※長文注意 レビューオタな投稿主のため、長文になっております<(_ _)>
【主要諸元】
全長×全幅×全高 5010×1895×1390(mm)
車両重量 1860(kg)
最小回転半径 5.5(m)
駆動方式 FR
トランスミッション 8AT
タイヤサイズ 前/後 245/45R18
サスペンション前/後 ダブルウィッシュボーン/インテグラル・アーム
JC08モード燃費 12.4(km/L)
エンジン
形式 : N55B30A
直列6気筒DOHC 2979(cc)
320ps/6500rpm
45.9N・m(kg・m)/1300-4500rpm
※今回お借りしたレンタカーは走行距離が約60000km、2013年式であったため、多少新車時からは変化している部分があると思います。
レビューはその変化部分も含めありのままを書いておりますので、ご了承下さい。
【試乗内容】
走行距離 : 約600km
給油回数 : 1回
走行シチュエーション : 高速道路(首都高)、流れの良い一般道路、都内の混雑した一般道路
試乗時間 : 20:00~翌日18:00頃まで、約20時間
走行性能
・パワートレイン
パワートレイン(エンジン・トランスミッション)の存在感をある程度出すようなセッティングになっている印象。
国産同クラスのとにかく無音・無振動でエンジンの存在感を消す安楽な方向性とはまるで違う。
まず、アイドリングの段階から「ウー」と、エンジンが唸っている感覚が音&振動で伝わってくる。
しかし、タイヤがひと転がりした段階から、乗り味は重厚そのもので、正に高級車という感覚。
また、640iは6シリーズのエントリーグレードではあるが、エンジンパワーをはじめ全体的に十分以上の走行性能で非常にレベルが高い印象。
・エンジン
BMW伝統の直列6気筒エンジンは、320ps&45.9kg・Nを発揮。
走り始めると、アイドリング+αの1000回転台前半からトルクフル。
市街地での常用回転域は、8速ATとのマッチングもあるが~2200回転程度、一定速度での巡航時は1000回転台前半でこなす。
高速道路で強めの加速を行っても、3000回転を超えることは稀。
意図的に踏み込まない限り、非常にジェントルな回転数で走行可能。
このように、低回転域がものすごくスムーズ&トルクフルで扱いやすいが、本領発揮は中回転域以降の印象で、特に3000回転から4000回転辺りからはターボトルクが一段と増し、スムーズに吹け上がる。
ただし、5000回転を超えたあたりからパワー感は衰え、高回転域は遅いわけではないが低・中回転域の感覚でいくといまいちパワー感は薄い。
ハーフスロットル時のスロットルレスポンスはターボらしくなく、良好と感じるが、流石に一気にフルスロットルにした際は、ワンテンポ遅れて駆動力がついてくる、いわゆる"ターボラグ"がどうしても発生する。
レンタカー試乗の後半は、あいにくウエット路面での運転となったが、1速および2速でのフルスロットル時にはホイルスピンが発生して前に進まない程強力なトルク。
ウエット路面では、状況にもよるが3速からやっと全開にできる(笑)
・トランスミッション
ZF製8速ATは、私個人的に感じる不満は一切なし。
トルクコンバーターによるトルコンスリップは、1速でのみ使用しており、2速以上はマニュアルモードを含め全域ロックアップしている模様。※模様というのは、いつロックアップしたのか私の感覚が至らず判断できなかったため。ただ、2速でアクセル開度による回転数の変動が無かったので、2速以上はロックアップしているものと思われる。
アクセルを踏み込んだ際、日本車の良くあるセッティングではロックアップを解除してモワーッと回転数があがり、さらに踏み込むとシフトダウン&トルコンスリップとなるパターンが多いが、640iはトルコンスリップは基本的に無く、駆動力を要求された場合はシフトダウンで対応。
スリップロスのないダイレクトで気持ちよいフィーリング。
また、最近はATの多段化がトレンドとなり、10速のATも開発されている状況。
640iは8速ATを搭載しており、日本の道路環境において8速も必要かという点だが、個人的には必要と感じる。
