スタイリングに活用するなら、アルマイト処理されたカラフルなアルミナットでしょう。
また、ホイールナットには材質も色々あり、軽量化を謳い文句にしているものも多く存在します。
その中からユーザーは、センス、考えに従ってナットを選ぶ。
しかし、
スタッドレスタイヤ等を使用したりスポーツ走行等を行い、タイヤ交換やホイールナットの増し締めを行われている場合には、その
ホイールナットにも注意を注ぐ必要が出てきます。
以下はホイールナットについての常識、誤認識や、アドバイスを記します。
● 重量
走行性能に大きく影響すると言われる「バネ下」重量級部品で…
・回転慣性系であるホイールの個体差は、RAYS製(鍛造、17inch:6~7kg台)レベルでも100~200g位になる。
・上記に装着する主成分「ゴム」のタイヤ(11~12kg台)の個体差は、「金属」製品(ホイール等)を更に上回る。
・これらを組合わせる際に装着するバランス用ウエイトは、0~50g位(
これ以上の値になるとホイールまたはタ
イヤに何らかの問題を抱えている可能性有り)存在する。
・個体差は、ブレーキディスクローター(バランス調整品については更に増)等々も同様に存在し、回転慣性系
でない重量級部品(アブソーバー(ダンパー)やアーム類等)にも同様に存在する。
・ナット素材のスチール(炭素鋼)とアルミ(ジュラルミン等含)を同一形状のスタンダードなサイズ(全長30mm前
後)で比較した場合は、約20g位/個の差しかない。
上記の事から、ナット素材を変更する事での各輪毎の重量差(100g前後(5穴の場合))に対して、ホイール等々の個体差合計の方が十分多い(素材変更によって各輪での地面からの情報量に相対的違いが表れたとしても、全輪(前後左右)間での不均衡(アンバランス)度の方が十分大きい)。
その為、「軽量」という謳い文句による特性変化については、
宣伝に影響され「木を見て森を見ず」状態となっているのが実情です。
レース用に供給されているホイールやタイヤの場合は、重量もセレクトされ、1/1000秒を争う世界である事から「塵も積もれば…」よりホイールナットの軽量化までも考えますが、果たして影響が出るレベルなのかは…
● 強度と硬度
単純にナット単体で考えるのではなく、相手方の
「ハブボルト」を基準に考えないと、問題が発生します。
ナットの
強度が適正値より
低い場合には、
硬度が高くても強度が足りない事で繰り返しの脱着や増し締めにより、金属疲労にて
ネジ山が破損(
見た目に問題(徴候)が無くとも、「突然」訪れます)し、最終的にはタイヤ脱落という事に…。
逆にナットの
強度が適正値より
高い場合には、強度による問題は発生しませんが
硬度がハブボルトより高いと繰り返しの脱着や増し締めにより、金属疲労(
カジリ等)
が発生する側がナット側ではなくボルト側となる為、交換ともなるとナットより手間が拡大
し、更に数回のボルト交換時(純正規定では1回まではOK)
には、ハブの交換も必要となってきます。
その為、純正はナットよりボルトの硬度を上げ、破損時の逃げ部品をナットとし、交換を容易にしています。
・炭素鋼の場合
クロームモリブデン鋼より硬度は低いですが、強度としては十分で安価な為、純正採用されています。
・クロームモリブデン鋼(通称:クロモリ鋼)の場合
炭素鋼より硬度、強度共大きく上回り、ハブボルト側と同じ素材ではありますが、ハブボルト側は高温焼き入
れ(日産、スバル純正等)を行っている事から更に硬度が高い為に、ハブボルト側を痛める事はありません。
※社外品(NISMO製除)ハブボルトの場合には、焼き入れが無い場合や炭素鋼の場合もある為、確認が必要
・チタン材(64チタン)の場合
ハブボルトより硬度が高い事から、駄目になる側がボルト側に移る為、交換する際の手間が拡大します。
(手間詳細については上記「
高い場合には」欄参照。純チタンについては超(超)ジュラルミンと同等前後。)
・アルミ材(通称:軽量アルミ、硬質アルミ、ジュラルミン、超(超)ジュラルミン等)の場合
純正ナット素材より硬度、強度共に大きく下回る為、表面の硬度のみをアルマイト処理によって幾ら高くしてい
たとしても、スタッドレス、サーキット用タイヤ、街乗りタイヤ等を使い分け、脱着頻度が高い場合には、表面
