
i-DMsのオフミで重宝して活用しているG-Bowlアプリは、クルマに生じる前後左右のGの変化の様子を可視化してくれます。
このG変化、上手な人の運転だとその軌跡が
円周に沿うように丸く移動するといいます。したがって「上手になるため」に「軌跡が丸くなるように」練習に励むワケですが、、、
なぜ上手な人は
丸くなるように運転するんでしょう?d(・・)
という話。
マツダはCWプレマシーを開発した際に「
ダイナミックフィールの統一感」という考え方を確立したとマツダ技法で報告していますが、そこに掲載された画像がコレ。

G-G DiagramとかFriction Circle Image(摩擦円)と紹介されていますが、モータースポーツをカジッた人ならお馴染み(常識)のモノです。
これはタイトル画像のG-Bowlアプリのログとは前後方向の表現が上下逆さになってます。
したがって画像を上下に逆転すればG-Bowlアプリのイメージと一致するんですが、まぁ表示方法の違いであって、言わんとするところは同じです(^_^;)。
この図の説明に「
Limit Drving at Test Circuit(テストコースおける
限界走行)」とありますね?
これはテストコースで恐らくマツダのテストドライバーがクルマの限界領域ギリギリで走らせたときのクルマに生じた荷重変化をグラフ化したと想定出来るんですが、タイトル画像のG-Bowlログも同様に
減速→旋回
という走りをクルマの限界ギリギリで行ったら、その軌跡は
結果的にある領域の円周に沿った動きとなりました。
この
円の動きが何を表しているかというと、
タイヤの性能特性です。だから
摩擦円とも呼ばれます。
図の上下は前後方向のグリップ、左右は左右方向のグリップを示します。これがある半径の円周から外に出ないということは、それがタイヤのグリップ力の限界であり、円周を示すという事は、中心点からの半径がグリップ限界ということ。
どういうことか具体的に言うと
①タイヤのグリップ力を減速(円周の上方)に100%使った場合、クルマを旋回させる余力は無い。
②タイヤのグリップ力を旋回(円周の右もしくは左)に100%使った場合、クルマは加速も減速も出来ない。
なんてことです。逆に言えば
①'減速中から旋回を始めたければ、ブレーキを緩めなければならない。
②'旋回中から加速したければ、ハンドルは戻さなければならない。
ということです。
この理屈をキッチリ理解した上で、タイヤのグリップ力を限界まで引き出して走れば、そのクルマに生じる荷重変化(=タイヤのグリップ力)は、自ずと円周に沿った動きになるという話であり、そんな風にタイヤの性能を引き出せるドライバーが上手という事です。
ところでタッチ_さん、ここまでって
限界走行の話ですよね?そんな世界には縁の無い一般ドライバーの、一般道での合法走行に於いてもコレって意味があるんでしたっけ?(・・;)ノ
マツダ技報に拠れば、それをマツダでは色々検証したんだそうです。プレマシーのような多人数乗車のミニバンでも「テストドライバーが限界で走らせたときに
こんな動きをする(させ易い)車が優れたクルマなんです」なんて主張したところで、「それって一般道の日常走行でも意味があるのか?」なんてツッコまれて、ちゃんと答えられなければ説得力がありませんからね(^_^;)。
結果は、限界領域ではない
日常走行領域でも、こんな風にクルマを動かせると乗員の身体的負担が少ないという実験結果が得られたそうです。また、別の研究でも「一般走行領域においてG-Gダイアグラムを円形にするエキスパートドライバの走りを車両運動力学的に解析した結果,これが各輪タイヤへの負荷が最小となるような運転ストラテジであることが明らかにされている。」と紹介されていて、自動車技術会学術講演会前刷集 No.8-08,p9-14(2008)に「横運動に連係して加減速を制御する車両の横運動特性に関する検討」というタイトルで報告されているようです。
要するに、
クルマを限界領域で走らせる場合、その性能限界や物理法則には逆らえないので、その領域での動きというのは
ある種の理想的な運動であるということ。そしてそのような理想の状態を限界領域から
日常領域に相似形で縮小してあげると、それは
やはり理想的であるという事です。
(1.0Gから0.6G→0.4G→0.3G→0.2Gと相似形で縮小していけば、一般道の日常走行でも適用可能になります。)





つまり
モータースポーツで常識とされる様々なテクニックは、クルマを走らせるペースが全く違う
一般道の日常走行に於いても、同様に意味がある事を、これらの事実が示しています。
ということで、
車両の掛かるGが前→横→後と変化するような場面に於いて、上手なドライバーは丸くなる。丸く出来れば上手と言われる、という話。
ただ、話はここで終わりません(笑)。
この摩擦円の半径がグリップ限界という話(マツダ技報ではほぼ1.0G)ですが、上手なドライバーとそうでないドライバーでは、このグリップ限界値が変ってきます。ヘタなドライバーは半径が小さくなっちゃうんですね。つまり、丸く出来るだけでは十分では無いと言うか、これは上手なドライバーと言われるための要素のひとつにしか過ぎません。
その辺りは
別のブログで。
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運転の基礎知識 | クルマ
Posted at
2019/01/10 21:17:59