この週末が、バイクに乗れる最後のチャンスだろうと思った
土曜日の天気予報は「雨」だけど、
日曜日は少し回復し、晴れ間も出そうな予報
起きた時は曇り空だったが、
時間が経つにつれて、青空も顔を出し始めた
少し風が強いのが気になるが、
午前10時、セローにナビを付けて走り出す
今日は、南相馬に行って、
スタンプラリーの空白をヒトツ埋めてくるつもりだ
南相馬は、震災前にいつも行っていたカート場の先、
モーターランド川俣からは30㎞ほどなので、
ウチからは、ゆっくり行っても2~3時間ほどで行けると思っていた
三春を抜け、順調に進む
カートに行く時に使っていた慣れた道である
国道114号線にでて、カート場に近づくにつれ、
段々と人気(ひとけ)が無くなってくる
いつもの道が、両サイドから雑草に被われ、
クルマの通った跡すら、いつのモノか…
擦れ違ったクルマは、数台
しかもその中の2台はパトカーである
少しして「モーターランド川俣」のカンバン
枝道を入ってゲートへ向かってみる
固く閉ざされたゲートと雑草に被われ、
中の様子を見る事は出来なかった
元の114号線に戻り、南相馬を目指す
ココからなら30~40分で行けるだろう
この時、カート場の前に設置されている
温度計の表示は「4℃」
どうりで寒いと思った…
当然、寒いことは予想していたつもりで、
上はヒットエアージャケットに、冬用のインナーを付け、
その下にはウインドストッパー、そしてスキー用アンダーウェアと、
アンダーアーマーのコールドギアも着ている
下は、ミズノブレスサーモのアンダーに、
ゴアテックスのツーリングパンツ
ネックウォーマーも付けてきた
セローは、ハンドルにナックルガードが付いているので、
直接風は当たらないのだが、
ウインターグローブの中で指がしびれる
それでも、浜通りに出れば、少しは暖かいだろうと、
先へ進んで行った
浪江に入ると、その様子はさらに酷くなっていく
道路沿いの建物は、庭に雑草が生い茂り、
無人のガソリンスタンドに放置されたKトラは、
セイタカアワダチソウに埋もれている
まるで人の気配のないゴーストタウンの様な道を進んで行くと、
大きなゲートが現れた
ゲートの向こうから、ワタシを見つけた警察官が2人、
走り寄ってくる
ゲートの前で停車すると、1人の警察官が、
「この先は、立入制限区域です。許可証が無いと通れません。」
もう1人の警察官は、スッとワタシの後ろに回り込んだので、
ナンバーでも控えているのだろう
話しかけてきた警察官に向かって、
「南相馬に行きたいんですが…」と言うと、
「川俣まで戻って、迂回して頂くようになります。」と、
事務的な返事が返ってくる
ワタシが「あぁ…戻らなきゃダメなのね…」と言うと、
申し訳なさそうに
「スミマセン…県道12号線で迂回して頂くと、真っ直ぐ海まで出る事が出来ます。」
もう1人の警察官は、無言のままだった
ワタシは、かじかむ手をエンジンに押し当てながら、
「じゃぁ、引き返しますワ…」と言うと、その場でUターン、
来た道を戻ろうとした時、もう1人の警察官が初めて口を開いた
「お気をつけて!」
二人とも、20代前半と思しき若い警察官だった
ワタシは「ありがとう!あなた達も気を付けて」と言うと、
無口な方の警察官が敬礼してくれた
もう1人の警察官はペコリと頭を下げた
ワタシは左手を挙げて走り出した
少し戻って、迂回路、枝道を探すが、
どこも足場用パイプで作られた、頑丈なバリケードで塞がれていた
やはり川俣まで戻らないと迂回は出来そうにない
誰も居ない町の中を右往左往する内に、
身体だけでなく、心もドンドン冷え切ってくる
途中、かつては賑わっていたであろう商店の前にバイクを停め、
1年半以上、誰にも座られる事が無かっただろうベンチに腰掛け、
ナビで道を探してみるが、
これ以上ココに居てはイケナイという気持ちが強くなってきた
今日は諦めて帰ろう…
そう決心して、また走り出す
荒れ放題の田畑、生活の匂いがしない街並み…
寒さよりもジワジワと、得体の知れない恐怖が襲ってくる
来た道を戻り、田舎道からバイパスへ出た瞬間、
沢山のクルマ、道には人々が歩いている
まるで巨大迷路を抜け出したかの様な気持ちになった
ホッとした途端、急に空腹を思い出し、
寒さもピークをとうに越えていたので、
通りのラーメン屋に入ってみる
元気な「いらっしゃいませ!」の声と、
暖かな店内…
ついさっきまでの虚空な気持ちがウソの様に晴れてくる
ジャケットを脱ぎ、ラーメンの大盛りを注文してトイレを借りる
手を洗いながら、ふと洗面台の鏡を見ると、
カサカサになった頬に、幾筋かの線が見えた
「おまえ泣いてんのか?」
備え付けのティシューで、思いっきり鼻をかんで、
顔を洗うと気持ちもスッキリした
飛び込みで入った店なのに、大盛りのラーメンは、かなり美味しく、
イッキに汁まで飲み干し、にこやかに会計を済ませると、
またセローに跨り、帰路へと着いた
今年のバイクはコレで終了だろう
来年また、南相馬を目指すとは思うが、
あの場所を通る事は無いと思う
いわきの被災地を見た時より、心にダメージを負った気がする
※郡山・須賀川方面から南相馬を目指す場合は、
二本松から国道114号線→県道12号線で行くか、
福島から国道115号線で霊山の方から行くしか無い様だ
Posted at 2012/11/19 14:18:00 | |
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