
1889年 広島県呉市に大日本帝国海軍の鎮守府が置かれ
軍港として開港した呉港
現在も海上自衛隊の呉地方隊があり護衛艦や潜水艦などが定係港としています
その呉港を遊覧船に乗り海上から見学できるクルージングツアー
「呉 艦船めぐり」

海自幹部候補生学校のある江田島や
愛媛県の松山港などを結ぶフェリーが発着する
呉中央桟橋ターミナル

その中に艦船めぐりの受付があります
私が訪れたのはGW連休の真っただ中
当日券を求める人が列を作ってました
乗船前日までならメールでの事前予約もありますので
そちらがおススメです

この日入港している艦艇のリストが出てました
海自最大で2017年に就役したヘリコプター搭載護衛艦「かが」も見れそうです

遊覧船
手前が定員64名の「くれない2」
奥が定員80名の「くれない5」

「くれない5」のほうが2階オープンデッキが広く見渡しがいいです

十六条旭日旗(自衛艦旗)の手旗が用意してあるので
借りることが出来ます
これを持つと脳内で軍艦マーチが流れる

肩章の線が4本 元海上自衛官の船長さんが詳しく解説してくれるので
艦艇のことがわからない人にも楽しくクルージングが出来ます

出港してすぐに見えてくるのが
ジャパンマリンユナイテッド(JMU)呉工場
14万トンのコンテナ船を建造中です

第二次世界大戦(太平洋戦争)時に就役した
旧海軍の戦艦「大和」を建造した
呉海軍工廠を引き継いでいて
大和の修理用ドックは現在も使用されています

20フィート(約6m)コンテナ14000個を積載可能なコンテナ船2隻が進水し
艤装が行われていました
全長 364m
全幅 50.6m
総トン数 14万5000トン
オーシャンネットワークエクスプレス(ONE)は
日本郵船 商船三井 川崎汽船
日本の海運大手3社がコンテナ船事業を統合し設立されました
コーポレートカラーは鮮やかな赤紫色のマゼンダ

TUGと書かれた四角い点線はタグボートで押す位置を指定してあります

同型船が15隻建造予定で
「ONE AQUILA」は11番船 イタリア語でワシを意味するそうです
隣は10番船の「ONE STORK」こちらも鳥の名前 英語でコウノトリの意味です
球状船首「バルバス・バウ」
艤装中で船体に何も積まれていない状態なのでかなり浮いてます
通常のバルバス・バウは海中にあり突き出して見えないため
他の船舶が気づかず接近すると衝突するため
バルバス・バウのマークが書かれています
丸の中に×印は横方向に推進させるスクリュー
「サイドスラスター」が装備されているマークが2つ

舵やスクリュープロペラも見えてしまってます
こうなると推進効率が悪く重心も高く転覆の恐れがあるため
錘としてタンクに注水して船体を下げます
コンテナを甲板上にも積むため
固定用のレール「セル」が高く突き出しています

ほどなくして海上自衛隊施設に近づいたのですが
護衛艦が係留されている桟橋に人がいっぱい・・・

どうやらこの日(2018年5月5日)は海上自衛隊幹部候補生学校を卒業した
実習幹部を乗せた練習艦隊の見送り式があったようで
艦船めぐり10:00便は式典の最中に運行するという
大変貴重な瞬間を間近で見ることができました
海上自衛隊 練習艦
TV-3508「かしま」 満載排水量 5400トン
3月に約190名の実習幹部を乗せて近海練習航海を行ってる途中に
呉基地に寄港してたそうです
練習艦と識別するためでしょうか?
艦体に白帯が巻かれています
私も借りた旭日旗を振って見送りました

桟橋では関係者が見送り
艦艇乗組員は甲板に整列して見送ってました
音楽隊の行進曲「軍艦」や「蛍の光」が演奏されてました

海上自衛隊 いずも型ヘリコプター搭載護衛艦
DDH-184「かが」 満載排水量26000トン

こちらも自衛官が整列して見送ってますが
艦体サイズがデカい

近接防御火器(CIWS)として
艦首と艦尾に高性能20mm機関砲(ファランクス)を装備
6砲身が回転しながら連続射撃を行います
有効射程はおよそ1500m
発射速度は3000発/分

艦橋の前方と艦尾には近接防御ミサイル(SeaRAM)を装備
11連装発射機に最大射程25km 飛翔速度マッハ2.5のミサイルが格納されています
艦橋の上面に四角いはんぺん状の物体
フェーズドアレイレーダー(OPS-50A)が
前後左右四面に取り付けられています

