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2024年05月10日 イイね!

ハイオク論争(2)

ハイオク論争(2)ハイオク論争(1)からの続きです。



次にノッキングを考えてみたいと思います。


ノッキングをいきなりイメージすると先入観が邪魔してしまうかも知れないので、少し遠回りですがディーゼルエンジンの燃焼から考えていきたいと思います。

ディーゼルエンジンでは火花点火のガソリンエンジンとは違い、圧縮工程で空気だけを圧縮して、高温高圧となった圧縮空気中に燃料の軽油を噴射する事で点火しているのは皆さん承知ですね。
この燃焼形態をとる為に軽油には「燃え易さ」が燃料の性状として必要になるのですが、この燃え易さの指標が「セタン価」と言われる指標です。

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下手な絵で御免なさいですが、セタン価が適正な軽油を使用した場合は燃料の噴射(左)に対して、適正な燃焼(右)が得られるわけですが、、


alt

セタン価が低すぎる(燃えにくい)燃料を使用すると、ノズル付近で燃焼出来なかった燃料が火炎から飛び出して生の燃料のまま燃焼室に分散してしまう事に成ります。


alt

その飛散した燃料は、次の燃調噴射の燃焼で発生した高温高圧のガスの影響を受けて自己着火に至りディーゼルノックを発生させる事に成ります。


因みにセタン価はオクタン価と関連があり、
セタン価:0 = オクタン価:100
セタン価:60 = オクタン価:0
とする事が出来るそうです。普通の軽油はセタン価50程度なのでオクタン価にすると 16オクタン となるのだと思います。軽油のオクタン価は低いと言う事がわかりますね。


次に火花点火のガソリンエンジンでのノッキングを考えます。


alt

火花点火のガソリンエンジンでは燃焼室内に混合気が充満して圧縮されている状態の所に火花での点火が行われます。


alt

混合気は点火プラグによる点火から火炎伝播で燃え広がるのですが、ピストンの上昇によるコンプレッションの上昇と火炎による温度と圧力の上昇により、プラグから遠い所にあるエンドガスと呼ばれる混合気は自己着火に至ってしまう様な高温高圧に曝されながら火炎伝播を待つ事に成ります。


alt

エンドガスが自己着火に至らず、火炎伝播が燃焼室全体に広がれば燃焼は成立した事に成りますが、


alt

エンドガスが発火をコラえ切れず火炎伝播を待たずに自己着火してしまうとノッキングとかデトネーションと言われる現象が発生してしまう訳です。


この自己着火を起こさない、燃料の燃え難さの性状をオクタン価と呼びます。

レギュラーガソリンでは90オクタン、ハイオクでは100オクタンと言うのが一般的な見解でしょうか?

オクタン価=燃え難さ と言う表現が成されますが、「自己着火のし難さ」と捉えた方が性状を理解しやすい呼び方かな?と思います。




という事で、「オクタン価」と「ノッキング」の関係性が理解出来たかと思います。

オクタン価の高い燃料(レースガソソリン)を使えばノッキングなんて怖くない!! 
F1ではエンジンオイルをオクタン価向上剤として利用してエンジンパワーを稼いでいた疑惑?とかもありましたね。


ハイオクは火炎伝播が遅いと言う論もある様ですが、私も3バルブの1気筒600ccのエンジンにハイオクを入れた際に燃費の低下を経験した事があります。燃焼的に緩い?ボアのデカい?エンドガスの多い燃焼室?では、エンドガスの着火に影響が出る?ローテク大排気量のエンジンではそのような事を感じる事があるようです。



ノッキングが起こりやすい状態としては、

・ハイコンプエンジン
・早期点火?進角点火。(TDC前の燃焼による燃焼室内の圧力の上昇)
・燃焼室にエッジがある(ヒートスポット)
・燃焼室が大きい(火炎伝播に時間が掛かる)
・水温の上昇(燃焼室壁の温度上昇)
・残留の排気ガス(燃焼室内の混合気の温度の上昇
・オクタン価の低い燃料
・etc.



