富士重工業は11月13日、フォレスターをフルモデルチェンジし、発売しました。
今回のモデルで四代目となるフォレスターですが、初代モデルから大きくブレることのないコンセプトは、今注目されつつあるSUV市場において、一定の地位を築いていると言えるでしょう。
新型のエンジンラインアップは、2リッターのNAと、レガシィに積まれた直噴ターボの二種類。
NA車にCVTもしくは6MTをドッキング、ターボ車にはCVTのみとなっており、目新しいものではありませんが、先代モデルの5MTもしくは4ATという設定からすると、ようやくトランスミッションが時代に追いついたという感覚を受けるとともに、MTを残してきたのは、アテンザにMTを設定しているマツダ同様、スバルの拘りとも言えるでしょう。
そしてこれまたスバルの拘りを感じさせるのは、全車AWDで、2WD車を設定していないこと。
エクストレイルやCX-5といった後発ライバルがFF車を設定しているのとは一線を画しており、スバルは前述のようなライバルを、ライバルと思っていないのかもしれません。
安全装備では、スバルのもはやお家芸とも言える、EyeSightをベースグレード以外に105,000円高で設定。
サイド&カーテンエアバッグは、標準装備グレードがなく、ベースグレード以外にオプションと、少し残念な展開。
VDCや後席中央ヘッドレストは言わずもがな、全車標準。
ただ、如何せん、こちらもスバルの悪しき伝統とも言える、メーカーオプションの組み合わせがいただけない。
例えば、事実上のベースグレードとなる2.0i-Lにサイド&カーテンエアバッグをつけようとすると、オートワイパー、オートライト、フロントシートヒーター、キーレスアクセス&プッシュスタート、運転席助手席8ウェイパワーシートがもれなくついてきますし、サンルーフやナビとの同時設定は不可能という、相変わらず不可解な設定。
2.0i-S EyeSightや、2.0XT、同EyeSightでは、プレミアムセレクションなるメーカー装着オプションを選択すると、サンルーフやナビとの同時装着が可能ですが、こちらも本革シートとの抱き合わせ。
こういったメーカーオプションの抱き合わせ設定は、スバルに限らず、多くのメーカーで見られますが、所詮メーカーの都合に過ぎず、ユーザー軽視と言えるもの。
本当にユーザー視点に立っているのか、甚だ疑問であり、早急に改善してもらいたいところです。
そして、同様に残念なのは、
ノートで書いた時と同じように、価格スペシャルなグレードの存在。
NAエンジン車に、2.0iなるグレードが、2,089,500円で用意されていますが、その一つ上となる2.0i-Lから落とされる装備は以下のとおり。
・アルミホイール→スチールホイール(オプションでアルミホイール選択可能)
・CVT車のX-MODE
・CVT車のアイドリングストップ
・SI-DRIVE
・HIDロービーム→ハロゲンヘッドランプ(オプションでHIDロービーム選択可能)
・フロント&リアフォグランプ
・ドアミラー内臓LEDサイドターンランプ&ターンインジケーター
・クルーズコントロール
・マルチファンクションディスプレイ→インフォメーションメーター
・パドルシフト(CVT車)
・本革巻シフトノブ(MT車)
・本革巻セレクトレバー&メタル調加飾パネル(CVT車)
・本革巻ステアリングホイール
・メーター(常時発光式ホワイト照明→レッド照明)
・フルオートエアコン左右独立温度調整機能
・イモビライザー
・6スピーカー→4スピーカー
・リヤシートワンタッチフォールディング機能
・リヤシートセンターアームレスト
・スライド機構付コンソールリッド
・ルーフスポイラー
・UVカット機能付濃色ガラス(オプションで選択可能)
・クロームウィンドゥモール
・マフラーカッター
また、2.0i-Lではオプションで装着可能なのに対し、2.0iではオプション設定すらされない装備は以下のとおり。
・オートワイパー&オートライト
・クリアビューパック
・キーレスアクセス&プッシュスタート
・リヤビューカメラ付SDナビゲーションシステム
・フロントシートヒーター
・運転席&助手席8ウェイパワーシート
・大型サンルーフ
・サイド&カーテンエアバッグ
と、以上のように多岐に亘る変更がなされた結果、2.0i-Lとの価格差は315,000円と決して小さくないものに。
パドルシフト、本革のシフトノブやステアリング、マフラーカッター、エアコンの左右独立温度調整機能等といった、快適装備や加飾的なものは、正直あってもなくても何ら影響はありませんが、今回のフォレスターの売りの一つでもあるX-MODEやアイドリングストップ、利便性が高そうなリヤシートワンタッチフォールディング機構、盗難防止に繋がるイモビライザーまでもが非装着となり、前述したように、サイド&カーテンエアバッグも設定されないとは、いかがなものか。
装備を落とした結果、車両重量はCVT車比較で10kg軽くなったものの、アイドリングストップも落とされたために、JC08モード燃費は0.8km/L悪化。
ノートとは違い、適切なシートポジションをとるための運転席シートリフターまで落とされていないのを救いと考えるのは、あまりにも次元の低い話。
当然、いろいろなメディアでは、フォレスターは2,089,500円から、と示されるわけですが、興味を持ったユーザーが、本格的な走行性能を持ったSUVが車両価格200万円少しで買えると思って、カタログを見たら、事実上約240万円スタートだった、などと言うのは、もはや詐欺ではないか。
前述の抱き合わせメーカーオプション同様、こういったグレードは、少なからず他メーカーでも見られますが、これは骨抜きな法律と同じ。
プレミアムブランドになれる可能性があり、ましてや安全性能を売りとしているスバルが、このような旧態依然でメディアの賑やかしに過ぎない売り方をするのは、残念な限り。
あわせていやな予感がするのがコマーシャル。
エクシーガの時に書いたように、『すっごい、このSUV!』と叫ぶコマーシャルが登場しないことを、祈るばかり。
いろいろと苦言を呈しましたが、総合的には、走行性能、環境性能、安全性能と、かなり高いレベルで手堅くまとめられた一台。
看板倒れに終わり、デザインも何をしたいのかよくわからないアウトランダーよりは、満足度の高いクルマになることでしょう。
まあ、スバルは冒頭のエクストレイルやCX-5はもとより、アウトランダーなぞ、眼に入ってすらいないかもしれませんが…。
Posted at 2012/11/16 20:29:32 | |
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