
前回に引き続き、今度はダンパーの理解
読むにあたっての注意書きは前回のスプリングのやつをみてくださいw
こちらも、一部先輩の言葉を引用させてもらったりしていますが、自分の言葉で書いたコピペ無しの書き下ろしです。図表は無断借用です、スミマセン。
最初に
引用参考動画&HP
ダンパーを理解するのに多分30回くらい見た動画
https://youtu.be/3JWJXYg1Z6Q
脚設定、非動画でじっくり考えたい時にみるHP
a011w.broada.jp/cantalwaysget/
ダンパーの役割
スプリングがストロークの「量」を調整する部品に対して、
ストロークの「スピード」調整する部品がダンパー
「ロール・ピッチ「量」が大きくてワインディング怖いから減衰力を上げる」っていうのは正攻法の調整ではない、ただの姑息術(対症療法)なのは理解したいところ
ダンパーってのはバネの動きを邪魔する事が仕事だから、本来は必要最低限の減衰力が望ましい。
ドンって段差を超える時にショックを吸収してくれるバネを縮ませないようにしちゃうから、ホントは減衰力は出して欲しくない。すっとショックをバネに伝えて吸収してほしい。
でもググーって荷重をかけながらコーナリングする時に一気にロールするとコントロールが難しい。ロール荷重をかけすぎないようにするならコーナリング速度を遅くするしかない
このバランスをいいところでとるのが、ダンパーセッティング
減衰力の生み出し方
構造理解したほうが、ダンパーは理解しやすい。っていうか出来ないとおもう。
ってことでメカのお話。
ピストンには小さな穴が空いてて、その中を粘度がある油が通り抜ける時の抵抗でピストンの動きにくさ=減衰力を作り出してる。竹筒水鉄砲と一緒。
穴の大きさ変えれば減衰も変わるけど、ピストン穴はピストンを変えない限り変えられないから、穴の上にリードみたいな板ばねを置いて平時は穴を塞いでる
油が穴を通り抜けようとするとリードバネを押し上げて抜けてくのでゆっくり抜ける。
ピストンが短時間で大きく動く(穴をたくさんの油が通り抜ける)とリードバネが大きく押し広げられて沢山の油が通る
リードバネを強くすれば減衰出るし弱ければ減衰は落とせる
でもたくさんリードバネが開きすぎちゃうと減衰出せないから、1枚目の上にちょっと短いリードバネを重ねて強化する。ちょっと開いたら、2枚目のリードバネがサポートする。
そんな感じで4枚位重なってるのが一般的。この4枚の硬さを変えることで、どの辺のピストンスピード域でどれくらいの減衰にってのが変えられる。
このリードバネの反力だけじゃなくってバイパス路の穴を開けておくことで一定の減衰力抜きを作っておくのが一般的。リードバネだけだとバネが開くまで油が動かなくてゴツゴツしちゃうから。
penske service manualより借用
バイパス路が大きければよく動くダンパーだし、バイパス路小さければ動きにくくなる仕組み。バイパス路にはワンウェイ構造はなくて、どっち方向からもオイルが流れるしくみなのが基本
2way調整機構だと、これが2本あってそれぞれワンウェイバルブになってるはず。詳しくはしりませんw
バイパス路ってのはピストンがゆっくり動く時の方が影響度が大きい。速い時はリードバネ押し上げて出ていけるから。
じゃ、このバイパス路の大きさを変えてあげればベース減衰変えられるじゃん!ってなるわけ(特にピストンスピードゆっくりのところに影響する調整)
ピストンにバイパス路作ってもいいんだけど…
あ、ピストンの上のシャフトに穴開けて、シャフト内にバイパス路作ってピストン下に油逃せばいいじゃん!って思いついた人がいて、
なんなら、そのバイパス路をニードルバルブにしちゃえば通る油の量を変えられるじゃん!
ってできたのが基本的な減衰調整ダンパー
http://a011w.broada.jp/cantalwaysget/D_course/pages/d-21.html より借用
そっちは調整が簡単だからユーザーでも好きに弄れる
でもバイパス路の調整はピストンがゆっくり動くときへの影響が大きいから、速く動くところはダイヤルじゃ変えられない。
そこを変えようとダイヤルいじっても無駄な作業になっちゃう。
penske service manualより借用
実はこのピストンハイスピード域が街での乗り心地に大きく影響していたりする。サクッと動くほうがゴツゴツしないのはイメージしやすいと思う。(ほかにピストン摺動抵抗とかもあるけど)
リードバネを変えることで基本キャラが変わる
マーケットの大多数がなんとなく満足しそうなキャラクターでダンパーは販売されている。調整機構がついていれば、さらにマーケット需要を満たしやすい。
問題は過渡期特性でその辺が使用用途によって差があるから、最大公約数的設定が気に食わない場合、好みに変えてもらうのが減衰仕様変更。やってるのはシムの厚さを変えてバネの硬さを変えるだけ。
何枚目のシムをどれくらいの厚みに変えるのかってのがウデの見せ所。一応基本セット組ってのもサービスマニュアルには書いてあるけど。
他にも油の粘度を変えても特性が変わるけど、沼だから一定の品を使うのが普通。
リードバネをシムって言って、その重ね方がシムスタック。コレがピストンの下から上の流れ(バンプ)と上から下(リバウンド)がそれぞれ設定できる
なんならピストンの穴サイズとかシムプリロードの掛け方を変えたピストンに変えるという手もある。ピストンだけ売ってるダンパーメーカーも海外はある

シムのプリロードはピストンの形状による。シムを乗せる面をわずかにすり鉢状に中心をへこますことでプリロードをかける。このへこませ具合を変えたピストンが用意されていたり、別の調整シムでプリロードを調整可能にしているものもある。
penske service manualより借用
プリロードをかけるタイプのピストンをDigressive Pistonっていうそうで。
プリロードかけないのはLinear Piston
バンプ/リバウンドの片方だけDigressiveってのもあったりする
けど、その辺のメーカーは多分作ってない(市場に出ない)レーシングダンパー屋さんのダンパーじゃないと無いとおもう。実質上、プリロードは固定だと思っていいと思う。
ロッドが入る分容量を逃がすガス室
あとは大事なのがガス室。ピストンがケースに入っていくとき、同時にピストンを支えているロッドもケース内の油の中に入っていく。
液体は体積がほとんど変わらないので、逃げがないとロッドが入った勢いで蓋か底がぶち抜けるw
その逃げとして、ダンパーの下に気体であるガス室を作っておく。隔壁で区切らず、油をミチミチに満たさずにガスのスペースを残して組む1室式のダンパーもあったりする。ひっくり返さなければ問題ないけど…今は2室式がほとんどでは?
