長年GTR BNR34を乗っておられるユーザーの方から記事をご覧になられて連絡をいただき、プロペラシャフトのオーバーホールをお任せいただくことになりました。
車両メンテナンスはGTR専門ショップにお預けされているようで、このショップ経由でプロペラシャフトが送られてきました。
とても状態の良いもので、ヘコミや汚れなどはあまり見られず、塗装の状態も良いものでした。ただGTRによくみられるバランス重りの大きさには毎度驚かされます。ユニバーサルジョイントの首振りは左右両方とも中立点付近でカクっと強いクリック感がありました。
今回はセンターベアリングの交換も行いたいというご希望でした。これは純正部品が出るようで部品の添付をしていただきました。GTRのプロペラシャフトはなかなかの重量があり、33万km走行の期間をずっと支え続けてきたゴムダンパーの変形が見られました。またベアリングも軽すぎると思える回転具合で長年の疲れが蓄積していたようですので、これだけ見ても今回のオーバーホールは有意義な予感がします。
中央部の等速ジョイントがはまる受け側カップを外さないとセンターベアリング本体にアクセスできませんが、かたく入っていますのでプーラーを使い端面に傷つけないよう気をつけます。センターベアリングもきつめに入っていたので、プレスで外します。いろいろな工具を駆使して手作業で頑張って外そうとすると部品を曲げたり傷つけてしまうことがあるので、できるだけ単純でこねくりまわさない作業になるよう心がけます。
等速ジョイントを外さないとプレスに入らなかったので、センターベアリング作業の前に等速ジョイントを外しておきました。今回は泥のようなグリスではなく一歩手前のビターチョコレートのような茶色みの強い、また若干液状化の進んだグリスとなっていました。
等速ジョイントはすべてばらして強力洗浄液に漬け込み、劣化した古グリスを落とし切ります。
非分解方式のスパイダーも外して徹底洗浄を行います。高荷重下での潤滑性能・耐水・耐熱等に優れた優秀なグリスをたっぷり詰めます。数十年の運行の間にグリスはオイル状になっていくようで、粘りはありませんでしたが潤滑は切れていなかったので一安心です。
中央部の等速ジョイントのカップブーツに経年劣化によると思われるひび割れと微小な穴があいていてごくわずかグリス漏れを発見したので、たまたま在庫していたカップブーツに交換しておきました。
グリスまみれの手でなかなか写真が撮れず、気づいたら写真を撮り忘れていたりしてうっかり完成写真だけになってしまいました。ユニバーサルジョイントの首振りはクリック感は一切なくなり、滑らかそのものとなりました。今回GTR用回転バランス治具の見直しを行いましたのでバランス作業のしやすさを高めることができました。今回も非常に良い数値とできて低振動と静粛性の期待ができるものとなりましたので、試運転時のレポートが楽しみです。
追伸 : 専門店で整備が仕上がった車を試乗されたご感想をお送りいただきました。
「本日、引き取って帰宅しました。
高速とても滑らか、静か、振動なく、街中では、低速時のバックラッシュのような振動、音が出ないように感じ、とても満足です。
とても綺麗にバランスウェイト、塗装、最高の仕上がりに感動しました。」
こうしてご感想をいただくまでなかなか安心できませんが、新品時以上の滑らかな回転に変貌させられたようです。名車の維持に関わらせていただけて光栄でした。
Posted at 2024/07/27 12:53:24 | |
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