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2020年12月26日 イイね!

クリスマスの想いで ヒコーキの話

クリスマスの想いで ヒコーキの話














今年も無事、クリスマスが終わり巷は一段落。ぼくら物資輸送に関わる人々は、一年中で一番忙しいピークシーズンと言われる時期が大体9月からクリスマス前夜まで続き、毎年上へ下への大騒ぎになります。

丁度10年くらい前でしたかねえ。。。独國から中東への往復便何回かこなし、ザーランド州の片田舎の宿で蒸気暖房の熱交換器が放つ独特のパイプを叩いた様な音を聞きながら窓外のクリスマス飾りを眺めていたら電話が鳴ります。狂うスケジュールのクルースケジュール部の兄ちゃんが、明日、カイロまでチャーターあるんだけど行きたい?とやけに優しく聞くので当然何か下心があるのかと疑うもの、別にタダのチャーターよ、っと言われ引き受けました。翌日出社してみると積荷は軍事基地に運ぶクリスマス用の物資、ターキーだの、飾りだの、それに出発間際に持ってきたデイプロマテイック・パウチです。何やらカイロの領事館に行くもので、パウチとは言いますが実際は大きな麻袋に鍵が付いており、書き留め郵便扱いのシグネチャー・サーヴィスと言うもので、ぼくが袋、受領のサインをして受け取ります。このデイプロマテイック・パウチとは大使館やら領事館に通常郵便以外の経路で送る時に使われ、発送から受領まで扱う人々皆サインする必要があり、重要書類やらが入っているそうですが、この荷物の中は実質的に治外法権扱いで、よく、推理小説の小道具に出てきます。普段なら別に気にしないこの特別荷物、マズい事になるのは途中で天候不良とか故障で目的地に着陸できなくなると、受領サインをした自分がこのバッグを責任持って守らなければならないんです。推理小説だと必ず暗号解読表とか多額の現金とか怪しい物がデイプロマテイック・パウチに隠されてるなんて言われますが、今回はタダのクリスマス郵便だそうで一安心。独國フランクフォートからイージプトの首都カイロ、でも僕らが使うのはカイロ・ウエストと言う飛行場で片道4時間弱。朝出て夕方には帰ってこられる簡単なお仕事で、ケータリング屋さんが気をきかしてホリデイ季節的なお食事載せて呉れたので楽しかったです。カイロ・ウエストに着けば兵隊さんがシグネチャー・サーヴィス受領の書類を持ってきてそれに僕がサインして、晴れてデイプロマテイック・パウチのお守りをする責任を解かれお仕事終了。が、問題は次の日に起こりました。