ガスは体積が変わるからピストンを押し戻すバネとして働いたり、油が泡立たないように与圧するのに入れてたりする。急激で課題な陰圧をかけると液体溶存ガスが沸騰気化して泡として出現する。これをキャビテーションって言ったりする。
圧力が下がれば、同じ温度でも沸騰するのはシャルルボイルの法則とかだっけ?
泡立つと一気に減衰力が落ちちゃう。あぶくに飲まれた船が沈没するみたいな(?)
キャビテーションってのは結構厄介。キャビテーション防ぎたいから与圧したいけど、プリロードと一緒でピストンが動きにくくなるから邪魔になっちゃうんで、ホントは低くしたいのがガス圧。
ガス室はおっきい方が体積変化率が少ない=圧変化が少ない。実際はケースの1/4くらいがガス室になってる。隔壁も10mmくらいあるし。
ケース全長の全部がピストンストロークには使えないんで、例えば長いシャフトにすればストローク増えるじゃん!ってならない。
じゃ、ケース長くすればいいじゃんってなるかもだけど、車体構造上、ダンパーの大きさは決まってしまう。
別タン
ガス室邪魔だなーって横によけたのが別タンク式
なんかかっこいいよね。レーシングカーっぽいし。
ストローク増えるし、油容量増えるからよく動かす脚に有利。なんなら別タンクのガス室前にもう一個ピストン入れて調整機構も組み込める
http://a011w.broada.jp/cantalwaysget/D_course/pages/d-24.htmlより借用
そもそも設計上長いケースが入れられない車種のガス室逃しってのが市場だと多いのかもしれない。
スポーツ車は車高低いしボンネット低くなってるから制約が大きい。車高を下げるとストロークが減っちゃうけど、ストラットタワーを持ち上げてストロークを稼ぐわけにもいかない。しょうがないからガス室を横に逃がしてストローク取ろうぜ、って感じなんじゃないかなぁ?
ラリーカーなんかはストラットタワーをギリギリまで嵩上げしてストローク稼いでたりするよね。
実践編
ぶっちゃけダンパーセッティングはコイルスプリングとユーザーの使い方にアジャストさせる作業で、手間がかかることが多い。
ばらしてピストン選んでシムスタック変えてオイル入れ替えて、ガス圧を調整する・・・
慣れれば1本30分くらいでできるけど、まぁめんどくさい。油まみれになるし。
シムってすげぇ高いんだよね。いろんな種類のシムを準備するだけで大変。
じゃ、なんとなく減衰ダイヤルイジイジしとけば十分じゃねってのが一般的。
じゃ、減衰ってどーやって調整するのって話だけど
一般的にダイヤル1個の調整ダンパーはバンプよりもリバウンドの方が調整の振れ幅が大きくなってたりする。これがキモ。
penske service manualより借用
ってことはダイヤルイジイジするとリバウンドがおっきく変わることになる。
つまり縮み側を制御するんじゃなくて伸びの制御をしてやるのが、減衰調整ダイヤルの使い方。
・進入で荷重かかりにくいときは、鼻が沈みやすくするんじゃなくて、リアを伸びやすくしてあげる
・進入でリアが抜けて不安定になるなら、前鼻沈まないようにじゃなくて、後ろが浮かないようにしてやる
・立ち上がりでリア荷重がかからずトラクション抜けるなら(FR)前を伸ばすように抜けばいい
減衰調整ダイヤルは伸びコントロールだって知ってれば、沼らない
終わりに
シムスタックは基本キャラクターの設定
ブリードバルブ(調整ダイヤル)はピストンスピード遅いところの設定
ブリードバルブの範囲外は調整ダイヤルで調整できないから仕様変更に出す
ダンパーセッティングはこんなとこかなー。
DIY勢にとってはダンパーテスターがない限り数字にでないから、想像力とメイクアンドトライの世界。
ドライバーのふわっとしたニュアンスをくみ取って、セッティングを決めていくダンパー職人は本当に職人だとおもう。ダンパーを作るってそういうこと。