

この車を買った時から一貫して同じテーマでチューニングをしている。
「機械の限界を見たい」
子供の頃より機械好きであったため、伸び代が異常に残されているこの車を買った事自体、既にテーマが先にあったのかもしれない。
R35の3点セット流用で、広島のRiOに預けた事自体、
現代の道具を使って、現代の考え方の下にチューニングしたらどうなるか、というこの店の探究心に惹かれたのもある。
20年が経過した古い車であったため、セッティング後に自分でオリフィス抜きを試してブーストを上げたらインテークパイプのガスケットやらエキゾーストのガスケットが飛んだ。
古い車である事を否応無しに突きつけられた瞬間だった。
エンジンを降ろして、弱点潰しのため、20年が経過した危険な配管類の総交換、オイルポンプとバッフルプレートを投入する際、
たまたまV CAMとGTIII-SSをよい条件で手に入れる事が出来た。
当然ながらエンジンを降ろした時に組み込むのであれば工賃もかなり割安になる。
サスペンションもnismoのS-tuneが入っていたが、正直スポーツカーってこんなもんか、という硬さと突き上げを喰らいながら乗っていた。その後補強を入れていくに従って少しずつマシにはなったが、方向性は変わらなかった。
エンジンが一通り終わって、ボディもある程度補強が終わって、足ももうちょっとどうにかならんか?と思い始めた時にHKSのHIPERMAX IV SPを投入した。その際、リジカラやらの現代の力を借りた。
ボディもガッチリサポートも含め、重要箇所を補強し、本来硬いはずのSPを投入した後は非常に感動した。
当たりが柔らかいにも拘らず非常に俊敏に動く。今までの相反する要素を両立させた感じだった。
しかし、20年の月日と、オイルがマズく、今年の1月1日にメタルブロー
クランクシャフトには目視する限りでは明らかな傷は無く、メタルが限界に達したと考えられる。
ブローした直後から1つめに加えて、2つめのテーマが浮かんでいた。
「究極の機械にしよう」
普通はここまでやらないが、フルカウンタークランクの投入を決定し、その後ボーリングが必要になったため、鍛造ピストン、コンロッドの投入、当然ながらその場合はバランス取りもセット。
ただ、これにはメタル保護という目的も強い。振動軽減、アンバランスの排除で長く乗り続けたいという思い。
しかしクランクシャフトが届かない。結局半年待った。
他は全て揃っているのに長らく中断。
足はメンバーも全て降ろして強化ブッシュフル交換済みのメンバーに交換。
アームも全て車検に問題の無い分のニスモのアームに全て交換した。
元々はR35のΦ390ブレーキを流用するため、TE37 SAGAを投入し、それに伴いタイヤの幅も2センチ広がった。
現在発注済みだが、実績と性能と、メンテナンスを考え、R35ブレーキではなくENDLESSのRacing6/Racing4が今後投入される。
キャリパーをアルマイトからゆくゆくは塗装へと変更していくためのENDLESSのキャンペーンで塗装が最も好みのものに無料で変更できたため、彫り文字仕様にした。
クランクも届き、組み上がった。

その後、乗り始めたのだが、
非常に冷静な車になった。
オイルクーラーも投入して温度的にも冷えたが、
とにかくアツい要素が一切無い。
エンジンは8,000rpm(レブリミット変更)でも一切振動がなく、排気音が大きくなり、音が高まるのみ。
リフレッシュバーを投入してボディ剛性の更なるアップを達成した車体は軋み音一つせず、非常に静かな車内。当然ながら安っぽい振動も一切無い。
足回りもよく動き、当たりは硬くともベタっと路面をなぞるのみで突き上げなどは皆無。
最初にフルスロットルをくれた時は気持ちが熱くなったが、一度体験してしまうと、
加速感には全く感動出来なくなった。
何故ならあまりにも冷静に、あまりにも下からリニアにスムースにパワーが出て、しかしエンジンの振動やボディの振動が一切感じられないため速度感や加速している感覚が非常に希薄なのである。気がつけば恐ろしい速度に達していても、車内は静かで快適そのもの
フルスロットルをくれてもリニアに速度が上がっていくだけで車内は非常に平和なまま恐ろしい勢いで速度が増していく。ブーストは1.3kg/c㎡まで掛けているにも拘らず。2.7Lも排気量があるにも拘らず。
高回転で頑張っている感も無く、エンジンを回しているという高揚感も一切無い。
淡々と仕事をこなすのみ。
燃費もよく、ガソリンも非常に減りにくい。
冷め切っていると言われれば間違い無く冷め切っている。そういう面白さは一切無い。
車自身が持つ情熱やらなんやらは完全に消える。
気分や高揚感を重視するのであればここまでのチューニングはしない方がいい。
確実に後悔すると思われる。
スポーツ系の軽自動車の方がよっぽど操っている感覚がある。
しかし、私自身は機械好きであって、機械の限界を見れた事に常に感動してしまう。
完全バランスの直6を、市販車では無理なレベルまでバランスや重量を追い込むと、こうも恐ろしいほどに振動が無くなるのか…精緻になるのか…滑らかになるのか…
ボディ剛性を鬼のように上げて、リジカラでメンバーと仮想的に一体化させ、ブッシュも全て打ち替えるとこうも滑らかに足が動くのか…と。
金属を磨き続けるとヌメっとした感触になるが、正にそれを感じているかのよう。
あまりにも常に冷静沈着な車であるからこそ、常にじっくり、機械としての完成度を味わいながら乗る事が出来る。
そういう喜びもあっていいのではないか、と思う。
あと2ヶ月も経たない内にブレーキも届き、完全でどこにも隙の無い、強烈な…それでいて何もかもが冷静な車になる。
もう新規で何かが開発されない限り、これ以上何かをいじろうにももうデメリットと天秤に掛ける事しかできない。