上官殿!
先月、青木ヶ原樹海における旧道の偵察活動を報告させていただいた事は、まだ記憶に新しい事と存じます!!
(上官殿)ああ・・・貴様が女子達と楽しそうに話していたというアレか・・・
はひぃぃぃぃぃ・・・!
そのアレでございます・・・
こ、こ、今回は前回とは違い、女子どころか人の気配すら少ない山間部での、酷道走破訓練となります!
はっ!!
上官殿、改めて訓練内容について説明をさせて頂きます!!!
ではまず初めに、一般的に「国道」というと、適切に整備されていて利便性の高い都市間道路というイメージではないかと思われます。
そもそも国道は、道路法に基づき国が政令で指定するもの。
まさに、国が管理している道路です。
しかし中には、「ここホントに国道!?」と疑いたくなるような道も存在しており、それらをマニアは『
酷道』と呼んでいます。
今回訪れたのは、マニアの間では(悪)名高い
「国道471号」。
石川県羽咋市と岐阜県高山市を結ぶ一般国道です。
その中でも、富山・岐阜県境付近の「
楢峠」前後区間は、全国屈指の酷道としてその名を轟かせており、
・ 道幅は、ほぼ全域で普通車1台分
・ 路面に落石あり
・ アスファルト舗装から雑草が生えている
・ 場所によっては、ダートと見分けがつかない
・ 豪雪地なので、雪の重みで道路標識が変形していたり、支柱から落ちてしまったものも多く見かける
・ 川沿いでかなりの高低差があっても、ノーガードレール
という、おおよそ国道のイメージとはかけ離れている道路状況。
さらにこの区間は、年間を通じて通行可能な期間が非常に短い「
開かずの国道」という異名を持っています。
冬季(11月中旬~6月初旬の7ヶ月間)は当然のごとく閉鎖され、冬季閉鎖が解除になった瞬間に、今度は災害(復旧工事)のため「通行止」という日が圧倒的に多く、1年の大半は人々の往来を許さない日が続く。
2008年には、1年を通じて開通期間はわずか1週間(!)という記録もあるくらいなので、通行可能との情報を仕入れたら、即訪問する勢いが必要です。
今回は珍しく、その酷道区間が7月下旬に通行止め解除となりましたので、高度な車両運転技能を得るべく訓練を行って参ります!!
という訳で、ここは岐阜県内の国道41号。
国道471号との重複区間だが、さすがは二ケタ国道。
何のストレスも感じない素晴らしい道が続く。
途中で国道41号から分岐。
すぐに道路工事規制案内(画像左側)なるものに出迎えられます。
かつては工事状態(=通行可否)をドライバーに伝える重要な役割があったのだろうが、現在は使用している形跡は無く、先に見える電光掲示板にその役割を譲っている。
国道41号との分岐から6km程、宮川町交差点を左折してセンターラインのない橋を渡る。
ここからは、国道360号との重複区間となります。
橋を越えてから先は、意外にも2車線の快走路が続いている。
が、しかし。
国道360号から分岐する交差点の案内標識が、普通ではない。
まず手前の標識は、国道471号の行き先の地名だけが、あからさまに消されている。
さらに奥の標識に至っては、地名もろとも国道471号の存在まで消されている。
しかも、こちらもあからさまに。
これは期待できそうだww
国道471号へは、信号のないR360河合町交差点を右折。
右折した先は二手に別れているが、右奥の道路が国道です。
既に怪しさを惜しげもなく発揮しているが、国道標識はしっかりあるので、ルートミスでは?と自身を疑う事はないだろう。
数件の民家の前を通り過ぎると、早くも集落が途切れてしまう。
左が国道で、右が市道。
基本この道幅が、この先ずっと続きます。
市道との分岐から直ぐの地点に案内標識があり、そこには富山県の地名表示が。
国道360号では消されていたものが、ここには残っている。
つまり、わざわざここに進入する物好きは少なく、消す必要もないという事なのだろう。
この時点では、離合(すれ違い)スペースこそ無いものの1.5車線幅はあるので、これからやって来る酷道区間に向けてリラックス走行。
が!
しかし!!
民家の前を通り、市道との分岐を抜けたわずか2分後。
富山への案内標識があったすぐ後。
全国屈指の酷道としてその名を轟かせる国道471号は、その名に恥じないプロローグを奏でてくれました!!!
※注 ここは国道です
路面状況が一気に激変。
舗装は荒くなり、コケと雑草が路面を緑に染めている。
なおここから先、ガードレールの姿を見ることはほとんどありません。
そんな怪しげな道路でも、国道は国道。
ご丁寧にR471/R472の国道標識がきっちり立てられている。
とは言え、道路は相変わらず裏山の民家に繋がる私道状態。

