今秋、第44回東京モーターショーが開催される。
思えば、もう14年経ったわけだ。
CSLのコンセプトモデルを初めて目にしたのは2001年のモーターショー@幕張。
当時まだデジカメは所有しておらず、「Nikon New-FM2」、カラーフィルムでその威容を収めるべく、
慎重にマニュアルフォーカスでピントを合わせ、シャッターを押したことを思い出す。
その紙焼きは今でも引出しにしまってある。
コーナーには「コンセプトモデル」と記載されているパネルが掲出されていたが、
今思えば、それはいわゆるプロトタイプマシンで、
本国ではガンガンに走りこまれた個体だったのではないかと推測する。
ショーモデルにありがちな「ドンガラ」ではなく、実際のマシン。
「軽量化によってさらなるパワーが得られるから」という、
何となく日本語の座りが悪いキャッチコピーが印刷されたバックパネルの前に、
さりげなく展示されていた記憶がある。
当時のショー主催者のアーカイブサイトを覗くと、CSLは次のように紹介されている。
引用させていただこう。
「M3 CSL(特別展示車)
まったく新しいコンセプトを持つライトウェイト スポーツカーとしてBMWが発表するM3 CSLは、
軽量化のメリットを活用した世界最高クラスの一流スポーツ カーとしての
パワーとパフォーマンスを提供します。
量産車のBMW M3よりも200kgもの軽量化を実現したことで、
パワーウェイト レシオは3.5kg/psをマーク。
ボディにはカーボン ファイバー プラスチックを一貫して使用し、
シーケンシャルマニュアルギアボックス(SMG)と専用開発のドライブ ロジックにより、
F1マシンの走りを楽しめます。
量産型M3から受け継ぐ高回転型直列6気筒エンジンも、
このモデルのために綿密にチューニングされ、効率的なシリンダー充填プロセスと、
ぎりぎりまで抑えたフリクションにより、350psを超える出力を発揮します。
M3 CSLは、世界でもっとも厳しいサーキットであるニュルブルクリンクの北コースを、
ほとんどの量産車に30秒もの水をあける8分フラットで駆けぬけます。」
この紹介文で興味深いのは、この時点では軽量化の値が-200㎏であることと、
ニュルのラップが8秒フラットと記載されていること、
そして出力が360ではなく350馬力超と書かれていることである。
このテキストはBMWから提出された公式リリースに沿って書かれているはずだが、
こののち市販されることになったモデルとの違いがわかって面白い。
またラップタイムはその後の開発で8秒をさらに切るタイムを叩き出すことになるのだから
その進化過程も追体験できる。
ラップタイム、馬力はさておき、個人的には「-200㎏」の実績は、
ぜひ市販モデルにも引き継いでおいてもらいたかったが、
恐らくそのためのパーツ採用や全体エンジニアリングを考えると、
非現実的なプライスタグとなってしまっていたことだろう。
-110㎏で良かったのかもしれない。
その「90㎏」の数値はどこで生まれるのかということを、
当時のプロトタイプと市販モデルの細部を見比べることでチェックするのも、
極めてオタク的な嗜好をくすぐる楽しい行為である。
勿論、見た目のパーツだけで90㎏が達成されるわけではないだろうし、
もっと目に見えない内側の部分の設計やシステム的な努力も関わってくる結果のことだろうが、
取りあえず、堅いことは抜きにチェックしてみよう。
●外装でいえば、ミラーがステーまでフルカーボン。
●エグゾーストパイプがカーボン。
●内装では、ステアリングカバーがカーボン、トリムもカーボン。
●機器でいえば、エアコンは無し、か、少なくともオートエアコンは無し。
●オーディオ関係も無し。Mトラックシステムも無さそう。
●エンジンルームでは、エンジンカバーがカーボン。
●軽量化と関係するかは不明だが、テールランプの意匠が別仕様。
さて、これで計「90㎏分マイナス」となるのかな。
本国では、市販車でも、エアコンとオーディはレスオプション対応が
されていたと聞く。
日本ではさすがにエアコンはつけたいが、別にオートでなくマニュアルタイプで構わないし、
あのエグゾーストがあれば、個人的にはオーディオは不要。
あとはカーボン系のパーツをどう見るか。
後付けのパーツがBMW用は豊富だから、ついついカーボントリムに換装したり、
カーボン製のエンジンカバーも存在するので、
ミラーカバーと一緒につけたりしたくなるのが人情。
だが、いずれもそうしたパーツはサードパーティ製で純正品じゃないから、
日々脳みそに何本もしわを刻むような研究を怠らないM社のエンジニアに敬意を表し、
換装するなんていう愚かしい行為はやめておくのが礼儀上も正しいのである。(自戒)