僕が初めてGPSロガーを使ったのは
2010年12月のことで、タカスサーキットのレンタルロガーを使わせてもらっていました。
当時はまだサーキット走行にロガーを導入している人がさほど多くなく、インターネットで検索しても「グラフの正しい見方」みたいなのは出てこなかったので、よく分かりませんでした。
そのため、「これが速度を表してるグラフで、ここの地点で時速60kmということは、つまりもっと速く走れたらこうなるわけだから…」という感じで、四苦八苦しながら完全な独学でグラフの見方を覚えました。
右も左も分からなかったので、結構大変な思いをした記憶があります。
今回はそんな「ロガーデータの見方」について書くわけですが、最初に断っておくと、本当に運転が上達したいドライバーの方は自分でロガーのデータを解析するというより、誰か信頼出来るコーチの人にロガーのデータを見てもらって、「このコーナはこんな走り方になってるからもっとこういうふうに走りなさい」とアドバイスをもらうのが一番よいと思います。
てっとり早く上達するためには、それがたぶん一番です。
ただし身の回りにロガーのデータをしっかり読み取れて、かつ速く走ることも出来る、という人がいない場合は、仕方ないので自分で自分のコーチ役も務めることになります。
そういう場合は以下に書くような考え方をもとにして、少しずつロガーのデータを読み取れるようになっていきましょう。
さて普通の人はロガーのデータを見ても、なんかグラフになってるわー、くらいしか分かりません。
でも、「ここに注目してみてね」みたいなヒントがあると、とたんに分かりやすくなります。
今回は各地点におけるスピードの変化を表したグラフである「車速グラフ」を例にとって、ロガーのデータを見てみます。
…と、その前にタカスサーキットのコース図です。
青色のラインは実際の走行ラインを表しています。
ちなみに前回のデータではなく、前々回のデータですので、あしからず…^^;
そしてこちらが「車速グラフ」です。
青色のグラフは前々回の走行における1分10秒1と1分10秒2のグラフ。
赤色のグラフは6月に走行したときの1分10秒1と1分10秒2のグラフです。
都合のいいことに、ベストタイムとセカンドベストタイムがそれぞれ非常に近かったので、これらを比較してみます。
ここで、ちょっとグラフが小さくて見にくいので、コースの前半部分を拡大して見てみましょう。
このグラフは車速を表しているグラフであり、縦軸が速度を、横軸が時間を表しています。
(グラフの横軸を時間ではなく距離にして表示することも可能ですが、とりあえず今回は横軸を時間で表示したグラフを使うことにします。)
ところで赤丸をつけた部分は、各コーナを表しています。
このグラフは車速を表しているグラフなので、上に行くほどスピードが高くなり、下に行くほどスピードが低くなるのですが、サーキット走行においてスピードが最も低くなるところはストレートではなくてコーナなので、スピードが低くなっているところを見ると「ここがコーナだな」ということが分かります。
タカスサーキットの場合、1コーナの次は2コーナ、2コーナの次は影山コーナですから、順番で考えていけば、グラフのどの部分がどのコーナの速度を表しているかが分かります。
この場合、時速40km~45kmくらいで各コーナを通過していることが読み取れますね。
逆に、スピードが高くなっているほうを見てみましょう。
ここで赤丸をつけたところは、影山コーナ手前のストレートにおいてトップスピードが出た瞬間を表しています。
だいたい時速120kmくらいのようです。
もっとエンジンにパワーがあったら、時速130kmくらいは出ちゃうかもしれません。
でもとりあえず、ここでは時速120kmくらいです。
ちなみにここの「かくっ」となっている部分は、シフトアップの瞬間を表しています。
クルマがストレートで加速中にシフトアップしようと思うと、まずアクセルを戻してクラッチを切ってギアをチェンジし、再びクラッチを繋いでからアクセルペダルを踏み込むという動作を行うことになるので、その瞬間は駆動力が掛かりませんから、クルマは加速することが出来ませんね。
したがってスピードも上がりません。
そんなふうに一瞬だけ「加速しない瞬間」が生まれたあと、シフトアップが終われば再び全開加速に入りますから、その直後からスピードが上がり出します。
