愛知県名古屋市の名古屋港ガーデン埠頭水族館南側緑地護岸で艦艇の一般公開が行われました。
名古屋港には練習艦隊の一般公開や伊勢湾マリンフェスタなどで護衛艦が公開されていますので、海上自衛隊とは縁がある港といえるかもしれませんね。

水族館南側緑地内ステージでは陸上自衛隊中部音楽隊の演奏が行われました。
西部警察PARTⅢのメインテーマ「ワンダフルガイズ」や行進曲「軍艦」など、見事な演奏を披露しました。

一般公開されたのは第2護衛艦群第6護衛隊の護衛艦DD-111”おおなみ”(満載排水量6300トン)です。
”おおなみ”は””たかなみ”型護衛艦の2番艦で平成15年3月に竣工しました。
それではじ~っくりみていきましょう。

護衛艦”おおなみ”の127ミリ54口径単装速射砲です。
”たかなみ”型護衛艦は”むらさめ”型護衛艦の改良型ですが、外観で一番大きな違いがこの127ミリ砲です。
イタリアのOTOメララ社製の自動砲で、射程は24km、毎分40発の発射速度の能力があると言われています。
海上自衛隊では護衛艦”たかなみ”型とミサイル護衛艦”こんごう”型に装備されています。

護衛艦”おおなみ”のマストです。
エントツの右側にある巨大な金魚蜂のようなドームはスーパーバード衛星通信アンテナ、その隣に円筒状のものが連なっているものが2つ装備されてるのがチャフ投擲装置Mk36.mod6、その隣にあるスリットの入った板状のものは機関銃座の防弾盾です。
この機関銃座は.50口径機関銃Mk2をすえつけることが出来ます。

ヘリコプター甲板に搭載されているSH-60K哨戒ヘリコプターです。
SH-60KはSH-60Jの後継で、拡大発展版です。
4つある護衛艦群に各8機が割り当てられ、護衛艦8隻とヘリコプター8隻からなる”八八艦隊(元々は旧海軍の戦艦八隻、巡洋艦八隻の八八艦隊から)”を形成しています。
護衛艦”たかなみ”型にはヘリコプター1機が装備されていますが、”たかなみ”型は艦体が大型化して甲板が比較的広く、巨大なヘリコプター格納庫を装備しているのでヘリコプター2機の運用が可能です。

護衛艦”おおなみ”の艦橋です。
ミサイル護衛艦”こんごう”型や”あたご”型と比べると背の低い、護衛艦のスタンダードな形になっています。
艦橋上にある大型の6角形の板はOPS-24対空レーダです。
周波数範囲はLバンドを用いてるアクティブフェイズドアレイレーダとなっています。
その上にある白いドーム状のものはヘリコプター用のデータリンクアンテナ、その上の灰色の円筒状のものはNOLQ-3電子戦装置、マストの頂部にあるのはORN-6 TACANアンテナです。
それでは中に入ってみましょう。

三連装短魚雷発射管を上から。
口径324ミリで、空気圧を使って魚雷を投射します。
潜水艦に対して使用しますが、対潜装備としてはロケット魚雷(ASROC)が他にありますが、短魚雷発射管はASROCでは対処できない近距離を補完するようです。

チャフ投擲装置Mk36mod6です。
護衛艦の防空網をくぐりぬけてきた対艦ミサイルに対処するため、レーダー波を反射する物体を空中に散布する装備で、対艦ミサイルのレーダーを欺瞞させるものです。

こちらは艦橋前に設置されている高性能20ミリ機関砲(20ミリファランクス CIWS Mk15)です。
白い円筒状の中には射撃管制装置が組み込まれていて、全自動で射撃が行われます。
機関砲はF-15やF-4に搭載されているM61ヴァルカン砲の仕様違いで、実に発射速度は毎分3000発という猛烈な高速射撃で目標に対処します。
このシステムは、敵部隊から発射された対艦ミサイルから艦を守るための最後の切り札で、護衛艦の対空ミサイルなどで撃ちもらした対艦ミサイルに対して20ミリ砲弾を射撃して撃破するものです。
そのため近接防衛システム(Close-in Wepon System=CIWS)と呼ばれています。

