
民族の祭典
1938年ドイツ
(アメリカンバージョン)
110分
監督:レニ・リーフェンシュタール
日本のメダルラッシュに沸くリオオリンピック。

※金には届きませんでしたが、偉業だと思います。
…でも、悔しいだろうなあ…ウルっとなりました。
あまのじゃくな私は、前々から気になっていたベルリンオリンピックの
記録映画「民族の祭典」が観たくなりました。
アマゾンで安いDVDを取り寄せ視聴いたしました。
今からちょうど80年前のオリンピックです。
驚きの連続でした。
一見の価値、もの凄くあります。
とてつもなく巨大な競技場に、どこからこれだけの数が集まったのかと
思うほどの人、人、人。
1936年、第二次世界大戦勃発前夜、の開催です。
3年後の1939年9月にドイツがポーランドに侵攻、そして1945年8月
日本がポツダム宣言を受諾するまでの6年間。
途方もなく大変な戦争が、繰り広げられるのか、その思いで映像を観ると
何とも言えないものが胸に迫ります。
この平和の祭典でスポーツ競技を繰り広げた同じ国同士が、
枢軸国、連合国に分かれ、小銃、自動小銃、大砲、手榴弾、火炎放射機、
戦車、戦闘機、潜水艦、戦艦、そして原子爆弾。
人類が編み出したありとあらゆる兵器を使って殺戮を繰り返すことになるのです。
とても信じられるものではありません。
ヒトラーの映像や、ハーケンクロイツの旗など、それ以降の動きを感じさせる
ものはありますが、想像していたほど全面に打ち出してはいなかったように思います。
映画の導入は芸術色豊かな映像で、少しカッタルい感じもしますが、
競技が始まると、記録映像としてとても見やすい形にまとまっていました。
これは意外でした。
さて、驚いたことです。
①ジェシーオーエンス
②クラウチングスタート
③長ズボン
④マラソンで日本が1位
「民族の祭典」で記録されているのは陸上競技のみです。
(他の競技は「美の祭典」に収録されているとのこと)
山場をわかりやすくまとめられているので、80年を経た今でも
思わず身を乗り出して観てしまいます。
あえて乱暴な言い方をさせていただくと、町内の運動会の豪華版と
いった感じで力を抜いて楽しむことができます。
今のように、肥大化して商業主義が全面に打ち出される前の素朴な
オリンピックの姿を観ることが出来ます。
パソコンはおろか、携帯電話もないこの時代、通信手段も限られたものだった
と思います。
そんな中で、これだけの大規模なイベントを成し遂げたことに驚きを禁じ得ません。
焼け野原となった日本。
敗戦後わずか19年で新幹線を開通させ、東京オリンピックを開催。
破壊と創造、人間の力がどちらに傾くかで結果は大きく変わります。
以上、申し上げたかったところです。(^_^)
以下は長文で細かいお話ですので、どうぞスルーして下さい。m(_ _)m
①ジェシーオーエンス
恐らく過去にも耳にしたことはあったのでしょうが、詳しいことは初めて知りました。
このオリンピックで4冠を制した、つまり4種目で金メダルを獲得した人です。
(100m、200m、4×100mリレー、走り幅跳び)
精悍な容姿の黒人選手で、カールルイスが登場するまでは、この人が
陸上競技会で名を馳せていたとのことです。
現代の選手と比較すればさすがに見劣りがするのですが、この映画では
この人だけが、明らかに他の人とは違った筋肉のつき方をしています。
この大会では100メートルで10秒3、走り幅跳びで8メートル6センチの記録を
残しておられます。
1935年に出した自身の走り幅跳びの世界記録8メートル13センチは
1960年まで25年間破られることはなかったそうです。
今となっては、いずれも世界記録に遠く及ばない数字ですが、参加資格を満たして
いるのではないでしょうか。
※調べてみました。
オリンピック参加標準記録
100メートル→10秒16
走り幅跳び→8メートル15
残念ながら今の基準では、参加することが出来ないようです。
ただ、実際のレース結果を見ますと、10秒3という数字は現代の水準でも
そんなにおかしくはないような気がします。
②クラウチングスタート
実は、一番驚いたのがこれです。
短距離競走の前に、スタートラインで選手が何かしてます。
よく見ますと、掘っているのです。
穴を・・・
要はクラウチングスタートの姿勢を取るための足場をスコップ、移植ゴテで
穴を掘って整えているのです。
80年前とは言え、天下のオリンピックで、そんなことをしていたとは。
③長ズボン
多くの競技で長ズボンの選手が見受けられました。
さすがに、徒競走ではいませんでしたが、砲丸投げ、やり投げ、ハンマー投げ。
また、今では絶対にあり得ない、走り高跳びで長ズボンの選手がいました。
練習風景ではなく、本番の競技でその格好をしていたのです。
④マラソンで日本が1位
走り幅跳び、三段跳び、棒高跳びなど、今では考えられない種目で日本人が上位で
健闘してます。
走り幅跳び 田島直人 銅メダル(7m74)
三段跳び 田島直人 金メダル 世界新記録(16m00)
棒高跳び 西田修平 銀メダル(4m25)、大江季雄 銅メダル(4m25)
※帰国後にお互いのメダルを切断して「友情のメダル」を作成したそうです。
これは聞いたことがあります。
1万メートルでの、村社 講平(むらこそ こうへい)選手とフィンランド3選手の
デッドヒートは手に汗握ること間違いなしです。
結果4位でしたが、大健闘です。
そしてなんと、マラソンの1位、金メダルは日本の孫基禎(ソン・ギジョン)だったのです。
寡聞にして全く知りませんでした。
衝撃、驚愕でした。
また2位がイギリスで、3位は日本の南昇竜(ナム・スンニョン)
民族問題があってあまり語られることがなかったのでしょうか。
難しい話はともかく、今以上に白人優位であった当時の世界を舞台に東洋人が
かくも果敢に力を発揮したということは、今さらながらに素晴らしいことだと思います。
以上、「この程度のこと誰でも知ってるわ」とおっしゃる方もいらっしゃるでしょう。
しかし私のように知らなかった人もそれ以上にいらっしゃるのではないでしょうか。
映画としては、導入部分がややかったるく、また画質が思ったより汚い。
透明度の高い、クリアなモノクロ映像を期待しておりましたら、古いニュース映像の
粗さです。
また、陰影をつけてはあるのですが、女性の上半身がリアルに出て来るシーンがあり
驚きました。
この時期、このタイミング、現在進行形のオリンピックと重ね合わせて
観る価値、おおありです。
「美の祭典」さっそく注文いたしました。
以上!です。(^-^)/
※数字周りは書き写し間違いがあるやも知れません。
ご容赦下さい。m(__)m