ご当地ローカルアイドル、略して【ろこどる】が流行の昨今ではありますが、歴代のシャレードにも数々のローカル特別仕様車が存在していました。
その歴史は古く、既に初代モデルの発売直後には、ダイハツ北東京販売が独自の特別仕様車「シャレードSS-Ⅱ」を販売していたことが確認されています。
最上級グレードのXTEをベースに、専用サイドストライプ、エンブレム、アルミホイール、グリルガード&バンパープロテクターゴム、3本スポークステアリングなどを装備し、ボディカラーはサフランイエローとグラスグリーンの2色のみ。

これらは、バッジとストライプ以外の全てがディーラーOPとして扱われている用品でもあることから、ラインで製造されたのではなく販売会社による架装だったものと思われます。
本格的にメーカーが各販売会社の企画によるイレギュラー仕様を製造するには、80年代に入るまで待たねばなりませんでした。
とりわけ元祖として有名なのが、阪神タイガース50周年を記念し、1985年5月に関西地区の販売会社7社が共同で企画・販売した「タイガース・ミラ」でしょう。

よく「優勝記念車」と記述されていますが、発売時期的に祈るほうの「祈念」なのでお間違いなく。
L55初代ミラに同年1月追加された特別仕様車elmy(エルミー)をベースに、ボディ両サイドに黄と黒のストライプが入り、4箇所にタイガースマークが付くほか、ユニフォームと同じ柄のシートカバー、専用ナンバーフレームを装備しています。
その中に気になる1文を発見「タイガース・シャレード」?

当時2代目となるシャレードにもタイガース仕様があったなんて初耳なので、ひょっとして予約数が集まらずにボツになったのかも?
そして、そんな関西地区以上に独自の企画車に熱心な中部地区でも、様々な知られざるローカル特別仕様車が販売されていました。
L70ミラの特別仕様車COTY(コティ)をベースに、TR-XXバンパー、AM/FM電子チューナー、リアワイパーなどを装備した、都会派レディのスポーティマインド・ミニ「Carrot」(キャロット)

4MT・10インチ4輪ドラムブレーキのキャロットCS、2AT・12インチディスクブレーキのキャロットEXの2種類をラインナップ。
ミラ・キャロットは
L200系にもお買い得仕様となり継続され、L500系からは「OZ」(オズ)に名前が変わって現在まで販売される息の長い系譜です。
もちろんミラだけではなく、リーザや3代目シャレードにも、とってもアクセサリー上手な特別仕様車「フィットネス」を用意。

シャレードの場合、TSグレードをベースにカラードバンパー・アルミホイールなどのセットOP「ファッションパック」、エアコン・パワステを標準装備しています。
他にも3代目シャレードには、全国区で販売されながらも記録が残っていない「シャレードGT-ti80」という不思議な特別仕様車がありました。
車名に“80”とあるように、ダイハツ創立80周年&サファリラリーにおけるクラス1,2,3位独占の記念車として、1987年6月から300台が限定販売された筈なのですけど?

おそらく特別装備とされている「スポーツパック」が通常のカタログモデルでも選択可能なメーカーOPでしかない為、正式な特別仕様としてカウントされなかったのではないでしょうか?
なまじっかヨーロッパでは、GT-tiベースの本当にスペシャルな特別仕様「Monte Carlo」(モンテカルロ)を、現地のインポーターが独自に架装している例もあるだけに、この国内仕様の不甲斐なさには溜め息が。

シャレードGT-ti・モンテカルロは、1988年の第56回モンテカルロラリーでのクラス優勝を記念し、西独ツェンダー社製のフルエアロ、アルミホイール(画像下の個体が履くもの)、専用ストライプなどの現地製パーツで武装したエボリューションモデルとなります。
こうして日本以上に特殊な仕様が作られたシャレードと同じく、ヨーロッパでの人気が高い最上級車アプローズも、現地でローカル特別仕様車が開発されました。
その人気ぶりは、ヨーロッパに上陸して間もない1990年、いきなり英国のインポーターがスポーティなオリジナル仕様「16GXi」を発売したことからも伺えます。
ツートンカラー、ピンストライプ、メッシュホイール、リアスポイラーなどを装備、専用の鉄仮面を彷彿とさせるグリルは夢に出てきそうな強烈さ。

フハハハ怖かろう、主に冷却系的に。
もうこれは流石にローカル特別仕様の範疇には当てはまらない気もしますが、ベルギーのインポーターが短期間販売した「Applause break」(アプローズ・ブレーク)なんていうキワモノも。
同国のコーチビルダー「EBS」(エルンスト・ベルク・システム)社の手による、FAブレーク·モジュールと呼ばれるコンバージョンキットは、リアゲートを取り外し、その上からFRP製のシェルフを被せる構造と推測されます。

ほら、リアウィンドの影にはしっかり本来のCピラーが・・・
そういえば中華でも、2代目シャレードのワゴンボディが試験的に生産されていたのだとか。

はい、こういうのは特別仕様車じゃなくて魔改造車って言うんですね、わかります。
このようにローカル特別仕様車の世界は泥沼です。
ダイハツは現在でも販売会社から要望があれば独自の架装に応じているので、これからもローカル特別仕様車は都道府県や国の数だけ増え続けていくことでしょう。
[資料協力:
ミラルゴ@旧パジェロチビさん]