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2015年06月18日

【00's コラム】欧・日の新鋭、フォード・フォーカスとトヨタbB

【00's コラム】欧・日の新鋭、フォード・フォーカスとトヨタbB 21世紀ではクルマに乗る際、人はもう「450ミリ」のポジションには座らなくなる? こんな展望を、ぼくは持っている。そもそも、シート座面の地上からの高さが「400~450ミリ」というのは、何か根拠があったのか。

クルマ作りは、20世紀初頭の1900年代に始まるが、人の着座位置、人がクルマというものにどのように収まるか。それが根本的に検証されたことはなかった。より良いクルマを作っていこうという“流れ”(流行!)の中で、何となく着座位置はこのへんに落ち着いた。それだけのことだったのではないか。

その20世紀のとくに前半は、社会的・政治的には戦争ばかりしていた。時代を覆うそんな「闘うモード」を反映して、クルマ世界においても戦闘的なクルマがもてはやされた。いわば“スポーツカー・コンプレックス”でずっとクルマが作られた、それが20世紀ではなかったか。

しかし、人がクルマというものを作りはじめて100年。そして、多くの人がクルマに乗るようになって(大衆化されて)50年──。戦争の世紀の終盤、90年代末になって、意味がなかった(?)お決まりの数値「400~450ミリ」が抜本的に検討されたとしても、そこに何のフシギはない。

前置きが長くなったが、「400~450」が何の数値かというと、シート座面の地上からの高さである。人はクルマの中で、地上から何ミリくらいの高さに収まる(座る)べきか。この20世紀的な「欧州基準」が「400~450ミリ」だった。そしていま、これははっきりと上昇の気配にある。

地上からの座面高、つまりヒップポイント(HP)の検討。これはすなわち、単なる戦闘モードでクルマを作るのではなく、人にとってクルマをやさしくする、もっと乗りやすいものとしてクルマを仕立てる。そんなパッケージングの見直しとも言い換えられる。そして、この点で先鞭を付けて世界をリードしたのは、明らかに日本メーカーだった。自動車の歴史が始まって約100年、欧米と日本の関係は、ついに逆転したのだ。

なぜ、日本メーカーがこの点で先んじたかというと、普通の人が普通に使うクルマとして、いわゆる「RV」を積極的に選びはじめたことが大きかったと思う。そして、一度でもこうしたシート高が高いクルマに乗ったユーザーなら、誰でも思ったことがあるはず。そう、一般的なセダンは、何であんな(低い)位置にシートがあるんだろう、と──。

こうした「RV」の日常化ということでは、アメリカの方が実はずっと先輩だ。ただ彼らは、バンやピックアップがあまりに身近にあったためか、トラック&バン系と乗用車系とはまったく別種類の乗り物だと考えてしまったようだ。したがって、シート(HP)が高いというバン系が持つ特性を、他のクルマ・ジャンルに展開することがなかった。(シート高が高いクルマに乗りたいのなら、ほかのジャンルに行けよ!)

しかし、日本メーカーには(いい意味で)歴史がなかった。クルマとは、あるいは乗用車(セダン)とは、こういうものであるという、米国のような強固なモノサシを持たなかった。日本メーカーは、普通の人が普通に使うクルマ、つまりセダンや2ボックス車のパッケージングとヒップポイントを、90年代末期から果敢に変更しはじめる。そして、どのくらいの位置が人の身体にとって、より自然なのかという探究から、「400~450ミリ」を「600ミリ」に変えはじめた。

この意味で、フォードの新作「フォーカス」は注目作だ。これは欧州車として初のヒップポイント「500ミリ」の5ドア車であり、新パッケージングを提案する最先端のモデルだからだ。ただ、そのことに気づきながらも、ドイツ・フォードが「600ミリ」まで飛ばさなかったのは、彼らの走りへのこだわりであるらしい。もし会社がこれ以上(ヒップポイントを)上げろと命じてきたら、私は職を賭して反対する……と語ったのは、フォーカスのプロモーションのために来日した、同社の走行性能担当エンジニアだった。

しかし、既に「600ミリ」のクルマを作り慣れている日本メーカーは、そんなヒップポイントで作られた、たとえばヴィッツ/ヤリスでも、GT的なバージョンを設定して欧州に投入している。HPが600ミリでも、“走りのクルマ”は作れるのだ。そしていまや、こんな遊びっぽい(?)モデルまで、「600ミリ」車の選択肢のひとつに加えるようになっている。

フォーカスは最新のドイツ車として、走りと快適性(乗降性)を、これまでとは一段違った高度なところでバランスさせた。そしてトヨタの「bB」は、スタイリッシュな主張と広大なインテリアで、パッケージングの提案と成熟を示している。21世紀直前、「クルマ」は着実に変わりつつある。そのことを代表する日本と欧州の最新機種が、この2モデルなのである。

(「スコラ」誌、2000年4月。新型車紹介記事に加筆)
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Posted at 2015/06/18 09:06:24

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