エンドガスが高温高圧となり、燃焼前までの待機時間が長くなる条件がノッキングを引き起こす原因となります。

燃焼の状態を理想に近づけようと思うとノッキングにも近づいてしまうと言うジレンマが起こる事になります。




そんな感じだと思います。



(3)に続きます。




Posted at 2024/05/10 20:49:25 | コメント(0) | トラックバック(0) | 日記
2024年05月10日 イイね!

ハイオク論争(1)

ハイオク論争(1)何処?でだか分かりませんが、今、世の中でハイオク論争と言うのが起きていて、「ハイオクは燃えにくい」だとか「火炎伝播が遅い」という事で話の決着を見ようとしているらしいです。。

私的にはちょっと違うんじゃないかな?と言う所があるので、これから数回に分かれると思いますが、ハイオク論争に終止符を打つべく?、ハイオクの特性と効果についてつらつらと書いてみたいと思います。


ではさっそく。(長く成りますからね♪)


・燃焼室での混合気の燃焼温度は2,000度位。
・ピストンや燃焼室壁の温度は200度~400度位。
・断熱境界層や消炎距離があるので燃焼室を構成する金属部品は直接は火に接しない、と言うのが比較的低温を保てる理由。
・ノッキングは断熱境界層を破壊してしまうので、燃焼室を構成する金属パーツが高温にさらされアルミニウムの溶解温度の600度を超えてしまいエンジンにダメージが及ぶ。


上記に羅列したのがエンジンを運転する上でノッキングを起こしてはいけない主な理由に成ります。
だからノッキングの起こり難いハイオクを入れるんですね。


これでは説明に成ってないので、、


何故ノッキングが起こるのか?を考えると、何故内燃機関には圧縮工程があるのか?を考える事に成ります。
イメージの感覚で言うと、圧縮してから点火した方が「ドカーン」と燃えるから、って感じですがそれで正解。もっと圧縮すると、もっと「ドッカーン」と燃えるのでハイコンプとかチューニングする訳ですね。

では「ドッカーン」とは何か?を考えると、「燃焼スピードの向上」と言う事が出来ます。ハイコンプでもローコンプでも元は同じ容積の混合気ですから、燃焼により得られる熱エネルギーは同一の筈ですが、圧縮を掛ける事で燃焼に掛かる時間が短縮されるので時間軸を縮める感じで高さの出る「ドッカーン」が得られるという事です。

で、燃焼スピードが向上すると何が良いの?を具体的に考えます。


(ここから長く成ります。)

alt
出典 https://yomoriki.com/thermodynamics/64106/

上図は4サイクルエンジンの基本と言うか、実際の運転での時間の制限を受けない理想的な工程の説明に成っています。
「燃焼」と「膨張」にフォーカスして詳しく理解して貰いたいのですが、③等積加熱:となっているのが「燃焼」で、④断熱膨張:となっているのが「膨張」となっています。
一般に4サイクルの「膨張行程」と言われるのは上死点から下死点に向けて「燃焼と膨張」が同時に起きているようなイメージを持ちますが、概念的に理想的なエンジンでは燃焼は上死点で点火を行いすべてが燃え終わり、燃え終わりと言うのは高熱高圧が発生するという事で、そこから下死点に向けて膨張を行いながらクランクシャフトを回している事に成ります。

alt

上図はシリンダー内の圧力を示した図に成りますが、大事なのが 3が燃焼行程で、TDCで燃焼の全てが行われるという事です。

イメージと異なりTDCで全てを燃焼させてもその圧力が無効になる訳ではないので、ピストンが下がるTDC以降に全てのエネルギーを使用しながらピストンを押し下げる事が出来るという考え方になります。

2、圧縮工程
3、燃焼行程
4、膨張行程
5、排気工程(ガスの圧力で出て行く)
6、排気工程(ピストンの上昇での排出)
1、吸気工程

この図形が何を意味するのかですが、 2→3→4→5 で囲われた図形の面積が出力に成るという事です。
(余談ですが図中1,と6,の印が入れ替わってしまっていますね

この図は、PV線図 とか 図示トルク とか インジゲーター図 とか呼ばれているみたいです。

alt出典https://nippon.zaidan.info/seikabutsu/1996/00252/contents/017.htm

概念的な図形はカクカクですが、実際のエンジンの運転状態では面積を最大限に取れるような理想的な図形には成らず、もっとヒシャゲたラインになる様です。

主に燃焼行程が理想的な形(面積を最大限に取れる形)では無いみたいですね。


alt出典 https://motor-fan.jp/tech/article/13319/big_4591897_202005261148520000002/


この図形の赤で塗られた部分に面積の欠ける部位が出るのが分かりますね。
これはエンジンの回転に対して燃焼が遅れている?追い付かず? 燃焼が遅いので理想的な効率では無くなってしまっているという事が表現されています。

