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2014年09月10日

94北往記17。北海道との別れ


    18・第5日/トワイライト・ムーンライト

▽大詰め北海道行

※壮大・駒ヶ岳

 内浦湾を迂回するに従って、西陽が徐々に展望窓を照り付けた。
 さいわいコーティングガラスと空調が暑さを和らげてはいるが、その日射は強烈だ。

 八雲を過ぎた辺りであろうか、有珠山にも負けないボリュームで迫ってくる山があった。
 なだらかな稜線を持つ道南の名峰駒ヶ岳である。
 強い西陽の中鮮やかな緑を映し出す。有珠山同様頂きに靄を被っているが、こちらは微かな日除け程度である。

「右手に活火山・駒ヶ岳が見えております。標高1131mの活火山、駒ヶ岳で御座います。
 この山は全山溶岩に覆われております。
 大沼公園の北側に聳えます駒ヶ岳で御座います。
 列車は暫く駒ヶ岳の麓を進んで参ります。
 進む方向に連れまして、色々と変わった姿を見せてくれます。どうぞご覧下さい」
 との車掌の案内通り、最初は緑色に映えていた山肌が茶灰色に変わって行く。

 なだらかだった稜線も度重なる火山活動で険しく削れている処がある。
 案内の後の駒ヶ岳は一人聳えると言った格好で綺麗に山全体が一望出来る。

 もう少し進むと、火山流を手櫛でかいたように稜線が斜めに流れる。
 言われる通り、表情の豊かな山が西陽の鮮やかな光に照らされてはっきりとした陰影を描き出す。
 色、影、形。恐らく素晴らしい描写の駒ヶ岳であろう。
 東岸を進む列車は駒ヶ岳を周回するように隈無く駒ヶ岳を眺める。
 一方の駒ヶ岳も照れるでなく、角度によって様々な姿に変えながらも優しく堂々とした威容を見せてくれる。
 TWxの北海道最後のイベントはこれで決まりであった。

「ご案内致します。
 列車はただ今道南の景勝地であります大沼国定公園の中を通っております。
 右側に見えております湖、周囲160kmの小沼で御座います。
 大沼国定公園は、活火山・駒ヶ岳の火山爆発によりまして塞き止められて出来た遊水湖と言われており、入り江の多い岸辺には大小合わせまして126の島が御座います。
 また先程ご案内致しました標高1131mの活火山・駒ヶ岳は今度は列車の右側後方のほうに見えております。
 この角度から見ます大沼国定公園の姿、皆様、絵葉書などで一度はご覧になっているかと思います。
 列車、ただ今道南の景勝地であります大沼国定公園の中を走行しております」
 とのご案内で大沼を通過。

 日もほぼ落ち、水面は日射の反射で一面光っている。
 穏やかな湖面に黄昏が近付く。
 札幌発のTWxはこの大沼公園一帯で黄昏・トワイライトを迎えるらしい。
 その黄昏が駒ヶ岳を美しく、大沼を穏やかに映す。
 それを大きな展望窓に余す事なく映し出した。トワイライトの面目躍如である。

 この大沼公園を過ぎると、急に夜の帳が落ちてくる。函館市も間もなくである。

※ナイトトラフ

 機関車交換で停車をする五稜郭駅を目前に、私はシャワーを浴びることにした。

 身ぐるみ剥いで素っ裸・・・・・・・・
 オット、その前に部屋のカーテンは全部曳かなくちゃあ、動くストリップ劇場になってしまうσ(^◇^;)。
 服はハンガーに、下着はビニール袋に。石鹸とスポーツタオルを手にシンクルームに入った。

 シンクルームはシンク・トイレを畳むと肩口の鏡と腰許の石鹸置き、そしてシャワー器材だけが使用可能になる。
 そのシャワー器材は二つの操作部と一つのゲージがある以外はシャワーノズルだけである。
 操作はダイヤルが蛇口、ボタンが温度調整になっており、デジタルゲージは使用時間を表示する。
 ゲージは順算式で、総使用時間との差が使用可能時間になる。

 二人分の使用が設定されているので、此処ぞとばかりにゆったりとシャワーを浴びてみた。
 温度調整さえ間違わなければかなり快適である。
 その温度調整も然程の時間を要しなかった。
 肌が隈無く潤ったら石鹸を擦り付けてスポーツタオルで擦りあげた。
 一昨日根室の民宿で風呂に入って以来、この旅二度目のお清めである。
 納沙布や札幌の垢を惜しげもなくシャワーで流し込んだ。

