![[ポルシェ] [ポルシェ]](https://cdn.snsimg.carview.co.jp/minkara/blog/000/038/247/847/38247847/p1m.jpg?ct=c580c01918a6)
『 ポルシェって、僕はぜんぜん縁がなくて、なっかなか買わなかったんです。で、徳大寺有恒になってしばらくたったある日、生まれて初めてのフェラーリに乗っていたんです。フェラーリは365・2+2。これがいいクルマなんだけど、ひどいクルマでした。夏、ヒーターつけて乗らなきゃいけないんですよ。まあ、こんな暑いことはないわけです。僕もあの頃すごかった。それとメルセデスの280SLの2台だったのですから。
で、そのフェラーリで夜中の3時頃、第三京浜を走っていたんです。そしたら後ろから黄色いフォグランプをつけたクルマがチラチラ見えるんです。そのまま飛ばしていればよかったんですが、一応確認のためにと思ってスロットルを戻したんですね。そしたら追いついてきたんです、パトカーが。1回で免停180日。これは自動車評論家にとって長い日々ですよ。まいりました、私は。
その免停中に、「あのフェラーリを譲ってください」という青年が来たんです。岩槻の人形屋の息子さんで、「俺は売る気はない」と断わったんだけど、彼は作戦を変えてきたんです。
「徳大寺先生はポルシェに乗ったことがない、とおっしゃってますが、お乗りになる気はありませんか。安いのがあります。僕が乗ってるクルマです。新車みたいです」と。フラッとしたんですね、僕。それが78年の911SCSだったんです。ボディは白。シートは黒に白のストライプでした。
3カ月自動車から離れていた後の、生まれて初めての911ですから、すっかり惚れ込みましたねえ。条件がいい。なんでこんなのにもっと早く乗らなかったのだろう。最高速は180km/hぐらい出る。ちっとも直っちゃいない。これは素晴らしいクルマだと思ったわけです。実際、ポルシェに最初に乗るとあのフラットシックスのレスポンスのよさと小ささ、高い実用性、もうすべてにまいるんですね。フェラーリなんてクルマじゃないと思いました。なるほどポルシェは911に限る、と思いましたね。
ポルシェはいま日本人が本当に欲しいクルマのひとつです。ポルシェは僕が最初に乗った時と同じような感動を誰もが簡単に受けられます。こんなロケットみたいな、こんなに簡単にスピードが得られ、こんなに人車一体になれるクルマはほかにありません。いわゆるステアリングのダイレクト感とか、最近やさしくなったけれど、クラッチの繋ぎのむずかしさとか、スポーツカーの要素をすべて持っていて、それでいて乗り降りなんかはラクチン。これ1台で仕事に使ってやろうと思えばOKとなる。
だから多くの人は買いたいと思っているけれど、やっぱりポルシェって運転してやろうと思って買わないとダメですね。それはティプトロニックのATだってそうです。ティプトロだからラクチンということはありません。あえて言えば、マニュアルの方がポルシェらしく走らせてやれるという意味で、ラクチンでしょう。911は偉大なクルマです。』
(ドイツ車各論◉私の体験から 『ああ、人生グランド・ツーリング 徳大寺有恒』二玄社刊より引用)
Posted at 2016/07/19 22:08:21 | |
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