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2014年04月24日

マツダMR-90のすべて



 「死んだ筈だよ お富さん」
 ある一定の年代以上の方であれば一度は耳にしたことがあろう、昭和29年に流行語となった大ヒット曲「お富さん」の一節です。

 自動車の世界においても、お富さんのように死んだ筈(生産終了)と思っていたら、生きていた(再生産)といった事例が過去に何度もありました。 もうすぐEVとして蘇るというデロリアン、トヨタのシェンタ、三菱のトッポ、MGのRV8、2輪だとスズキのGSX-R1100カタナといったあたりが有名どころでしょうか?

 そんな中でも、とりわけ再生産が大好きなのがマツダです。

 1986年に生産終了したHB型ルーチェを小型タクシー用に改装して1989年から1995年まで販売していたカスタムキャブ。


 国内ではカペラカーゴとの入れ替えで1988年に生産が終了したLA4型ルーチェバンを中華の地において合併会社の海南汽車が1992年から再生産した海馬HMC6470旅行車。

 この中華ルーチェはトヨタ4Yエンジンに換装されながら21世紀初頭まで生き延びました。 まさに死霊のはらわた。


 そして、その魔の手は遠く離れたインドネシアにも及んでいたのです。

 マツダは60年代に戦時賠償の一環として商用車(Bシリーズ)を輸出したのを皮切りに、1971年には現地生産を開始、1974年の新車の輸入が禁止されて以後は、その時代ごとの最新モデルをインドネシアで生産してきました。


 1985年にはインドネシア庶民の国民車を造るべく長年スズキ車を現地生産していたインドモービルグループと提携、シンプル・堅牢・廉価と三拍子揃ったFA4型ファミリアAPを生産終了から10年経った1990年から再生産します。


 伝説のロードムービー「幸福の黄色いハンカチ」内で、高倉健が倍賞千恵子の貞操を奪いに行くアシとして大活躍した、武田鉄矢の愛車でお馴染みの1台ですね。


 とはいえ、インドネシアでも日本と同時期に一度現地生産されていたうえ、当時の最新モデルであるBG型ファミリアと併売される関係上、幾らなんでも現役時代のまま生産とはいかず徹底的なモダナイズ化が図られました。

 そこで用意された特選素材がこちら、アランドロンのGC型初代FFカペラ。


 この2台が悪魔合体 !!



 高倉健×アランドロン、それとも武田鉄矢×アランドロン? カペラのヘッドライトが付いたファミリアこと「マツダMR-90」の誕生です



 ヘッドライトのインパクトに霞がちではありますが只の手抜きという訳でもなく、グリルとバンパーは新規に部品が起こされ、リア廻りもテールレンズ、ガーニッシュ、バンパーなどをBG型ファミリアのイメージ を取り入れた意匠のものとしています。


 3ドアの設定はなく5ドア仕様のみが生産され、少しでも近代的に見せるためにピラーをブラックアウトした仕様が1991年モデルに追加されました。


 また、オプション用品でフォグランプやアルミホイール(SA22CサバンナRX-7流用品)、リアスポイラーなども用意されていました。


 既に熟成され尽くした感のある機関部分は、最終モデルまで特に変更されることなく、昭和53年にファミリアAPに追加されたUC型1,4リッターが5速MTと組み合わされて搭載されています。


 ダッシュボードは、ファミリアAPのGLグレード以下に用いられていたシンプルな形状のものを採用。ステアリングを後年モデルから流用すると共に、新たにエアコン吹き出し口が設けられています。


 このマツダMR-90は、年間の自動車販売台数が20万台以下に過ぎない当時のインドネシアの市場規模からすれば強気ともいえる月1500台という生産目標を掲げて販売を開始します。

 ところが、いざ蓋を開けてみれば価格の安さからそれなりには売れたものの、こんなしょっぱい車をインドネシアで新車が買えるようなブルジョワ階級が欲しがる筈もなく見事に販売不振に陥ったのでした。


●1992年:マイナーチェンジ



 五家体制時代の本山と同じく記号+数字の名前は不評だったようで、このマイナーチェンジと同時に5ドアは新たに「Baby Boomer」 (ベビーブーマー)を名乗り、フロントグリルには使用が開始されたばかりとなる、ゾロアスター教の「炎」をイメージした最新CIエンブレムが掲げられ反撃の狼煙をあげるのです。


 若者向けというキャラクターづけが色濃くなり、バックドアにはBF・BG型ファミリアターボ風のセンタースポイラーとリアワイパーを装備、フロントバンパーに冷却用開口部を増設してリアバンパーはエアロ風味の形状に変更されるなど、スポーティーさが強調されるようになりました。


 さらに販売不振に対するテコ入れに、ベビーブーマーの上級仕様として新たなバリエーションモデル「 Vantrend 」(ヴァントレンド)が追加されます。

 国内では初代FFファミリアの発売以後も継続生産されていたハイルーフバン(輸出仕様ワゴン)にトノカバーやラゲッジネットなどを追加して最新ライバルに対抗しました。

 ベビーブーマーとの差別化の為に採用された角目4灯ヘッドライトも、何処かで見た事があるような?