クリスマス間近、ピークシーズンは北米国内便にかり出される事が多く、翌日はそのお客さん、ユナイテッド・パーセル・サーヴィス社からの契約で、独國フランクフォートからフロリダ州はオーランドまで空便を回送するお仕事です。今でもその便の飛行計画書を持っています。搭載貨物なし。予定飛行時間10時間14分。大西洋横断トラックは経路A。平均向かい風が49ノット。搭載燃料168,450リッター、予定消費燃料131,353リッター。離陸重量292トン。外部点検を入念に済ませ徐氷液をたっぷり翼と胴体にかけてもらい寒い曇天の朝空へ離陸しました。10時間強の長丁場です。巡航に入ったらオーヴンでパンを温めてから何を食べようかなど頭に浮かんでいた途端、離陸後十分もしない高度で、エンジン火災の警報鈴がけたましく鳴り響きます。警報鳴ったのは第三エンジン、操縦席からは全く目視できません。ありひゃ〜、機長のビルさんはぼくとコンビを組んで何十年、兄弟船の様に息の合う仲間だったので、慌てず騒がず訓練された通りの手順をこなします。まず警報鈴をキャンセル、火のついたエンジンを火災警報器で再確認、スラストレヴァー(スロットル)をゆっくりアイドルに戻し燃料を切りエンジン停止。頭上のエンジン消火器のスイッチを引き消火剤噴霧のスイッチを押す。ストップウオッチを起動させ30秒を計ります。その間に緊急チェックリストを出し無線で地上へ通報。火災探知機が消火完了を示した所で緊急引き返しのチェックリストを読んでその後エンジン火災緊急チェックリストそ上から一つずつ操作確認し、少し時間が余ります。オレゴン州の本社運行管理に衛星電話で事情を報告しフランクフォートの運行所にも連絡を入れ我に帰れば着陸まであと10分。着陸チェックリストを読み上げもう一回ドジ踏んでいないかパネルを再確認、油圧、電気、圧縮空気全て正常です。該当エンジンは停止して火災も消えたハズですが、チェックリストに従い最終着陸体制に入った所で2個ある消火器の2個目を念の為作動させます。まずい事に天候が悪く降りても降りても地上が見えません。結局地上から千メートル位の場所で滑走路確認。あとは通常着陸、逆噴射もそんなにかけず滑走路のど真ん中で停止すると消防車が数台追っかけてきてくれ炎上した(はず)のエンジンを目視点検、炎も見えず異常なしとの連絡でゲートに戻ります。無事駐機場まで辿り着き全ての仕事を終え問題のエンジンを見に行くと、矢張りデージ焦げていました。怖かったのは火災探知機も燃えちゃったので一旦消火出来たと思っていたんですが実際はもうちょっと燃えていたみたいで、まあ、これが大西洋のど真ん中で起きなかったのが僕の悪運の強い所か。以前成田空港に故障で緊急着陸した時の書類の製作と同程度の手続きを恐れていたのですが、独國側はびっくりする程後始末が簡単でぼくらは程なくして開放、宿に戻り寒い独國からフロリダへの逃避叶わずの寒いクリスマスでした。。。。

火災の原因はジェットエンジンの圧縮側からの高温圧縮空気を制御する管が破損したのが火元だったそうです。


ここまで燃えたと言う事はかなりの高温に達したのでエンジンを支える支柱に影響がないか、ロッコウェル硬質試験と言うのを行わないとなりません。


画面中央が発電機やら始動機に動力伝達する歯車箱。丸い穴は発電機冷却用の穴。4つのごっつい配線が発電機。右側の黒いものは発電機をエンジン回転数にかかわらず一定の回転数でまわす為のコンスタント・スピード・ドライヴと言う、油圧斜面ポムプで動く装置。専用の油圧回路と冷却装置が付いてます。その下の網が圧縮空気で回るスターター。右の焦げた太いパイプはそのスタータに送る圧縮空気の管。上はエンジンの潤滑油のタンク。


そのユナイテッド・パーセル・サーヴィス社はトラックで地上運輸から始めた会社で1980年代、その航空部門を開設する際の創立立ち上げ後、数年間の運行は全て弊社に任されていました。その関係で毎年冬になると彼らの本拠地のケンタッキー州はルイヴィル(地元民は限りなっくルーヴォーと発音します)に2週間ほど詰めるんですが、どう言う訳だか我々の指定される宿の近辺には食堂と言う施設が全くなく、ぼくらは常に食べ物、食べ物と会社側に文句を垂れるのですが、解決策が見つからず、毎年悩まされました。皮肉な事にこの宿のお隣がナント、ケンタッキー・フライドチキン社の総本社。そのお隣で空腹に悩まされるとは。。。これもクリスマスの思い出。

もう一つの思い出は、以前流行ったアクション物の、俳優ブルース・ウィリス主演のダイ・ハードの連続物。そのダイ・ハード2にウチのヒコーキが使われる事になり会社は大騒ぎになります。その物語の想定がこれまたクリスマス帰省の筋書きで、ぼくらはクリスマス・ピークの大忙期がピタッと終わるクリスマス・イヴに詰め先の宿で必ずクリスマス・イヴになるとどこかで放映しているこのダイ・ハード2を見ながら一杯やるのが習わしでした。。。因みに銀幕中でブルース・ウィリスが翼の上で敵と格闘後、エンジン・パイロンにある扉を開け燃料がズバズバ漏れ出しますが、実際にはそんな装置、ありません。実際に機が爆発するのは巨大な模型を制作して実行しました。



