
いよいよ重い腰を上げてバルブタイミングの確認をしてみたいと思います。
分からない事が多いこの領域ですが、無視してマニュアル通りに組んでしまえばそれまでで不具合が出る訳でもありませんが、趣味でエンジンをやるからにはこの辺りもチャンとやらないとね。という事で少しメンドクサイですがやって見る事にします。
オートバイ用4ストエンジンのバルブタイミングは何故だか?軽視されやすいですが、言ってみれば2stエンジンのポート位置の調節みたいな物なので、エンジンの組み手であればしっかりと確認すべき所とも言えるのかな?
ですがなんか難しく感じて、とっつき難いですね。
バルブタイミングについては、以前こちらのブログにも取り上げていますのでご参照下さい。
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https://minkara.carview.co.jp/userid/2092714/blog/46672332/
583カムと5F0カムの比較の記事はこちらから
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https://minkara.carview.co.jp/userid/2092714/blog/47133075/
まずは準備ですが、フライホイールに360度の分度器を付けるのですが、今回はコレで代用します。
Excelで作って印刷したのをテープで張り付けました。ピストンのTOPもTマーク合わせなので、想定の精度は大方に成ります。
次はバルブのストロークが分かる様にダイヤルゲージの取り付け。ストロークは10㎜を超えてしまうのでロングストロークの20㎜のゲージを用意しました。メルカリで3000円位で出ていた時に買っておきました。
エンジンはバルブスプリングをホムセンバネに組み替えました。これでバネの反力でクランクが回されてしまうのを防止します。バルクリは今回0mmに設定しました。本来は普通にバルクリを取っておくんですかね?今回は計算で考慮する事としました。
これでクランク角度に対するリフト量を確認する準備が出来ました。
サクッとインテークのリフトを見てみました。
最大リフトは 9.69mmしかありませんでした。
想定より0.5mmリフトが小さかったですが、5万キロ走行の中古カムとロッカーアームだからなのかな?新品の用意が無いので今回はここまで。
インテークの作用角はサービスマニュアルより
開き BTDC 40°
閉じ ABDC 64° となっているので 284°と算出できます。
作用角が284°となるリフト量を見ると大体250μmリフト時でした。
標準のバルブクリアランスが0.1mmなので、
150μmリフト相当になります。
YOSHIMURAカムと同じ1mmリフトでは、
245°の作用角に成っていました。ST-1が252°なので7°差なんですね。
次はエキゾーストカムです。
最大リフトは 9.8mmでした。
こちらも想定より0.4mmリフトが小さかったです。
エキゾーストの作用角はサービスマニュアルより
開き BBDC 72°
閉じ ATDC 32° となっているので 284°と算出できます。
作用角が284°となるリフト量を見ると大体300μmリフト時でした。
標準のバルブクリアランスが0.15mmなので、
150μmリフト相当になります。
インテークと数字が揃いましたので綺麗に計測が出来ていたようです。
ノーマルカムの作用角の表記は150μmリフト時の値という事が分かりました。どちらもランプの終わり、リフトの始まりの起点の所を基準としているようです。
YOSHIMURAカムと同じ1mmリフトでは、
241°の作用角に成っていました。ST-1が248°なので、こちらも 7°差なんですね。
結論
YOSHIMURAカムと同じ「1mmリフト表記」で横並びにすると、
ヨシムラST-1(カタログスペック)
INT 252° 11.3mm
EXH 248° 10.8mm
88- 5F0ノーマルカム(5万キロ中古)
INT 245° 9.69mm
EXH 241° 9.8mm
差
INT 7° 1.61mm
EXH 7° 1.00mm
純正カムのサービスマニュアルの作用角表記はバルブクリアランスを中央値に合わせた状態で「150μmリフト表記」になっている。
YOSHIMURA ST-1との差は結構大きいですね。
エキゾーストとインテークのデータを一緒にグラフにしました。
絵として面白いかな? オーバーラップは大きくは無いようです。多分。
続いては、新品のチェーンに交換してフルリフトのタイミングがどれだけズレるのか?を確認して、伸びたチェーンの影響を見たいと思います。
新品に交換した結果は、1度未満の変化でした…。インテークのフルリフトが105°位だったのが104°位に成ったかな?くらいです。思いのほかチェーンの伸びはバルタイに影響が無いようです。
次回、583 初期型ハイカムの測定予定です。(折角20mmストロークのゲージを購入したのでリフト10mmを超えて欲しい)
こういうの、誰もWebにアップしていなので、グラフを見るの面白いですね。
誰も真似をしてやる人は居ない?と思いますが、フライホイールのメモリは360度ピッタリになる様に何度か縮尺を合わせて作るのと、目盛の読みは0.5度刻みで読み取った方がデータの比較をする時に精度が良いかも知れません。
豆知識のコーナー↓↓↓
リフトの低い所をアップにしました。リフトがなだらかに始まって300μmリフトを境いにリフトの勢いが激しく成っています。
このなだらかなスロープの事を「ランプ」と言い、カムのリフトの始まりでロッカーアームとバルブがぶつかり押し込み始める所の衝撃を緩和する為のスロープに成っています。高速道路に乗るところの加速区間の事を「ランプ」って(昔)言いますよね。それと同一の意味だと思います。
なのでバルブクリアランスが広がってくるとランプが使えなくなって打音が出る仕組み。
ラインの位置がバルブクリアランスの設定値なので、ランプの中央を狙って設定がされているようです。
エンジンが熱を持ってくるとカンカン言うのは、シリンダーヘッドが熱で膨張し過ぎてバルブシートとカムとの距離が遠くなってしまい、バルブクリアランスが広がってしまいランプが使えなくなって打音が出てしまうメカニズム。なのでヘッドへのオイルラインのバンジョーボルトの穴を拡大して、ヘッドにオイルを出来るだけ多く流してヘッド自体を冷却するのが理に適っています。当然強化オイルポンプも有効です。ヘッドは適正なバルブクリアランス維持のためにオイルで冷やせ冷やせです。
参考の整備手帳へのリンクです
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https://minkara.carview.co.jp/userid/2092714/blog/46632760/
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https://minkara.carview.co.jp/userid/2092714/car/2422595/6704496/note.aspx
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https://minkara.carview.co.jp/userid/2092714/car/2422595/6718588/note.aspx
スポーツ用のカムなんかはリフトのスピードが早く(グラフが立ち上がる様に)設定されているので、それに合わせてランプが小さくそしてキツく設定されていてバコーンとリフトさせるようです。ノーマル純正カムは音を気にしてスロープはなだらかで大きめ。なので同じスペックでも実リフトの面積はスポーツカムの方が大きかったりすると聞いた事があります。その代わり音は大きめ。
カムの打音=ランプを使用しない、バルブとカムとロッカーの想定以上の打撃音、なので各部の摩耗を誘発してしまいます。大事なんですね「ランプ」。
カムも色々あって面白いですね。
Enjoy!SR
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Posted at
2023/08/06 02:39:53