ハブボルトになんか塗るべきか？

本題に入る前に、念のためタツゥさんの書かれたこちらの記事をご覧ください。

　ボルトは軸力が大事

さて、こないだＹ田くんと話をしていたらタイトルの件が話題に上りました。
エンジンオイルを塗ったほうがいいとか、モリブデングリスを塗ったほうがいいとか、あるいは何も塗らないほうがいいとか、いろいろ聞きます。
これ実際のところどうなんでしょうね？
タイヤ交換しながらハブボルトを眺めていると、いろいろ思うところがあります。

ちなみにダイハツ車の整備書にはだいたい「油脂類はだめ」と書いてあります。
スバルは最近のは書いてないのですが、古いの見てみたらやっぱりだめだと書いてありました。
メーカさんがだめと言ってるわけですから何も塗らないでおきましょう。

でもね、錆びるんですよ。
ハブボルトって錆びるの。

たぶんメーカさん的には「ボルトが錆びたなら交換すればいいじゃない」という正しい思考をされていると思うのですが、現場の僕たちは横着なのでよほど酷くない限り交換まではしません。
でもハブボルトのねじ山が錆びると、ナットを締めるときに錆がねじ山に噛み込んで、それ以上回らなくなってしまうおそれがあります。
実際に噛み込むかどうかは程度問題だと思いますが、少しでもハブボルトが錆びているところを目にしたら、今後のことも考えて何かしておきたくなるのが心情というものです。

ちなみに某メーカ系のディーラさんでは浸透性防錆潤滑剤を使っているところが多いようです。
銘柄で言うとドライブジョイのハイルーセンですね、あぁ系統がバレちゃう（笑）
うちでは昔からモリスキッドをシュッとひと吹きすることになっています（なるだけ薄く）。
外車ディーラは会社によって、こういったモリブデン系を使ったりもするようですね。
どちらにせよ正規の手段ではないので、実際のところ「何が一番いいのか」って難しいなと思います。

ハイルーセンもモリスキッドも「乾く系」の潤滑剤なので、等速ジョイントグリスのようにねちょねちょしたものよりは比較的安心して使うことが出来ます。
ここでいう「安心」とは、細かい砂利とかそういう余計なものを巻き込んで欲しくない、という意味です。
ただしハイルーセンは少し経つとカラカラに乾くのに対し、モリスキッドは乾いた後に粉状のものが残ります。
タイヤ交換のたびにハイルーセン、ならそれでいいかと思うのですが、連日続く戦場のようなタイヤ交換の嵐の中でそんなことしてると夜中になっても家に帰れず過労死してしまうので、それを思うと一度吹いておけば粉状のものが少し残ってくれるというほうがちょっと気が楽です。

ただ、潤滑材としての摩擦係数はモリスキッドのほうが低いと思われます。
摩擦係数が低いと何がいけないかというと、同じ締付トルクで締めても、軸力が上がってしまいます。
軸力が許容範囲を超えると、ナットが削れてねじ山に噛み込んだり、あるいはボルトが折れたりします。

でもでもうちの整備のおっちゃんの手の感覚で「問題ない」とのことなので、測ったことはありませんが実際にはあまり軸力に違いは出ていないんだと思われます。
もともと錆びたボルトは錆びていないボルトに対して摩擦係数が高くなっていますから、「錆びたボルト＋薄くモリスキッド」という条件では相殺ということなのか、あるいはナットの座面（ナットとホイールが接触する面）ではなくねじ山に塗ったくらいじゃそんなに変わらないということなのか、僕には分かりません。
一度、軸力を測ってみたいものです。

ちなみに昔からの言い伝えではエンジンオイルを塗ったあとウエスで拭き取るべし、とあります。
今でも大型車の場合はこちらが推奨されているようです。
これも仕事としてやる場合は1台1台やってると家に帰れなくなってしまいますが、個人の方で自分のクルマにやるなら一番いいんじゃないかと思います。
オイルを垂らしたあとウエスで拭けば薄く塗り広げることが出来ますし、同時に簡単なねじ山の掃除にもなります。

ただ、理想を言えば雨の日とか雪の日にタイヤ交換しないことですね。
濡れてなければ錆びないので、錆びてなければ余計なものを塗る必要がありません！