理由としては、各ギアのステップ比が細かく刻まれているため、加速時や巡航時に無駄に高いエンジン回転数まで引っ張ることが皆無で、ドライバーが要求している加速度を無理なく発揮できるエンジン回転数近辺をキープして変速できるため、エンジンの非力感を感じずストレスフリーで、感覚にマッチする。
また、低~中速巡航時は1000回転台前半と低い回転数に抑えられ、高効率な走行が可能。
ただし、全域ロックアップの弊害は出ており、やはり低速走行時にアクセルオフした際はマニュアル車でアクセルオフした際に発生するような、前後のギクシャクした動きが発生する。
※ドライバーズカーとしては挙動がつかみ易く、良いセッティングと思います。
シフトチェンジした際のショックは皆無ではなく、多少伝わってくる程度。
この部分にもドライバーズカーとして、変速したという情報は明確に伝えるという意図が感じられる。
シフトダウン時は、エンジンへの燃料カットの状態で1000回転台前半をキープして1弾ずつシフトダウンするため、変速の度に前後の加速度に変化が生じる。
これも特に低速域で若干気になった。
パドルシフトも装備されており、シフトレバーと同じくマニュアル操作を行える。
レスポンスはATとしてはかなり早い方だが、流石にDCTには一歩劣る印象。
ただ、シフトダウン時は一瞬プリッピングを行いエンジン回転を高める制御が入るため、シフトショックは低減されており低速ギアへの変速も躊躇なく行える。
・ボディー&サスペンション
曖昧な動きが無く非常にしっかりしたボディとストロークがたっぷりとられながら適度に固めのサスペンションの組み合わせ。
アクティブステアリング(4輪操舵)システムを装備。
ボディーは、いかなる状況においても曖昧な感覚が無く、微動だにしない。
剛性がどうかまでは正直分からないが、"剛性感"はすこぶる高い。
ドアやボンネットの開閉時に発する音やその感覚は剛性感に富んでおり、ドア開閉の度に「ムフフ」となってしまう(笑)
サスペンションは固めとは書いたが、"固く突っ張った"足ではなく、固めながらもしなやかで角のとれたタッチが心地よい足。
もちろん、ロールおよびピッチングは極々少なく、高速走行で段差を超えた際の「おつり」も皆無。
ただし、首都高の橋の継ぎ目(結構なサスペンションストロークが伴う)では若干突き上げ感が伴う感じ。
ただ、高いボディー剛性のおかげか、衝撃も一瞬で収まるため、不快感は無い。
流石に超高速域や、ワインディングでのハイペース走行だと、足回りの柔らかさが若干気になってくる。
ただ、試乗車は走行距離60000kmを超えているため、ショックアブソーバーを中心にヘタっていることを加味すると、全然許容範囲内という印象。
全体の印象では、非常に安心感が高い割には快適な足回り。走行安定性と乗り心地は高次元で両立されている。
コーナリングは4WS(4輪操舵)のフィーリングはあまり感じず、最初は普通のフロントステアのみと思っていたほど。
それほど、自然で違和感のないフィーリング。
ただ、よくよく思い出すと極低速~低速域では若干リアが回り込むような感覚があった気がする。
また、車重1860kgの割にはタイトコーナーもひらりヒラリと軽快にこなす点も4WSの効果かと。
試乗中は本格的なワインディングに持ち込む機会は残念ながら無かったが、交差点を曲がるだけでも気持ちよく曲がることが出来、コーナーリング中は車自体が一回り以上小さく感じられる。
タイヤサイズは245/45R18で履いていたタイヤはポテンザRE050であったが、タイヤのキャパシティが足りない印象を受けた。
それほどシャーシ・サスペンション剛性が高く、まだまだ太いタイヤを履かせても応えてくれそう。
高速道路の巡航は非常に安定感が高く、常識的な速度域以内ではフラットライドな走行で極めて心地よい。
・ブレーキ
ブレーキの利き自体は十分で、踏みしろおよび重さも感覚とマッチした。
しかしながら、なんとなく剛性感というかガッシリ感が気薄な印象。
超高速からのブレーキングも難なくこなすが、フィーリングは若干曖昧な感覚を覚えた。
また、μの高いパッドを使用しているためか、停止直前の制御が難しく、若干カックンブレーキ気味になる。