『誓いのフィナーレ』の公開が近づいてきました。
今回はユーフォの演奏シーンについての自分用の覚書です。
響け!ユーフォニアムでは、練習を含め楽器を吹くシーンがたくさん出てきます。ユーフォの登場キャラクターには、声優さんは勿論、そのキャラが吹く楽器を演奏する人もいます。”中の人”が最低二人いることになります。
演奏は、洗足音楽大学の学生「フレッシュマン・ウインド・オーケストラ」の方が主に担当しています。
演奏者には細かな演出や設定が伝えられ、それを楽器の演奏で表現しています。上手い演奏を1回吹けば良いというわけではないのが、他作品との大きな違いです。演奏を開始し、どんなテンションで、どこで、どうやって止めて、誰が何を間違えるか という指示が全てあります。例えば「○○さんは気分が落ち込んでいます」「楽器を習い立ててちょっとヘタです」「○○小節目で△△な風に演奏を失敗します」のように、細かい設定の通りに演奏者は演奏で”演技”をする事が要求されます。アフレコと同じで、キャラクターの状況や心情を理解して演奏しています。
また、シーンによっては学生ではなくプロが演奏を担当することもあります。例えば麗奈を見てみると、入部してすぐの頃と、香織先輩とオーディションでソロパート争いをする時では明らかに演奏のレベルが違います。話数を重ねることに演奏者を変えてだんだん上手くなっていくようにしています。これは、同じ麗奈というキャラクターでも最初の頃と最後の頃では、滝先生の特訓の効果や麗奈自身の心境の変化、気持ちの入り具合などで変化が起きているはずなので、成長や変化を演出するためにそういう事をして違いを出しています。
楽器の人数構成も全て合わせています。「そこまで視聴者には分からないかもしれない。でも分かる人には分かってしまうかもしれない。なので隙は作れない。」とシリーズ演出の山田尚子さんが語っています。
当たり前ですが、音楽大学の学生さんはすごく上手です。その上手な方々に「ヘタに吹いてください」という指示をしますが、そのヘタの度合いに悩んだそうです。ちょっとだけヘタだと吹奏楽経験の無い人にとっては上手いかヘタか分からず演出として面白くないし、かといってヘタすぎるとリアリティがなくなってしまいます。”一生懸命吹いているけれど、結果としてヘタである”という所が大事で拘りの部分でもあります。ユーフォの”ヘタさ加減”は絶妙だと思います。
上手い演奏も、その人にとっては良いように聴こえない事もあります。一方、思い入れがあれば多少ヘタっぽくても良く聴こえる事もあります。上手ければ良いという事ではありません。"良い演奏とは何か?”、”コンクールで金と銀の差は何なのか?”という事をスタッフでかなり議論されたようです。
香織先輩と麗奈のソロパート争いの時は、麗奈の方はプロに吹いてもらいその違いを表現しました。セリフで部員に「麗奈の方が上手いわ」と言わせる事も出来たのですが、あえてそれはせずに、演奏者の力量、音の力だけで二人の差を出したという事です。
良い演奏と良い曲は環境によって変わり、聴いている人の経験や考え方によって聴こえ方が変わってくるという所も、ユーフォが拘った部分でもあります。
先日、youtubeの京アニチャンネルで、~誓いのフィナーレ~の演奏を収録しているシーンが公開されました。そこで音楽プロデューサーの斉藤さんの指示が出ていました。
貴重なシーンが見られます。
今度の映画~誓いのフィナーレ~、こういった演出・演技指導を受けて演奏するフレッシュマン・ウインド・オーケストラの皆さんの、キャラクターを通して聴こえてくる”拘りの音”、楽しみです。
※当ブログに掲載されている画像・その他データの権利は 武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会 に帰属します。
Posted at 2019/04/02 21:50:09 | |
Sound! Euph. ~音響 | 音楽/映画/テレビ