M42/M44ハイブリッドエンジン製作
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この記事ではM44B19エンジンのシリンダーブロックにM42B18のシリンダーヘッドを載せる際の必要部品、加工などをメインに紹介しようと思います。
各地から部品ごとにデアゴスティーニして集めたM42ヘッドが完成したのでさっそく載せていきます。
部品が欠品しているシリンダーヘッドがたまたま買えて、足りないところを出物を待って気長に買い揃えてようやくという感じだったので、M42がヘッドASSYとかで売られることはもうほとんどないんじゃないかなと思ってしまいます。
持ってる人は手放さないでしょうし、手放すとしても身内で回すような感じでしょうしね。
さて、今回作っていくのはM44腰下のM42ヘッドエンジンです。
M42/M44のハイブリッドエンジンとかフランケンシュタインとか、M42B19とか色々呼び名はあると思います。
ベース車両は、E36 318ti 1998 M44B19 となります。
今回載せるに至った理由としては、ローラーロッカーアームのM44ヘッドに対して、M42ヘッドはカムで直接リフターを作動させる直打ヘッドですので、バルブ周りの重量が軽く高回転時にバルブ追従性があり………
違いますね、あるのはロマンです。
7000rpmオーバーの直打エンジン
それだけで十分なのです。
ホイールのJ数みたいなもんです。
実用面だと、M44ヘッドだと7000rpmのレブリミットから数百回転しかなかったオーバーレブ耐性が1000回転程度まで増えるので精神衛生上も大変良くなります。
ちなみに今回載せるヘッドは、
面研無し、ポート研磨なし、ノーマルカム、ノーマルバルブスプリングのまさにド・ノーマルなヘッドとなります。
一応お気持ち程度にバルブの当たり面修正程度のヘッドオーバーホールはしておきました。
ノーマルとは言っても、M42エンジンが1.8L、M44エンジンが1.9Lでどちらも圧縮比が10とのことなので、理論上はM42ヘッドの方が燃焼室容積が小さく、M44腰下にM42ヘッドだと圧縮比が上がるはずです。
一体いくつになるんでしょうかね。
(↑めんどくさくて容積測定しなかった人)
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早速車両からヘッドを降ろしていきます。
インマニとエキマニ外して水抜いたら取れるんですけど、各種ハーネスやら燃料ラインやら結構外す部品はあります。
エキマニは右ハンドルだとステアリングシャフトが邪魔すぎてボルト回すのめっちゃムカつきますね。
このへんは事細かに解説するのが不可能なので、実際にやってみるしかないと思います。
本記事の趣旨ではないのでここは省略。
積み降ろす際はタイラップなどでチェーンスプロケットを固定してタイミングチェーン周りの相対位置が変わらないようにして行います。
これがズレると後々、ピストン位置とカムを見比べながら調整するハメになりますのでご注意を。
ちなみに自分は今回もズレました。
ヘッドを積むところまでは、M42ヘッドもM44ヘッドも特に変わる作業はありません。
ほんとにポン付けです。
カムホルダーが邪魔でちょっとヘッドボルトが入れづらいくらいかな?