 さっと水を切って、シンクルームの出口にあるフロアタオルで足をよく拭く。
 空調を強めると、気持ちがいいほど汗が退く。
 A寝台個室のレイアウトならではの快感でもある。

 カーテンを割くと、窓の外は既に陽が落ちていた。
 何より進行方向が逆になっている。
 五稜郭駅で機関車の付け替えを行った際に逆進していたのだ。左から右の風景が右から左になった。
 だが風景が暗くなったので違和感がない。

 TWxでは21時より“パブタイム”が食堂車とサロンカーで始まる。
 ただ、私は出向いて行っても酒や食事が頼めない(T_T)。

 イジケた訳でもないが、折角寛ぎの空間を誂えて貰っている訳だから此処で愉しんでしまえ。
 セットしたビデオウオークマンで映画“海峡”を流し、部屋の照明も落として月明かりで過ごす。
 札幌で買い込んだスナックで今度は自前のパブタイム。
 サロンカーでのそれに比べるとチープな感じは否定出来ないが、心だけでもリッチになっていた。

 函館市を後にすると、往きの時にも味わった津軽海峡の風景が漆黒の闇に拡がる。
 国道228号線を時折走る車が光の尾を曳いて眼下を行く。
 その上には闇に溶け込んだ津軽海峡が拡がる。
 水平線にも光の帯が認められる。
 これは対岸の下北半島ではなく、函館山からも望んだ烏賊釣り漁船の漁火だ。
 そして上空には時折雲の間に間に現れる満月が認められた。
 この三つの光が北海道からのお見送りである。

 よくキャンドルサービスなんかをイベントでやるが、それに有りがちなわざとらしさがなく、こちらものんびりと眺めながら寛ぐことが出来る。
 流している映画も佳境が近付いて、画面の小ささを除けばまさに映画館。2号車のビデオデッキが使えれば雰囲気は最高だろうに(T-T)。

 対岸には月明かりの中、凾館山と函館市街が見えてきた。
「‥‥‥漁業と海運によって発展した街です。
 その昔、横浜・長崎と共に我が国最初の海外貿易港として開港した古い歴史を持っており、欧米貿易の窓口となり、その影響は、古い町並みや、建物に面影を留めています。
 最も代表的な建物には湯の川トラピスチヌ修道院、ハリストス正教会、旧ロシア領事館、中華会館、公会堂などがあり、異国情緒豊かな風情を醸し出しています。
 函館は維新戦争最後の舞台となった処で、洋式築城の五稜郭は訪れる人々に当時の面影を偲ぶことが出来、国の特別史跡に指定されています。
 エ、しかしなんと申しましても、函館を代表する見所は凾館山から見る夜景で御座います。
 凾館山は、市街地の南端、津軽海峡に突き出している山で、高さ335m、600種に及ぶ植物の棲息と渡り鳥の休憩地として知られております。
 山頂からの眺めは、海と市街地の景観が素晴らしく、特に夜景は、香港・ナポリと共に世界三大夜景の一つになっております。
 またの機会御座いましたら、どうぞ函館のほうにお立ち寄り下さい」
 車掌の函館案内が流れ、北海道最後の風景も流れて行く。

 ロジックパズルの様に無数の細かい輝点が織り成す模様が人の息づく証である。光の羅列であるネオンサインが不快感をもたらすのはおそらくこの違いであろう。光と闇のハーモニーは美しくもあった。

 いよいよ列車は北海道の大地を離れ、19:45に青函隧道に突入した。

▽グッナイト‥‥‥

※外が見えないなら‥‥‥‥

 世界第2位の長さになる海底越狭トンネル・青函隧道に入った訳だが、往きの時にも言い出したようにトンネル内には華がない。
 唯一列車の快速感が心地好いが、外の風景が見えない鬱憤はそれ位では納まらない。

 千歳で出されたウイスキーセットが函館からスプライトのソーダハイに変わったが、それをスイーッと飲んでいた。
 今頃サロンカーではこのトンネル通過すらイベントにしているが、誘われつつもけっきょく部屋から出ず終いになってしまった、そんな調子で揺れる気持ちで寛いでいる。