クリスマスが想定時期の良い影視。その一。1975年配給、シドニー・ポーラック監督、若きロバート・レッドフォード主演のコンドーの三日間。結構現実味のある筋書き。レッドフォードがヴェロ・ソレックスに乗ります。最後の傭い殺し屋の助言が良い。”多分それはこう言う風に始まるんだ、3月の春の最初の暖かい日に歩道を歩いていると一台の車が近づき、中から知人が、いや、信頼できる知人が出てきて笑顔で挨拶する。車の扉は開いたままで、乗せていってあげようと彼は言う。。。” 有名な場面です。フェイ・ダナウェイも若かった。。。



クリスマスが想定時期の良い影視。その2。忘れられぬ情事(An Affair to Remember)。1994年にも再度、作り直されてそれは客船が航空機に変わっていますが、それはそれでアネット・デミングの演技が良く、キャサリン・ヘップバーン最後の演技として知られています。この題材、自体は元祖が1939年の同名のなんですが、矢張りキャリー・グラントとデボラ・カーの共演が素晴らしいと思います。最後の場面でカウチでリラックスしているデボラ・カーに話しながら次第に事実を悟っていき部屋を探しまわすキャリー・グラントの場面は涙が出ずにはいられませぬ。。。”貴方が絵を描けるなら私は歩いて見せるわ。。。” 



日本ではクリスマスには7~Eleven便利店でストロウベリー・ショートケーキを買って、ケンタッキー・フライドチキンを食べる習慣があると我が国では常に報道されていますが、あれは本当なのかしら。。。。

そのKFC。昔、アジアから北米へ飛ぶお仕事の際、有償貨物目一杯積んで飛ぶ我々貨物やさんの古いジャムボ機は最大離陸重量に制限されてアンカレッジまで無着陸で飛ぶ燃料を積めないので途中、日本か極東ロシアで給油に立ち寄ります。ある寄港地でのハナシ。着陸して直ぐ燃料補給して出発まで丁度1時間程度なので入国もしませんし通過扱いで地上業務を受託している会社さんも慣れているもんでトントンとんと事は運びます。そのある日、陽気なキチョーさん、そう言えばここで以前故障して立ち往生した時、ターミナル内のKFCで食べたチキンが美味かった。あれ、時間があったら買ってこれないかねえ?と仰います。その件、受託会社のネーネーに相談すると、あっ、KFCあります。月末請求なら何とかなりますから、今からいってきますと踵を返し四輪駆動の白塗り日産キャラヴァンかなんかですっ飛んで行きます。燃料補給もおわり飛行計画書も受理されそろそろ扉を閉めるんだけどな、と思っていた際、間髪のタイミングでネーネーがあの紅白色のチキンの入ったバケツとコンデイメンツの袋を両手に抱えながら、ハイヒールで階段を上がってきました。だー、いっぺーにふえーデーびる!揚げ鶏の匂いぷんぷんさせながら扉を閉め2階へ上がり出発です。巡航に入って皆で小分けしたジューシーなチキンの美味しかった事よ。キチョーさんにデージ褒められた自分でした。しかしこの後に続きがあり、この経由地でのKFC美味の話、口コミで同僚の間に伝わり、一人、また一人と、ここでKFCを無理矢理頼む連中が増え出して、1ヶ月もするとその請求書が主任機長に届き、こりゃ一体何だべ?と聞かれ皆が一斉にぼくに向かって指をさすので白状せにゃならず、その後、KFCの注文は途絶えたとか。受託会社もありゃ一旦税関に届け出なきゃならないので難儀したと、僕のせいでその節はご迷惑おかけしました。それに比べてサウジアラビアの帰りに、キャナダはニューファンランド州のギャンダーで給油の際、上空から無線でピッザの出前頼んだのは簡単だった。。。。。



 
Posted at 2020/12/28 06:23:29 | コメント(0) | トラックバック(0) | 日記

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