とりあえずM42ヘッドが載りましたよと。
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ここから追加で必要なものをまとめます。
車体側は一切触る必要がないのでそこは楽です。
M42ヘッドとM44ヘッドで変更があるのがクーラントホースの取り回しの違いです。
M44はエンジン裏についている樹脂製の接続ピースにホースを繋げてクーラントの循環をしているのに対し、M42はヘッドから直接パイプが生えています。
取り回しが違うのでM42用ホースが2本必要です。
それぞれの繋がってる先はどちらのヘッドも同じで、片方がヒーターバルブ、もう片方がインマニのヒーターに繋がっています。
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ホースエンジンフィールド/ヒーターバルブ
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ホース
サーモスタットとサーモハウジングも互換性がないのでM42用のものを用意しなければなりません。
M42用のサーモは何種類か開弁温度が選べるのでいいですね。
お好みで選びましょう。
今回は320用の80度開弁サーモを引き続き使用。
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コネクションフランジ
水温センサーも互換性がないのですが、取り付けネジは同じなのでM44用のものに差し替えておきます。
この他には、タイミングチェーンガイドをヘッドに固定するボルトのカラーだけは加工が必要でした。
次で解説します。
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要加工だったのはこの11番のボルトまわり。
絵には載ってないですが、チェーンガイドに特殊カラーを入れて、それごとボルトで共締めして使う感じです。
チェーンガイドをシリンダーヘッドに固定するボルト穴の位置と、M42ヘッド側のネジ穴の位置が合いません。
ヘッド側のネジ穴が1mm程度上方向にオフセットしてしまっています。
でも調べた感じだと、この10番のチェーンガイドの品番はM42とM44で変更がないみたいなんですよね。
なのに何故合わないのか…
腰下側のボルト穴の位置がM42とM44で違うのかなぁとか考えましたが、手元にはヘッドしか無いのでこのへんはわかりません。
とにかくこの組み合わせでどうにかして使えるようにしなければなりません。
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というわけで製作してしまいました。
画像一番左のカラーが純正品
このカラーの中を右のボルトが貫通してヘッドのネジ穴に止まるようになっています。
純正カラーのままだと、ボルトの外径とカラーの内径が同じため、どうやっても穴位置が合わないので、このカラーの中でボルトが1mm偏心するように穴を2mm拡大したものを製作しました。
ついでに偏心したときにカラーの中でボルトが遊ばないように三日月形状の謎スペーサーも用意しました。
純正品の内径を広げる加工でも対応可能だと思います。
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組み合わせてこんな感じ。
他のハイブリッドエンジン個体がこの問題をどうやって解決しているのか、そもそもこの問題が発生しないのか、そのあたりが非常に気になるところです。
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ここから先はM44の部品を使って普通に組んでいきます。
タイミングチェーンのテンショナー
カムスプロケット
カム角センサーパルスプレート
チェーンフロントカバー
インマニ
エキマニ
ヘッドカバー
などなど
その他もろもろM44のものがそのまま使えました。
カム角センサーも引き続きM44のものを使います。
今回バルタイは104/108の純正値にセットしました。
リフターにアクセスするスペースがなく、めちゃくちゃ測りづらかったです。
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元に戻してしまえば見た目では何も変化がありません。
この車両はLINK G4Xの負圧制御ですが、おそらく後期のノーマルDMEで後期エアフロ制御でも動くことは動くんじゃないかなと思います。
(A/Fその他がどうなってしまうのかは不明)
アイドリングが心配かも。
組み上がった後の初回始動時にはHLAの内部にオイルが満たされていないため、タカタカタカとヘッドカバーの中から結構勇ましい音がして驚きますが、ほっとけばそのうちしなくなります。
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早速走ってみたいところですが、ヘッドカバーを開けてすぐに見えるタイミングチェーンのスライドレールを買い忘れてしまっているので叶わず。
本国オーダーになってしまいました。
ここもM42とM44で互換性はありませんでした。
普通はヘッドにセットでついてると思うので問題にならないと思いますが、今回はちまちま少しずつエンジンのかけらを集めていたので、すっかり失念していました。
無くてもアイドリングくらいなら問題ないでしょうが、ここまできて無理に走って不具合が出るのも嫌なので、これ以上は部品が届いてからですね。
2025.5.4追記
実走しました。
フィーリング上々、エンジンのパワーはまぁまぁです。
点火時期は最大BTDC26度でとりあえず運用。
前使ってた面研M44ヘッドは面研しすぎで点火時期が進まらなかったんだなと思いました。
0.7mmは削りすぎということです。
面研M44からM42でBTDC21度→BTDC26度なのでだいぶ普通になりました。
出力はこれだけ点火進めた割には…って感じですけど、1.9の腰下に1.8カムだと難しいものもあるのかなと納得しています。
6000rpm以降が露骨に燃料入らないです。
全開加速は面研M44と大差ないですね。
とはいえ、仮にこの状態でBMWからストックとして販売されてたとしたら文句はないくらいにはちゃんとノーマルより速いです。
気が向いたらハイカム……いやいや…
なんにせよ、M42ヘッドにしたことで色々選択肢が生まれたのは良いことですね。
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備忘録も兼ねて、シリンダーヘッド脱着において必ず必要なシール類をまとめておきます。
11141247849 プロフィールシーリング
11141247837 プロフィールシーリング
11141743065 チェーンケースシーリングセット
11121433950 ヘッドガスケット
11121721939 ヘッドボルト
11531721172 ガスケットアスベストフリー
11621728984 シール
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2025.8.11
リテーナーが割れてバルブが落下してバルブクラッシュしました。
M42ヘッドは終了です。
無念
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