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イイね!
2013年10月27日

タイヤグリップと荷重との関係

最近はお仕事でよく溶接してます。
しっかり溶け込むように、でも熱が入りすぎて鉄板に穴が開いたりしないように…。
溶接難しいです。でも楽しい!
しっかり溶融池の状態を見極めながら、美しい溶接を目指すのデス!
頭の中は溶接のことでいっぱい、もう寝ても覚めても溶接のことばっかり考えています。
ご飯を食べながら「ワイヤーの送り早さは…」。
クルマの運転しながら「端部の巣穴を上手に消すには…」。
女の子と美術館へ行っても、絵を見ながら

「この木の枝が溶接機のトーチに見える!」

と興奮していた自分に気づいたときはさすがに病気だと思いました。
ところ構わずバチバチやりたいです。
変態です。
TIG溶接機とか買っちゃおうかな…個人で(おいおい。笑)

というわけで!(←どういうわけだ)

こないだタツゥさんが紹介されていた論文を読んで受けたショックが収まりきらないので、今日はその話題です(笑)
タイヤのグリップ力と荷重との関係について。
サーキット走行とかジムカーナをされる方は興味のある分野だと思います、でも雑誌とかじゃあんまりこういうの書いてくれないんですよね^^;
前にも似たような記事を書いたことありますが、啓蒙活動のためにもう一回書く(笑)

さてクルマで速く走るには「荷重移動」というのが大事なキーワードのひとつだと思います。
ブレーキで前荷重を作って…とかって皆さん好きな言葉ですよね、僕も大好き(笑)
ところがタイヤのグリップ力というのは、「荷重をかけた分に正比例して増える」のかというと…必ずしもそうではありません???





参考資料:本田技術研究所の論文サイト掲載「フラットベルト式 サスペンションタイヤ試験機」(酒井智紀、日下馨、佐藤祐二)



このグラフの横軸は、タイヤにぐぐーっと荷重をかけていったときの、荷重の大きさです。
縦軸はCornering stiffness(コーナリングパワー=CP)という力の大きさですが、ちょっと難しいので、よく分からない人は「タイヤがコーナーで発揮できるグリップ力」くらいの感じに思っていて下さい。
いずれ興味が出てきたら詳しく調べてね(笑)

で、荷重とグリップ力との関係は、こんなグラフで表されるわけですね。
うーん興味深いぞ!

あ、それと、黒い線は時速10km、赤い線は時速100kmのときの変化を表したグラフなのですが、スピードの差についての話は…とりあえず横に置いときましょう(苦笑)
さしあたり時速100kmのほうのグラフで考えます。







さてさてこんな感じです。
このグラフを見て、どんなことを感じますか?
タイヤにかかる荷重が増えていくほどグリップ力が増えますが、6000N(ニュートン)を過ぎたあたりからは逆に、グリップ力が少しずつ減っていくというのが分かります。
ブレーキでクルマを前荷重にするとフロントタイヤのグリップが増えて…と言いますが、それにも限度があるってことですね。

ちなみにこのグラフは205/60R16 92Hのタイヤをフラットベルト式タイヤ試験機にかけて測定したものです。
タイヤが違えば具体的な数値は前後しますが、すべてのタイヤの測定結果を示すことも出来ないので、勘弁してくださいね^^;







でもでも実際には…6000Nなんて大きな荷重がタイヤにかかる瞬間というのはそんなに多くはありません。
僕のロードスターであれば、車重がだいたい1000kgくらいとして計算すると(ホントはもうちょっと重いけど^^;)、タイヤ1輪あたりの荷重は約2500Nです。
サーキットでタイムアタックしたときの最大荷重を、だいたい4500N前後と考えると、6000Nまでは結構な余裕がありますね。
縁石なんかを踏んで瞬間的に大きな荷重がかかった場合を除けば、普通にコントロールしている範囲では「前荷重が増えすぎるとグリップ力が下がる」というのは考えなくて良さそうです^^

で、グラフで見ると、2500NのときのCPは950N/degくらい。
重要なのは、例えばここからハンドルを切って左右方向に荷重移動すると、「トータルのCP」は減ってしまうということです!
荷重移動すると、やっぱりグリップ力は減っちゃうんです!
一体どういうことか?







ここで、2500Nだと中途半端な数字なので、分かりやすいように4000Nを基準として考えてみますね。
1G(荷重移動していない状態)で1輪あたり4000Nのクルマがあったとして、そのクルマに左右方向2000Nの荷重移動が起きたとすると、

  イン側のタイヤにかかる荷重…2000N
  アウト側のタイヤにかかる荷重…6000N

になります。
4000Nから±2000Nとなるわけですから、計算は簡単ですね^^
このとき、タイヤのグリップ力はどうなるのかを上のグラフから読み取ると、

  イン側のタイヤのCP…800N/deg
  アウト側のタイヤのCP…1420N/deg

になります。
イン側のタイヤとアウト側のタイヤの合計では、800+1420=2220N/degという力を発揮することが出来ます。
おお、すごいですね(?)

