
この土曜日から「
第41回 東京モータショー 2009」の一般公開が始まりました。
2005年は8.4万人、2007年は9万人余りが来場した一般公開初日ですが、今回は天気が雨模様だったとは言え62,200人と大幅な減少になりました。
ちなみに私たちメディアが取材に訪れた報道関係者公開日の2日間についても、入場者数は前回の2007年に対して半減しているのだとか。たしかに会場内で2005年や2007年に目立っていた海外メディアの姿がとても少なく、すっかり"販売"や"セールスプロモーション"という面のショーとしては、アジア市場の中心は上海に移ったようです。
もっとも今後は"技術展示"を中心として、華やかさには欠けるかもしれませんが"ショー"の要素を方向転換していくことも、「
東京モータショー」が存在感を魅せ続けていくひとつの手段かもしれません。
さて、既に一般公開がスタートしたことで、会場を訪れた多くの方々が写真とともに展示車両の印象やレポートをブログなどにアップされています。
そこで私も、ちょっと"仕事抜き"の個人的な視点から気になった車を一台ご紹介してみましょう。
それはいわゆる"コンセプト・カー"ではなく、間もなく正式な発表発売となる「
二代目・日産フーガ」。
このショーがお披露目の舞台となり、開幕と時を同じくして先行予約注文の受付もスタートしました。

プレスディ2日目には、3台の実車が展示されていました。ステージ上には2台が載せられており、ダークレッドの車体が「370GT」、ライトブルーの方は「HYBRID」です。
基本的なスペックをおさらいすると、全長4,945mm×全幅1,845mm×全高1,500mm、ホイールベースは2,900mmの5人乗り4ドアセダン。
現行の350GTと比べて、長さ15mm/幅40mmの拡大を受けた一方、全高は10mmのダウン。ホイールベースの長さは変わっていません。
エンジンはV型6気筒を継続搭載しますが、排気量は3,700ccと2,500ccの二本立てになります。普及仕様の2,500ccは従来通りですが、これまで3,500ccだったエンジンはスカイラインクーペなどと共通の3,700ccに換装されることになります。
ゆえに必然的にトランスミッションは従来の5速オートマチックから7速オートマチックに進化することになり、この点はようやく一線級の商品力にたどり着いた印象です。

装備面では今どきらしい電気制御の安全デバイスが声高に宣伝されています。
独自性のありそうな装備としては、エンジンやトランスミッション、4輪アクティブステアなどの特性を好みに応じて変化させられる「ドライブモードセレクター」があります。ダイヤル操作ひとつで車のキャラクターをスポーティにしたりコンフォートにしたり、エコドライブ重視にしたり出来るものですが、果たして実際にオーナーになったときにそうそう頻繁に切り替えて使うほどの必要性がある装備なのかは疑問です。
取り敢えず現行型のオーナーとして感想を言えば、すっかりアメリカ人のための"インフィニティ"としてモデルチェンジを受けた車としかいいようがありません。
横幅で約50mmの拡大は、室内空間の向上や対側面衝突安全性のためというよりも、フロントフェンダー部を中心とした造形のため、つまりはデザイン要件によるものだと伝えられています。狭い道や駐車場も未だ多く、立体駐車場などの利用機会も多い日本において、アメリカ市場迎合姿勢に他ならないこの拡幅には憤りを覚えます。
ちなみに現行型デビュー時に出版された雑誌では、「北米市場を考慮したら、もっと幅を大きくしたかったのでは?」との問いに、コマーシャル出演でも有名な日産のデザイン責任者の型が「日本市場を考えたら1,800mmは超えさせたくなかった。余り大きくして欲しくないというユーザーは確実に居る。その上で、やや幅が狭いプロポーションが逆に日本メーカーならではの独自性あるデザインを実現できる」といった趣旨の答えをしていました。
ま、今になって聞くと虚しい限りですね。
デザイン的にはアメリカ人好みのマッチョスタイルが強められましたが、巧く初代のイメージを踏襲していると言えるでしょう。日産のセダンらしく、6ライトウィンドゥもアイデンティティとして継続採用されています。
個人的にはテールランプが丸形LEDで無くなったことに好感を持ちました。

内装はプレミアムインテリアの木目パネルに、純銀粉を手作業で刷り込んだという凝ったものを採用。往年のインフィニティQ45にオプション設定されていた「KOKONインスト」を思い起こさせます。
しかし妙にウネウネとしたデザインのインスツルメントパネルには、座ってみても落ち着き感に欠ける嫌いがありました。個人的にはこのようなクラスの車を選ぶ理由のひとつに「長距離巡航中の全般的な高い快適性」があると思うのですが、なんとなく脂っこい室内はスムーズに淡々と走らせるというよりも、追越車線を無駄に速いスピードでカッ飛んで行けと言わんばかりの雰囲気が漂っています。
最後にハイブリッドですが、1モーター2クラッチのパラレル式が採用されました。組み合わされるエンジンは3,500ccのV6ですが、日産に限らずハイブリッド車にこんなに大きな排気量のガソリンエンジンは必要なのでしょうか?
2,500ccのガソリンエンジンとハイブリッドを組み合わせて、3,500cc級の動力性能と2,000cc級の燃費を実現させたと言われれば、それはとてもインテリジェンスを感じさせる車であり購買意欲もそそられます。しかし現在のLクラス以上のハイブリッドカーは、エコロジーを隠れ蓑に、単なるパワースペック競争を展開しているように見えてしまい、なんとも愚かしさを感じるところです。
全体的に超辛口の内容になりましたが、それというのも自分自身が所有している車のモデルチェンジに対するものですから、必然的に厳しい眼で見ることになります。
果たしてお薦めかと言われれば、実際に乗って動かした訳ではないので難しいところですが、今回見た限りでは現行型ユーザーが無理に代替する必要性は余り無いような気がします。
実際に、ウチも既に12万kmを走り、ちょうど二代目デビューと時を同じくして2回目の継続検査(車検)を迎えますが、全く購買意欲をそそられていません。
もっとも、2年後くらいに中古車市場に流れてくるときには、クラウンと比べて圧倒的に割安な値札を下げてくるでしょうから、そうなればバリュー・フォア・マネー度の高さから購入検討対象になるかもしれません。
ただ、何といってもアメリカ市場ユーザーのために作られたと言っても過言ではないモデルですからね・・・。