 何時しかどの辺りを走っているのかすら解らないようになってきた。
 海峡号のような現在位置を示すものが無いからだ。
 しかし不快感は無い。乗車後に幾度か述べているが、TWxは今幾時何処をと言う事を一々気にして乗る列車では無い。云蓄やオタクを並べて乗るなんて以ての外なのである。
(この文章を自己否定してるよねσ(^◇^;)

 トンネルを出たのは20時半の少し前である。
 40分少々でトンネルを駆け抜けた訳だが、元々途中停車の駅が無い区間なので海峡号などの普通列車と経過時間に大差が無い。
 映画も無事にエンディングを迎え、私はビデオウォークマンをテレビに切り替えた。

※ベッドメイク

 さて、寝支度と洒落込むか。
 酒盛りを片付け、大荷物を全部壁際に寄せ付ける。
 ベッドメイクをするとダブルベッドのサイズになるのでソファーの儘で寝られないで無いが、出っ張った背凭れのせいで体を納めて精一杯のサイズなので、荒っぽい寝相には対応出来ない。
 ただソファー時の肘掛けがベッド時に使えない。他所へほかさなくてはいけない。

 ベッドメイクには思ったより大仰な片付けが必要だ。
 テーブルも二つのうち一つはベッドの可動範囲に抵触するので畳まなければならず、ベッドメイク後は一部が塞がって使用不能である。
 コンセントもテーブルタップが引っ掛かり、それも片付けの一つ。
 幅40cm程のスペースにこれら荷物を寄せてしまえば、後は殆ど手間を取らせずベッドが出来上がる。
 そのカラクリは出入り口にあるスイッチである。
 こいつを“ベッド”の方に押すと、カクンという音がしてゆっくりと背凭れが倒れて行く。
 ゆっくりゆっくり手前の方に倒れると、座面と面一になって止まった。既に仕込まれたシーツの敷かれたダブルベッドが出来上がったと言う按配だ。
 こうなると今度は大の字になっても余裕のベッドが出来上がり!

 据え付けてある浴衣に着替えて帯を締め、横になると、今まで背凭れに隠れていた読書灯が左手に現れた。
 これは折り畳みテーブルと排他利用である。
 また頭上には最初に触れたコンソールがある。
 寝たまま無精操作するには少し苦しいが、手を伸ばせば総べての照明が操作できる。
 この中のアナログ時計のアラームを次の停車駅・新津到着時間に合わせた。
 おまけに根室で使った自前のヘッドホンステレオのアラームラジオを適当に合わせて着けて置き、クロノグラフもアラームセット。
 果たして今度はどれで起きるやら。

※明日へおやすみ

 テレビを着け直すと、21時前のニュースをやっていた。
 受信状態はお世辞にも良くは無かったが、試聴に差し支えはなかった。

 聞けば外の天気が優れない。
 外は闇の帳で状態が殆ど解らなかったが、関東地方は結構な大雨に見舞われているらしい。
 そう言えば前に青森で車掌が「はつかりが遅れているんですよ」と言っていたのを思い出した。
 新宿をうろついている時も薄雲が掛かっていたが、あれから雨が降り始めて久しかったのだ。

 この大雨を逃げる格好で、しかしそのとばっちりを時折浴びながらもこなした今回の列車旅。
 そう言えば明日は最終日だ。

 この列車が大阪に着くと最後の大詰めになる。

 しかしまだTWxは行程の1/4を過ぎたばかりである。
 最後を締め括るにはまだ早すぎる。
 マァ北海道に程よい未練を残して、列車は21:13に青森に業務停車。
 10分少々の停車の後に進行方向を元に戻して発車。闇夜の奥羽路に向け走り始めた。

 私は抑揚の感じない夜景に見切りをつけ、眠りに就いた。

--------------------------------------------------------------

 やっと北海道から帰ってきました。
 コレでも函館と根室と、ちびっと札幌を回ったワケなんだけど、やっぱ足りないよね。
 一応4年後の98年には両親を連れて根室と札幌、06年に片親と函館には行ったんだけど、まだ回り足りないところがあるモノ。
 ま・根本的にここに来るまでの切符で予算を使い果たしてる側面が強いんだけどね(T_T)。

 TWx、夜が明けてもまだ堪能できます!
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Posted at 2014/09/10 13:35:30

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