90式艦対艦誘導弾(SSM-1B)発射筒です。
従来は対艦ミサイルにハープーンを搭載していましたが、護衛艦”むらさめ”型以降には国産のSSM-1Bを搭載しています。
航空自衛隊で使用している80式空対艦誘導弾(ASM-1)から開発された陸上自衛隊の88式地対艦誘導弾(SSM-1)を艦載型にしたもので、100km以上の射程があるとされています。
これを4本セットにした4連装(写真では3連装)の発射筒を2セット装備しています。

こちらは”おおなみ”に搭載されている搭載艇(内火艇)です。
救助や港内での連絡・運搬などに用いる小型の船です。
これを右舷と左舷に計2隻搭載しています。
それでは艦橋に入ってみましょう。

こちらは護衛艦”おおなみ”艦橋にある艦長席です。
赤・青ツートンカラーのカバーがかぶせてありました。

”おおなみ”の操舵輪です。
これをまわすことで舵の角度を変化させて進行方向を変えます。

”おおなみ”の艦橋にあった戦闘体制表示盤です。
非常にシンプルですが、必要な部署が戦闘態勢になっているかどうかが一目瞭然にわかるようになっています。

艦橋から見た前部甲板です。
手前の巨大な白いものが高性能20ミリ機関砲の火器管制装置、いくつも並んでいる四角いフタのようなものはミサイルの垂直発射装置(VLS)Mk41で、32セルの発射装置が配置されています。
垂直発射装置は従来の発射装置と異なり、この中にミサイルが納められている為、弾庫から発射機に1発づつ装填する必要がなくなり、矢継ぎ早にミサイルを発射することができます。
”たかなみ”型はこのVLSにシースパローまたはESSM(発展型シースパロー)艦対空ミサイルとASROC対潜ロケットを装填しています。
ではヘリコプター甲板にいってみましょう。

護衛艦群には哨戒ヘリコプターが8機づつ展開されています。
こちらは館山基地の第21航空群第21航空隊の所属のSH-60Kです。
SH-60は対潜哨戒任務というだけでなく、対水上レーダーを使って水上目標の監視・警戒やデータリンクを使っての情報の共有や中継など戦術システムの一角を担う重要な役割が与えられています。

SH-60Kの最も象徴的なものがこのコクピットの計器盤です。
従来のアナログ機器がほとんどなくなり、大型のディスプレイが並んでいます。
従来の機体に比べて大幅にデジタル化が進んでることがわかります。
中央のものは戦術情報処理表示システムで本機から得た情報を表示したり、また味方部隊からデータリンクで送られてきた情報を表示することができます。

こちらはSH-60Kの機体後部に装備されたAN/ASQ-81 MAD(磁気探知装置)です。
海中に大きな金属が存在することでかすかに地磁気が変化しますが、これを感知して潜水艦を発見するシステムがMADです。

晴れていた空が急に暗くなり、しかも風が強くなってきました。
危険と判断されたのか、急遽SH-60のメインローターをたたむことになりました。
めずらしいメインローターをたたむシーンを目撃できました。
エンジンがかかっていないので、電源ケーブルをつかって機外から電力を供給しています。

メインローターをたたみ終わったところです。
非常にコンパクトになってしまいました。

風雨が非常に強くなってきました。
まだ公開の時間内でしたが、既に公開は中断になってしまいました。
ものすごい風雨のために200メートルぐらいしか離れていないポートビルから見ても霞んでしまっています。

15時半頃には雨が落ち着き、公開も再開されたようです。
晴れのち暴風雨のち曇りという非常にエキサイティングな天気でしたが、護衛艦の見学という貴重な時間を過ごすことが出来ました。