随分と記憶も薄れつつある
前回のネタ車、フィリピン製L200系ミラのピックアップ「ダイハツ・レガシィ」を覚えておいででしょうか?
実はミラのピックアップボディはこれだけではなく、L200系の先代モデルに当たるL70系にも公式にもメーカーが公式に量産したものが存在しているのです。
その原点と言えるのが、1987年の第27回モーターショーに参考出品された「ミラ・PM/L」

スポーティなリゾートミニをイメージし、TR-XXのリアクォーターをカット。跳ね上げ式リアゲートを持つガラスルーフの2シーターピックアップに改造されています。
まさか後年このコンセプトが、微笑みの国とも言われるタイ王国にて違った形で現実になろうとは・・・まさに東洋の神秘。
ダイハツは当地を代表する3輪タクシー、「サムロー」(トゥクトゥク)の原型となったミゼットの輸出を皮切りに、1959年からタイ市場に進出。

コピー車も数多く作られる中で今なお現役を続けるオリジナルのミゼットも数多く、MP系はカエル頭と呼ばれ親しまれています。
1960年代になると現地法人「ダイハツ・タイランド」社はコンパーノやハイゼットなどの輸入も手掛け、一時はマツダと並びタイ市場シェアの過半を占めるまでに至ります。

しかし1974年に他のASEAN諸国同様、実質的な現地生産が義務付けられるようになって以降はシャレードとハイゼットを細々と販売する冬の時代が到来。
そんな状況を打破すべく、日本で生産が終了したL70系ミラの生産設備を流用する形で開発されたタイ市場専用ミラが1991年に発売となったのです。
3種類のボディがラインナップされ、それら全ての原型となるのが「ミラ・P1」(Pはポーターの頭文字)と呼ばれる2シーターピックアップボディです。

タイにおいて小型ピックアップトラックは税制上の優遇措置があることから最も人気の高いジャンルで、なんでも荷台には人をどれだけ乗せても違反ではないのだとか・・・なにそれこわい
大型バンパーを備えるヨーロッパ仕様をベースに足回りとボディを補強、Bピラー以降をストレッチしてホイールベース延長することで荷台長を確保。なのでタイ製であっても型式は他の輸出仕様と同じL80型になります。
そして「ミラ・P1」にリアシートを設けて4人乗りとしたキングキャブ、「ミラ・SPICY-CAB」(スペイシー・キャブ)
申し訳程度のリアシートとはいえ、座面長がホイールベースの延長分、きっちり取られているので国内のボンバン仕様に較べれば快適かと。
もちろん乗用仕様も忘れられてはおらず、「ミラ・P1」の荷台に東洋ファイバー製レジントップ(FRPルーフ)をボルトオンした3ドア「ミラ・P4」も用意されています。

あくまで荷台に脱着式のシェルフを取りつけたという体裁をとる為、税制上はピックアップとして扱われる脱税仕様(笑)
だというのにリクライニング機構つきリアシートまでもを装備し、アプローズ以上の広々空間を実現。まさにスーパールーミー。
発売当初の「P4」のリアゲートは、ガラスハッチとピックアップと共通のアオリのそれぞれが上下に分かれて開く構造のものでした。
しかし1993年のマイナーチェンジの際、L200に通ずる丸みを帯びた一体形状のリアハッチが新造されています。
また、この脱着式トップという構造を活かした新型コペンばりの着せ替え用ルーフも考案されました。
●リーザというよりかは2代目セルボっぽいクーペ
●アルトハッスル風フルゴネットワゴン
●スペイシーキャブに装着可能なルーフなんてのも

これらは、ある程度以上の纏まった数が流通し、作りも良い事から、おそらく純正オプション扱いだったものと推測されます。
そうした独自色の強い外装とは裏腹に、内装は国内仕様の廉価版に近いものでした。(L200と共通のステアリングは95年以降)
フィリピンと同じく南国につきヒーター系統はオミット。代わりにエアコンが標準装備となり、本来のコントロールパネルの隅に残った風量調整スイッチのボッチっぷりに涙がぽろり・・・

おめーの席ねぇですー
機関はL200系の輸出仕様と共通スペックの2バルブキャブレターED-10型850ccエンジンを搭載、意外なことに5MTのみならず3ATも選択可能です。

1993年以降の生産車は、年寄りに献血を強要するかのようにエアコンをR134仕様にアップデート。
そして1995年にはマイカー需要の高まりに応じるべく、大規模なマイナーチェンジを実施。新たに「ミラ・MINT」(ミント)が発売されます。

ミラ・P4と入れ替わる形で従来のピックアップの亜種から脱却した鋼板製のルーフを持つ本格的な乗用車として再設計。
フロントは新造形のバンパーに変更、TR-XXと同形状のセンターアンテナを装備する程度の違いしかありませんが、Bピラー以降はリアオーバーハングも延長されるマシマシコールにより、最早ミラの面影がありません。

う~む。このガーニッシュは、まゆげハイゼット(輸出仕様S70)用では?
しかも驚くべきことに内装はL200系のダッシュボードをまるっと流用で、おまけにフルトリム化。

なんだかポン付けできそうだな~、と思っていたら既に前列があったとは!!
ピックアップ系2車もリアオーバーハングが延長された「ミラ・ミント」と同一仕様となり、ワイドなタイヤが履けるようにリアフェンダーがオーバーフェンダー化されています。(何故か内装はL70用のまま据え置き)
最終型となる1997年モデルでは、エンジンも全車EFIとなり、当時最新のL500系輸出仕様と遜色ないスペックになります。
これらのタイ製ミラは当時のCセグメントクラス車の3分の1の価格である175000バーツ(当時の為替で約87万円)という安価な価格設定もあり大ヒット。ダイハツの年間販売台数は発売前に較べて50%アップを記録します。
しかし1997年に起こったアジア金融危機の影響はタイにも及び、1995年に年間4000台あった生産台数は1997年に160台にまで急落、翌1998年3月に生産は休止に追い込まれてしまいます。
そして、そのまま再開の予定が立つことなく2006年9月にダイハツ・タイランドは解散となってしまうのでした。
生産終了から16年が経過する現在では、サニトラ的な小型スポーツ車としての人気も高く、外装をTR-XX仕様に改造するのが流行中。これもある意味JDM?
ピックアップなのにムーンルーフリミテッド化した強者も!!

まるで「ミラPM/L」の魂が時を超えて蘇ったかのようではありませんか。
とはいえ、使われている部品の大半がステッカー類も含めて現地製のコピー品というあたり、流石の盗難アジアクォリティ(笑)
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