 はい、またしてもGC型初代FFカペラ用、しかも北米仕様(国内仕様のクーペ前期ターボも同一)です。「良いものだけを世界から」byヤナセ

 角目4灯の採用により場所を奪われたウィンカーレンズはバンパーとフェンダー部分に増設されています。こちらもGCカペラ純正品・・・それに伴いフロントバンパーは新造され、グリルのデザインもベビーブーマーとは異なります。

 リア廻りはフロントほど変更点はなく、せいぜいバンパーとエンブレムがオリジナルと異なる程度でした。


 ベビーブーマー、ヴァントレンド共にダッシュボード上半分は新形状のものとなり、デジタル時計を組み込めるスペースが生まれています。

 ヴァントレンドのみBFファミリア用の3本スポークステアリングが奢られ、パワーウィンドも設定されました。


●1994年:マイナーチェンジ



 大家族社会のインドネシアのユーザーニーズに合致した、人も荷物も載せられるヴァントレンドの追加により販売は持ち直しを見せます。
 しかし、その影に隠れる形でベビーブーマーの販売は震わず、このマイナーチェンジと同時に生産が打ちきられてしまいました。(但し在庫が多数あったようで販売は継続)

 その一方で好評を博していたヴァントレンドは再びバンパー形状の変更を受けています。

 この仕様が最終モデルとなり、マツダとインドモーターとの提携が解消される1997年まで生産されました。


 以上がメーカー純正の仕様となりますが、東南アジアのお約束ともいうべき怪しい街工場製カスタムボディの存在も忘れてはなりますまい。

 お隣のタイでは1997年頃まで、1967年にデビューした2代目ファミリアのピックアップ(マツダM1400)が生産されていましたが、3代目ファミリアのピックアップなんていうのは如何?

 街工場と言っても大型バスのボディをガラスまで自前でハンドメイドしてしまうレベルがゴロゴロしているだけのことはあり、荷台の仕上げなどのレベルはメーカー製と較べても見劣りしないレベルです。


 もっと凄いのはこちら、日産ADマックスから後ろの箱を流用したフルゴネット仕様です。


 答えは得ました、これが東洋の神秘というものだったのですね(笑)

 いやはや東南アジアの方々のバイタリティーには本当に頭が下がる思いで胸がいっぱいです。
ブログ一覧 | マツダ | 日記
Posted at 2014/04/24 03:03:09

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この記事へのコメント

2014年4月24日 8:11
角目が最新トレンディなのですね。
元々の角目2灯よりも押しが強いのでこの地域の方々にはお好みかもです。
しかし内装も含めて当時の金型が残っているのはすごいですね。
フロント周り以外の補修部品は輸入すれば大丈夫そうです、日本では殆ど絶滅してしまいましたけれど。
コメントへの返答
2014年4月24日 18:41
異型ライトだと幅の狭さが強調されるので角目4灯の方が纏まりが良いですね~

オリジナルモデルを一度現地生産する際に大半の部品を国産化していたので再生産出来たみたいです。

ただ、もう部品供給が怪しくなってきてるようでインドネシアマツダHP内のBBSには部品を作ってという嘆願がいくつかありました。
2014年4月24日 10:05
金型って結構残ってたりするんですよね。
金型ひとつに億単位の金がかかってますからその工場の財産なわけで。

しかし東南アジアのバイタリティはすごいね。
使い捨てじゃないんだw
コメントへの返答
2014年4月24日 18:46
ミャンマーで最近まで作ってたB600は日本から必要なくなった金型やら工作機械を持って行ったみたいですが、インドネシアの場合は1974年の新車輸入禁止処置の際にプレス工場を現地に作っていたので金型は自前のようです。

でも共同生産提携から生産まで5年かかってるんで状態があまり良くなかったのかもしれませんね?
2014年4月24日 12:55
ピックアップトラックの顔がJTピアッツアの雰囲気に似てますね。
コメントへの返答
2014年4月24日 18:49
画像を載せてない魔改造車に丸目4灯化されたものがあり本当にjtピアッツァにクリソツでした(笑)

ちなみにインドネシアでは、ホールデンブランドでPFと750ジェミニを現地生産していたみたいです。
2014年4月24日 23:22
おお!カスタムキャブですか!
先日の旧車探索で発見しました!
ただその個体で一つ疑問だったのが、SG-Sのエンブレムが付いているのにDX専用の丸目ヘッドライトが付いていたんですよね…(^_^;
こんな仕様があったんですかね…

そして、先日は謎グレードを解明して頂き本当にありがとうございました!
コメントへの返答
2014年4月25日 1:46
初代カルタス前期もヤバかったですが、お仕事車の宿命で全然残ってないカスタムキャブ丸目も凄いです。

クラウンとかでも丸目のDXにロイヤルサルーンタクシーとか貼るのがタクシーの運チャンの間で流行ってたみたいなのでエンブレムチューンの可能性が高そうですね。

ミラキャロットは先代の70だとエアコン、ステレオ付き仕様だったので200も似た仕様だと思います。

レックスの資料は行方不明なので捜索中です。

2014年4月25日 0:15
いいですね,悪魔合体w
現代なら,さながらBFファミリアあたりに,初代アテンザあたりの横長ライトをくっつける感じですかね?エンジンまで当時物で行っていたのはすごいですが,車体は現地生産としても,機能部品はどうしていたんでしょうねぇ?ノックダウンだとしたら,サプライヤ泣かせです.

