が小さすぎるのだという。
もう少し広いか深ければ、いわゆるガラスリペアという市販キットや、修理屋を呼んで修理させる。
キットで3千円くらい、修理屋なら1.5万。値段の差は成功率だという。
ところがこの傷は狭すぎるので、キットにしても修理屋にしても、修理に用いるレジンが浸透しないのだそうだ。
「・・レジンって言った?」
「レジンだよ」
「すぐ剥がれるんじゃないの?」
「剥がれるよ。真空引きとかして沁み込ませるけど、それは内部の空気を追い出そうってだけの話だしね。」
「えー」
「しかも」
「なに?」
「フロントグラスの法則ってのがあってね」
「はぁ」
「飛び石は必ず同じ所に当たるんだよ」
「やめてよそのピンポイント」
「だから傷入るごとに交換してると泣けるよ」
「修理はどこまでできるの?」
「ヒビ全体が100円玉に入るまで」
「‥それ以上の場合は」
「無理」
「で、今回は」
「うーん、修理屋は嫌がる。キットでも上手くいかないだろうけど」
「けど?」
「ワイパーは確実に痛む」
「最低だね」
「いっそ広げるか、まである」
「嫌だよ」
「でもカーブ1つ曲がるごとにガラスには捻る力がかかるし、傷入った所は力が集中するから」
「自動的に広がると?」
「1円玉サイズになったらまたおいでよ」
「広がってほしくないよ」
「まぁ、気になるならやってみたら?キットが上手くいく可能性も無くはない気がする」
そういうわけで、私は100円ショップに向かった。
簡単な話だ。
レジンは以前、カメラ用レンズの張り合わせ部修理に何度か使っていた。
そしてレジンは各種100円ショップの大型店なら揃っているのを知っていたのである。
レジン硬化用のUVライトも持っているが、ACが必要なタイプなので車では使えない。
家のコンセントからは遠すぎる。
100円ショップでとりあえずこんなものを購入。
カーブを曲がるごとにヒビが広がるかも・・なんて心配しながら走るのはまっぴらだったので、早速店の駐車場で施工開始。
しかし、とにかく難しい。
ガラス面の汚れを取り、レジンを注ぎ、レジンが乾いたら剃刀で余分な所を削ぎ落す。
それだけなのだけど、工場長が修理屋が嫌がるといった理由が分かった。
傷が浅すぎて、どれだけ慎重にカリカリやっても、外側に盛り上がった所と一緒にボロッと取れてしまうのである。
正直に言うと、レジン垂らして削って失敗を10回はやった。
こうして初日は心が折れ、大敗北に終わったのである。
翌朝。
ネットでリペアキットの使い方動画を見ると、レジンを固める前にフィルムを貼っている。
これでガラス面に対し表面張力を働かせず、出来るだけ薄く平らにレジンを固める意図のようだ。
早速家にある物で代役が務まらないか確認。
レジンを思う型に成型する時、型から外しやすくするためにシリコンスプレーをかけておくのは定番だ。
そのシリコンを表面に塗布してあるのが、いわゆるくっつかないアルミホイルだ。
外しやすいといえば、多くの接着剤が苦手とするのがポリプロピレンやポリエチレンである。
素材名で言うよりA4のクリアファイルという方がなじみがあるかもしれない。
また、一度固化したレジンや瞬間接着剤を溶かして剥がす溶剤に用いられるのは、アセトンと呼ばれる液体である。
アセトンはマニキュアも剥がすので、マニキュア剥がし、あるいは瞬間接着剤剥がしとして買うのが一番少量で買える。
最後に、エポキシ接着剤をパテとして使う時、盛り上がりを抑えるのは梱包テープが良い。
それもスコッチの313Dという梱包テープが一番エポキシから剥がしやすい。
剥がしやすいといえば、サランラップを用いる工程もあるか。
というわけで、テストとしてアルミテープを貼った板の上で、
・ただレジンを塗っただけ
・塗布後にクリアファイルの切れ端で押さえつけた
・塗布後にシリコン付きアルミホイルで押さえつけた
・塗布後にサランラップで押さえつけた
・塗布後にアルミホイルで押さえつけた
・塗布後に313Dで押さえつけた
そして天日に干す事15分。

(6)
ただレジンを塗っただけの物は、表面張力がいかんなく発揮され凸凹である。
塗布後にクリアファイルの切れ端で押さえつけたものが、一番表面が滑らかで薄い。
塗布後にシリコン付きアルミホイルで押さえつけたものは、そもそもレジンが乾燥してなかった。
塗布後にサランラップで押さえつけたものは、サランラップ自体が弱く、しわが寄っていた。
塗布後にアルミホイルで押さえつけたものは、剥がれなくなった。
塗布後に313Dで押さえつけたものは、313Dの糊の方が強く、アルミテープから剝がれてしまった。
ということで、成功確率的にはクリアファイルの切れ端か、サランラップという事になった。
また、以前レジン加工の際に買っていたフッ素水と、定番の極細コンパウンドも用意した。
フッ素水はアセトンのように溶かさないが、ほんの少し表面を滑らかにする効果がある。
今回は重装備で臨む。
で、こんな感じで施工してみた。
中央の長方形がクリアファイルの切れ端である。
予想外だったのは、レジンの硬化速度の速さである。
昨日は夕方に行ったのもあって、10分くらい待たないと固まらなかった。
しかし今朝は朝にもかかわらず、レジンの瓶の中に竹棒を差し込み、引き上げると半分以上固まってる。
当然大慌てで施工することになり。
またもや敗北C。
うん、見た目変わってないように見えるでしょう?
でも表面に凹みはないんです。空気を内包しちゃったわけですわ。
本来は竹の先を鋭利にして、少しずつレジンをガラス表面に置いていく予定だったのを、1滴たらしてすぐ押さえつけるという馬鹿みたいに作業を省略せざるを得なかったことによる失敗である。
しかしこの位置、運転席から見ると目と目の間なんだよね。
目立つこと目立つこと。
というわけで、夏の日差しに邪魔されてしまいました。
気が向くか、また欠けてしまったら秋の午後にでも再挑戦しようかな。
それとも大人しくリペアキット買うか。
でも結局レジンなんだよねぇ・・うーん。
それとパジェロミニ君。
誤解のないように言っておくけどね、故障ネタは本当に要らないからね?
私これ書いても1円にもならないどころか赤字が膨らむまであるからね?
DIY出来るけどその為に君を買ったんじゃないからね?
ソロキャンとかちょっと細い道の探訪とかやりたいのよ?
頼むよ、頼むから、ほんと。
フラグじゃなくて。
キマシタワーやめてよほんとに!