2013年08月31日
亡霊の港町・・・。
これは関東地方の某小さな港町・・・H海水浴場のお話です。
この港のある海岸線は太平洋に面し毎年、夏になれば海水浴スポットとなる海岸が多数点在し人気のところです。
この小さな港町Hもその内の一つで夏になれば小さな海水浴場がOPENします。
マイナーな海水浴場で海水浴客も割に少なく穴場と言えば穴場なのかも知れません。
もう、5年も前のことになります。
私の知人、Y氏が8月のお盆の時期に夏休みを利用して家族で海水浴旅行を考え宿を探していました。
この年のY氏の夏休みはなかなか決まらず、お盆休みが決定したのは世間が一般的に休みに入る一週間前のことでした・・・。
勿論、こんな時期に宿の空きを見つける方が困難なのですがただ一件・・・H海水浴場近くの旅館に空きがありました。
そこでY氏はこの宿に宿泊予約を取り家族旅行の計画を決めました。
さて、お盆休みの初日・・・Y氏一家は東京から自動車で三時間圏内のこの港町を訪れ宿に到着致しました。
宿は明治時代から建っているという建物で何やら由緒のある旅館でしたが・・・。
少々薄暗さを感じ、案内された部屋はジトッとした感じが否めない感じでした。
和室の部屋には掛け軸が吊るされ、立てつけの悪いサッシ窓の向こうに見えるものは裏山・・・。
決して眺望の良い部屋でもなかったが、「まあ、盆前ギリギリに予約したんだから仕方無いだろう。」と、妥協した考えで宿の前を走る県道の向こうにある海水浴場に行くことにした。
時間は午後3時半過ぎ・・・。
夕飯が午後6時なので2時間程度の海水浴を楽しむつもりで家族で海岸に繰り出しました。
Y氏には上が12歳の男の子、下が10歳の女の子が居て二人の泳いでいる姿を砂浜にひいたビニールシートの上から見ていました。
波も穏やかで静かな海でしたのでY氏は安心して二人の子供の泳いでいる姿を眺めていました。
どれ位時間が経ったでしょうか・・・。
Y氏が二人の子供の遊びに加わろうと海に入り、遊泳区域の半ば辺りで泳いでいる子供の方向に向かって泳ぎ始めました。
しかし・・・幾ら泳いでも子供のもとに行き着きません。
Y氏は泳ぎにも自信があるスポーツマンで泳ぐスピードも結構な速さで泳げる男性です。
が・・・幾ら泳いでも泳いでも・・・二人の子供に近づかないどころか離れている気さえします。
Y氏はふと・・・自分が泳いで来た岸の方向を見てみると、既に遊泳区域を遥かに越えた沖に出ていることに気付きました。
「こりゃいかん!すぐに戻らなければ。」
Y氏は方向転回をして泳ぎ始めましたが、潮の流れのせいなのか思った方向に泳げません。
それどころか更に沖に流されている気がします・・・。
「おかしい!絶対におかしい。」と一瞬冷静になったY氏は自分の両足に何か重いものを感じ海中を見てみると・・・。
そこには・・・防空頭巾に国民服姿の子供や女性が多数、Y氏の足を掴んでいます。
Y氏は振り切って逃げようと試みましたが今度は防空頭巾姿の女性がY氏の両肩にのしかかって来て自由が利きません・・・。
必死にもがいて、満身創痍の力を振り絞って何とか遊泳区域に辿り着き溺死を逃れました。
子供達を海から上げて慌てて片付け、宿に入りました。
夕飯の後、子供達は寝入ってしまったので風呂に入ろうと大浴場に行くとそこには誰も入っておらず体を流して岩風呂に浸かっていたその時です・・・。
今度は、岩風呂の縁に太平洋戦争当時の海軍の兵隊さんが立っています・・・。
Y氏は何も言えずただ脅えるのみで気絶してしまいました。
Y氏は浴場で他の宿泊客に発見され、目覚めた時には自分の部屋の布団の上でした。
更に夜中に部屋の外にある共同トイレに入れば・・・。
誰も入っていない筈の個室の扉が開いて・・・。
開いた扉を閉めると他の個室の扉が開いて・・・。
手洗い場に建てば正面の鏡に映る自分の姿の後方に青白い顔の女性や子供が・・・。
Y氏は脅えた挙句、Y氏の奥様が共同トイレで誰も入っていない隣の個室からガンガンと仕切壁を叩かれ・・・。
部屋の掛け軸をめくればお札が壁に貼ってあります・・・。
翌日、当初二泊の予定の宿を急遽チェックアウトしてこのH海水浴場を離れ10kmほど走った先の別の海水浴場の海の家に行きました。
海の家のおばさんに「どちらからお越しに?」と聞かれ・・・。
東京からH海水浴場に行って泊まり、このD海水浴場に来た旨を話すと・・・。
海の家のおばさんは「何か変な体験しなかった?」と本気顔で尋ねて来る。
Y氏は正直にH海水浴場や宿泊した旅館での出来事を話すと・・・。
おばさんの口から聞かされた話・・・。
「あのHの町はね・・・。太平洋戦争中に兵舎があってね・・・。アメリカ軍の軍艦から町ごと集中砲火を喰らって、ほぼ壊滅状態になったのよ。あの旅館もね・・・その時の被害から奇跡的に逃れられた建物の一部を直して改築したんだけど裏山では沢山の兵隊さんが亡くなっていたんだって。裏山には丁度旅館のお風呂が面しているから寂しくて出て来るんだろうね。」
海には焼き討ちを受けた女子供が熱くて海に飛び込んだということもあり、現在でも魂が彷徨っていると言う・・・。
Y氏一家はこのD町の方に相談してこの町に一泊させて貰い、翌日安全な海水浴をして東京に帰ったそうである・・・。
ハイシーズンに変に空いている海水浴場って何か訳有りなこともあるんですねェ・・・。
貴方が泳いだ今年の海水浴場は如何でしたか?
泳いでいると何か後ろから引っ張られたりしてませんでしたか??
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耳袋 | 日記
Posted at
2013/08/31 23:50:23
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