先に改正道路交通法が成立し、後席におけるシートベルトの着用が義務化される運びとなりました。
もっとも施行は公布から一年以内となるので、話題になるのもしばらく先のことかもしれません。
今回の改正ではいくつかのポイントがありますが、今回はその中から「後席シートベルト装着義務化」についてのお話しです。
これまでシートベルトについては前席(一列目席)では一部の例外を除いて高速道路/一般道路問わず装着が義務とされてきています。
しかし二列目以降の後席については"努力目標"とされるに留まっていました。
近年、自動車関連団体などが実験などを行い、後席シートベルトの重要性を強くアピールするようになりました。
非装着で事故にあった場合、乗員が負うダメージが装着時よりも格段に大きいことは容易に想像できるところです。状況によっては衝撃によって車外に放出され、路面に激しく身体を叩きつけられたり、後続車に轢かれる可能性もあります。
また、衝撃で身体が大きく動くことは、シートベルト非装着の後席乗員そのものが一列目席など他の乗員に対する加害者になる場合もあります。
このように危険極まりない後席でのシートベルト非装着。
しかし政府発表のデータによると後席でのシートベルト着装率は10%にも満たないのが現状です。
しかも、その理由は1位が「前席と比べて着装しずらい」、2位は「着装すると窮屈」、3位は「面倒だから」と呆れる内容ばかり。
こうした背景から、今回の改正で高速道路においては後席もシートベルト着用が義務化されることになったのです。
ところでこの道路交通法改正に伴い、このようなニュースもありました。
●ベルト着用義務化に困惑 改正道交法で観光バス業界
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東京新聞 2007年6月19日 9時38分
記事によると今回の改正に対してバス事業者の団体である
社団法人 日本バス協会は高速観光バスをシートベルト着用義務化の対象外とするように
警察庁に陳情したそうです。
しかし、これは少々納得がいきません。
最近もニュースで高速道路におけるバスの交通事故が報道されたことは記憶にあたらしいところです。
当然、道路を走っている以上は事故に巻き込まれる可能性もありますし、このところは激しい価格競争によってバス運転手の労働条件も過酷になっているという話もありますので、バス自身が事故を引き起こす可能性も充分にあるわけです。
ところが記事によると「厳密に適用すれば、カラオケやビデオ操作のためにすら席を立てなくなる」などという"屁理屈"としか思えない理由までを並べ立てて義務化回避を訴えているのです。
ここはむしろ航空法のようにバスやタクシーにおいて乗客に対してベルトの着用を明確に義務づけ、運転手の指示に従わない者に対しては乗車拒否や途中での降車命令を出せるような法整備をすべきではないでしょうか。
現在の日本はミニバンがファミリーカーの主流となり、休日の高速道路は背の高いルーミーな車であふれています。
しかしバスも同様かと思うのですが、室内空間に余裕のある車に乗ると、多くの人が「車」であることの意識が薄れ「居間」でくつろでいるかのような感覚を持ってしまうのではないでしょうか。
その証拠に、休日のミニバンでは走行中の車内で子供が遊び回っているという光景も良く目にします。
こうした状況で運転しているお父さんやお母さんも、よく野放しにしているものだと呆れてしまうわけですが。
自動車は本質的に危険なものです。
必要最低限の運転操作と法規について一度習得しただけで、あとは事実上終身に近い状態で運転免許証を手にすることが出来ます。
免許取得の過程や更新時にはありきたりな交通事故の悲惨さを見せられるだけで、本質的な車の危険性や物理的特性、運転技術の実践訓練は行われません。
そうしてステアリングを握る老若男女が、飛行機のように第三者の管制を受けるわけでも無く、道も速度も走り方も自由に移動しているわけです。
信号機や標識、法規など最低限のルールを守れば事故の多くは防げるでしょうが、数多走っている車の全てが守っているはずもなく、いつ・誰もが事故に遭遇する危険を持っているのです。
今回の法改正、後席シートベルトの着用義務化は遅きに失した感じがしなくもありません。
また高速道路に限定している点も納得いかないものです。
ぜひ早急に一般道路も含めた義務化に移行するとともに、行政・自動車メーカー・関係諸団体は後席シートベルトの重要性について広く徹底した周知活動を行ってほしいと思います。
もっとも、こうしたPR活動は本来は自動車雑誌も大々的に行うべきでしょうが・・・、期待するだけ無駄でしょう。
Posted at 2007/06/20 01:04:53 | |
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