処理厚も磨耗によって薄くなり剥がれる為、ある程度の使用毎に新品交換を行うか、それが面倒な場合には
使用を避けた方が賢明です。
スポーツ走行(サーキット走行等々)で力が加わった際、最終的には金属疲労にてナットの山が潰れ、タイヤ
が取れて飛んでいきます(下記項の熱膨張率の事も関係し、実際、知人数人が超超ジュラルミンでも経験)。
※レースで使われている素材がアルミである理由は、脱着が非常に多い事から少しでもハブボルトを痛めな
い為。但し、「使い捨て」です。
● 熱膨張率(線膨張係数)
以外と認識されていない
重要な項目です。
車で使用されるボルトとナットの関係で、異種の素材が使用され、その素材の熱膨張率が異なる場合には、温度変化によって接触面の素材の伸びが異なる事で接触抵抗が減少し、緩みが起こる原因(その差が大きい程、緩み度合いは「増」)となります。
上記項と同素材の場合 (µm/℃/100℃max)
炭素鋼(純正) 11.7
クロモリ鋼 11.2
チタン材 8.5
アルミ材 23.9 ※100℃を超えると各素材係数は更に上昇!(0.4~0.5up/100℃毎)
・ボルトナットの緩みの仕組みは、素材の痩せ、塑性してしまう伸びや外力衝撃等による接触面の面積や抵抗
の変化(減少)によって発生し、振動によって加速されます。
・緩みは、ナットの締付けトルク(捻り)が開放された段階で、坂道を転がる様に一気に進み、複数のボルトナッ
トで構成されているモノ(ホイールを固定するハブ等)の場合には、1本が緩みだすと他のボルトへ計算外の
負荷や負荷ベクトルを増やしながら、連鎖していきます。
街乗りレベルであれは、ブレーキの発熱度合いや各部へのストレスも少ない為、一部のナットが緩んだとしてもタイヤ脱落までは草々、行かないでしょう。しかし…
スポーツ走行を行い、ブレーキ熱によってホイールナットが高温になる場合には、締付けた時点との大きな温度差が続く事で緩みが発生し、負荷も多い為、その際には都度、増し締めを行う(トルク管理)意識を持つ必要が出てきます。
そして、純正ナットよりも熱膨張率が高いモノを使用する場合には更に、その意識は必須になります。
・熱膨張率が炭素鋼より「倍」以上のアルミ材の場合には「非常」に注意が必要。
・緩み(スバルのホイールナット締付規定トルク(90N・m(9.2kgf・m))の10%以下)が発生している状態では、
面から点接触となり過度な力が加わる事で金属疲労も加速され、ハブボルトやナットの破損またはナット
抜けが発生すると、タイヤの脱落に繋がる為、非常に危険です。
・緩みの発生を嫌い、規定以上のトルクを掛ける事は、決して行わない!
素材に「伸び」が発生し、緩み時と同じく、
金属疲労を加速させるだけです。
・
NISMOでは「熱膨張率の低いクロモリ鋼によってナットの緩みを防止」と謳っていますが、熱膨張率が低いと
いうより、ボルトの素材と同一となる為、ボルトとナットでの温度変化による緩み自体がなくなります。
・炭素鋼(純正)については、ボルトの素材と数値差が非常に小さい為に温度変化による緩み度合いに殆ど違
いはありませんが、チタン材を使用した場合には、ボルトの素材と対比すると膨張率としては小さくなります
が数値差は大きくなる為、温度変化による緩みは炭素鋼やクロモリ鋼より増してくるかと思われます。
● 形状(基本形)
長さ:スタンダード(30mm前後)、ロング(50mm前後)
タイプ:貫通、袋
ソケット(工具)サイズ(ハブボルト径がM12の場合):17、19、21(mm)
…等。
・最近では、ハブボルトがロングな場合や、ホイール穴が奥まったディープタイプにも対応した「
ロング袋ナット」
も存在します。
・ソケットサイズが19(スバル純正)や21mmの場合、ホイールによってはソケットがキツく、傷をつける要因にも
なり、取扱い等を考えると、
17mmの方
がお薦めです。
但し、そのサイズを使用する場合には肉厚が薄くなる分、
純正採用の素材より硬度や強度が大きく上回る素
材製品を選び、車載工具として
必ず、
17mm(平成2年規制変更前軽自動車(最大排気量550cc(スバルだと
REXやSAMBAR))標準サイズ(現行車は660ccで19mm))
ソケットレンチを積んでおきましょう!
