2014年02月13日
「HP」視点でクルマを (02)
○スタイリング vs 「パッケージング」
私が初めて「ヒップポイント」(HP)という言葉を知ったのは、90年代の後半、ある画期的なパワーソースを搭載した新型車の開発スタッフに話を聞いた時でした。今回の新型車は、パワーソース以外にもいろいろと提案をしている。そのひとつが「パッケージング」であると。この言葉も、そういえば、それまではあまり使われていないものでした。
人間工学担当というそのスタッフは、弁当箱とオカズの関係で説明しました。それまでのクルマは、まずはカッコいいデザイン、キレイな格好を決めて、その後に、さて、このスタイリングの中に、人をどうやって収めるか……という作り方をしていた。つまり「弁当箱を先に作って、その後に、ゴハンやオカズの入れ方を考えていました」。
でも今回は、それを逆にした。このゴハンやオカズとは乗員になるわけですが、乗員、つまり人ですね。人をクルマの中で、こういう風に座らせたい、車内に収めたい。そのためには、クルマ(弁当箱)はどういう格好でなければならないか。こういうアプローチをしたというのです。
私はかなり驚きました。そして、感動さえ覚えましたね。これはすごい発想だ!と。担当者は続けます。
そのコンセプトから、シート座面は地上から600ミリの高さに置く。さらに、その高さでアップライトに(背もたれを立たせ気味に)座るようにする。なぜなら、その方が身体に負担が少ない。するとペダルの踏み方も変わってくるので、ペダルやレイアウトも新設計する。
ヒップポイントが600ミリで、かつアップライトに座る人を、車内に窮屈感なく収めるには、クルマは1500ミリ以上の全高が必要。しかし、あまり高くすると、今度はタワー・パーキングに収まらなくなるので、そこはほどほどに。今回は、そうやってクルマのカタチを決めた……。
おおー!でしたねえ。そして、だから「パッケージング」という言葉が宛てられたのだとも気づきました。人を「包み込む」というコンセプトです。さらに言うなら、クルマと人では、どっちが「先」なのか? クルマに、人が合わせるのか。そうではなく、人に合わせてクルマを作る──その造型やレイアウトやパッケージングを設定するのか?
天動説の時代に、初めて地動説を聞いた中世の人々がおそらくそうであったように、私は驚きながら、同時に自分の中で、人とクルマの関係が“コペルニクス的に”変わっていくのを実感していました。この体験以後、「HP」と「パッケージング」は、私がクルマをウォッチしていく上で重要なキーワードになったのです。
(つづきます)
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茶房SD談話室 | 日記
Posted at
2014/02/13 13:11:51
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