![グローバル・フェイス、アプローズに贈る第三世界的喝采 グローバル・フェイス、アプローズに贈る第三世界的喝采](https://cdn.snsimg.carview.co.jp/minkara/blog/000/035/148/861/35148861/p1m.jpg?ct=684f07d3edb6)
§日付けのある Car コラム
§『アクション・ジャーナル』selection
このクルマのスタイリングには、実は発表時から注目していた。というのは、とても「グローバル」なかたちとディテールに見え、そのパッケージングに「地球的」なものを感じていたからである。
つまり、ヨーロッパ的でもなく日本的でもなく、アメリカンではさらにない。もし、あえて地域名を挙げれば、アジア、あるいはインド亜大陸、さらに中近東。そのような街と、その空気と、その暑さにするりと溶け込む。そのようなイメージである。
もちろん、これは非常に感心しているのだ。何も狭くて限界のある日欧米マーケットにこだわることはない。それ以外の広大な世界にこそ、クルマ市場としての未来がある。そのような意味をこめての評価である。
少々眠たそうな眼。光りもののない落ち着き。おとなしい3ボックス・フォルムとしてクルマの基本を押さえつつ、実はテールゲートを持つという実用性への配慮ぶり。当然の4枚ドア。まずは何より、一台の乗用車がほしい!という、いわば発展途上のマーケットにも、まことに合いそう──。こんな印象だった。
作り手のダイハツに、そのへんまでの意図があったかどうかはともかく、アプローズというクルマを日本の路上に引き出してみると、その“非・爛熟”ぶりが新鮮に映る。まあ、それほどに、われわれのクルマを見る視線が「クラウン~マークⅡ的世界」に馴らされてしまっているのかもしれない。そんなことも考えさせるアプローズの佇まいである。
走らせてみると、これがなかなか爽快だ。「過不足ない」という言葉を、良好なまとまりを示すという積極的な意味に受け取ってほしいが、パワーと足まわり、各種の操作性、ハンドリングまで含めて、すべてがナチュラル・フィーリングの快さがある。
シートもたっぷりと大きく、硬すぎず、柔らかすぎない。乗り心地はフワついていないが、しかし滑らかである。試乗車は、シリーズ中唯一の4WD版である「16Zi」だが、4WD的なクセを見事に取り除いたハンドリングの仕上げになっていた。ボディや足まわりの剛性感、安心感も高い。
ススみ過ぎた(?)ニッポンのマーケットでは、このような“内実のある平凡さ”は黙殺されてしまうのかもしれないが、それなら、それでいいのではないか。ダイハツ・アプローズは、グローバルなマーケットに逞しく飛び出せばいいのだ。
実際、乗りながら、クルマってこれでいいんじゃないかと思うことが何度もあった。良くできたスポーティカーは、たしかに愉しい。しかし、こういうクルマと穏やかに暮らす……それもまた、クルマの重要な側面であり、ニーズであろう。
ダイハツ・アプローズに喝采する!
(1989/10/17)
○89年末単行本化の際に、書き手自身が付けた注釈
アプローズ(89年7月~ )
◆「クルマは、これでいい」、このクルマを見て、ヨーロッパ人ならこう思うのではないか。彼らはクルマというものに、ある限定を設けている。あるいは、自分(と自分の階級)にとってのクルマは、コレコレでよいのだという認識と諦念がある。一方われわれと、そしてわれわれのメーカーは、そのようには諦めない。クルマは、どのようにもなれるのではないか、もっとナニナニであっていいのではないか……。ぼくは、この後者の方に、これからも付き合っていこうと思っている。日本人として、見届けたいと思っている。
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80年代こんなコラムを | 日記
Posted at
2015/02/25 20:29:21