
今回ご紹介するミニチュアカーはイギリスの伝統的高級車メーカーの作品。
ミニチャンプスからリリースされた1982年型の「アストン・マーティン ラゴンダ」です。
ライオネル・マーティンとロバート・バムフォードによって発足した小さなレーシングカー製造会社は、アストン・クリントンで開催されたヒルクライムレースに由来して「アストン・マーティン」を1914年から名乗るようになりました。
高性能スポーツカーや高級GTクーペで名声を高めた同社ですが、1947年にロールス-ロイスにも匹敵する高級車メーカーだったラゴンダ社を吸収。社名を「アストン・マーティン・ラゴンダ社」として新たなスタートを切りました。
アストン・マーティンと言えば映画「007」シリーズの主役が駆る"ボンド・カー"が広く知られるところですが、2ドアクーペやコンバーチブルに加えて、ラゴンダの名称を冠した4ドアセダンの生産も行ってきました。
その源流は1961年に登場した「ラピード」ですが、これは50台ほどという少ない台数を生産したのみで姿を消します。その後、1974年に「アストン・マーティン・ラゴンダ」という名称の4ドア高級セダンが登場しましたが、こちらは一桁という極僅かな台数しか世に送り出されませんでした。
背景には既にメルセデス-ベンツをはじめとしたメーカーが高級セダン市場で強さを見せていたことに加え、アストン・マーティン社自身の経営が不安定だったという面もあります。
何度も会社存亡の危機に瀕しますが、そのたびにこの伝統あるブランドを守ろうと支援者が現れました。しかし中東資本などの支援を得たこともありましたが、なかなか経営基盤が安定することはなかったのです。
そんな中、1982年に発表されたのが二代目となる「アストン・マーティン ラゴンダ」。
メカニズム的には1969年に登場していた「アストン・マーティン V8」のコンポーネンツを多く共用していたので古典的な内容でした。自社製の5.3リッターV8エンジンと、クライスラー製の3速オートマチックを組み合わせていましたが、エンジンそのものは大排気量であった上に、DOHCを採用していたのでスペックは一線級。
ボディサイズは全長5,280mm×全幅1,790mm×全高1,300mmと堂々たるサイズですが、特に車高の低さが特徴的でロー&ワイドな佇まいが強調されていました。これだけのサイズですから、車両重量は約2,100kg。ところが最高速度は230km/hだったというのですから、超弩級のパフォーマンスを持っていたわけです。
スタイリングはウェッジシェイプのお手本とでも言いたくなるような直線基調。丁寧にスチールを折り曲げて組み立てたかのような前衛的スタイリングで、高級車としては異例のリトラクタブルヘッドライト装着によるノーズの低さも相まって独特の存在感を醸しだしていました。
ところがこのニューモデルをもってしても会社の経営を改善させるには及ばず、1987年にフォード傘下に入ります。
フォードは積極的にアストン・マーティンの建て直しを図り魅力的なニューモデルも登場させて奇跡的とも言える経営基盤の安定化を成功させました。しかしラゴンダについてはフォードの一員となった後も変更を受けることなく、晩年は受注生産の形で1990年代初頭まで生産が続けられました。
現在、アストン・マーティン社は投資会社などの共同出資体制となっていますが、去る2月にはこの二代目ラゴンダ以来となる久しぶりの4ドアモデルとして、往年の「ラピード」という名称を復活させたニューモデルを発表しました。
"一見さんお断り"とでも言うような孤高の存在感を見せるアストン・マーティン、新型ラピードにも大いに期待したいところです。
ちなみにこの二代目「アストン・マーティン ラゴンダ」ですが、なかなか日本では東京ですらお目にかかる機会のない稀少車でした。これまでに私自身も2回しか実車にお目にかかったことはありません。
バブル景気に沸いた1990年当時、メルセデス-ベンツ560SELが1,265万円、ベントレー・ターボRが2,850万円だったのに対して、アストン・マーティン ラゴンダは3,900万円という値札をつけていたのです。同年、初代セドリック・シーマの3リッターターボにおける最高級仕様だったタイプII-LIMITEDは436.5万円でした。
この高額ぶりに加えて、販売ディーラー網が非常に限られていることもユーザーに対する敷居を高めた理由だったかと思います。
思えば当時、日本におけるアストン・マーティンの輸入総代理店は麻布自動車でした。自動車販売とは全く別の面でなにかと話題になりニュースでも報じられたことをご記憶の方も多いかと思います。
MiniCar|MINICHAMPS Aston Martin Lagonda (1982)
Posted at 2010/03/01 18:33:37 | |
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ミニチュアカー | 日記