左
海上自衛隊 たかなみ型護衛艦
DD-113「さざなみ」 満載排水量6300トン
右
海上自衛隊 むらさめ型護衛艦
DD-106「さみだれ」 満載排水量6100トン
さざなみ乗員は「帽振れ」で見送ってました

むらさめ型を発展改良したものがたかなみ型で
よく似てます
イージス護衛艦は高性能だけど高価なので数もそれほど増やせません
なのでむらさめ型やたかなみ型などの汎用護衛艦が数の上では主力です

低速巡行時は2機のガスタービンを使用し
加速力や高速航行にしたいときは
もう2機のガスタービンを使用し合計4機で航行できる
COGAG方式
煙突は前後に2本あり平面で角ばっているため
ステルス性を考慮した設計になってます
マストにある八角形の平板はフェーズドアレイレーダー(OPS-24B)ですが
イージス艦などと違い回転式のもの一面を装備しています

手前のむらさめ型は砲塔が丸みを帯びた
62口径76mm単装速射砲
奥のたかみな型がステルス性に有利な角ばった砲塔で
54口径127mm単装速射砲

海上自衛隊 潜水艦救難艦
ASR-403「ちはや」 満載排水量6900トン
潜水艦が事故などで浮上できなくなった際に乗員を救出するために
深海救難艇(DSRV)を搭載しています

海上自衛隊 おやしお型潜水艦 水中排水量3500トン
潜水艦には艦名も番号も表示されていないので
外観からは艦級しかわかりません
海上自衛隊の潜水艦は通常動力型で
浮上時にディーゼルエンジンで発電してバッテリーに充電
潜航時にはバッテリーでスクリュープロペラを駆動するのでとても静か

おやしお型とそうりゅう型が並んで係留されていました
海上自衛隊 そうりゅ型潜水艦 水中排水量4200トン
おやしお型の改良発展型ですが
非大気依存推進システムを搭載してるので
充電するために浮上する回数が大幅に減り
従来型なら潜航期間は数日だったものが
低速潜航なら3~4週間ほど浮上せずに済むと言われています
艦尾の十字型の舵がおやしお型
X字型の舵がそうりゅう型です

別の桟橋にもおやしお型が2隻
海上自衛隊の潜水艦部隊は広島県の呉基地(第1潜水隊群)と
神奈川県の横須賀基地(第2潜水隊群)にあります
潜水艦の乗員は出港日や航海日数など作戦行動は一切秘密で
家族にも言えないそうです

海上自衛隊 はつゆき型護衛艦
TV-3518 練習艦「せとゆき」 満載排水量4200トン
奥にはむらさめ型護衛艦
DD-105「いなずま」

1986年就役した古参護衛艦で2012年に練習艦に変更されました
2013年には海上自衛隊初の女性練習艦艦長が誕生しました
現在の護衛艦と違い煙突の角が丸まっています
煙突下には対艦ミサイルRGM-84ハープーンのキャニスターがあります

練習艦隊の見送りも終了し
いつもの課業にあたる自衛官
こちらの遊覧船に手を振って応えてくれてます
女性自衛官(WAVE)もいますね
海上自衛隊 訓練支援艦
ATS-4203「てんりゅう」 満載排水量2750トン
対空射撃訓練用に無人標的機を遠隔操縦することが出来ます

海上自衛隊 おおすみ型輸送艦
LST-4002「しもきた」 満載排水量14000トン
艦尾にエアクッション型揚陸艇(ホバークラフト)2隻格納されていて
大型の船舶を寄せることが出来ない浜辺にも
直接エアクッション艇が乗りつけることで輸送力を確保しています
艦内には手術室 集中治療室 歯科診療室 病床があり
大規模災害時には病院船としての役割もあります

潜水艦桟橋から離れたところにさみしく係留されているのは
除籍された潜水艦 はるしお型
現在主力のおやしお型やそうりゅう型は円筒形の葉巻型
このはるしお型は水滴状の形状 涙滴型
はるしお型7隻は2017年をもって全艦が除籍されました
就役から除籍まで約20年 40万キロ以上の航行をしました

赤レンガの建物は
旧海軍の鎮守府
現在も海上自衛隊呉地方総監部として使用しています
愛称は呉鎮(クレチン)
下ネタじゃないよ・・・
およそ30分の航行でしたが
非常に中身の濃いクルージングでした
日没15分前に出港する
「夕呉クルーズ」というのもあり日没時間になると
らっぱ君が代の吹奏と共に自衛艦旗降下の礼式を見ることが出来ます
夕日に染まる船を見るのもいいかもしれませんね
呉 艦船めぐり 公式HP