もしくは、サイズは変更せずに肉薄の特殊ソケットを用いる方法も有りますが、その場合にはソケットの耐久
性がない事から「割れ」が発生する為、予備を常備しておく必要も有り、その割には取扱いに対する改善が余
り見られない場合があります。また、パイプ系のソケット(セキュリティ用ナットアダプター含)やレンチを使用し
た場合には、素材に「伸び」が発生し、ホイールナットを舐めてしまう場合もありますので注意が必要です。
● 新品のナラシ
<重要>
ホイールまたはホイールナットを新品に交換した場合には、互いに接触するテーパー部が馴染んでいない(非真円、角度誤差による接触面積減少状態)為に緩みが発生する場合があります。
・
何れかが新品の場合には馴染み(当たり)が発生する様、
締付けと緩め作業を数回繰り返し、各テーパー(接触)面が
鏡面接触となる様、点接触となっている局部を磨耗させてから使用しましょう。
・特に
接触部が塗装されている場合には、塗装によっては膜の弾性で規定トルクが掛からない為、更に同操作
を繰り返し、
塗装を剥がした上で
当たりを付けておきましょう。
・工作
精度が悪い製品の場合には、その品の
硬度が相手方より高いと当たりが付けられ(無接触面抹消や接
触面圧均一化が行え)ず、
緩みが止まらない場合が有ります。
● お薦め品情報
・材質:クロモリ鋼。
・ソケットサイズ:17mm。
・長さ:ロング(ホイールのボルト穴がディープタイプにも対応)
・貫通タイプと袋タイプの2種を用意。
◆
クロモリレーシングナット(貫通タイプ ブラック&シルバー)
RAYS製のコピー品
・某オクだと、詳細内容に違いはあれど入手(送・代引料等込)価格で更に\100強/個、安価なモノも存在。
(
注意:
工作精度が悪い為に上記の「新品のナラシ」作業では
緩みが止まらないモノ有り)
◆
クロモリクロームナット(袋タイプ ブラック&シルバー(販売休止中(2009/05現在):近日再販予定))
ナットの深さ:42mm(20mmロングハブボルトも使用可)
・純正アルミホイール使用時のボルトとナットの噛合量は、11~12山(1.25ptで15mm、1.5ptで18mm)位。
・20mmロングハブボルトを使用する場合には、緊急用タイヤ(肉厚薄ホイール)に対し、実際のボルト長
やナットの深さと締付の確認を行い、NGな場合には貫通ナットをタイヤ1本分、常備しておきしましょう。
・安価(一般価格の50~60%)
・販売会社:
M2販売
・オリジナル品
RAYS製ホイールナット(クロモリ鋼 貫通タイプ :OEM先は
NISMO他等)
…私が購入した頃にはコピー品は無。(悔泣
(ホイールナット:product-レイズギア-17HEXレーシングナット項参照)
● メンテナンス
スポーツ走行、
街乗りオンリー問わず、
ハブボルトへ「のみ」、
銅を主体とした耐熱潤滑剤(和光ケミカル社の「
スレッドコンパウンド」(右頁中段参照)等)
の塗布をお薦めします。
・他にMOLYSLIP社の「
コパスリップ」(グリス成分の粘度が高い為、作業に必要以上のトルクが要求される)や
Henkel社の「
ロックタイト C5-A」(P17参照)等があります。
錆びや腐食による固着、脱着時のカジリや磨耗による痩せの防止や、また、各ボルト間での摩擦係数一定化や、熱膨張等によるボルトナット間での隙間を無くす事等によって
緩みの減少にもなります。そして、
主な成分が銅である事から導電、耐熱(グリス成分は、どのようなモノでも300℃以下位までしか対応できません。しかし、熱によってグリス成分が飛んだ後も、被膜(微粉末)化した銅の融解点(1100℃弱)「
手前 」(
実用上は1000℃弱位(
注意:メーカーによっては融解点をスペック表記))まで対応)
を求める個所にも有効な為、耐久、メンテナンス性が大幅に向上します。
・「ホイール(ハブ)ボルトには使用しないで」と注意書きされていますが…
和光ケミカル社(ブランド名:ワコーズ(WAKO'S))のコメント:
「これは、'05年頃から記載されており、当時の三菱ふそうのハブボルト破損によるタイヤ脱落事故対策とし
て、ネジ部以外(ホイールと接触するテーパー部)まで誤って塗布してしまった際に、含まれるグリス成分によ
ってインパクトのみ(トルクレンチ未使用)で締付けた場合への、あくまでも自動車工業会からのオーバートル
ク防止対策メッセージです。その為、ネジ部「のみ」へ塗布(ホイールナットテーパー部には無塗布)し、最終
締付けにトルクレンチを使用する場合には、耐久、メンテナンス性が向上し、全く問題もありません。」
との事です。
・他にも
同様なコメントが記されています。
・
ハブボルト以外の固着しそうな個所に対して非常に有効。
熱が加わる個所(エキマニ、マフラーに付属する各センサーやフランジボルト等)に塗布しておくと次回、簡単
に外す事が可能です。固着していないうちに塗布しておきましょう!!
例えば、排気系を脱着する際にセンサー(O2や排気温度)類が固着してしまっていた場合には、脱着工賃の
みで済むはずだったモノが、更にセンサー数万円+フロントパイプ(触媒)数万円、合わせて十万弱円の費
用が発生してしまいます。
・
電気的に電流が流れる個所に対して非常に有効。
接触部やボルトに塗布しておくと電気抵抗の増加が抑えられます。