
今日は自動車の排気量に関するお話しです。
最近は日本メーカーの登録車における大排気量&大型化が進んでいるように感じている方も多いのではないかと思います。
その昔、それこそ消費税導入前で自動車物品税が存在していた頃は3ナンバー車に対する自動車税が5ナンバー車よりも圧倒的に高額だったこともあり、街中を走る車の大半が排気量2,000cc以下の5ナンバーでした。
25年ほど前の感覚に戻ってみると、排気量1,000~1,300ccのコンパクトハッチは女性ユーザーやセカンドカー需要。トヨタで言えば当時のスターレットやカローラIIあたりですね。
1,300cc~1,600ccはファミリーカーの王道。まさにカローラがこの排気量帯にグレード展開していました。
1,500cc~1,800ccはちょっと余裕を感じさせるファミリーカー。コロナがこの領域を受け持っていましたね。
1,800cc~2,000ccは高級パーソナルカー。マークIIに代表され、当時は「ハイソカー」などとも呼ばれたものです。
そして2,000cc~3,000(2,800)ccのクラウンは、それなりに事業を成功させた方などの自家用車や社用・公用車的な位置づけでした。
そんな時代は既に遠い昔になり、バブル景気、失われた十年、そして「いざなぎ越え」と言われる景気回復基調の中で日本社会には"格差"が生じた面もあるでしょうが、25年前とは車に対して求められる価値観や環境も大きく変化しました。
3ナンバー車は街中で珍しくない存在となりましたが、ここ最近は大型セダンを中心に排気量の拡大傾向が見られています。
例えば「
トヨタクラウン・アスリート」は2005年秋のマイナーチェンジで、3,000ccエンジンを廃して3,500ccエンジンを搭載しました(写真はマイナーチェンジ前のモデル)。
このクラスでライバルとなる「
日産フーガ」は、デビュー当初から3,500ccと2,500ccの二本立てとし、後にV8の4,500ccを追加しています。
背景には海外市場対策であったり、日本国内でもこのクラスで好調な輸入車勢への対応という面があるでしょう。
またこのクラスの高価格車は数値のスペックを重視する客層も未だ少なくないようなので、ひとつの"ステイタスシンボル"的な意味合いが排気量に反映されているのかもしれません。
しかし、3,500ccって必要ですかね?
私はもう古い人間に属するためなのか、一般的に所有するという意味での上限は3,000ccが適当ではないかと思っています。
もちろん自動車にはステイタスを要求されるカテゴリーもありますので、一概に大排気量車を否定するつもりはありません。
ただ、日本全国を満遍なく見てみたときに、一般的に個人ユーザーが3,000ccを遥かに越える排気量の車種を持つものだろうか、と思ってしまいます。
例えば自動車税の負担額は次のようになります。
1,500cc超 ~ 2,000cc以下 39,500円
2,000cc超 ~ 2,500cc以下 45,000円
2,500cc超 ~ 3,000cc以下 51,000円
3,000cc超 ~ 3,500cc以下 58,000円
3,500cc超 ~ 4,000cc以下 66,500円
4,000cc超 ~ 4,500cc以下 76,500円
いわゆる3,000ccエンジン搭載車(実排気量は3,000cc以下)と3,500ccエンジン搭載車(実排気量は3,500cc以下)を比較すると、年間の自動車税は7,000円の違いがあります。
なお上記の税額を見ればお分かりの通り、500cc刻みの設定となる自動車税ですが排気量そのものが大きくなるほど差額も大きくなる累進制になっています。
ここでひとつ面白いマーケティングの差をご紹介しましょう。
先に3,000ccエンジンを廃した「
トヨタクラウン・アスリート」のケースをご紹介しましたが、実は同じクラウンでも「
トヨタクラウン・ロイヤル」はマイナーチェンジを受けても3,500ccエンジンは搭載されず、3,000ccが上限となっています。
これは
トヨタ自動車らしいマーケティングの妙という感じがします。
オーナードライバー向けの「
トヨタクラウン・アスリート」はライバルを意識した性能勝負としつつ、一方で法人・公用需要が高い「
トヨタクラウン・ロイヤル」は価格面や入札などの条件指定で有利となるであろう3,000ccエンジンに留めておく。
もちろん「
トヨタクラウン・ロイヤル」も個人で購入できますので、外見の差異はあるにせよユーザー的に言えばクラウンで3,000ccエンジンも3,500ccエンジンも選択できるということになります(2,500ccは共に設定あり)。
事実、街中を見ると圧倒的にクラウンの方を見かけるように思いますが、その中には多くのハイヤーやショーファードリブン、社用車なども含まれています。
やはり維持コスト面や慣例などによって3,000ccの壁を超えた車を導入しにくい世界というのがあるものなのでしょう。
そろそろクラウンは次期型の話題も出るようになりましたが、排気量がどの程度のエンジンをラインナップしてくるのかも興味深いところです。