※注 ここは国道です
途中、飛騨市河合町二ツ屋集落を通過。
集落と言っても人家は見当たらず、石垣の存在がかつて生活が営まれていた事を示すのみとなっている。

※注 ここは国道です
二ツ屋集落から先もこれまでと同じような道路状況が続く。
一見ダートと見間違うような、昔からの古いアスファルトも残っています。

※注 ここは国道です
楢峠が近づくと、それまでの比較的穏やかな勾配はなりを潜め、連続する急勾配ヘアピンカーブで一気に標高を上げる。
ちなみに連続ヘアピンの入口(南側)の標高は約1,030mで、出口(北側)のそれは約1,210m。
直線距離は600m程しかないが、高低差は200m以上あるので、ヘアピンでなければとんでもない急勾配になっているだろう。
連続ヘアピン地帯を抜けて少し走ると、ついに「
楢峠」に到達。
峠と言っても特に眺望に優れているわけでもなく、県境でもないので傍らにお地蔵さんがあるだけの、少し寂しげな峠となっています。
楢峠というビッグネーム(酷道業界のみで通用)を想像して訪れると、拍子抜けしてしまうかもしれません。

※注 ここは国道です
峠から先は当然の事ながら下り坂。
それ以外は南側と同じような状況だが、相変わらずガードレールの整備率は低く、ハンドル操作を誤るわけには行かない緊張した状況が続く。
峠から500m程先のヘアピンカーブで、富山県道34号と交差します。
この県道34号もセットで語られる「険道」として有名。(もちろん道路マニアの間でのみ通用)
ですが、こちらは完全に通行止め。
そもそもこの国道区間すら通行量がほとんど無いので、復旧させる気も無いのでないかと思う。
ちなみにここまで、1台も対向車に出会っていません。
県道との交差点を越えてからもガードレールなし・落石多数・ヘアピン連続と酷な状態が続く。
雪の重みで、歪んでしまっている国道標識が多い。
奥の国道標識は、国道472号の標識が落ち、国道471号のみとなっている。
手前に至ってはポールのみで、国道標識は2つとも脱落してしまったようだ。
国道360号 河合町交差点から約12.5km、楢峠から約5.5kmで、岐阜・富山県境に到着。
国道にも関わらず富山県富山市の県境標識はなく、半ば見捨てられた感が漂う。
しかし道路脇には”除草中”と看板が立てられており、ほとんど交通量の無い酷道であっても維持・管理をしている事が伺える。
腐っても国道であるという事か。
県境を振り返って岐阜県側を見てみると、こちらにはちゃんと県境標識が立てられている。
この県境での両県の対応の違いから想像できる事は、富山県側の方がよりハードなのでは?というもの。
これは期待できそうだ。
県境を越えて富山県富山市へ。
約500m走ると長谷第4発電所を通過し、直後の橋の北側には冬季閉鎖用のゲートがあるが、雪の重みで柱が曲がっています。
このゲートを越えると、酷さがさらに上がる。
通常は峠を下りゲートを越えると酷さは下がるものなのだが、楢峠にそれは通用しないようだ。
断崖絶壁を走るくせにガードレールなんて上品なものはなく、

※注 ここは国道です
オマケに路面には、落石がかなり転がっています。
シャコタン&35偏平タイヤ装着、サーキットも走る乙三三式車両にとっては、非常に気を使う路面状態。
常に落石&転落の緊張から、景色に見とれてる余裕はありません。

※注 ここは国道です
断崖絶壁の雰囲気が薄れても、酷道は続きます。
道幅は相変わらず狭く、路面そのものも悪いうえに落石等も少なくない。
この状態は、大谷を渡る頃にようやく落ち着きを取り戻し始めます。
道幅は1車線が基本とまだまだ狭いものの、断崖絶壁感や落ちたら死ぬ感は相当和らぎます。
このストレートの先にある、久しぶりの人工的な施設と電柱の姿を拝む事が出来れば、遂に楢峠区間の終わりが近づきます。
先に家屋も見え始め、ここに来てようやく人の生活の感じられる場所に戻ってきたという安堵感を覚えます。
県境から約6.5km、杉平の冬季閉鎖用ゲートを通過。
ここが楢峠酷道区間の端点。
国道360号 河合町交差点から約19.0kmほどの距離ですが、1時間20分くらいの時間を要しました。
シャコタン&35偏平タイヤ装着、サーキットも走るワタクシ二等兵の乙三三式車両では、凸凹路面や落石を避けるため、ほとんどの区間を徐行運転。
普通の車両で、かつ同じ道路状況であれば、もう少し早く走破出来ると思いますが・・・
交通量も少なく、今回の訓練では1時間20分の道中、対向車に出会ったのは1台のみ。
逆に対向車が無いのが当たり前のような感覚になってしまうので、決して気を緩めず慎重な走行が必要です。
もし反対の富山県側から来るのであれば、今回は紹介してませんが、上の画像の杉平冬季閉鎖用ゲートまでの区間もソコソコ狭いので、そこまでで「酷だな~」と感じたら、引き返したほうが無難です。
集落のない区間に限ればかなりハードな酷道で、「
開かずの国道」の名は伊達ではないと思わせるのに充分な酷さを備えてました!
以上で報告を終わります!
(おわり)