というわけでここの「かくっ」となっている部分はシフトアップの瞬間を表していることが分かります。
タイムを削りたい場合は、シフトアップにかかる時間は出来るだけ短くしたほうがよい、ということになります。
さて、もう少し具体的に見ていきましょう。
1コーナに注目してください。
赤のグラフと青のグラフは、どちらも時速45km前後でコーナを曲がっていることが分かります。
例えばここで、時速40kmくらいしか出ていなかったら、「コーナリングが遅い」ということが分かります。
コーナリングは速いほうがカッコイイので、出来るだけ速く曲がりたいですね。
ところが実際には、速度だけ高くても、それがタイムに繋がるとは限りません。
僕のクルマで1コーナをもっと速く曲がろうとすると、多くの場合、緑色のグラフのようになります。
緑色のグラフを細かく見てみると、とりあえず1コーナの「速度」に注目した場合、時速50kmまでしかスピードが落ちていないことが分かりますね。
赤色や青色のグラフでは、時速45kmでしか曲がれなかったので、それが時速50kmで曲がれたということは、一見すると「速く走れたということじゃないか?」と思ってしまいます。
しかし…。
曲がっているときの速度に対して、もうひとつ重要な要素は、「どれだけ早いタイミングで加速体制に移れるか」ということです。
コーナだけ速くても、立ち上りが遅くなってしまったとしたら、タイムは遅くなります。
「立ち上がり」というのは「スピードが上がり始める部分」のことですが、グラフを見ると、緑色のグラフは立ち上がりの瞬間が右にズレてしまっています。
このグラフの横軸は時間を表しているので、右にズレているということはつまり、立ち上がりのタイミングが遅い(=時間が余計にかかっている)ということです。
早い話が「タイムが遅くなった」ということを示しています。
そのうえ、スピードが上がり始めるときの変化が緩やかです。
すぐに全開加速したいのに、なかなか速度が上がっていかないってことですね。
タイヤのグリップ力には限界がありますから、コーナリングにばかりグリップ力を使っていては、加速にまわす分のグリップ力が足りなくなってしまいます。
したがって、必要以上にコーナリングスピードばかり気にして走ったときは、ロガーのデータを見てみるとこのようなグラフとして表れてくることになる、という一例が、この緑色のグラフなのでした。
というわけで、本来は赤や青のグラフのような速度変化で走れるコーナにおいて、緑色のグラフのような速度変化になってしまった場合は、コーナリングを重視しすぎてタイムが遅くなっていますよ、ということが分かります。
さらっと簡単に書きましたが、これは初心者だけでなく、走り慣れたドライバーでもわりと陥りやすいミスなので、気をつけたいところですね。
運転の良し悪しをタイムだけで判断していると、こういう部分に気付くことはなかなか難しいです。
でもロガーでデータを取れば「あれ、なんだか立ち上りが遅いね」と一目で分かります。
「じゃあここをもっとこんなふうに走ろうか」とすぐに対策を考えることができます。
ロガーは必ずしも、何でも分かる万能装置というわけではありませんが、少なくともそれを使っていないときよりたくさんのことが分かるので、運転を上達させていくにはとても便利な道具です。
ロガーのデータというのは「コンマ数秒毎の位置情報」を全てまとめて保存したデータなので、車速のほかに、旋回半径、横Gや縦Gなどなどを計算してグラフにすることが出来ます。
でも最初は難しいので車速だけ見てれば十分です。
だんだん上達してきて、ほかの情報が気になってきたら、それはそのときに覚えましょう。
というわけでロガーの見方……というか車速グラフの見方でした。
本当はこのあと、グラフを読める人向けにファイナル交換前後の比較の記事を書こうと思ったのですが、書いてる時間がないので、グラフのみ載せます。(クリックで拡大できます)
赤色が3.9ファイナルのとき、青色が4.3ファイナルに交換したものです。
いろんな要素が入って、タイム的にちょうど±ゼロになっているというところがたいへん面白いです。
シフトアップ回数の増加や、微妙な最高速度の違いなどをお楽しみください。
青色のほうが後に走っているはずなのに、赤よりS字がヘタになってしまっているのは、その間4ヶ月も走っていなかったからということで勘弁してください(涙)
以上、ロガーのデータのお話でした!