
■クルマが移動体である以上、その目的を果たすためには、走ることが前提条件である。走らない車に存在意義は無く、どんなうんちくの語られるクルマであっても個人のロマン以外に価値は無い。
以下、運動としての走りについて徒然と。
速度と時間、および距離の関係は、小学生の時にならった式を元にすると、
V=x/t (V:速度 x=距離 t=時間)・・・・①
速度は、移動した(する)距離を時間で割れば導き出せるという事だ。
時速100km/hというのは、100km走るのには1時間かかりますよ、となるわけだ。
これを踏まえて。
■車Aが、自宅から60km離れたところにある目的地に行くとき、
1時間で目的地に到着するには、時速何キロで走れば良いでしょう?
と言う問題があるとする。答えは簡単、先ほどの式から、求める速度をVとして
V=60(km)/1(時間)=60(km/h)
時速60キロで走ればいいわけだ。
で、実際の世界にこれを当てはめると、とんでもない事実にぶち当たる。
そう、この式から導き出せるのは、車Aが自宅から目的地まで走る間の
平均時速が時速60キロということなのだ。
従って、この式のとおりに車Aが目的地に向かおうとすると、
自宅を初速度0(ゼロ)すなわち止まっている状態から、
いきなり時速60キロで走り出さなければならない、ということだ。
それに、目的地に到着したら、一瞬で速度0(ゼロ)へ減速しなければならない。
これでは車Aに乗ったドライバーはたまったものではない。
加速、減速共に、想像を絶するGと戦わなければならないのだ。
ここで、百歩譲って加速に1秒、減速に1秒それぞれかかるとすると、
加速G=v(速度変化)/t(単位時間)/g(重力加速度) ・・・・②
重力加速度をg=9.8とすると
加速G=約1.7G
静止状態からいきなり体重の1.7倍のGがかかるわけだ。
しかし、まだまだF1には遠く及ばないなぁ。
というより、1秒と言うのが結構長いかも。
①式のとおり、それこそ0秒で加速、減速をしたならば、G=∞・・・
それは、時速60キロで硬い鋼鉄の壁にぶち当たるのと同じことなのだ。
おそろしや・・
高校生レベルになれば、ある程度リアルな運動方程式を教えてもらえるので、
初速度、加速度、経過時間など、事実に近い値を導き出せる。
X=vt+1/2at^2・・・・③
F=M(d2x/dt2)=ma(微分・積分入り)
(X:移動距離 v=初速度 t=経過時間 a=加速度)
これなら、ある程度まともな値が出そうな式の長さだ。
しかし、さらに現実に即した式にするには、空気の抵抗などが
密接にかかわってくる。
■クルマが空気のあるところで走る乗り物である以上、
空気の抵抗は必ず受けるものだ。
速度変化における空気抵抗は、以下の式で表される。
Fx=1/2・ρCxAV2
F=空力 ρ=空気の密度 C=空気抵抗係数 A=前方投影面積
V=速度
簡単に言えば、真正面からクルマを見たときの面積(=前方投影面積)と、
速度の二乗に比例して空力は増えることが分かる。
従って、細かな形状よりも風に対して垂直に当たる面積に大きく左右されるわけだ。
ダウンフォースを稼ぐ時にはウィングを立てるのはこのためだ。
リトラクタブルヘッドランプの開閉状態によらず、空気抵抗は一定!?
→実際には、リトラクタブルヘッドランプが開いていれば、
そこに乱気流が発生するので、微妙に影響を与える。
ちなみに一般的なヒト(身長165センチ、中肉中背)が100m走るのに、
20秒かかったとすると、このヒトの体に受ける空気抵抗は700gくらい。
これを重いと感じるヒトはいないだろう。ところがオリンピック選手のように
100mを10秒足らずで走るヒトの場合、空気抵抗は2.8kg!
このくらいになると、追い風参考記録などといい、具体的な影響が現れる。
時速300キロに及ぶF1マシンともなれば、ものすごい空気抵抗と、
それこそ天井を走れるくらいのダウンフォースになる。
そういえば、ル・マン24時間レースで空に飛び立っていったベンツがいたっけ。
そのくらいすごい空気の抵抗、及びそれを利用したダウンフォースを受けながら
走るF1。コーナリング中では当然ダウンフォースは激減するわけだから、
フロントタイヤにかかる荷重も激減する。
従って減速に入ってからブレーキペダルを一定の力で踏み続ければ、
とあるポイントでタイヤはロックしてしまうだろう。
という事は、減速時には、常にブレーキペダルの踏力を加減していなければならない。
しかも、強烈なGに耐え、さらに戦略を考えながらだ。
うーむ、さすがはF1ドライバー。恐れ入りました。
ながら勉強はいけません!ボソッ
ま、それはさておき、上記は空気力学のカジリのカジリ程度(前書きレベル)なので、
どう考えても市販のエアロパーツが綿密な計算など全くされていないことは、
容易に想像できる。
スタイル重視だからと変にゴテゴテエアロを付けて、
突風にあおられて宙に舞い上がる可能性も0ではない。あ~おそろしや。
しかし、整流程度のエアロならば効果は得られるだろう。