「具体的にどんなふうに動くんだろう?」
というわけでいつものようにお絵描きです♪
設計上おかしなところがあるかもしれませんが、仏様のような広い心で見てやってください(笑)
お絵描きするのは楽しいけどすごく大変なので(笑)
とりあえずこういう構成のマルチリンクを想像してもらって、
(画像はこちらのページから転用させて頂きました https://www.autocar.jp/article/2017/03/19/211287/4/)
真上から見たものを簡単なイラストにしたものがこちらです。
黒い棒がタイロッド、青い棒がサスペンションリンクです。
リンクはアッパー側、ロア側、どちらでも同じことなのですが、とりあえずアッパー側ということにしましょうね。
結論から言うと、ハンドルを切ったときこういう動きをするわけですが、
これだけ見てもよく分からないので、もう少し考えてみましょう。
この動きは、ボディを地面に固定してタイヤを動かしたものです。
そしてこれを反対に、タイヤを地面に固定してボディを動かしてみると、次のようになります。
相対的な角度関係は変わっていません。
いまいちイメージしにくいという方は「自動車を宙づりにした状態で、タイヤが何かに固定されている」ところを想像してみてください。
その状態でハンドルを切ると、タイヤが固定されているために、ボディが動くことになりますね^^
そしてこのとき、ボディはタイヤの付近を中心とする円軌道で動いていることが分かります。
フロントサスペンションの転舵軸は、その円の中心点を通ることになるわけですが、では次にその「円の中心」がどこにあるかを考えてみましょう。
まず、タイヤは固定されているので動きません。
このとき、2本あるアームのそれぞれは、このように動きますね。
ただし2本のアームはボディに連結されているので、フリーに動けるわけではありません。
というわけでそれぞれのアームの動きを同時に満たすような円運動の中心点を求めると、
あれがああなって、これがこうなって、最終的にはここになります^^
アームに重なる直線(各ピポット点を通る直線)が交差する点、ですね。
何故そうなるのかについて、まず各アームのボディ側ピポット点を次のように呼ぶことにすると、
ハンドルを切ったとき、点Aはタイヤ付近を中心とした円運動をすることになりますが、このとき「ハンドルを切り始めるほんの一瞬」を考えてみると、点Aの動く方向は「アームに対して直角方向」ということになります。
そして点Aがそのように動くならば、そのような円運動の中心は「アームに重なる直線(アームの各ピポット点を結んだ直線)上のどこかに存在する」ということが分かります。
点Bについても同様です。
というわけで、2本のアームの動きが同時に満たされるような点はこのように求められるということですね。
過去にロールセンタについて書いた記事の中で似たような部分の解説をしているので、分かりにくく感じた方は参考にしてください。
(
https://minkara.carview.co.jp/userid/296664/blog/34688645/)
ところでハンドルを切り始める瞬間の中心点はタイヤの中心線上にありますが(というかそうなるように書いてるんですが)、
このイラストのような設計の場合、ハンドルを切ると中心点はこのような位置に移動します。
というかどんな設計でも、基本的にはフロントマルチリンクでハンドルを切ると中心点は動いてしまいます。
リンクをもっと何本も追加して複雑な動きをさせれば、中心点があまり動かないようにすることも理屈上は可能かもしれません。
ただ、剛性の確保やコスト、メンテナンス性などの面で問題が出てきてしまうかもしれません。
スーパーストラットが思い出されますね^^;
GarageKさんの記事(
レクサスLCのフロントサス)のコメント欄において、やーまちゃんさんという方が「~なので、ダブルジョイントの車は舵角が増えた際の操舵フィーリングが課題になります」と書かれておられます。
短いコメントの中に要点だけが詰まっててすごいですね。
ともかくとして、ダブルウィッシュボーンの欠点を補うために考え出されたマルチリンクという方式も、ダブルウィッシュボーンにはなかったようなデメリットを併せ持っているということです。
もともとアームを分割することで剛性確保が難しくなってしまう面がありますし、一長一短ですね。
ところでやーまちゃんさんのコメントをよく読ませて頂くと、「メガーヌやシビックRの実態キングピンサス」についての言及が見られます。
すごい…。
ここで本棚からひと掴みして「
Motor Fan illustrated 特別編集 サスペンションバイブル」という本のページをめくってみると、次のような記述があります。
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しかし、走行中のサスペンションには、さまざな方向から、さまざまな種類の力がはたらく。それによって、リンク間の動きの干渉によるフリクションの増大や、その影響で設計意図通りの動きが実現できない、といった問題も生じてきた。コンピューターシミュレーションによる解析が導入されても、すべての要素を完全に把握することはできない。
そのような背景もあって、ここ数年の間、ジオメトリーも含めて仮想的な要素はなるべく廃し、機械的な構造と物理的な動きそのものでサスの能力を高める方向性が見直されてきた感がある。その具体的な形が、22ページで紹介しているプジョー407や、34ページで紹介しているルノー・メガーヌRSが採用した「転舵軸実存型」サスペンションである。
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続きを読みたい方は今すぐアマゾンでご注文ください(笑)
プジョー407はダブルウィッシュボーン、メガーヌRSはDASSという名前のストラットサスペンションになりますが、上記のような問題を解決すべく新しく考え出されたものです。
ていうかMFi誌の文中にもありますが「何で今まで思いつかなかったのか…」という感じですね(笑)
でもでも結局407のフロントサスもタイヤ上部のスペースを必要とするので省スペースという要件を満たすのは不利になりますし、DASSもストラットのデメリットそのものをキャンセル出来るわけではありません。
画期的で素晴らしい構造であることは間違いありませんが、結局のところ一長一短ですね。
例えばレクサスLCのフロントマルチリンクは、伝統的なインホイール式のダブルウィッシュボーンではキャンバ剛性が足りない→アッパーアームをハイマウント化→デザイン上の都合でタイヤ上は使いたくないのでアッパーアームはタイヤの横→増えてしまったスクラブ半径を減らすべくアッパーをダブルジョイント化、という流れで採用されたものだと思いますが、"そもそも論"としてインホイール式のダブルウィッシュボーンがマルチリンクに劣るのかどうかはボディの重さとの兼ね合いもあって、もし仮にレクサスLCの車両重量が1トン切りしていたのならおそらくフロントマルチリンクは採用されなかったのではないかと思います。
何がメリットか?何がデメリットか?それがどれくらいの規模なのか?
やはり具体的なところが大事なんだと思いますが、僕のような素人にはせいぜい本で読んだことくらいしか分かりませんが(笑)、メーカーの頭の良い方はいろんな苦労をしながらたくさんある要件と戦っておられるんだと思います。
あっちを立てればこっちが立たない中で、それでも頑張って新たなブレイクスルーを生み出す技術者の人たちは本当にすごいです。
見てるこっちは見てるだけだからラクですが(笑)、でも新しい技術はわくわくしますね。
そんなわけでフロントマルチリンクのお話でした。
僕はおたくなので書いてて楽しかったけど、ただの便乗記事に果たして意味があったのかどうかは分かりません!(笑)
いいの!僕が楽しければ!(笑)