ところが!ところが!
ちょっと待ってください、そもそも荷重移動する前の状態(4000N)のグリップ力を見てみると、

  イン側のタイヤのCP…1300N/deg
  アウト側のタイヤのCP…1300N/deg

となるわけですから、イン側とアウト側の合計は2600N/degです。
あれ!荷重移動する前より多いじゃねーか!^^;

どういうことかと言うと、グラフから分かるとおりですが、タイヤは荷重が増えるに従ってグリップ力が「増えにくく」なります。
少しずつしか増えなくなる、ってことですね。
それに対して、荷重が減る場合は、グリップ力は荷重に比例して減ってしまいます。
荷重を増やしても少ししかグリップが増えてくれないくせに、荷重が減るとなるとあっさりグリップが減っちゃう。
タイヤってそういう奴です。
なんか…憎たらしいですね^^;

今回は左右方向の荷重移動(イン側とアウト側)で説明しましたが、前後方向でも基本的には同じです。
クルマがタイヤを履く限り、基本的には同じです。
荷重移動が起こるとタイヤのCPの合計は減りますので、荷重移動というのはタイヤグリップにとってあまり嬉しいことではありません。

まぁ、そうは言ってもブレーキを踏めば荷重移動しますし、ハンドルを切れば荷重移動しますから、ドライバーの人は運転を変える必要はないんですケド…。
速いクルマを作る場合は、出来るだけ荷重移動しにくいクルマにしたほうが良いです、それがどういう理由でそうなるのか?というのが今回のお話でした^^
















えーっと例外ですけど、前後重量配分として、もともとフロントのほうが重いクルマの場合は、アクセル踏んで後ろ方向に荷重移動したとき…。
リヤのほうが重いクルマの場合は、ブレーキ踏んで前方向に荷重移動したとき…。
…ということも考慮に入れてみると、より理解が深まりますね。
大体で良いので具体的な値(1000Nとか2000Nとか)を想像できると、なお良いですね。

また、全開加速時に駆動輪のグリップのみが必要という場合は、荷重移動によって減るグリップのことは考えなくてよいので、そういったあたりのことも大事ですね。

あと偏平率の低いタイヤの場合は、偏平率の高いタイヤに比べて、「かなり高いコーナリングGのところまで、コーナリングフォースが頭打ちの領域を使わなくてすみ、内外輪の平均コーナリングフォースの落ち込みを低減できることになる」(野崎博路「サスチューニングの理論と実際」)とのことです。
何故そうなるか、については記述がなくて…想像としてはケース剛性が高いから?と思いますが、それだけじゃないかもです。
ただし極端に偏平率の低いタイヤを使うには、それに合わせたサスペンションセッティングにしないとデメリットが出る可能性が大きいので注意しましょうね。

グラフを見てもらえば分かりますが、1Gにおける荷重(荷重移動する前の荷重)がどの点にあるか、ということで、CPの合計値がどのくらい減るかが変わってきます。
例えば0~2000Nの範囲では、荷重移動が起こってもCPの合計値はほとんど減りませんから、どのくらいの偏平率なら問題なさそうかというのもそれによって変わってきます。
偏平率を含めたタイヤのスペック、そしてクルマの車重、サスペンションセッティング、このあたりも考慮のうえでちょうどいいバランスポイントを見つけることが出来ると、荷重移動が起こった際のCPの合計値が減ることを防ぐことが出来るようです。
よく「クルマはバランスが重要」と言われますが、まさしくそうですね。
全てのタイヤ、全ての部品毎に詳しいデータが公開されてればいいのに(←無茶言うな。笑)
ブログ一覧 | 足回りの基礎 | 日記
Posted at 2013/10/27 20:10:02

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この記事へのコメント

2013年11月4日 15:08
初めコメ失礼します!
86MSKと申します(^_^)

ブログに興味深いタイトルが並んでいてワクワクしました(^^)
(↑どこまで理解できるかは不明ですが…)

なるほど、タイヤのグリップは荷重をかければかけただけ上がるわけではないのですね(^_^)

 はっきりとしたデータのおかげで少し理解できました!

 荷重移動させない方が4輪としてのグリップは高いとのことですが、実はスーパーGTやドリフトなどで活躍している谷口選手のドラテクのDVDで、コーナーをグリップで曲がるとき、アクセルもブレーキも踏まない時間があり、そのときが最も、コーナーリングスピードが高いっと言っていました!

 カートなどでは、とにかく、エンジンの回転を落とさないためにも、どちらかのペダルを踏んでいることが速く走る上で重要だと言われますが、やはりそれも状況によって変わってくるようですね!

 若僧が長文で失礼しました(^^;)
コメントへの返答
2013年11月4日 20:53
86MSKさん、初めまして^^
皆さんなかなか物理関係の話はとっつきにくいようなのですが、コメントもらえて嬉しいです(笑)

このグラフ自体は他の文献で知っていたのですが、実際のデータを見たのは僕も初めてで興味深かったです、ホンダさんに感謝します。

同一車両でコーナリングスピードを最も高くするには、
(1)グリップ力をできるだけ横方向にのみ使う
(2)タイヤにかかる前後荷重をできるだけ等しくする
などの要素が関わってくるんですけど、谷口選手は(1)を意味してそのように言われたんじゃないかと思います。
厳密には(2)も少し意識されていたかもしれませんね、一般の方に説明するには膨大な時間を必要とする部分ですので省くのが普通ですが…^^;

カートの走行でそういった注意点があるのは知りませんでした、参考になります。
ミッションがないんでしたっけ。
カートも奥深いですね!

プロフィール

「@Garage K 個人的には、「グリップする」=「より大きなグリップ力(コーナリングフォースまたは加減速力)を出せる」という意味かなと思って読んでましたが^^;
この件面白いんで記事にしますね!」
何シテル?   12/13 20:54
福井のロードスター乗りです。 ロードスターは現在休眠中。 タカスサーキットをホームコースとしてサーキットアタックしていました。 GPSロガーの結果を元...
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