ワールドカップでわかるのは、ユニフォームの基本カラーが「青」という国はけっこうあること。フランスとイタリアが双璧だが、欧州ではギリシア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、中南米ではホンジュラスが「青の国」。そして、エクアドルにも青バージョンがあり、ウルグァイもまた、アルゼンチンともイメージが重なる水色系のブルーだ。
また、今回の出場国ではないが、スコットランドが灰色がかった「青」で、これは“宿敵”イングランドの「白/赤」と対照を成すものか。余談だが、あるスコットランド出身者は、サッカーにせよラグビーにせよ、彼の母国とイングランドが連合して何かの国際大会に出るようなことは未来永劫ないと語っていた。
これら「青の国」の中でひとつ興味深いのは、イタリアのブルーが国旗(の色)とは何ら関係がないこと(彼らの三色旗は緑・白・赤)。聞けば「アズーリ」とは「空の青」で、スポーツという場でイタリアが対外的に闘う場合に、イタリアの空の色を用いるのだとか。なるほど、国旗やそのイメージにこだわらなくても、人々が納得する「国の色」は設定できることが、これでわかる。
そして、これだけ多くの「青の国」があると、「色」だけで独自性を出すのは、なかなかむずかしいとも思う。少し前のA代表が、スポーツのユニフォームとしてはレアと思える“濃すぎる青”、つまり「藍」を用いていたのは、他国とは違う「青」を探して行き着いた結果だったのかもしれない。
ただ、「藍」をユニフォームの色にするのは疑問もある。基本的にくすんだ色で、また“引っ込む”感じの色でもある。ゆえに、リクルート・スーツなどで重用されるが、スポーツのバトルという場に置いた場合、果たしてどうか。慎ましく穏健なこの色は、主張性に乏しく躍動感に欠けるということにならないか。
……と、スポーツに渋すぎる色はそぐわないと何となく思っていたら、“青組”のひとつ、今年のフランスにぶっ飛ばされた。彼らの2014年仕様は、「青」から鮮やかさを取り去って、灰色だけでなく黒まで混ぜてしまったというようなブルー。それでいてなぜか目立ち、さらに異様な「エレガントさ」まで湛える。闘いの場にこんな色は……といった論議の間もなく、さっさと勝ち上がったのも憎いところ。恐るべし、仏蘭西エスプリ! 言いたくないが、これがセンスか。
*
さて、以上を踏まえて、ここから先は提案というか妄想というか……(笑)。誰に頼まれたわけでもないが、われらがA代表の次期ユニフォームを勝手に考えることにする。
新ユニフォームのための基本コンセプト、まずはその《1》。これは前稿「ガッカリする準備は……」でも少し触れたように、“10年もの”であることだ。最低限そのくらいの時間は保つデザインとして、マイチェンはともかく、フルチェンジはしない。それに、ファン(サポーター)に何度も、また年ごとに、レプリカ・ユニフォームを買わせるというのは失礼。サッカー協会はそろそろ、このことに気づくべきだ。
そして、コンセプトその《2》。それは「情報」を控えること。サッカーを闘う選手が纏うユニフォームは、説明書や報告書ではなく、また商品見本やポスターでもない。現状は、いわばプレゼン資料みたいなものであり、われらが協会のマークはこれで、国旗がこれ、そこで使われている色はこれで、さらに、ウェア制作のメーカーのシンボルが……と、無定見に材料が並ぶ。必要なのは“引き算”だ。
たとえば国旗は、ファンが観客席で振ればいいこと。その際に、どういう「青」なら、日章旗とよくハーモニーするか。こういうことの方が、よほど重要。『八咫烏』にしても、協会のシンボルマークなのは承知だが、必ず左胸になければならないものなのか。さりげなく袖口に、あるいは、ユニフォーム上ではいっそナシにする。こうした“捨てる勇気”を持たない限り、いつまで経っても洗練には届かない。
また、ユニフォームの色として採用した「青」については「物語」が必須で、これがコンセプトの《3》になる。例を挙げれば、「アズーリ」がイタリア半島の空なら、これは列島の四方を囲む「海の色」といったストーリーだ。もちろんこれは、誰もが共感できるというのが大前提で、その意味では“サムライ”ウンヌンは、“町人”には無縁な話だった。
そして、新ユニフォームのコンセプトその《4》として、「白の活用」を挙げたい。前述のように「青の国」は多く、後発として独自の青色を探すのは易しくないはず。しかし、「青と白」のコンビネーションなら独自性を盛れる。(念のため付け加えるが、加えるのは白だけ。色の数は最大が「2」だ)
こうしたコンビですぐに思い浮かぶのは、アルゼンチン、あるいはセリエAのユベントスなどが用いる縦縞である。個人的には、この種のストライプを「青/白」でやればいいと思うが、それではまんまユベントスだぁ……ということなら、別の手段も考えよう。
そのひとつとして、たとえば「和紋様」というのはどうか。クロアチアはチェッカーフラッグと言うだろうが、あれは、われわれにとっては「市松」である。格子の大きさを変えれば、また「市松」コンセプトからアレンジ(和風+国際性)にすれば、クロアチアとは違った印象にできるはず。もちろん、彼らの「赤/白」に対して、われわれは「青/白」で行く。
また、「和紋様」には「青海波」というのもある。これはかなりベタに「波」を図案化したもので、「海の青色」とストーリー的にはミートするが、ただし、この模様はサッカーにはどうも似合いそうにない。ただ、「青/白」の白っぽく見える部分が、近くで見ると「青海波」模様になっている……なんていう“芸の細かさ”はあっていいと思う。
そして、コンセプトその《5》。最終にして最大の問題は「青」の色をどうするかである。日本近海の「海色」は、むしろエメラルド・グリーンだという説もあり、それに拘りすぎると、「青」からアフリカ系の“緑グループ”になってしまう。言葉として、その色を語る場合は「マリンブルー」がニュートラルでいいと思うが、さて、それは具体的にはどんな「青」なのか──。
ここからは先は、もう、コンセプトという領域ではない。ヘタな企画屋が騒げるのは、ここまで。色とカタチとイマジネーションを駆使する“手練れ”の方々に、あとはお任せだ。妄言多謝。
ブログ一覧 |
スポーツcolumn | 日記
Posted at
2014/07/04 13:01:09