概念的に理想的な燃焼とは、TDCでの点火 → TDCで最高の圧力(P-max)を迎えるという事だと言う事が理解出来たら完璧です。



話は変わって実際のエンジンの点火時期ですが、一般的なエンジンでは最高出力回転での点火時期は36度位となっているかと思います。
なぜ36度なのかと言えばそこがそのエンジンのMBTと成る点火時期だからです。

ーMBTとは-
エンジン回転数や吸気量など同一条件のもとで、点火時期のみを変化させた際、トルクが最大となる点が存在する。この時の点火時期をMBT(Minimum advance for the Best Torque)と称する。MBTは、エンジンの運転条件によって変化する。一般的に、MBTで点火することでそのエンジンの燃焼効率は最良となるため、性能および燃費を確保するうえで非常に重要であるが、ノッキングの発生やピストン過熱などの主に信頼性の問題により、全ての運転条件にてMBTで点火できるとは限らない。
ーWikipediaより-


要するに、実際のエンジンでの燃焼は理想通りに高速では無い燃焼速度なので、上死点よりも前で点火を行いますが、その加減で一番トルクの出る点火時期、上のPV線図で言う所の一番図形の面積が稼げる所に点火時期を設定しているという事です。


alt
出典 https://glanze.sakura.ne.jp/ignition_timing.html

↑最適な位置で点火する事で最大のトルクを得る事が出来る。それがMBT。それより早くとも遅くとも効率(トルク)は低下する。


alt
↑こちらはPV線図を展開したような図ですが、早すぎる点火では上死点へと向かうピストンを妨害するようにTDC前の筒内圧が大きく成り過ぎる様子と、遅すぎる点火で筒内圧が効率的に上がらない様子がわかるかと思います。一つ上の図とも連動します。
(富士山の形が点火をしない場合の圧縮(コンプレッション)で各色のラインが燃焼で得られる燃焼圧のラインです。)


alt

↑赤ラインで書いたTDCでの点火とTDCでの燃焼の完了が本来の理想。PV線図の図形の面積を最大限に大きく出来る為。
燃焼は速ければ速いだけエンジンの効率(トルク)を向上させる事ができると言う事ですね。



この様に燃焼スピードが遅い事によって点火時期の調整と言う事柄が発生している事がわかりましたが、燃焼スピードを早く改善出来れば点火時期がTDCに近付いてトルクが稼げる事も分ったかと思います。
最近で有名なのはトミタクさんの4ARエンジンですね。ハヤブサヘッドを利用する事で25度まで点火時期を遅らせる事が出来て(25度でMBTを得られる燃焼)いるそうです。


alt
出典 https://autos.goo.ne.jp/column/984332/

で、何故圧縮工程があるか?という事ですが、圧縮を行う事で燃焼スピードを上げる事が出来るからです。圧縮比で14位までは熱効率の改善が見込めるそうです。言い換えると燃焼速度の向上が望めるという事ですね。一つ前の図に赤で書いた瞬時の燃焼に近づけたい訳です。


圧縮して「バッ!」と一瞬で燃やしたい。これが出力や燃費を大きく求めたい内燃機関の目指す燃焼と言う事に成ります。
なので燃焼速度を高める手段として圧縮を高める訳です。



ここ迄でPV線図を基本として、燃焼と筒内圧でのトルクの稼ぎ方が分かったかと思います。
ですが現実は甘くはなく、Wikipediaの情報でもあったノッキングと言う邪魔物が発生してしまいMBTでの点火が出来ない場面がやって来ます。。



やっとここまで書き出しました。まだノッキングにもハイオクにも触れていませんが、(2)へ続きます。







Posted at 2024/05/10 17:16:01 | コメント(0) | トラックバック(0) | 日記

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