これらの内容には非公開情報を仮定して求めている箇所がいくつもあります。
実際には異なる可能性があるためご注意ください。
前回のおさらいです
ρ = プラネタリーギア比
Te = エンジントルク
ne = エンジン回転数
Tg = ジェネレータートルク
ng = ジェネレーター回転数
Tr = 出力トルク
nr = 出力回転数
と置き換えて、プラネタリーギア比 ρ = 0.3846 でしたね。
トルクの分配は
Tg = (ρ / (1 + ρ)) * Te = 0.2778 * Te
Tr = (1 / (1 + ρ)) * Te = 0.7222 * Te
回転数の関係式は
ρ * ng + nr = (1 + ρ) * ne
となります。
ではその2開始です。
ジェネレーターの最大回転数
回転数がエンジン・車速・ジェネレーターの3つで関係してくるため、ジェネレーターの最大回転数がどれくらいなのかを求める必要があります。
最近の諸元表には載っておらず非公開のままです。ちなみに初代プリウスでは 9,500rpm と公開されていましたが、はたして今はいくつなんでしょうか。トヨタの発言から計算で紐解いてみます。。。
まずキーとなるのが、マルチステージハイブリッドの発表会で伝えられた「従来のシステムでは、エンジンの最高出力を使用できるのは車速が約120km/h以上の領域に限られていた」という言葉です。
計算してみましょう。
まず「従来のシステム」とは、従来の V6 ハイブリッドですので、GS450h を基準に考えてみます。
エンジン出力: 217kW / 6,000rpm
タイヤサイズ: 235/45R18
減速比: 3.266
ではまず、120km/h のときトランスミッションはどれくらいの速度で回転しているか。
タイヤの外周(mm) = (235 * 0.45 * 2 + 18 * 25.4) * π = 2100mm = 2.10m
120km/h のときのタイヤ回転数(rpm) = 120 * 1000 / 60 / 2.10 = 952.4rpm
その時のトランスミッション回転数(rpm) = 952.4 * 3.266 = 3111rpm
この回転数のとき、エンジンは最大出力の 217kW を使えてるはずなので 6,000rpm で回ってることになります。
これを回転数の式に代入します。
ρ * ng + nr = (1 + ρ) * ne より
0.3846 * ng + 3111 = (1 + 0.3846) * 6000
0.3846 * ng = 5196.6
ng = 13,512rpm
つまり 120km/h でエンジンが最大出力出しているとき、ジェネレーターは 13,512rpm で回っていることになりますので、これが最大回転数となります。まぁ誤差もあるので概ね 13,500rpm にしておきましょう。(*´ω`*)
THS II のシステムトルク計算
THS II ってシステム出力は記載されてますが(システム出力 = エンジン + バッテリー供給)、システムトルクって記載されてませんよね。
そりゃそのはずです、だってトランスミッションが出力するトルク(変速後のトルク)しか出せないからです。でもそれでは面白くないので、変速前に無理やり換算して「相当」という表現で計算してみようと思います。
15代目クラウン(2.5L モデルのケース) (AZSH20)
何かを計算するには、まずモデルを仮設定しないといけません。
自分が乗っているクラウンとグレード違いの、いわゆる22クラウンについて考えてみたいと思います。(写真はマルチステージハイブリッドですが、そっちじゃない方)
エンジン出力: 135kW / 6,000rpm
エンジントルク: 221N・m / 3,800-5,400rpm
モーター出力: 105kW / 3,342rpm 以上
モータートルク: 300N・m / 0-3,342rpm
システム出力: 166kW
タイヤサイズ: 225/45R18
減速比: 2.937
※諸元表にモーターの回転数表記はありませんが、定出力特性があるモーターとすればトルクと出力から求めることができます
※システム出力からバッテリー供給は 31kW と求めることができます。
※リダクションギアが備わってますので、モーターには変速比 3.9 / 1.9 を介します(マルチステージハイブリッドの資料より)
では計算していきます。まずトルク配分です。
Tg = (ρ / (1 + ρ)) * Te = 0.2778 * Te
Tr = (1 / (1 + ρ)) * Te = 0.7222 * Te
この式より、エンジンの最大トルク 221N・m は、ジェネレーターに 61N・m、出力に 160N・m 配分されます。回転数の関係式よりジェネレーターがたくさん回る方が車速が低いので、ジェネレーターは 13,500rpm と仮定します。
では、その時の車速は?トランスミッションの回転数は、回転数の関係式より以下になります。
エンジンが 3,800rpm のとき
ρ * ng + nr = (1 + ρ) * ne より
0.3846 * 13500 + nr = (1 + 0.3846) * 3800
nr = 69.38rpm
同様にエンジンが 5,400rpm のとき 2,285rpm です。
ただし、モーターは変速比が 3.9 のリダクションギアを介しますので、最大トルクが出せる回転数は 3,342rpm / 3.9 = 856.9rpm までです。
つまり、トランスミッションの出力が 69.38〜856.9rpm のときに最大トルクを出せることができます。これを車速に置き換えると。。。
※タイヤサイズは 225/45R18 なので、外周は 2.073m です
69.38rpm のとき車速は...
タイヤの回転数 = 69.38 / 2.937 = 23.62rpm
その時の時速 = 23.62 * 2.073 * 60 / 1000 = 3km/h
856.9rpm のとき車速は...
タイヤの回転数 = 856.9 / 2.937 = 291.8rpm
その時の時速 = 291.8 * 2.073 * 60 / 1000 = 36km/h
ちなみにその時のトランスミッションが出力するトルクは、エンジンから160N・mとモーターから300N・m * 3.9 = 1170N・m を加算した、計1,330N・mです。
なので、時速3〜36km/h のとき、最大トルクが 1,330N・m となります。
これを従来のエンジントルク相当に置き換えます。リダクションギアと同様に1速の変速比を 3.9 と代用すると 1,330N・m / 3.9 = 341N・m になります。
つまり...
時速3〜36km/h のとき、最大トルクは 341N・m 相当になる。ということです。
要するに低速時はほとんどモーターが頑張ってて、エンジンは41N・m相当しか出してないということです。
エンジン「発進頑張ります!」
モーター「おう、もっと頑張れよ」
エンジン「サーセン!!」
みたいな感じです。