最後のAD MAXとのキメラ,ドアロックが外側シャフト式のトラック用になっていたり,テールレンズが元のやつだったり,ホイールが妙にカッコイイ塗り分けだったり,こういう腕のあるショップが日本にもたくさんあったら楽しいんですけどね〜
コメントへの返答
2014年4月25日 2:06
70年代は部品の輸入はOKだったみたいですが、80年代以降は国産化が義務付けられ、市場規模が小さいのに半端なく投資せにゃならん状態が97年のアジア通貨危機を受けて2000年に緩和されるまで続いていたようです。

掲載してないですが、本当にコレにアテンザっぽいヘッドライトが付いた改造車がありましたよ~

ADマックスの箱仕様もですが、クオリティ高すぎてメーカー製かと思いました。
同じ魔改造でもガムテープで貼ったりしてる中華あたりとは国民性の違いがモロに出ていて面白いです。



2014年4月25日 7:31
マツダのリサイクル車?と言えば起亜のコンコードやポテンシアは知ってましたがまさかインドネシアにまであったとは!
やたら長いフロントオーバーハングやカペラのヘッドライト装着で幅か狭くなったフロントグリルに無理矢理感はありますが、あとは意外とよく纏まってる気がします。
ワゴンの方がバランスよく見えますね。
コメントへの返答
2014年4月25日 18:25
実はボディパネルには一切手が入ってないのですが、ライトがデカイのでフロントが長いように錯覚しちゃいますよね。

これがデザインコンセプトが違い過ぎるクロノス辺りと同時期に店頭に並んでいたのだから、実際以上に世代の差を感じそうです。

起亜系は純粋な自社製じゃないので今回は取り上げませんでした。
2014年5月5日 7:54
まあ山田洋二の「幸せの黄色いハンカチ」自体が、アメリカの大ヒット曲、「幸せの黄色いリボン」そのまんまの焼き直しだからね・・w
コメントへの返答
2014年5月10日 22:34
最近またアメリカで焼き直しされた映画「イエロー・ハンカチーフ」では、ファミリアじゃなくてアメリカンなマッスルカーが使われたのがなんとも・・・

ここで赤いマツダ3とかだったら面白かったんですけどね~
2014年5月5日 7:58
下級車のボディーに上級車の前後ライトを架装して高級に見せる、というのはアジアではよくあるらしく、ミラージュのボディーにギャランの前後ライトをつけたプロトンがマレーシアでよく走ってました。
コメントへの返答
2014年5月10日 23:26
プロトンウィラのことでしょうか?

調べてみたら、ランサーをベースにヘッドライトとバンパーは4代目ミラージュのものが、テールライトは4代目エテルナのものがそれぞれ採用されているそうです~
2014年5月8日 2:04
初めまして!

以前から現地生産シリーズを拝見しており、日本車の海外仕様は色々知ってるものの、この車の存在は名前だけ知っていただけで初見だったので驚きました(笑)

このファミリアにカペラの顔は魔改造さと「たまらなくテイスティ」感がほんの少し垣間見れますね(笑)

しかしよく見てるとGDのカペラカーゴみたいな顔に見えてくるのが不思議ですねw

ワゴンが追加されて火の玉エンブレムになった型を見てると不思議と92年頃にマイチェンしたカペラカーゴに似てるんですよね(笑)

また現地生産車シリーズ楽しみにしております!
コメントへの返答
2014年5月10日 23:32
どうもはじめまして。
こんな駄ブログを見ていただいてありがとうございます。

ウィキにすら載ってない変な仕様を中心にお届けしております(笑)

魔改造といっても中華あたりとはセンスが雲泥の差で、言われなければ専用部品にしか見えないのが匠の技かと。

アジア通貨危機のあおりで生産が終了してなければカペラカーゴみたいに現行のカモメエンブレム付きになってたかもしれませんね~

MR90ほどじゃありませんが、おかしな仕様が盛りだくさんのインドネシアねたを暫くの間はお届けしようかと思っております。

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「コレを見に行って大渋滞に巻き込まれた挙げ句、今までと変わらず気持ちよくカチ回して乗ってるんですが・・・」
何シテル?   04/22 20:26
ほら今日も、まゆげのおじちゃん探してくるよ、シケモク車。
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